SADS ‐‐Review‐‐

無期限活動停止となった黒夢、そのヴォーカルだったカリスマ清春の立ち上げたニューバンド。実質「清春 + サポートメンバー」という形だったこのバンドは、頻繁にメンバーチェンジを行いバンドとしての前進を図っていたが、結局のところ最後まで安定しない綱渡り的な5年の活動期間だった。それでもアルバムではオリコンチャート1位を記録し、2002年には黒夢のときを越える年間131本ものライブを敢行するなど、その中身は濃いものだったといえるだろう。その後2003年にドラムが抜けたのを契機に、一旦活動休止に入る。その後、2010年に7年の歳月を経て復活を果たした。

レビュー作品

> GREATEST HITS ~BEST OF 5 YEARS~ > 13 > untitled > ROSE GOD GAVE ME > BABYLON > Sad Blood Rock’n Roll


GREATEST HITS ~ BEST OF 5 YEARS ~ (初回限定盤)

GREATEST HITS ~BEST OF 5 YEARS~(2003)

   5年間の活動を総括するベストアルバム。全シングルを網羅し、かつカップリングで重要度の高い曲は収録。1stアルバムに収録されている代表曲「Happy」のNEW TAKEも入っていて、ファンならずとも耳にしておきたい一枚だ。この作品を聴くとSADSにおいても、黒夢と同様に次々と音楽性を変えていったのが表面的ながらも如実に理解することができるだろう。パンキッシュでロックンロールな#1「TOKYO」、#2「SANDY」に始まって、ドロドロの趣味丸出し#6「ストロベリー」にいき、ここから#9「ポルノ・スター」、#10「ロザリオと薔薇」では妖艶さとヘヴィネスの鎧で武装して、最後のシングル#13「Masquerade」では歌をフィーチャーしたアコースティックに行き着くという波乱な道のりを経ている。たった5年であるが年間131本ものライブを敢行した年もあり、黒夢と同様とまではいかないが、個人的にこのSADSも十分楽しませてもらった。むしろ黒夢は俺が音楽を聴き始めたときには晩期だったのですぐ解散してしまった印象が強い。だからSADSの方が俺には日常的だった。だからとても感謝している。


13 (初回盤)

13(2003)

     再びレコード会社を移籍してメジャー流通した5枚目のフルアルバム。ドラムの満園が体調不良で再び休養したために、前作「untitled」と同時期にレコーディングしたものを収録することになってしまい、本人たちは不本意だったそうな(新曲9曲+「untitled」からの楽曲の別バージョン4曲による計13曲)。サイケなグルーヴ感が纏わり付く#1「PSYCHO」から幕を開け、一転してアコースティックナンバーの#2「Sherry」につながり、ハードロッキンな#3「FREEZE」で再びアクセルを入れてしまうといった流れを持つ本作。正直言えば明確な色は無いだろう、寄せ集めの印象が強い。しかしながら、13の楽曲はそれぞれに粒ぞろいでクオリティ自体に全く問題は無い。作品としてどうかと考えるとクビを傾げるが、曲に関してはある程度の満足感は得られることだろう。ただ一つSADSの変化をいうならば、清春が前年敢行した131本のロングツアーの最中にギターを手にしたことから生まれた#2、#5、#13といった甘美なアコースティックチューンが収録されていることだろう。儚く切ないメロディにのせて、愛を唄う清春を拝めることができるとは驚き以外の何物でもない。まんまこれがソロ活動に影響を及ぼすとは思ってもみなかったけど。アルバムを通すと静と動のバランス感覚のよさもうかがわせるが、主張力がないことからも寄せ集めの印象を拭いきれないように思う。既にバンドとしてはうまく回っていなかったということか・・・。それにしても2年前に発売したシングル#6「ナイトメア」の新録は脳味噌ぶった切る衝撃力とスピード感がたまらなくいいな。


untitled

untitled(2002)

    2002年に行われた全131本に及ぶロングツアーにおける会場販売とファンクラブの通販でのみ手に入れるとこができた4thアルバム。前作では露骨なまでのヘヴィ路線で聴き手を圧殺しにかかってきたが、本作は持ち味ともいえる暴力的なまでに激しいロックンロールで勝負。骨太いリズムはそのままに尖れたギターリフの鋭さが凄まじいまでの昂揚感と熱をもたらしてくれている。小手先の細工はせずに、ロックの色を強く感じさせる曲ばかりで、ライブ仕様の熱い曲が数多く集まっているといえるだろう。丸っきりキャッチーな所はないので、ひたすらストイックに研ぎ澄まされた音の連撃の前にひれ伏すのみ。黒夢の頃の反骨精神が感じられる性急なビートで畳み掛けてくる#1「MAKING MOTHER FUCKER」は激クールだし、ライブでの盛り上がりが目に浮かぶ#8「GHOST」、#9「GIRL IN RED」といった曲も非常に熱い。反対に、静かな哀愁をバックに悲痛な叫びが胸に突き刺さってくる#4「NOTHING」、#10「AWAKE」といった味のあるミドルチューンの良さも身に沁みるし、息苦しいまでのヘヴィロック#6「サロメ」の異端さもまた存在感を残している。SADSの絶頂期はこの頃だろうか。実にSADSらしい一枚に仕上がっている。


