toe ‐‐Review‐‐

2000年に結成された4人組のインストゥルメンタル・バンド。日本屈指のポストロック/インスト・バンドとして国内外で活躍し、高い評価を受けている。

レビュー作品

> Hear You > For Long Tomorrow > new sentimentality e.p. > the book about my idle plot on a vague anxiety > Songs,Ideas We Forgot


 

HEAR YOU

Hear You(2015)

  約5年半ぶりとなる3rdアルバム。Chara、木村カエラ、5lack、U-zhaanなどのゲスト・ミュージシャンが参加している。toe伝統の味も楽しめる、それとは裏腹に実験性や冒険心のある新しい味も用意している作品となる。けれども個人的に本作の印象は薄い。全体通して聴くとさらーっと流れていくように感じさせ、聴き手を引っかけるフックがあまり無いように思える。ジャジー~ヒップホップ~スパニッシュ色での塗装強化。小難しいことをやっているのにシンプルへの落とし込み。意図的に聴き手をひっかける部分を排除しているようにも感じるところだが、歳相応の落ち着きのある作品を狙って作ったのかもしれない。

 かつてのような派手な展開は2ndと同様にほぼ削られ、とにかくミニマルで徹底して抑制されたというか。それでも、地続きになってい る#1「Premonition」~#2「A Desert Human」や#5「My Little Wish」辺りは、以前のtoeを髣髴とさせるエモーションとメロディが発露する。伝統の味。特に#5からは、初期の名曲「path」のような興奮・熱狂がもたらされそうだ。やっぱりtoeといえば、ギターやドラムが”歌う”ように感じる点が最重要なことを再認識する。

 目玉となっていそうなCharaや木村カエラが参加した曲は、はっきりとした歌ものではなく、声を楽器として使っている感触のほうが強い。あくまで作品の色合いの中で彼女達を使っていると捉えるべきか。とはいえ、エレガンスな音響に木村カエラの歌声が効果的に配される#9「オトトタイミングキミト」は涼やかで心地よい。

  余白を楽しませるような余裕と隙間のある音響構築で、静かな秋の夜長に染み染みと聴くべき作品といえるかもしれない。個人的にはスリリングな曲展開と歌うインスト感が薄くて本作にはあまりのめり込むことができないが、様々なジャンルへと踏み込むことで、届く範囲は確実に広がった作品だと思う。

 


 

For Long Tomorrow

For Long Tomorrow(2009)

   約4年ぶりとなる2ndフルアルバム。前作『Book~』がそれはそれは傑作で、ハードコアを通過したポストロックの教科書ともいえるほどの完成度だった。各楽器が歌うように明確なフレーズを奏で、聴き手の心を揺さぶってきたわけだが、本作はその延長線上には決してない作品だ。

 各楽器が火花を散らして交わる、そういったヒリヒリとするような熱情は控えめで、エレクトロニカやアンビエントといった比重が増加。バンドのマッシヴなグルーヴ感に酔いしれる#4のような曲もあるのだが、EP『New Sentimentality』からさらにバンドの既存の枠外で音を探求している。これまでの音像にただ電子音を加えましたという感じではなく、ジャンルを越境するような一歩踏み込んだ段階での融合といえるだろうか。それによって感情表現、音の風景は確実に深みや広がりを増している。

 テクニカルなバンド演奏による厚みのあるアンサンブルが基盤でありながら、電子音・ピアノ・ストリングス・サックスに歌までを操りながら、キメ細かく自由にデザインされた音響空間を紡ぐ。まるでトータスを思わせるような実験性。組曲である#7~#8「モスキートンはもう聞こえない」を用意し、サックスをフィーチャした#12「Our Next Movement」も今までと違った刺激を与えてくれている。

 特に本作での目玉は、#9「ラストナイト」と#10「グッドバイ」。前者は深遠で美しいインストとキーボードが華やいだ空間を紡ぎあげている佳曲で、後者は前EPにも収録された名曲を06’フジロックで土岐麻子がカヴァーして好評を博したのを再録したもの。他にも原田郁子(クラムボン)や干川弦といったゲストヴォーカルを招いたことも軽やかな聴き心地を実現。全体を通して鮮やかな風景を浮かび上がらせる構築性もおもしろい。本作における多彩な表現からは、toeの音風景に確実に新風が吹きこんでいることを意味している。


new sentimentality e.p.

