SLOWDIVE ‐‐Review‐‐

 オリジナル・シューゲイザー四天王として、シューゲイザー・ムーヴメントを支え、後世に大きな影響を残した90年代初頭に活躍のUKの5人組バンド、SLOWDIVE。My Bloody Valentineと同じクリエイションに所属し、儚く憂いのある耽美なシューゲイザーで人気を獲得した。1stアルバムとなる「Just For A Day」が世界的に高い評価を獲得したが、その後はミニマル寄りな作風や打ち込みを多用したりと路線変更が激しくなり、95年でバンドは消滅の道を辿った。しかしながら、現代ではシューゲイザー復権の動きと共に再評価されており、彼等のトリビュート盤が発売されるなどしてシューゲイザー四天王としての影響力の大きさを物語っている。

レビュー作品

> Pygmalion > Souvlaki > Just For A Day


Pygmalion

Pygmalion(1995)

   前作に引き続いて巨匠ブライアン・イーノがプロデュースを務めた3rdアルバムにしてラスト・アルバム(既にシューゲイザー・ブームも廃れた中でのひっそりとしたリリース)。本作は前作の中でも数曲あったアンビエント志向をさらに推し進めた感じで、幻想的かつ神秘的な世界をアブストラクトな手法で奏でている。10分にも及ぶオープニング・トラック#1「Rutti」からこれまでと違った静けさと真っ白の空間に早くも連れてかれてしまう。これまでを踏まえつつも完全に新路線で舵を切っている。渦巻くような轟音は控えめで、シューゲイザーとは違う新しい美的感覚の芽生えによる丁寧な音の反復/構築が目立つ楽曲の数々。聴いていても教会で鳴る様な神聖な響きを湛えているのが特徴だろうか。深いリヴァーヴや冷たいレイチェルのヴォーカル、緊張感あるリズムがこれまでにない味わい。冷たく切ないメロディが鳴り響き、真っ白い音のヴェールに包まれていく。凍てつくような大地に取り残される#3「Miranda」では恐ろしさすら感じられるほど。アブストラクト/アンビエントな作風がそのまま儚くも脆い精巧な芸術品として、本作を成立させている。これでバンドを解散させる意義も感じ取れることだろう。それでも当時はまるで見向きもされなかったようだが、現在は前衛的な音響作品としてエレクトロニカ方面から高い評価を獲得している。


Souvlaki

Souvlaki(1993)

   前作より2年ぶりとなる2ndアルバム。シューゲイザー界隈では1stの評価が絶対的なものになってるけど、本作を最高傑作と評価する声も多い。深いリバーヴのかかったギターにゆったりと刻まれるリズム、あまりにも儚すぎる情感に満ちた男女ヴォーカルとサウンドを形成する核はそのままだが、楽曲の持つ鮮やかさと降り注ぐ多幸感が増している。柔らかなギター・ノイズの奔流、美しい揺らぎ、天上に繋がる浮遊感は流石という他ない。だが4ADの薫りを漂わせる耽美なシューゲイザ-は、ポップと絶妙に折り合いをつけることで、作品が温かな色味を帯びている印象を持つ。しかも本作では、おぼろげなノイズの揺らぎの中でヴォーカルにしてもメロディにしても輪郭を丁寧に描く事が多くなっている点も聴きやすさへと繋がっているように思う。

 永遠の名曲「Alison」の素晴らしさは言うまでもないが、#2「Machine Gun」で聴ける穏やかで甘美な曲調にもうっとり。そういったメロウな楽曲が輝きを放つ中で、前作からさらなる深化が伺える冷たさと透明感と轟音の波がハーモニーを奏でる#6も強烈な存在感を放っている。かのブライアン・イーノが数曲でプロデュースを務めていることでアンビエント感覚も有しており、シューゲイザーからの脱却と自らの音楽領域拡張を狙ったことは明白だが、それらを散漫することなく見事に集積して幻想空間を完璧に造形している点は凄いと言うほかない。淡く切なく儚く、そして神秘的で美しい一枚。Slowdiveの耽美な世界への入り口には本作の方が適しているかもしれない。

 本作もボーナスディスク付属のリマスター盤として再発されており、ナンシー・シナトラ & リー・へーゼルウッドのデュエット曲 「Some Velvet Morning」 のカバー等を収録。特にエイフェックス meets シューゲイザーとも評された「In Mind」は必聴でしょう(全体的にもテクノ/エレクトロニカっぽい曲が多い)。


Just for a Day

Just For A Day(1991)

   デビュー作にして、シューゲイザー界の重要作に認定されている名盤の1stアルバム。コクトー・ツインズのようなどこか陰を帯びた耽美なサウンドを追求し、マイブラやライドとは別のシューゲイザー桃源郷を目指しているのがはっきりとわかる作品である。深いリバーヴとエコーのかかったサウンドの上を男女ヴォーカルがたゆたうように泳ぎながら、ゆるやかなリズムに乗せて夢と幻想の世界を築き上げていく。揺らめく甘いメロディに幽玄なサウンドスケープは、よく例えられるがバンド名通りにゆっくりと沈んでいくイメージ。繊細に折り重なる音の粒子が優しく包も込むような感覚と不思議なまでに心地よい浮遊感を生んでいる。また、彼等の場合は轟音といっても、ノイジーな感じではなく柔らかな大海に溺れるような感じであるのも特徴的。そして、どこか寂寥感や憂いを帯びていて、とても儚い。どこまでも鳴り響く残響音には現実と幻の狭間で鬩ぎ合うドラマも垣間見える。後に発売されるBest Albumのタイトルにもなった#3「Catch The Bleeze」を始めとして名曲を多数収録。耽美系シューゲイザーによる至福の洗礼で恍惚と白昼夢に誘われた人々はあまりにも多い。

 本作はボーナスディスク付属の2枚組として再発されており、彼等らしいおぼろげなシューゲにSPACEMEN 3のようなドラッギーなサイケ感を持ち合わせた「Slowdive」、隠れた名曲として知られる「Morningrise」を始めとしたレア曲が多数揃っている(91年のJOHN PEEL SESSION時の音源も収録して本編並の12曲というボリューム)。

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