ゆるめるモ! (You’ll Melt More!) ‐‐Review‐‐

「窮屈な世の中を私達がゆるめるもん!」してくれる脱力系アイドル・グループ、ゆるめるモ!。これまでの作品でNEU!やESGなどのオマージュ・ソングを発表し、はみ出し系のニューウェーブ・アイドルとして話題を集める。

レビュー作品

> YOU ARE THE WORLD > 女の子よ死体と踊れ > 文学と破壊EP > Hamidasumo! > SUImin CIty DEstroyer > 解体的交歓 ~真夜中のヘヴィ・ロック・パーティ~ > Unforgettable Final Odyssey > Electric Sukiyaki Girls > 箱めるモ! > New Escape Underground! > HELLO WORLD EP


WE ARE A ROCK FESTIVAL

WE ARE A ROCK FESTIVAL(2016)

 もね・ちーぼう脱退の4人体制始動後すぐにリリースされた7曲入りミニアルバム。「私たちがロックフェスティバル」という大風呂敷を広げていますが、内容としては邦楽ロック系フェス攻略メソッド(いわゆる4つ打ち系ギターロック)を使った曲が多いです。それに加えてでんぱ組.incっぽさも増してますし。ゆるめるモ!の歌・ダンスにおける核だったもねちゃん、そして末っ子のちーぼうの脱退に最大限の危機感を抱き、広い層の支持を得にいこうというのは理解できます。

 4人への減少による声のバリエーションの少なさ(4人でもいろいろな声を使おうとはしてる)は感じるところ。それでも、先行公開のギターロック#2「サマーボカン」を始めとしてノリの良さで客席を沸かせる楽曲が多い。#1~#5まではその流れ。ただ、そこにお祭り感やでんぱソングっぽさをドッキングしているのは見事。でも、「なつ おん ぶるー」を超えるサマーアンセムは無いかな。これまでのファンにはプラネタリウムがイメージできるようなエレクトロポップ#6「ゆるビスタ!」や#7「ナイトハイキング」の支持率が高そう。

 フジロックのホワイトステージの音が鳴っているのを意識した2ndアルバムの素晴らしさがある分、本作の多様性の無さが逆にもったいないなと。でも、いいフェス夢気分は味わえるものだと思いますし、脱退してすぐに作品を出す辺りにゆるめるモ!チームの覚悟は強く感じます。4人になってはしまったけど、僕は田家さんがまたスゲえ作品をプロデュースしてくれると信じている。


YOU ARE THE WORLD

YOU ARE THE WORLD(2015)

約1年4ヶ月ぶりとなる2ndフル・アルバム。その間には大きなトピックとしてメンバー2名の脱退、もね・ちーぼうの3ヶ月ほどの休養(2人ともに現在は復帰)。それに恵比寿リキッドルームと赤坂BLITZでのワンマン公演の成功、初の海外公演(ベトナム)、3枚のEPのリリースとめまぐるしい展開が彼女たちを待ってました。アイドルグループの刹那と激動。それはゆるめるモ!も例外ではなく、1年4ヶ月の中に5年分ぐらいのドラマがつめ込まれている気さえします。

SUICIDEをオマージュした『SUImin CIty DEstroyer』、POLYSICSのハヤシ氏が表題曲を提供した『Hamidasumo』、ミドリカワ書房の提供曲を含む『文学と破壊EP』という3枚の作品にしても、田家プロデューサーのギラギラしすぎの音楽的野心に満ちていました。本作はその3枚から9曲をピックアップし、新曲を8曲プラスしての全17曲約74分の内容。先のメンバーに加えてナカコー(LAMA、ex-SUPERCAR)や後藤まりこなどが作曲陣に参加。もちろん、小林愛さんやハシダさん(箱庭の室内楽)、松坂康司氏や大星徹氏といったレギュラー・メンバーも名を連ねています。また、ゆるめるモ!バックバンドの三島さん(cinema staff)や張替さん等が演奏で参加。

