【ライブ感想】2023/11/11 DIR EN GREY『TOUR23 PHALARIS FINAL -The scent of a peaceful death-』@ ZEPP NAGOYA

 近年のDIR EN GREYのライヴは【生きろ】という命題をつきつけてくる。どうしてここまでできるのかと思うぐらいの痛ましい表現、血も世の残酷さも映し出した生々しい映像。結成26年。しかもそれだけ年齢を重ねているのに丸くならず、命を削って訴えるパフォーマンスには震えを覚えます。

 紗幕を使って大きなスクリーンと化した状態で披露された「御伽」からスタートした今宵。修道士少女のアニメーション(生成AIって言った方がいいのか)が刻々と変化する中で、PHALARISという絵本の中のおとぎ話が始まっていく。また曲後半ではメンバーの演奏するシルエットが幕に映り出されるような演出も施されました。カッコいい。

 続くは『ARCHE』からの「咀嚼」でしたが、前作から連続するようなアニメーション映像に一新されていました。本曲もそうでしたが、多くの曲で詩が映し出されていたのも印象的でした。

 そんな中で とりわけ本日は「Schadenfreude」でできあがっちまった京さんの「朧」~「The World of Mercy」のパフォーマンスがすごすぎて、スゴすぎて。ライブは進んでいくけど、わたしの中では何回もこのシーンを思い出すぐらいに強烈でした。

 「朧」では歌メロを度外視し、映像の産まれる瞬間とリンクするように泣き叫びながら自傷する。完全にキまった状態の「The World of Mercy」は、凄惨な映像と共にエグさが半端ない。スクリーンに浮かび上がる”血を流せ お前は生きてる”の言葉が否応なしに刻まれる、血と痛みのエレクトリカルパレードと化してました。

 「13」にしても「落ちた事のある空」にしても”生きる”ことを逸らせはしない。後者の映像は、今の不安定な世界情勢とあいまって、余計に考えさせられる。

 アンコールでは 瞬発力と即効性のある「Downfall」や「Chain repulsion」、「T.D.F.F.」といった楽曲を披露。ただそういった暴れ曲を入れていても、本ツアーでは約10分ある3つの曲が生み出す”流れ”と”世界”の方が肝でしたね。

 終曲を飾るのは「カムイ」。『Phalaris』では「御伽」から繋がる楽曲ですが、今回ははじまりとおわりに置かれる。ただ「御伽」の映像はそのままリンクしていて、ライブという物語はこの最終地点に繋がっていたことを示唆します。

 しかしながら「カムイ」では生きろとは言わない。逆に”あと何年ですか まだ生きるんですか”と諦観をもって歌い上げ、ギタリスト2人はアコギとエレキを行き来しながら、憂いのメロディを鳴らし続ける。映像には現実へと引き戻すように風景も混じるようになり、荘厳なエンディングとともにツアータイトルが浮かび上がり、完結。物語への没入と余韻。『PHALARIS』をまるごと飲み込むとここまで濃いものなのかと実感するようなライブでした。

—setlist—
01. 御伽
02. 咀嚼
03. 響
04. The Perfume of Sins
05. Schadenfreude
06. 朧
07. The World of Mercy
08. 輪郭
09. 13
10. 盲愛に処す
11. Downfall
12. 落ちた事のある空
13. Eddie

—Encore—
14. Red Soil
15. Chain repulsion
16. T.D.F.F.
17. カムイ

 先月、DIRにも影響を与えたミュージシャンたちが立て続けに亡くなりました。本当に悲しい。

 新感染症でもライブは当たり前じゃないことは思い知らされましたが、バンドを続けていくことは決して永遠ではありません。そのことを改めて胸に刻んで、これからもライブという場を大事にしていきたいものです。

お読みいただきありがとうございました!
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