Up There: The Clouds ‐‐Review‐‐

イタリア・リミニの5人組轟音ポストロック・バンド。まだ平均年齢が10代であるにも関わらず劇的な交錯を見せる轟音と叙情の美しきシンフォニーは、先人達に殴りこみをかける凄まじさを誇る。

レビュー作品

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ep2011

EP 2011(2011)

   2011年3月にリリースの2曲入り2nd EP。#1『Same Way, Different Light』とTokyo Jupiter Compilationにも収録された#2『Roots In The Air』の2曲を収録している。前作を評した時は、”激情化したCaspian”や“重厚なスケール感を伴って飛翔していくTWDY”といった表現を使わせてもらったが、本作でも土台の部分は揺らいでない。天上界へと続くような叙情的な音色の連鎖があまりにも美しい。音の粒ひとつひとつが清らかに研磨されており、詩的なメロディもまた前作の完成度が決してフロックではないことを証明している。けれども、本作では新たにGet Up Kidsばりのエモーショナルな歌が乗っているのが特徴の一つで、少し違った熱さを感じさせるようになった。

 美しき情感溢れるポストロックのインストを軸に据え、滑らかな歌メロを乗せる事でエモとポストロックの親和性を確かなものとしていく#1。豊かな起伏を描きながらもストレートに心を射るサウンドには、自然と昂揚感が湧きあがってくる。真っすぐに突き進む若々しいエネルギーが満ち溢れていて、前作までには無かった新境地として捉えられる楽曲だろう。特に素晴らしいのは#2で、既にコンピで発売されてからは100回以上リピートしているんだけど、何度聴いても本当に素晴らしい名曲だと感じている。美しいピアノの調べで心を鷲掴みにすると、大地の胎動をも思わせるリズムに叙事性が光る凛としたメロディが彩りを添え、咽び泣く高音ギターと共にエレガントな轟音が美しく花開いていく。どこまでも気高く美しいその轟音は、言葉では表しがたい至福の恍惚感を提供してくれるに至る。ラストにさらに一段と上の昂揚感を付け加えるべく繰り出されるエモい歌唱パートもまた絶品。緊迫感のある展開による引力や琴線を揺さぶるメロディの品位、ダイナミックな静と動の揺さぶりもさることながら、悠然と広がる音風景はもはやEITSやCaspianと比べても何ら遜色のないレベルだと個人的には思う。圧倒的なエモーショナルと美を湛えた世界が打ち立てられている。僕個人の2011年のベストソングの1曲のひとつは間違いなくこの「Roots In The Air」です。

 なお、本作はbandcampにて全曲試聴&フリーダウンロードが可能。僕がここまで推してしまうのも、聴けばわかるはず。イタリアからの余りにも眩い光。http://uptheretheclouds.bandcamp.com/


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Up There: The Clouds(2009)

   イタリア・リミニの轟音ポストロック・バンドによる4曲入りEP(実質#2はSEになるので3曲)。震撼必至。これこそが待ち望んでいた存在である。“激情化したCaspian”や“重厚なスケール感を伴って飛翔していくThis Will Destroy You”なんて例えができるかもしれない。心も空間をも震わせる怒涛の轟音、美しい円弧を描く叙情が劇的な交錯を見せる彼等の音楽を前にして、胸の底から歓喜を覚えるしかなかった。これまた驚くべき新人がイタリアから出てきたものだ。Caspianを初めて聴いた時の感情に近いものがある。それほどインパクトは凄い。至ってシンプルな方法論とバンド・アンサンブルの合致から繰り出される際立った静と動のコントラストを軸足に据えながらも、それがとてつもない引力を放っており、強靭な推進力と突き抜ける飛翔感が凄まじい上昇力と至上のカタルシスを誘発する。ポストロック/ポストメタルの海に属すといえるが、先人を蹴散らす破壊力に強く惹かれてしまう。

 いきなり抗えぬ轟音の嵐が飛び込んでくる#1からして凄いという言葉が口から零れおちる。怒涛の演奏によって膨れ上がる音圧、そして琴線を揺さぶる叙情が未だ見ぬ風景を紡ぐ。この曲からして彼等の静と動のダイナミックなスケールとクオリティの高さが伺えるはず。中盤に挟まれるストリングスのアレンジもまた秀逸である。その後、物静かな電子音が緊迫感を募らせる#2を抜けて、物語は#3へと続いていく。これがまたMogwaiやMONOを髣髴とさせるようなゆっくりと高みに登りつめ、祝祭の様な轟音を天空から降り注がせる至高の一撃となっている。センチメンタルな波紋、美しいメランコリアの発露などぬかりなく叙情を忍ばせているのも巧みだ。さらにスラッジ寄りの重たくずっしりとしたリフとリズムの上を激エモーショナルなヴォーカルが入る驚きの#4。中盤からは清らかなギター・フレーズが鮮やかな音のレイヤーを織り成し、来るべきクライマックスへの助力となる。そして、本作随一の轟音と絶叫が炸裂する圧倒的なダイナミズムを伴った終局へと突入し、音と体が一体化していくような感覚を味わうことに。だが、天へと舞い上がる感情を叩きのめすように爆音ノイズが視覚と意識を塗り替えながら作品は終焉を迎える。もはや口あんぐりとして恍惚とする他ない。

 たったの4曲(実質3曲)であるが悶絶級の内容である。この手のリスナーを虜にするのは間違いないし、それ以上に訴えかける力を持っているともいえるだろう。思わず呼吸をすることさえ忘れてしまいそうな美しく激しく壮大な物語は、何度となく力強く劇的な瞬間を我々にもたらし、素晴らしい奇跡を見せてくれるのだ。

 ちなみに、オフィシャルサイトの方でこちらの音源は全曲試聴可能(http://uptheretheclouds.wordpress.com/music/)。日本の激情ハードコア/ポストメタル系を取り扱っているTokyo Jupiter RecordsのコンピレーションⅡにも参加して、新曲を披露している。

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