1stアルバムと比べると、本作はさらに表現の幅が広がっています。「辛かったら逃げてもいい」というメッセージ、そしてニューウェーヴを基軸にしたグループでありますが、どんどん”なんでもあり”の領域へ(前作もそうといえば、そうですけど)。17曲を通して本当にいろんな音楽が耳に飛び込んできます。エイフェックス・ツイン等を意識したリズムに連なるピアノの旋律、チャーミングかつ力強いサビの歌メロで持っていく#1「モモモモモモ!世世世世世世!」からまさにそうでしょう。エレクトロ方面からオルタナティヴな方向に振れていくという作品全体の流れはありますが、その展開の必然性はラストの#17「Only You」に集約される。

曲毎に注聴していくと(主に新曲について)、#3に続いてPOLYSICSのハヤシ氏提供の#6「不意打て!!」はポリイズムとゆるイズムの合算による昂揚感が生まれ、USオルタナ/インディー・ロックを参照したという#10「よいよい」のお祭りハッピーソング感はライヴでさらに化けそうです。

Minor ThreatとKAWAiiが衝突する可愛威斬鉄剣#11「KAWAIIハードコア銀河」は、三島さんのバッキバキなベースラインとしふぉんちゃんの冒頭の煽りが良ろし。後藤まりこさん&ハシダさんによる#12「id アイドル」はオルタナティヴの炸裂からエレクトロ調への移行の鮮やかさ、理想と現実に悶えるアイドルの葛藤を描く歌詞の切なさが印象に残ります。そして、本作のトピックのひとつであるナカコー提供曲の#15「もっとも美しいもの」は、彼のテイストが当然のようにそのまま持ち込まれて、アルバムの中でも特に異彩を放っています。

好奇心と野心を持って今の自分たちに様々な音楽を足し算、足し算、時に掛け算。その膨張し続ける音楽性は、田家さんがインタビューで「フジロックのホワイト・ステージに出ても遜色ないものをやってるんだよってことを世間に知らしめたい」と語るほどの自信を持ったもの。それは時空の時を超えた音楽の旅路でもあり、先人にリスペクトを捧げるものでもあります。

それでも先鋭化しようが、ゆるめるモ!のレシピに重要なゆるい・優しい・KAWAiiによって最高にポップでハートウォーミングなものであることは守られています。いや、ボイトレを始めたことやライヴの場数を踏んでたくましくなった彼女達の歌の表現力が、むしろもっとポップさに拍車をかけているようにも感じます。そもそもこの頭のおかしい狂ったプロデューサーの無理難題を乗りこなしてる時点で凄いわけですが(笑)。メンバーの成長が特に実を結んでいると感じるのは、いつかの自分に対しての感謝を届ける#14「私へ」であまりの切なさに涙腺が緩む。冒頭がColdplayの「Every Teardrop Is a Waterfall」を少し思わせたりもしますけどね。

本作のハイライトとなるのはやはりラストの流れ。アンビエントからポストロック風に美しく壮大に展開する#16『NNN』から、ボアダムスを骨格にマイブラやHolyfuckをぶち込んで「全て壊します」と叫ぶ#17「Only You」によるコズミックな大開放は、新しい宇宙を見せます。この曲が彼女達の現時点における最高到達点だと思います。「たびのしたく」を終えたからこそ紡ぐことができた全17曲約74分の特大ボリュームが生み出す、狂騒と祝祭のYOU’LL ワンダーランド。ここから新しい物語が始まってほしい。


映画スペシャルCD『女の子よ死体と踊れ』

女の子よ死体と踊れ(2015)

