Mogwai ‐‐Review‐‐

スコットランドはグラスゴー出身の4人組バンド。1997年に発表した珠玉のデビュー作、『ヤング・チーム』でシーンに登場して以降、10年以上に渡ってポストロックの重鎮として君臨し続けている。

レビュー作品

> Rave Tapes > Hardcore Will Never Die But You Will > Special Moves > The Hawk Is Howling > Mr.Beast > Happy Songs For Happy People > My Father My King > Rock Action > Come on Die Young > Young Team


Atomic

Atomic(2016)

 2015年8月にBBCにて放送されたドキュメンタリー『Atomic: Living In Dread and Promise』のサウンドトラックをリワークした作品。結成から20年を超えたモグモグには、ギタリストのJohn Commings脱退という大事件が昨年に起こりましたが、4人編成で再出発して精力的に活動を続けています。

  テーマがテーマだけに作品はとてもシリアス。ここ数年はサントラ呆けしてあまりモグってないわけなんですが(モグる=いわゆる轟音的アプローチ)、本作においても控えめです。とはいえ、ギターやシンセサイザーによる優美な演出や巧みな濃淡の差は、20年戦士の熟練度からくるもの。原子の恐怖を奏で、反対に原子の崇高さを表現するなど良し悪しの両局面からこの主題に向き合っています。それ故にどんな場面においても緊張感と重みが消えません。映像はなくとも、モグワイが発したいであろうメッセージがのしかかって来ます。

 ただ、やはり音源だけでは真意に迫ることは難しいのも事実。作風が作風だけに、バランス崩してまで轟音は仕掛けません。ただ淡々に積み上げていく映像に属した音楽。と同時に考えさせられる音楽でもあります。モグワイの真意は如何に。


Rave Tapes

Rave Tapes(2014)

 昨年には、フランスのドラマ『Les Revenants』のサントラ集の発表もありましたが、フルアルバムとしては約3年ぶりとなる8thフルアルバム。ポストロックの重鎮の新作は、前述のサントラの流れも引き継いで今回もあまり爆発しません。

 代名詞ともいえる壮大な轟音にまみれる場面は少なく、それよりもギターとシンセを丁寧に重ね合わせながら、心地よい揺らぎを聴かせます。波打ち際のようにゆるく押し寄せながら、メロディが静かに心を震わせる#1「Heard About You Last Night」、メランコリックな雰囲気の中でやけに重いシンセが中心で鳴り響く#2「Simon Ferocious」、途中からクラウトロックっぽいフレーズで押してくる#3「Remurdered」、など序盤の楽曲が本作の流れを決定づけている印象。作品としては、やっぱり4thアルバム『Happy Songs for Happy People』の優雅でたおやかな感触に近いかな。

 いつもより電子音が前面に出ている気はするけれども、新機軸と言えるほどの冒険ではないというのが正直なところ。それでも軽妙でポップな味わいは残しているし、音響の収斂・拡張の構築の巧みさは職人気質の彼等らしいと思います。#8「Blues Hour」のような寂寥感ある歌ものも流石の出来栄えだし、大きな爆発はみせないけどポストロックらしい展開と叙情に彩られた#4「Hexon Bogon」や#9「No Medicine For Regret」も重要なピース。物足らなさは否めないにせよ、引きのモグワイを手堅く表した作品です。


Les Revenants Soundtrack

Les Revenants(2013)

 2年ぶりとなるフルアルバムは、フランスのドラマ『Les Revenants』のサントラ集。端的に表すなら”爆発しないモグワイ”ですね。代名詞ともいえる轟音ギターを封印し、全編にわたってベクトルは静で保たれています。思い出されるのは、かつて担当したジダンのサントラですが、その作品よりも大人しくメランコリックな印象。一歩引いて、じっくりと聴かせます。

 だからといって、モグワイの特徴が消えているかといえばそうでもなし。小奇麗なピアノの旋律と控えめなギターの音色を中心に、繊細なタッチで丁寧に紡いでいく楽曲が揃っており、4th『Happy Songs For Happy People』が好みの人にはヒットしそうな作品でしょうか。ストリングスを用いたアレンジも当然あり、センチメンタルな美に彩られた曲は多い。それゆえにバラエティに欠け、やや単調な印象も。