THE ROSE GOD GAVE ME

ROSE GOD GAVE ME(2001)

   大胆なメンバーチェンジを行い(4人編成になった)、レコード会社も新たになったSADSの”リアル・ファーストアルバム”と称した3rdアルバム。これは凄い、清春のキャリアを通じても一つ抜き出た破壊力を持つ一枚だ。地を這いずり回る大蛇の如きヘヴィネスの衝動、グラムロックから来る妖しい芳香がものの見事に融合した傑作。Marilyn Mansonを意識したといっていたが、その通りのニューメタル・モダンヘヴィネス路線で、よくわからなかった前作よりもよっぽどコンセプチュアルで、詩もほぼ英詩にしてしまうなどかなり洋楽に傾倒した内容となっている。清春の狂気とフェロモンが絡みあう独特の声が狂おしいまでに響き渡り、咽びかえるような激しいビートと脳髄を捻じ曲げるうねりが襲い掛かってくる妖艶な官能的ヘヴィネスは絶品。特にメンバーチェンジによってさらに骨太くなったリズム隊の豪快っぷりが凄まじい。明らかにパワーが違っている。ある意味、このときが一番4人のベクトルが同方向を向いていたのかも。それほど音から確固たる意志と強さ、壮絶ともいえる迫力が感じられる。黒い夢とはもう決別した男が作ったバンドがついに本物になった、それがきっと本作なのだ。英詩における発音の拙さや#12のセリフ部分の蛇足っぷり等引っ掛かる部分もあるが、ヘヴィでダークネスな本作は黒夢の作品を合わせた中でも1番好みかもしれない。個人的にSADSで好みなのはこれと次の「untitled」の2枚だけ。ちなみに現在はLAバージョンとやらも発売されているらしいが、そっちは未聴。


BABYLON

BABYLON(2000)

   「だからベルベットの空のし~た~♪」と誰もが口ずさんだことが思い出される、池袋ウエストゲートパークの主題歌に起用された「忘却の空」がスマッシュヒットを記録。その勢いにちゃっかり乗ってオリコン1位を記録した1年ぶりの2ndアルバム。まんま黒夢のパンキッシュな前傾姿勢が顕著だった前作と比べると、本作は紫の蝶がサイケデリックな世界へと誘うといったところだろうか。音楽の引き出しをふんだんに使い、多彩な曲調で構成されたコンセプチュアルなアルバムに仕上がっている。退廃的なグルーヴと大人のフェロモンを振りまくミドルチューン#2「PRAYER」、#5「ストロベリー」辺りがディープな薫りを発し、爆発するロックチューン#7「Liberation」、#16「赤裸々」では激しく体を突き上げてくる。その二面性を追求しながら、艶かしくダークな泉へと沈ませていく。清春の趣味要素がかなり出たことが聴いててもわかるが、遊び心でここまで構築してくるとはさすがにセンスがいいな。ロックンロールの贅肉を落とすことなく、やりきっているところも彼らしい。ナルシスティックな歌声を一番うまく生かした作品であるようにも思えるし。17曲というフルボリュームには正直ダレも覚えるのだが、SADSの世界観・方向性が伺える作品かと思う。


SAD BLOOD ROCK′N′ROLL

Sad Blood Rock’n Roll(1999)

   黒夢の無期限活動休止宣言から約半年ほどでリリースされたSADSの1stフルアルバム。先行シングルとなった#10「TOKYO」の冒頭の歌詞『途切れた黒い夢に今日も惑わされる』のセンセーショナルなインパクトは今も記憶に新しいが、作品の内容としては晩期黒夢そのままといえるもので、パンキッシュでロックンロールな精神が受け継がれた攻撃的なものになっている。ソリッドな鋭利さをみせる#1「LIAR」で始まって多少の荒さを残しながらも畳み掛けるように疾走していく。その黒い夢を引き摺らないように・・・。全体通してもそのテンションを持続して、常に興奮状態でいけるのだが、途中ではちょっと横道にそれて#3、#5、#12のようなミドルチューンを挟んで単純な黒夢ノリとは違った表情を見せている。その中でも前述の通りに衝撃を受けた#10「TOKYO」、今も変わらず口ずさんでしまうタイトルに似合わずロックな「HAPPY」が特に好感触。挨拶代わりとはいえ、まんま黒夢の域にとどまっているのはどうかとも思うのだが、パンクロックの悦楽にまみれることが可能な一枚に仕上がっている。

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