赤坂BLITZでのライヴにて矢部太郎(カラテカ)がプレゼンターとして登場し、【ゆるめるモ! 主演映画公開】が発表されたときは驚きました。なんで急に映画?と頭の中がビックリマークでうめつくされるぐらいに予期せぬ告知に唖然。と同時に本当に型にはまることのない集団であるんだなあと。とはいえ、演技はどうなんだ?とやっぱり考えてしまいましたが(苦笑)。

実際に映画の方(まだ見てません)は、ストーリーが狂ってる。「森の中であのちゃんの死体を見つけ、ノルウェーのブラックメタル・バンドが伝える儀式によって彼女を蘇らせる」というもの。サンドウィッチマンの富澤なら即座に「ちょっと何言ってるかわからない」とつっこみそう。僕もちょっと何言ってるかわかってません(苦笑)。っていうか森はあれか、海外のバンドに人気の青木ヶ原になるのか。

本作はその主演映画に使われた5曲を収録。リ・レコーディングverとしてESGオマージュの#1「あさだ」と#2「アーメン」、そしてTamptinが手がけたエレクトロ調の佳曲#4「OO(ラブ)」。#2「アーメン」はイントロで顕著ですが、もう1本ギターを追加してるっぽい。大きな変更としては8人体制→6人体制で、ゆみこーんとゆいざらすが抜けた部分を現メンバーで補足。ゆるいを体現するアクセントになっていたゆいざらすの特徴のある声やゆみこーんの真っ直ぐな声が無くなったのは残念だけど、それがアイドルの切な/刹那であります。ちなみに「OO(ラブ)」の重要ポイントであるセリはもねちゃんが担当。

新曲は2曲(いずれも2ndアルバム『YOU ARE THE WORLD』には未収録)。#3「その他のみなさん」は、作曲のハシダさんが若かりし頃に聴いていたray wonderやboo radleysなどを意識して作成したというハッピー系ソング。映画主題歌としてエンディングで流れる#5『人間は少し不真面目』は、ミドルテンポで紡ぐ壮大美麗シューゲイザー。Slowdive等を思わせたりもしますが、6人の歌声が青春とポップと儚さを感じさせることで彼女達らしい曲に仕上がってます。「夢なんて」もそうでしたが、音楽の枠組みを自由に飛び越えて先鋭かつポップな楽曲を提供する姿勢に頭が下がります。

しかし、あれです。映画は見に行けるかわかりません。「人間は少し不真面目」がエンディングで流れる時なんて最高なんだろうなとは思いますが。

設定が清掃員だからって、YMMクリーナーはww


文学と破壊EP

文学と破壊EP(2015)

約5ヶ月ぶりとなる新曲3曲+各曲のインストを収録した全6曲のEP。ジャケットはベルセバのオマージュの模様。「窮屈な思いをしている誰かのために、ゆるめるモ!がくだらない秩序と法則をぶち壊す」っていう帯の文面に、ゆるめるモんであります。江頭2:50師範代の精神が宿っているといいますか(笑)。

#1「夢なんて」は、作詞・作曲をミドリカワ書房氏が担当。作品紹介にあるフォークトロニカというよりかは、ネオアコのフィーリングの方が強い印象。しかしながら、誰しもが抱えそうな青春の苦悩を涼やかなメロディと歌で昇華していく感じが良いです。聴くほどにせつなさを掻き立てられる。ぶっ飛んだオマージュが続いた中で、こうした感傷的な気分に浸れる曲がくるとジーンときますね。

続いての#2「Refresh Your Jewellery Box」は、ゆいざらす卒業公演にて彼女に贈られた楽曲を1年の時を経て初音源化しています。箱庭の室内楽のメンバーやcinema staffの三嶋さんを含む、ゆるめるモ!バックバンドが編曲を担当。大所帯からなる様々な音色が、カラフルで前向きなポップスを形成しています。僕は行ってませんが、艶やかな黄色の風景がよみがえる人も多いのではないでしょうか。卒業したけど、ゆいざらすさんは、パートタイマーとしてモ!でたまーに踊り歌ったりしてくれると嬉しい(去年は、卒業後にたまにライヴ出てたしw)。