 ジャック・ローズのトリビュート・アルバムのために録音されたという#13では、フォーキーな音色と歌を届けてくれているが、本作は間違いなく好みが分かれそう。ポストクラシカルだとかサントラ方面など、他分野から支持を集めそうな作品。


Hardcore Will Never Die But You Will

Hardcore Will Never Die, But You Will.(2011)

 プロデュースに金字塔を打ち立てたデビュー作『Young Team』を手掛けたポール・サヴェージを迎えて制作された2年半ぶりの7thフルアルバム。アルコールの購入を拒否されたティーンエイジャーが言い放った台詞をそのまま使ったタイトルが目を引きます。内容はポストロックの重鎮としての貫禄と威厳を示すと共に、これまで以上にバラエティに富んだ作風で聴かせてくれる1枚です。

 たおやかなメロディと美しい轟音の連携で骨抜きにする#1「White Noise」からその出来の良さを実感。起伏豊かな静と動の交歓が見せる至高の音世界は健在です。しかし、ここにこれまでの経験と蓄積による資源を投下し、多岐にわたるアプローチで魅せてくれる作風。#2や#5のように流麗な叙情性を纏いながらドライヴする曲で攻め、ひどく重たいドゥームばりの低音を歪ませた#3みたいにヘヴィな曲を間にはさんだり、ポストクラシカルにも迫る#6でしっとりと聴かせたりとこれまで以上に挑戦的で曲調が豊かです。

 ヴォコーダーをつかった歌ものも今までにない存在感を示しており、つかみの巧いフックを盛り込みとヴァリエーションの多彩さでここまでの求心力と間口の広さを開放しているのが新鮮ですね。美意識と趣味性を示しながらもここまでダイレクトに聴き手と交歓できる辺りは本作の充実を物語っている。特にハイライトとなっている昨年のメタモルフォーゼ’10でも披露した#8は、ゆるやかに叙情の波紋を広げながら音圧を高めていくドラマティックな曲調にグイグイと引き込まれます。ボーナストラック2曲の出来も秀逸で(静謐な美しさを際立たせた#11と動的なアクションで轟音の壁を形成する#12)。DISK2に収録されたアート展用に制作されたという23分間にも及ぶ音源もまた、静謐だが甘美な音のうねりに酔わされる曲。

 轟音と静寂の連携を緻密に深めながら、アプローチを拡げ、自らの音楽を巧く刷新していく事に成功した作品であると思います。そしていつも以上に明るくポジティヴでポップなフィーリングを宿しているのも印象的で、体中が光に潤されていく感覚がある。粒ぞろいの楽曲が彩る充実の一作。


バーニング(DVD付)

Special Moves(2010)

 キャリア13年目にして初めてとなるライヴ作品。このCD/DVDは、共に昨年4月末に行われたブルックリンの3公演を基にして制作されたもので、収録曲や曲順を微妙に変えてCDには全11曲、DVDには全8曲を収録。彼等の音楽はライヴでこそ初めて真の世界を現すといっても過言ではないのだが、本作ではその片鱗が味わえるものになっています。途方もない破壊力のディストーション・ギター、美麗なるアルペジオと鍵盤の調べ、正確無比なリズム・・・etc。優しく胸打つ叙情的なメロディ、その後で全身に恐怖を感じるような凶暴なノイズが襲いかかる静と動のダイナミズムは、オリジナル作品よりも上のレベルへと引き上げられています。

 如実に増す美しさと破壊力、そして凶暴性。それらは、甘美な陶酔と臨界点を超す昂揚を確実に運んでくる。スタジオ作品とライヴがかけ離れていることをこのライヴ作品で理解できると思うが、それこそモグワイが今日まで神々しいまでの存在感を保ち続けている理由だろう。轟音と叙情が紡ぐタペストリーは、ライヴにおいて初めて完成系を見ることを雄に証明している。