new sentimentality e.p.(2006)

   約15ヶ月ぶりの音源となる4曲入りEP。クラムボンのミト氏をプロデューサーに招いたことで従来のバンドサウンドに様々なプラスアルファが成され、新境地を開拓する作品となっている。

 美しく艶やかなサウンドと熟成した深みを感じさせるtoeの世界観。その上にアコースティックギターが切なくも美しく響き、キラキラとしたエレクトロニカは煌びやかな彩りを与えて、エキゾチックで芳醇な香りを放つものへと深化。#1「繋がる遥か彼方」から繊細なタッチで美しい旋律を奏で、優雅に聴き手の心をくすぐる。特に初の唄ものとなった#4「グッドバイ」は感動の漣が寄せては繰り返し、胸をキュっと締め付ける名曲中の名曲で必聴。ミニマルな展開から壮大なラストが待つ#3「New Sentimentality」も素晴らしい。

 本作はEPながらにとても感動的で前作同様に多岐にわたる感情を刺激してくれる。こつこつと創り上げられたドラマティックな音のパノラマに酔いしれることのできる逸品といえるだろう。


the book about my idle plot on a vague anxiety

the book about my idle plot on a vague anxiety (2005)

   ポストロックを語る上では欠かせない名盤1stアルバム。クソ長いタイトルは、略すと“漠然とした不安の上にある私の下らない企みに関する本”という意味になるそうだ。確かに本作はトータルで全11曲約40分程なのに、何百ページもある濃密な本のような深みを感じる。

 鮮やかで煌びやかなメロディを奏でるツインギター、数奇を凝らし楽曲に様々な表情をつけていく手数の多い技巧派のドラム、それらの音を優しく繋ぐ柔らかなベース。インストながらも、各楽器が有機的に結びついて歌心のあるサウンドを奏でているのが大きな特徴だろう。ここには90年代エモを思わせる哀愁や風情あるメロディが盛り込まれ、スリリングに畳み掛けることで興奮を誘う。序盤を飾る#2「孤独の発明」で心を掴まれると、あとは雄弁なインストに溺れるだけ。

 静謐で雄大な世界観を感じさせる彼等のサウンドは、4人だけで演奏しているという感じがせず、自然という壮大なバックオーケストラと共に奏でる壮大な音のように思える。ドラマティックかつダイナミックなインストの決定盤。1冊の小説のように深く、1枚の絵画のような芸術性を持ち合わせている超衝撃的な作品。


songs,ideas we forgot

songs,ideas we forgot(2003)

    日本のポストロックの代表格、toeの2003年に発表した5曲入り1stEP。

 歌なしのインストゥルメンタルの5曲、だがその音楽には大きな期待を抱かずにはいられない希望を感じる。艶やかで煌きのあるギターの音色は美しく、白いキャンパスに世界を描いていくかの如し。手数の多いドラムはしっかりとリズムを取りながらも楽曲に輪郭を縁取っていくようだ。繊細ながらもダイナミックに躍動するサウンドは、これ以降の作品と比べると少しささくれた印象が目立つ。かなり自然体でラフさを感じる点も魅力のひとつといえるかもしれない。何より当初からtoeの目指している音楽の形が、しっかりと見える作品に仕上がっている。

 バンドの生命力とメッセージ性の強さを感じさせる#1「leave word」、繊細でリリックな響きを持つ哀愁の#2「i dance alone」。かなりアヴァンギャルドでラフな#3「1,2,3,4」はハンドクラップも取り入れたビートのよい曲。体が自然に反応してしまう。#4「Path」は言わずもがな、toeのライブでは欠かせない重要曲。1stアルバムに通ずるような#5「yoru ha akeru」。どれもが個人的にお気に入り。

 この作品を経て、より研ぎ澄まされた感覚を持つ1stアルバムを完成させる。だが、既にこのときから表現力は豊かで、創造性溢れるサウンドを創り上げていた。

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