しかしながら、平和に終わるわけもないのがこの集団。”BOREDOMS+マイブラ” をイメージして制作されたという、#3「Only You」でぶっ飛びます。ツインドラムとパーカッションを惜しげも無く使ったリズムはHolyfuckの「Super Inuit」っぽい印象もあるし、ホーン隊も交えた豪華な音色と異様なサイケ感が落とし込まれていて、これまで発表してきた楽曲の中でも狂い度が半端ない。まさに狂気と破壊。そこにちゃんとアイドルポップのキラキラ感も搭載。なぴちゃんの「飛べ!」の連呼はすごくインパクトあります。生演奏+野外フェスのシチェーションで体感したら、さぞ最高な曲ですね。


「Hamidasumo!」【通常盤】

Hamidasumo!(2015)

4人時代の『HELLO WORLD EP』以来となる久しぶりのシングル。わたくしは収録内容が違うので、通常盤としふぉん盤を購入。ちゃっかり推しの盤を買ってます(笑)。

既に発売前から話題になっていたけれども、表題曲の#1「Hamidasumo!」はPOLYSICSハヤシ氏の作詞作曲。曲調をゆるめるモ!に合わせて るわけでもなく、ハイテンション高速ピコピコナンバーのこの曲はモロPOLYSICS、超POLYSICSであります。それでも極自然にハまっているのは、互いにニューウェーヴに軸足を置いているからだろうか。しふぉんのヴォコーダーやあのちゃんの即興ギターソロなど聴きどころが満載。しふぉん盤には彼女のソロverでの「Hamidasumo!」が収録されているが、最初の「Hey!」の寿司屋の大将感に笑っちゃったけど、彼女の低音の力強さが表 れていて良いと思います。所々でちょっとシャウトっぽく歌い上げるところもらしいんですよね。

カップリングに収録された曲もアッパーなニューウェイヴ~エレクトロ調の曲が揃う。今回のシングルはその点で統一しているのかも。「OO(ラブ)」等を作曲しているTamptin氏による#2 「難」は弾けた電波&KAWAii系ソング、通常盤のみ収録の田家P+ハシダさんよる#3「聞こえる」も爽快なスピード感&エレクトロでぶっ飛ばす。これらは、ライヴでさらに騒々しくなりそう(笑)。初回盤のみに収録の「1!2!カンフー!」が意表を突く感じの曲で、中華風フレーズを基軸に心地よいテンポで進む。途中にゆる~いラップを乗せていて、彼女達のまた新しい一面を引き出している楽曲かと思う。チャイナ服で中華街を探検するMVもKAWAii。

今回のシングルは正直なところ、ハイテンション過ぎて全然ゆるめられませんが(笑)、ある意味で入りやすいリリース作品だと思います。ハヤシさん、グッドジョブ!


SUImin CIty DEstroyer

SUImin CIty DEstroyer(2014)

「オマージュはズッ友だよ」を合言葉にアイドルの脇道まっしぐらのNW系アイドルの2014年大晦日にリリースされたミニアルバム。タイトルやジャケット で提示されているが、今回はアメリカのノーウェイヴ系バンドのSUICIDEを攻略。ちなみに著者はESGに続いて、SUICIDEはほとんど聴いたことがないです・・・(汗)。

収録内容は、nhhnbaseのマモル氏が初めて楽曲提供した#1「眠たいCITY vs 読書日記」、#3「メルヘン」を含む全4曲(歌詞は小林愛さんがいつも通りに全曲担当)。本作はこれまでにも増して、飲食店の裏メニューだけ集めましたみたいな印象で、ひねくれた楽曲ばかり。ラーメンもハンバーグもカレーも置いて無いが、クセのあるサイドメニューで行列できるみたいな感じか(笑)。楽曲の方に話を移すと、#1や#3は変拍子多用もあって掴みづらくノリにくいのだが、ダークなエレクトロ系パンクに終始しているわけでもなく、KAWAii要素を活かしながら、ドーパミン分泌に役立つ電波系ソングへと変えている。#1はザ・ドアーズっぽいキーボードの音が印象的。ただ、両曲ともにメンバーにしてもファンにしてもライヴで大変そう。実際、ライヴで見ても苦労してたし(汗)。でも、こういうとこを攻めたがるのが田家Pらしい。どんどんやっちゃって下さい。