The Hawk Is Howling

The Hawk Is Howling(2008)

 2年半ぶりとなる6thアルバム。名実共にポストロックの重鎮となった彼等だが、本作のコンセプトはさしずめ”原点への帰結” といったところか。いや、原点を見つめながらもそれ以上に先に進んでしまったところあります。本作はこれまでと違って歌が一切なく、全編に渡りインストゥルメンタルの可能性を追求している。

 天空から美メロの雨が降り注ぐ#1の感動的な幕開けにまず引きこまれます。前作では、初期に回帰しつつもコンパクトな曲構成と柔よりも剛に重きを置いた重厚なサウンドが印象深いものでした。でも、本作ではゆるやかに静と動の押し引きを繰り返しながら、滑らかな自由曲線を描いて遥かなる地平線と重ねていきます。荒々しい轟音は全体的にやや控えめ。流麗なるアルペジオと穏やかに波打つリズムの上をピアノやグロッケン、シンセなどが詩的な光を放ちながらメランコリックに交錯して立体的で美しいサウンドスケープを構築。

 そして、曲が長尺になったことで奥行きの深いドラマを演出。初期らしいと思わせつつも一歩踏み込んだ叙情性を追及しているように思います。聴けば聴くほど意識の深淵からこの劇的な展開に引き込まれ、心の奥底に眠るノスタルジアを蘇らせる。その繊細で優美なタッチを生かした静謐な音絵巻が大半ですが、重厚なギターサウンドが所狭しと暴れまわる#2、エレクトロニカで彩られたポップなムードが心地よい#5などは美麗なる静と動の螺旋の中で異彩を放っています。

 本作の各所での評価はやや低調みたいだけれども、胸にヒリヒリと染みるものが自分には感じられました。


Mr. Beast

Mr.Beast(2006)

 前作より3年振りの発表となった5thアルバム。ピアノインストを利用した静寂に内包する優しさと叙情性が交錯する#1から、肉薄する轟音の洪水によるカタルシス#2へ流れ込む展開にこれぞMOGWAI!と唸ります。原点回帰したというそのサウンドは昨今の流れに見られた静謐・流麗で哀なるメロディーと初期に主体としていた轟音によるダイナミズムが錯綜する、静と動の見事な対比が象徴的。3~5分以内と曲の尺も短くなっており、聴きやすいですね。必殺の轟音ナンバー#4や先行シングル#6などが好み。そしてenvyのVocalのTestuya氏がヴォーカルとして参加している#9がピアノインストと詩も合わせて(歌詞はenvyの「Scene」を採用)クライマックスの感動を生む。Beast なんて野獣めいたタイトルですが、感動という名の衝撃が水面に広がるような作品。


Happy Songs for Happy People

Happy Songs for Happy People(2003)

 4thアルバム。非常に繊細で美しい、その一言がまず頭に浮かんだ。流麗で溶け込むようなメロディ、徐々に感覚を麻痺させていくエレクトロサウンド、絶望的なものを感じさせながらも展開していく。一筋の光、やがてそれが無限の広がりをしてタイトル通りの至福の一時が優しく包み込む。これはただの一言で表せられるものではなく、この音の化学反応を自分の耳で感じ取って欲しいと素直に思います。何よりこの作品で味わえる幸福感は極上のものといえるだろう。「もう言葉はいらない」と帯にあるキャッチフレーズも納得。


My Father My King

My Father My King(2001)

 昔からライブでの定番曲となっている「My Father My King」を音の錬金術師スティーヴ・アルビニと共に再構築したEP。1曲約20分というこれまで以上に大作志向の強いこの曲は、淡々とメランコリックなメロディを紡いで音を丹念に重ねていき、限界まで膨れ上がったところで大きな爆発を起こして聴くものを恍惚へと導くというモグワイの矜持ともいえるスタイル。深遠なる静寂と爆発的な轟音が究極ともよべる次元で重なり合っている名曲です。

