Sigur Ros ‐‐Review‐‐

1994年に結成されたアイスランドのポストロック4人組。世界一美しいといわれるその音楽は、聴いていると言葉を失ってしまうほど素晴らしく、全世界で賞賛の声が後を立たない。これまでに6枚の作品を発表しており、いずれも人々の感動を誘う名作に仕上がっている。

レビュー作品

> Valtari > Med Sud I Eyrum Vid Spilum Endalaust > Takk… > () > Agatis Byrjun


Valtari

Valtari(2012)

   休止状態になっていたシガー・ロスの4年ぶりとなる通算6枚目の作品。前作ではこのバンドらしからぬ煌びやかさと華やかさ、そして躍動感がこれまでに無いポジティヴな世界へと誘った事に驚いた人は多いと思う。その志向はヨンシーのソロ作『GO』に引き継がれて見事な着地を見せる。虹色の光に包まれたポップな空間が聴き手に新しい歓びを与えていた。

 というわけで、本隊の方は原点回帰は言い過ぎかもしれないけども、本来のシガーロスらしい幻想的で神秘的な音像に揺り戻しというところでしょうか。アンビエント方面に再び寄せて、穏やかな静謐を基調としつつも轟音を挟みながら哀しみと歓びが押し寄せる。作品としては、「()」や「Takk…」辺りに近い印象なんだけども、前作の「残響(邦題でスマン)」やヨンシーのソロを経ているからか、ポジティヴな温かさも浸透。別世界にでも連れられたかのような至福が本作でも味わえる仕上がりになっていると思う。荘厳なストリングス、天から降り注ぐファルセット・ヴォイスがやがては力強く大地を蹴りあげるようなリズムに巻き上げられ、壮大な音の連続へと集束して全てを包みこんでいく#3「Varuo」は、本作でも傑出のできばえ。息を呑むような美しさに彩られたアンビエント調の作品の終盤の流れもさすがで、バンドとしての矜持を示しながら全体を上手くまとめてきている。その分、新しい要素がなく不満に思っちゃってる人もいるみたいだけど、個人的にはシガー・ロスとしての安心感で満たしてくれる一枚かと思う。


Med Sud I Eyrum Vid Spilum Endalaust

Med Sud I Eyrum Vid Spilum Endalaust(2008)

    「Takk…」より3年ぶりとなる5thアルバム。最初につっこまなくてはならないのが音ではなくこのジャケット(笑)。僕たちは自由を手に入れたんだとでもいいたそうなこの全裸ジャケット(でも靴は履いてる)の思いっきりの良さは頭がおかしいんじゃねえのと本気で思った。いくらSigur Rosといえども凄くレジに持って行きづらかったのはみなさんも感じたことでしょう(苦笑)。

 初めて故郷アイスランドを離れてレコーディングを行ったということが影響したのだろうか。オープニングからなんだろう、この爽快な開放感は。外界に向かって弾けていくような力強さと無邪気な感じ。音が無限の広がりをみせ、自由に大地を闊歩するような感覚。甘美なメロディやホーンセクションの装飾によって世界が煌びやかに色づいていく。どことなくこれまでのバンドの実像とかけ離れた印象を受けた前半は、例えるならほんの一瞬だけ見せた神様の気まぐれのようなメルヘンチックな世界。その無垢な歓喜と躍動が最高潮に達する9分の大作「Festival」は筆舌しがたい感動に包まれる。しかし、次の曲からは従来どおりのSigur Rosの姿が露になっていく。単純に綺麗という言葉で表せない深遠で美しい音世界、神聖で何人たりとも辿り着くことのできない境地。ゆったりと流れる音の漣は心を潤し、自然と感情を癒していく。涙を誘うメロディが心から離れそうに無い。結局、クライマックスまで行く着くと「ああ、やっぱSigur Rosだ」という感覚を覚えたのであった。

 本作は、前後半で陽と陰という対比構成になっているが最後まで変わったSigur Rosを演じきっても良かったような気が個人的にはした。でも非常に心に染みる作品であることには間違いない。


Takk

Takk…(2005)

   “Takk… = ありがとう” と名付けられた作品はこれまでの過程を踏まえて”希望” という言葉をより強く響かせるものとなっている。これまでは荘厳で静謐なドラマによる大きな感動が我々の心に一抹の光を与えてくれていたが、本作は以前よりも力強く開放的なサウンドを軸にし、それにプラスしてホーンやオルゴールの音色が加わってサウンドがより煌びやかな輝きを放つようになっている。本作は”ありがとう” の言葉通りに陽の要素が増大、天空からのエネルギーは地上へと降り注ぎ、優雅な一時を演出してくれている。幻想的で甘美なメロディラインは意識の深淵を刺激し、美しい余韻を残しながら静かに消えていく。#2~#4の流れを聴いていると本当に気分が昂揚してしまい、心が華やいだ空気と情愛に満ちた温かさによって豊かになっていくのがわかる。

 祝福のそよ風が優しく頬を撫で、歓喜の歌声が大地に木霊し、万物に賛美を! “ありがとう”という感謝の言葉と共に、聴くものに幸せを運んでくれる傑作である。


()

() (2002)

   3年ぶりとなる3rdアルバムはアルバムタイトルも曲の名前も存在しない神の作った異形作。いや、そういうのは大げさなんだけど、本作に関しては言葉という文明を重視していない。全身全霊を込めて丹念に紡ぎ奏でる奇跡の音を肌で感じることによって訪れる安らぎと至福、これが聴いていて一番ではないかと思う。時空を越えた異世界から現れ、疲れた現代人の心を癒す麗しい旋律・・・とても素晴らしい。2ndアルバムで聴かせた壮麗で雄大なサウンドスケープというのから大きな変化があるわけではないが、光と闇を対峙させながら極限の創造を働かせて生む幽寂としたサウンドは人々を陶酔へと無条件で導いてくれる。天と対話しているかのようなヨンシーの声、それに各楽器が呼応して渦巻く音の粒子は潜在意識に語りかけ、哀切・郷愁の想いを駆り立てて涙を誘ってくる。もはや神秘という言葉すら超越してしまった感すらある磨き上がったSigur Rosの音楽。これを心と身体で受け止めることができる奇跡、そんな出会いにひたすら感謝したい。個人的には前作の方が好みだが、同様にこちらも傑作である。


Agaetis Byrjun

Agatis Byrjun(1999)

   全世界デビューとなるSigur Rosの2ndアルバム。世界一美しいロックバンドと形容されたりもする彼等だが、本作を聴けばなぜそう評されるのか理解するだろう。彼等の奏でる幻想的で壮麗な音世界はあまりにも美しすぎて仕方が無いのだ。天使の囀りのように優しい声、たおやかに浮遊するメロディ、残響するノイズ、美麗なストリングスとピアノ・・・etc。それらが幾重にも美麗に重なり合って創造される神聖な音楽は、人々の精神を優しく癒し、至福を与える。あくまでも静謐であり、刹那すら緊張が保たれているのだが、言葉にならないような感動がここにはある。その音楽からは、まるで神秘のヴェールで包み込んでいくような、またはせわしい現実から乖離した夢の空間へと連れて行ってくれるような感覚を覚える。母国アイスランドで育まれた感性と透明感も独特の深みやムードを生んでおり、他のバンドとは一線を画している。丹念に音に込められた強き意志は、心から闇を取り除き、崇高なる光を与てえくれる。劇的で美しい本作は、人々を夢幻の世界へと解き放ってくれる名盤である。

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