そして、これまでに「べぜ~る」を提供した大星徹氏による#2「波がない日」。モー娘。を意識したようなブロステップっぽい入りの部分から、華やかでチャーミングなちょいEDM風アイドルポップが咲き乱れ。サビが元気をもらえる感じで良いし、学校のチャイムをコラージュしている辺りも良いですね。本作で一番盛り上がるりそうな曲。歌詞にメンバーの名前が隠されているのも味噌だし、サビの部分の波を表現したように2列の前後の並びが順々に入れ替わってくダンスも目を引く。

驚くのはハシダカズマ氏(箱庭の室内楽)による#4「NNN」で、シガー・ロスっぽい感じのする新雪アンビエントから、同氏提供の「たびのしたく」でみせたような昂揚感と祝祭感に溢れたラストが用意されている(あの曲ほど派手ではないが)。 まさかこういう切り口でくるとはね。聴後は、ゆるめるモ!という妖精たちに「モ!う源郷」に連れていかれたような幸せな気分に包まれます。

冒頭で記述したようにいずれもクセの強い楽曲が並んでいるが、大気圏外へ行くモ!マンシン グ・サガは2015年も多くの人のハートをゆるめていきそう。ちなみに赤担当のしふぉんさんがtwitterでリプ祭をした時に、本作の聴きどころを伺ってみたところ、下記のリプがあったので掲載したい。 赤推しはこちらを重点的に聴くように(笑)。


解体的交歓~真夜中のヘヴィ・ロック・パーティ~

解体的交歓 ~真夜中のヘヴィ・ロック・パーティ~(2014)

「非常階段 featuring ゆるめるモ!」として発表するコラボレーション・ライヴ作品。9月26日の渋谷マウントレーニアホール公演を収録した内容であり、ジャケットは阿部薫と高柳昌行の『解体的交感』のオマージュとなる。なお、非常階段はフルメンバーだが、ゆるめるモ!はけちょんとゆみこーん(当時に在籍、現在は脱退)が欠席したために、9人編成となっている。

基本的にはゆるめるモ!の楽曲をコラボレートする形で、オケ+非常階段の演奏。モ!のオリジナル5曲にオープニング&ラストの即興演奏を加えた全7曲を収録している。視覚的な面は想像になるが聴いていると、非常階段の演奏をバックに、モ!が伸び伸びと歌い、パフォーマンスしている印象があるかな。ノイズはかなり偏屈に轟いてはいるんだけど、彼女達の歌声も決して負けてない。この辺りはBiS階段を経てのバランス感ある録音になってそうな気がする。

ライヴでは、もねちゃんやようなぴ先生の歌唱が安定しているように思う。もねはやっぱりエースだと実感。あとは、ゆるヲタによるコールもちゃんと聞こえてきており、「スキヤキ」の最初のMIXや途中のオレモ!コールが微笑ましい瞬間を作っている。ちなみにこの曲の後のMCもカットせずに入ってます。メンバーがゆる~い自己紹介とノイズの協和、不思議な気持ちになる(笑)。

非常階段のノイズに呼応するように#5「たびのしたく」では、くるったです☆ゔぉいすが炸裂しているし(ささき”低音ヴォイス”しふぉんさんとちーぼうさんが凄い)、NEU!のオマージュである10分超えの#6「SWEET ESCAPE」は混沌とした宇宙が広がる。ラストの轟音即興セッションとなる#7「解体的交歓」は、モ!のメンバーも楽器演奏しており、このコラボレーションの一番美味しいところを詰め込んだ内容。大気圏外の世界がそこにはあります。