 特に10分過ぎからは全方位に向かい、狂ったように轟音に轟音を塗り重ねていく様が圧巻。この地球までもを飲み込むような脅威の音圧を叩き込まれれば、身体がにものすごい衝撃が走ります(当方、サマソニ09大阪で体感済み)。ラストのノイズが狂ったような残響にはある種の恐怖感も覚えてしまうし、その後の20分にも及ぶ無音も何か感情を発しているようだ。聴くたびに胸の奥で何かが爆発していくような、そんな恐ろしさを持っている。


Rock Action

Rock Action(2001)

 顕著な変化をみせた3rdアルバム。2ndからの流れである美しさをより洗練した形で抽出しています。本作はこれまでと違ったアプローチともいえる”歌”と”メロディ”に重点が置かれた作品。確かに轟音ノイズが登場する回数は少なく、ガツンと脳みそをぶっ飛ばす迫力にやや欠けるかもしれません。

 しかし、それを感じさせない耽美なメロディが彼等の進化を物語っています。多幸感溢れる優しく純真なサウンドが本作では紡ぎ出されており、それに癒されて感情は天高くに舞い上がる。特に哀愁漂う穏やかなストーリーが紡がれる#7ですね。#2を聴いているとロック感も増して、惹かれます。 違った面を見せることによって、今までとは違う層の人間にもアピールできているかと感じます。我々リスナーも音の中に溶け込んでいくような、そんな不思議な感覚に包まれる。静なるカタルシスがこの作品の特徴。


カム・オン・ダイ・ヤング(デラックス・エディション)

Come On Die Young(1999)

 1stと比べるとさらに輝きと美しさを追い求めた2ndアルバム。もっとパワフルになるのかなと思えば轟音の渦は多少影を見せ、静謐な雰囲気を貴重としたものとなっています。

 メランコリックに紡がれる音の粒子が有機的に結びついて、人々を心地よい世界へと誘い、不思議と昂揚感を高める。切なさを詰め込んだ感傷的なムードに浸れ、余韻を静かに楽しむことができる。轟音によってのインパクトがやや薄くなったのは否めませんが、それは1stを聴いたことによって彼等の音楽を聴く側である我々が耐性を身に着けたというのも関係しているのではないか。それよりも静という部分での重みであったり奥深さを感じ取れ、クレバーな曲を作るようになったなあと感心。

 でも、個人的には前作の流れを汲む10分近い大曲が並ぶ#9~#11がやっぱり好きで、静謐と轟音の共演に陶酔します。Mogwaiイズムが凝縮されたこれらの曲には特に惹かれる要素が多い。これからを見据えた作品として欠かせないのが本作。


Mogwai Young Team

Young Team(1997)

 現在のポストロックという潮流を生み出し、数多の人間を骨抜きにした1stにして最高傑作と謳われるいわくつきの1枚。リリカルな響きすら感じさせる静寂とディストーションギターによって爆発を起こす轟音による破格のダイナミズムは他を圧倒し、強烈なカタルシスをもたらします。そして、破壊的でありながらもなぜここまで美しい壮大なスケールを描くことができるのか。驚きという言葉以外浮かんできません。

 空間と音の強弱を見事なまでにコントロールし、静と動を絶妙なバランスで混ぜ合わせる。インストゥルメンタルロックの新たな潮流は、これ以降に発展を遂げていったポストロックの原型として本作を標榜するフォロワーを数多く生んでいます。まさにエポックメイキングといえる作品。NME紙の97年ベストアルバム第7位に輝いたのはその証といえるでしょう。

 本作にはこれ以降の作品で進化/深化していく上で徐々に影を潜めていった荒さを感じ、初期衝動がダイレクトに伝わってくる様が実に痛快。バンドとしての成熟が次作から始まっていわけなんだけれども、Mogwaiの真骨頂といえばやっぱりラストの#10「Mogwai Fear Satan」 ですね。豪快さと繊細さ、激しさと美しさを極限レベルまで高めたこの曲はファンの中で宝物となっており、一度聴いたら忘れられない衝撃を刻み込まれます。

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