Om ‐‐Review‐‐

伝説のドゥーム・ストーナーバンドSleepのベーシストのアル・シスネロスとドラマーのクリス・ハキアスによるバンド(2008年現在、クリス・ハキアスは脱退している)。ベースとドラムによるデュオ編成であるこのOmは、宗教色の濃いスピリチュアルなサウンドを探求し続けている。

レビュー作品

> Advaitic Songs > God Is Good > Pilgrimage > Conference of the Birds > Variations on a Theme


Advaitic Songs

Advaitic Songs(2012)

   この世ならざるところへ。アル・シスネロス(Sleep)、エミル・エイモス(Grails)というデュオ編成はそのままに、前作からさらなる秘境へと歩みを進めていくOmの3年ぶりの5thアルバム。

 本作のタイトルは、山崎氏執筆のライナー・ノーツによると8世紀インドの賢者アディ・シャンカラが提唱した思想に基づくものだそうだが、もはやロックとかドゥームという範疇では括れない涅槃音楽にゆるやかに侵食されていく。初期から脈々と受け継がれるヘヴィ・サウンドに軸足はあるが、Grailsや近年のEarthのようにオリエンタルな嗜好、宗教的でスピリチュアルな要素をさらに深く追求。読経のような歌、ベース、ドラムの反復による酩酊/半覚醒状態への誘いは言わずもがな。音色のひとつひとつが含蓄する妖しさや深み、それを一層の円熟味を増した演奏で精神に揺さぶりをかけていく。加えて、ヴァイオリンやチェロにフルート、タンブーラまでもが共鳴し、独創的な景観を彩っている。ヘヴィなサウンドが地を揺らす初期ファンが喜びそうな#2も用意しているが、後半でストリングスの響きを加味してくる辺りに今のOmとしてのアップデートが成されているように感じる。なかでも10分を超える後半3曲(#3~#5)の流れは本作の肝。多種の楽器が奏でる音色によって立ち込めるオリエンタリズム、不穏で妖しげな空気が深く深く精神へと作用する。特に#4「Sinai」はジワジワと新しい思想を切り拓かせていくような”悟りの音楽”とでも表現したくなるほどだ。


God Is Good

God Is Good(2009)

   去年からライブのドラムサポートを務めるエミル・エイモス(Grails)を迎えて、新体制では初めてとなる2年ぶりの4thフルアルバム。プロデューサーは前作に引き続いてスティーヴ・アルビニが担当。前作でも意識の底から解放されるようなスピリチュアル・ドゥームに堕ちたものだが、本作でもさらなる深化を追求している。Grailsから授かっただろうオリエンタルな彩度が深みをもたらしており、曲から漂う神秘的な薫りも濃厚。その影響からか無に還っていくような感覚が一層強くなっている。宗教めいた色も彼等のサウンドからは感じるのだけど、亜細亜圏に近づいた印象があって、仏陀とかそういったような言葉が今作では浮かぶ。酩酊を促す極太で物憂げなベースリフ、屈強ながらも柔らかいニュアンスが滲み出ているドラム、意識を解放へと導く呪文を果てしなく唱え続けるヴォーカル、その3種の神器からなる深淵たる世界観はやはり凄い。並大抵のバンドが100年経っても到達しないような領域の音を鳴らし、底の見えない深みも異次元クラス。もはやドゥーム云々のくだりでは解決できない、祈りと覚醒の音楽である。心身が麻痺するようなベースリフと読経風ヴォーカルがひたすら悟りの境地を開き続ける19分にも及ぶ#1、意識に染み込む重低音とフルートの音色が新鮮な覚醒をもたらす#2、ハンドクラップも導入した独特の#3と古めかしい色合いがより強まる#4の組曲の全4曲、間違いなく必聴です。


Pilgrimage

Pilgrimage(2007)

   伝説のドゥーム・ストーナーバンドSLEEPのベーシストとドラマーが結成したギターレスのデュオ・Omの3rdアルバム。プロデュースはあのスティーヴ・アルビニが務めている。SLEEPのもう一つの片割れ・HIGH ON FIREの方がはるかに知名度が高いと思うが、こちらはこちらで儀式的ドゥーム・ロックを展開していて、おもしろみがある。ベースとドラムが奏でる奇怪なリズムとサウンド、背筋が凍える囁きヴォーカル、まるで妖しい暗黒の儀式が繰り広げられているかのような音楽。深く仄暗い洞窟の中を灯りなしで進んでいくような気分だ。不気味な音楽には違いなく、とても閉塞的な世界観。しかしながら、じわじわと酩酊を帯びるベースリフが味わい深く、この手のサウンドが好きな方にはたまらない内容だと思う。スピリチュアルや神秘的という表現もされていたが、確かにその手の宗教めいた感じも受けたし、1曲目なんか聴くとどことなくTOOLっぽいサウンドのようにも感じた。べースとドラムだけというシンプルな構成ながらも現実離れした独特な世界観で人々を魅了できる辺りにこのバンドの凄みを覚える。4曲で約30分とランニングタイムは短め。それに約8分30秒のライブ音源がボーナストラックとして収録。ドゥームといっても柔らかめの作品だと思ったので、少しこの手の音楽に触れてみたい人にも聞いてみてもらいたいですね。


Conference Of The Birds

Conference of the Birds(2006)

   1年という短いスパンで届けられた第2作。確実な深化が見られる全2曲約33分の作品である。だが、前作からは全くといっていいほど変わりは無く、常人には全く理解することのできない儀式ドゥームといっていいだろう。15分55秒の#1「At Giza」を聴いていると奇怪な呪文と不可解なリズムでどんどんと暗闇に押し潰されていくような感覚を覚えるし、17分30秒の「Flight of the Eagle」はシンプルなベースとドラムで進行していくのだが不思議と酩酊してしまい、恍惚へと導かれていく。その密度の濃い豊かなサウンドは強烈な圧迫感があり、スピリチュアルな音の響きは精神に深く作用し、確かな戦慄を覚える。やっぱり本作も聴いているといつのまにか、”ここではないどこか遥か彼方へ”と飛ばされてしまい、迫り来る影に怯えてしまう。”Omとは一体何者なのか?” 答えはこの作品に詰まっている。


Variations on A Theme

Variations on a Theme(2005)

   伝説のSleepの元メンバーであるアル・シスネロスとクリス・ハキアスがタッグを組んで活動することになったのがこのOm。ベースとドラムという必要最小限の2人編成であるのだが、そのサウンドはSleepのときよりもさらに奇怪なものとなっている。邪悪な魔力に満ちた深き闇を彷徨うドゥームサウンドは、Sleep通過後の涅槃の境地といえるもので新たな一時代を築くヘヴィネスだ。呪文を唱えるように囁く声が恐怖を駆り立て、地面を這うように蠢くサウンドが延々と脳を侵し続ける。とはいうものの、耳を劈くようなものではない。ギターが存在しないものの音は重厚で、少し丸みのある感じの音。しかしながら、全3曲45分(#1が約21分、#2,#3が約12分)は永遠に終わりを告げてくれないかのようなドゥームで決してわかりやすい音楽ではないだろう。全くテンションが変わらないところもたちが悪く、本当に淡々と儀式を行っているだけのような音楽に聴こえる。気づいたときには既に向こう側の世界に行ってしまっている自分がいることだろう。

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