本作は追体験という意味合いもあるし、作品としても良好でありますが、◯◯階段系列ってやっぱりライヴを生で体験してこそな気がするなあというお話でした。


Unforgettable Final Odyssey

Unforgettable Final Odyssey(2014)

「窮屈な世の中を私達がゆるめるもん!」する脱力系8人組アイドル・グループの1stアルバム。作品名は、略して『UFO』。お顔もお歌もおダンスもコンセプト通りに、”ゆる~く”なっておるわけですが、紙ジャケ再発を熱心に買うオジサマ達狙いうちのNEU!やESGへのオマージュ・ソングをこのアイドル百花繚乱時代に発表し、話題になっている。そして、脱力レジスタンスとなるこの1stアルバム『UFO』をタイミングよくリリースし、高速道路を30kmで走る感じでおんがくギョーカイにちょっかいかけにきたわけです。ちなみに裏ジャケはDEVO『Freedom of Choice(欲望心理学)』のパロディ。

ニューウェイヴ~エレポップを中心に多彩なサウンドを煮込んで、クロスオーヴァーとへんてこりんと脱力のポップスへと昇華してきたけれど、本作に関しては、わりと正統派のアイドルポップとしての感触が個人的には強いかな。テクノ~エレクトロちっくなトラックに乗せてのアイドル歌唱、その中にいい意味でのおふざけ感とエンタメ性が放り込まれている。グループ自己紹介的な#2「ゆるめるモん」はその筆頭といえる曲だろう。「眉間のしわ ゆるめりゃ なんとかなるんだもん」って、そんな新しい魔法があることを僕はこの歌で知りました(笑)。

ももクロのオマージュ・ソングである#4「逃げろ!!」からそのアンサー・ソングとなる#5「生きろ!!」の流れはキラキラ・アイドルポップスとして、ゴージャスなサウンドと四つ打ちが自然とノせてくれる。この辺りの楽曲を聴いていると、AKB勢を中心とした王道アイドルのファンにも振り向いてもらおうという意気込みが伝わってくるはず。(歌を除くと)Pains Of Being Pure At Heartみたいな#10「DO FUFU」も良いですね。とりあえず楽曲でおもしろいことしよう、遊ぼうっていうのが伝わってくる。「しゅーみは無趣味ぃー、うーそうそうそ、海ぃー」って歌うおふざけ具合だから(笑)。まあ、これが僕はツボに入りましたけどね。

その中でも特にラストの流れがいい。80’sエレポップで萌えっ×キラッな#12「OO(ラブ)」から、ラストトラックとなる#13「たびのしたく」で未確認飛行物体にさらわれてROVOばりの宇宙×昂揚感のクライマックスへ。脱力アイドルと行くアナザヘヴンでございます。オマージュも含めた過剰なアイデアがぶん投げられ、興味深い仕上がりになっていて非常におもしろい。

ただ、正直な事を言えばこのアルバムに関して言えば、これまでのEPほどトんがってない印象はある。なぜかといえば、少女たちの脱力シューゲイズ・ドリーム「虎よ」、それにNEU!の「Hallogallo」を完全に持ってきた10分超のアイドル×クラウトロック「SWEET ESCAPE」といった曲が収録されてないことが要因かな。おそらく前述の2曲はアルバムの色を決定づけてしまうぐらいの出来だから、収録を見送ったんだとなんとなく納得しておこう(注:Realsoundでのインタビューにおいて、あえて外してアイドルとしての親しみやすさやポップ性を重視したとのこと)。ただ、”みんなのハートをゆるめる”キャッチーで魅力のあるアイドル・ポップス、それと「スキヤキ」や「たびのしたく」などのいわゆる楽曲派もうなる曲がバランス良く混在していて、広範囲にアプローチできる作品になっている。

