Daymare Recordings主催。轟美重音を謳うシリーズ”leave them all behind”が3年半ぶりに戻ってきました。ISISとSUNN O)))等が出演した第1回から足しげく通ってましたが、2018年と2020年は行けずじまい。その後に新感染症で海外との断絶があったので久々の開催です。
本編の東京2DAYSはEyehategodとLiturgyが各日のヘッドライナーを務めます。今回はそのエクストラとなる地方公演で、超越的ブラックメタルを掲げる異端児 Liturgyを体感しに関西までやってきました。当初は2020年夏に来日が予定されていましたが、延期して2023年についに実現。
共演に関西のブルータル・オーケストラ集団 Vampillia。まさにの音楽性が交錯する2バンドだけに本編よりも大阪の方が見たい組み合わせだったのもあって、こちらを選びました。あと名古屋からの交通費とか近さとかもありまして。ちなみに開演前はSightless Pit『Lockstep Bloodwar』がBGMとして流れていました。
しかし、会場のCOMPASSは来たの9年ぶり。前回がBen Frost来日でこの時もVampilliaが共演しています。時を経ても彼等はこうして活動を続けてくれていますし、どんどん良い曲を生み出してくれているのがうれしい限り。
ライブ感想
Vampillia
微量なスモークがたかれる中、定刻通り19:30にスタート。2年前の名古屋ワンマン以来のVampilliaです。
今回は目玉として久しぶりに吉田達也氏と竜巻太郎氏のツインドラム編成。わたしは12年のNadjaと16年のKayo Dotと2回体感済み。巨大な存在には礼儀としてツインドラムで応戦するしきたりがあるようで。また、ひっそりと隠れるようにステージにいたマニュピュレーター?の人も含めると9名いう編成でした。
喧騒と静寂、暴と美。その往復運動の中に人々を巻き込むドラマチックな物語とメロディが詰め込まれる。ツインドラムによる締まりと推進力をリードに、ヴァイオリンと鍵盤が麗しい情緒をもたらしたかと思うと、急に堰を切ったかのような音の洪水とグロウルが会場を飲み込む。それでもなお、盟友Alcestに通ずる光属性とメルヘンな寓話性は担保されているのが特徴です。
セットは2曲目に演奏した「ice fist」をのぞいて新曲。といってもライブではおなじみの曲が並んでおり、頭と体では記憶しています。5年前から公開している曲、2年前の新木場公演の曲。最後のモンゴロイド氏が普通に歌う曲などなど。いずれもが仕上がっていて完成度が高く、世界を変えてくれるアルバムを出してくれるんじゃないかという期待を持ってしまうほどです。
ただ、曲名はわかりません。目視できたセトリの紙にはコイデ、ヒョードル・・・などの言葉が羅列してあり、仮タイトルだからわけがわからない(笑)。
ホーム・心斎橋COMPASSという地の利もあり、賑やかな喧騒の中にも温かさがあります。50分という演奏時間はあっという間でVampilliaの良さが凝縮されていました。
2カ月ほど前にX(旧Twitter)で『今年もアルバムは出ません。来年にリリース予定のアルバムを2枚つくっています』とポストしていましたが、いつもギリギリでいたいバンドなのか、締め切りが設けられないのか。でもVampilliaに関しては、”バンドを続けてくれてありがとう”と思ってしまう自分がいます。
Liturgy
セッティングしている時のラヴェンナさん、寝起きじゃないかと疑うぐらいに髪ぼさぼさの眼鏡姿。ですが上着と眼鏡を外し、ライブが始まるとそんなゆるみはあっさりと消え去りました。
声をループさせつつ悲鳴やうめき声のアドリブもいれた「Daily Bread」で幕開け。刹那「HAJJ」の急襲。まず、驚くのはLeo Didkovsky氏のドラム。まるっきり破壊力が違う。別競技してるんじゃないかと思えるぐらいに砲丸のような重さと高速の手捌きで、”バーストビート”の屋台骨を支えます。
音源ではあまり目立ってないTia Vincent-Clarkさんのベースラインも高音のトレモロを補完するように低域でエグい音を出す。リズム隊の主張が予想以上に激しいことはライブで体感して初めてわかったことです。Tiaさんはあまり動かず公務員のように淡々とこなす。このギャップもすごい。
そして主演であるラヴェンナさんの高音スクリームと終わりなきトレモロ・マラソン。古来のブラックメタルの残忍な鋭さを帯びる場面もあれば、神聖さをまとう瞬間もある。複雑な進行を完璧に乗りこなしながら、破壊と浄化を繰りかえす独特のムードは、LIturgyならではという感じがしました。
先日の東京公演との違いは、『93696』主体ではなく『H.A.Q.Q.』『Aesthethica』『93696』からバランスよく配されたセットリストになっていたこと。また同期は使わずにエフェクターも最小限。
体感してみるとアート性よりもフィジカルな演奏を重視したもので、思った以上にハードコア/メタルの運動性の方が勝るものでした。それにしてもぼぼ全力疾走の状態を約70分近く続ける研ぎ澄まされた演奏と集中力はすさまじい。
神々しさと超越。この形態/編成では終わりかもと示唆されていますが、Liturgyのライブを見たことがあることは財産になる。そう思わせてくれる公演でした。
—setlist—
01. Daily Bread
02. HAJJ
03. VIRGINITY
04. PASAQALIA
05. Sun of Light
06. Generation
07. (Daily Bread)~Djennaration
08. Antigone II