もちろん、アイドルというフィルターを通しているっていうのはあるけれど、玉手箱のようにおもしろいアルバムだと思う。この「脱力レジスタンス」でどこまで駆けあがっていけるのか。今後、注目していこうかなと思います。既に僕はゆるめるモン!という魔法の前に落城してしまいましたので。


Electric Sukiyaki Girls

Electric Sukiyaki Girls(2014)

 NEU!に続き、今度はESGをゲフゲフした5曲入りとなる3枚目のミニアルバム。ジャケもタイトルもそんな感じでございます。ただ、拙者がESGを全く聴いたことが無いため、楽曲のオマージュ度はわからないけれども・・・。

作品紹介によると、ESGまじリスペクトっす!になるのはやたらとグルーヴィな#1「あさだ」や#4「アーメン」辺りらしいが、#5「スキヤキ」ではあのFactory Floorもわかりやすく料理しちゃっております。これぞ、ゆるパワーONの脱力レジスタンス。ただ、彼女達の歌に関してはこれまでで一番アイドルらしい歌唱となっていて、歩調を合わせるようにポップス度も高まっているように感じられる。「逃げろ!!」のアンサーソングとなる#2「生きろ!!」のキラキラ感でどこまでも突き抜けていく感じは爽快。NW~エレポップ・テイストに鮮やかなアイドル歌謡性が加算された#3「私の話、これでおしまい」、トライバルなリズムによる躍動感で加速し、ホーンのアレンジ等が加わるサビで一気に祝祭感が増す#4「アーメン」も良いですね。捻るところは捻り、元ネタを知っている人はニヤケさせる。

そして、#5「スキヤキ」である。Factory Floorの某曲へのオマージュしながら、華やいだJ-POPへと転換させていくアクロバティックな大技を完遂。本作ではこの曲のインパクトが一番だろう。有吉先生風に言えば、彼女達は「脱力の推し売り」であるわけなんだけど、ゆる~くアイドル業界に寄生しながら、色んな壁をするりとくぐり抜けて行って欲しいですね。

 


箱めるモ!

箱めるモ!(2014)

 メンバー増員で8人体制となった、カラフルつなぎ着用のゆるゆる系脱力アイドル達のミニ・アルバム。いずこねこのバックバンドを務めた経験も持つ”箱庭の室内楽”というバンドとの企画コラボ盤でもある。表ジャケがWeezerのブルー・アルバムで、裏ジャケがGang of Four「Entertainment!」のパロディ。

前作ではクラウトロックをアイドルがやってのけるということで、「この娘達、やべーっ!」と一部の狂人たちを胸キュンさせたわけだが、エレポップ(ギターロック風味)な#1「manual of 東京 girl 現代史」を皮切りに、本作でもヒップホップ、シューゲイザー、オルタナ、エレクトロニカ辺りをゆる~くリンクさせた6つの楽曲を用意。

 本作では、箱庭の室内楽のハシダ氏が全て作曲を手掛けているが、様々なジャンルに踏みいれながら一癖も二癖も持たせ、彼女達らしい脱力の音楽に変えていっている。特に、ラップを舐めてます的な萌えラップを炸裂させる#2「木曜アティテュード」の賛否両論を巻き起こす破壊力。これだけ力抜いてヒップでホップなことをやるんだから、KAWAiiに代わるYURUiがトレンドにきますよ、きっと(笑)。

アイドル×オルタナロックで昂揚感溢れるラストを駆けあがる#6「さよならばかちゃん」もとても魅力的なのだが、本作では#3「虎よ」が個人的には群を抜いている印象。「部屋からは出~たくない、出~たくない」と歌い続けるゆるふわ現実逃避シューゲイザー、これにはハートもゆるんじゃうわけですよ。メンバーの超初心者のギター演奏にもハートがゆるみます(笑)。前作の「SWEET ESCAPE」と並んでの彼女達の代表曲でしょう。脱力支援、万歳。


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New Escape Underground!(2013)

  「みんなのハートをゆるめにきました!私たち、ゆるめる、モ~!」を合言葉に、道なき道を行く脱力系アイドル・グループの初の全国流通盤。

 EDM系の煌びやかな四つ打ちダンストラックに、「ゆるゆるゆるゆるゆるゆるゆるめるモォー♪」とおふざけ全開のコールが乗る#1「ゆるトロ (slo-モ!)」から、限りない脱力である。ニューウェイヴ系アイドルとは聴くものの、最初に聴いた時はやる気あんのか?(笑)と問いかけたくなるぐらいの、おちょくり&おふざけ感。だが、この自然体のゆるゆる~さが彼女達の個性なんだろうし、逆に大きなインパクトがあった。

 その1曲目で脳内を完全に”ゆ・る・め・る・モォ~ン”させたかと思えば、ももクロの「走れ!」をオマージュした#2「逃げろ!!」という無敵のアイドルポップスでリスナーもときめかせてみせる。四つ打ちで身体を揺らし、シンセやホーンが華やぎをもたらしていく#3「花のドイリー」もアイドルっぽい感じが出てて良いですね。

そして、なんといっても本作は#4「Sweet Escape」だろう。ジャケもタイトルも完全にNEU!をゲフゲフしているわけだが、アイドルの楽曲としては異例の10分越えのこの曲は、NEU!「Hallogallo」をまじリスペクトっす!な仕上がり。無機質なハンマービートの反復とふわふわ歌唱が、謎の相乗効果を発揮して、天国をふらつきます。クラウトロックとアイドルの親和性なんてほぼ無いと感じていたけど、オマージュ8割とはいえ、こうしてしっかりと昇華したものを聴かされるとさすがに「参りました」ってなっちゃう。

 制作陣がアイドルというフィルターを通して、おもしろおかしく楽しんでる感はあるにせよ、これ聴いて現実逃避、サブカルアイドルへエスケープなのである。NEU!好きのおじいちゃんたちが喰いつくかって? そいつは”ゆるめるモン”とかいう魔法が効いたおじいちゃんだけ。


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HELLO WORLD EP(2013)

 初のリリース作品となる1stシングル。写真通りに当時は4人編成でゆみこーん、けちょん、ももぴに卒業した初代赤担当のんちゃんという編成。収録されているのは、1stアルバム『Unforgettable Final Odyssey』に再録されている代表曲#1「ゆるめるモん」と#2「なつ おん ぶるー」の2曲(+インスト・バージョン)。

作詞はこの頃から小林愛さんが担当。作曲は#1がプロデューサーの田家さんで#2がTamptin氏。まず#1「ゆるめるモん」はパンク調の軽快なギターと打ち込みに、可愛らしいラップが入る曲。3分ほどの短い楽曲で、終盤ではパーティーのようなテンションの高さを味わえる。「眉間のしわ ゆるめりゃ なんとかなるんだもん」という新しい魔法を教えてくれたことでも有名でしょう(笑)。また当時のメンバーであるのんちゃんがおちゃらけた感じでキュートに歌うのは、凄く良いスパイスとなっている。

 続く#2「なつ おん ぶるー」はライヴの終盤に披露されることの多い四つ打ちのエレクトロ・ポップ。サビでの太陽が眩しく感じられるぐらいの熱さと昂揚感は、モ!の楽曲の中でも群を抜く。歌詞にも出てくる通り「歓喜の奇声 太陽に届くまで」といった感じでいつもライヴでは大きく盛り上がる。これを聴くとホントに夏に舞い戻る気分です、はい(笑)

これら2曲を皮切りに脱力アイドルと行く大気圏外への旅路がスタートするのである。

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