【アルバム紹介】BIG|BRAVE『nature morte』

 カナダ・モントリオールを拠点に活動する3人組。Southern LordやThrill Jockeyといったレーベルからのリリースが続くそのサウンドは、重厚なドローンと実験性を持つ。

 本記事は2023年の最新作『nature morte』について書いています。

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アルバム紹介

nature morte(2023)

 6thアルバム。全6曲約43分収録。タイトルは”静物画“を意味するフランス語用語より。2021年に発表したThe Bodyとのコラボレーション作ではフォーキーなスタイルを解放して驚きましたが、本作は通常営業です。

 Southern Lord系列に連なるヘヴィネス、Thrill Jockeyに属すことを証明する実験的な構築、銃にも蜜にもなるRobin Wattieの声。#1「carvers, farriers, and knaves」から迫りくるドローンの波状とヴォーカルの気迫が聴き手をおののかせます。

 SUNN O)))やNadjaに通ずる過剰なノイズを繰り出すも重圧で押し切ることはせず、どの曲にも哀感と静寂がある。さらにはパーカッションの反復と呪文を唱えるかのような振る舞いからは密教めいた雰囲気が持ち込まれていて、厳かな緊張が常に漂っています。

 また本作のテーマにも目を向ける必要があります。exclaimのインタビューでは”自認する女性体の人なら誰でも、私たちが正常化し、脇に追いやってきた多くの戯言にさらされています。私はそれを地球の状態に例えました“と本作についてWattieは答えている。

 公式Bandcampにも”あらゆる多元的な女性性の被支配に重点を置いています“と記述がありますが、#2にある歌詞「こんな体だからたまたま私だった」の意味することの絶望感は計り知れない。

 最小限から最大限までの音量を用いながら紡ぐ高いアート性とダイナミクスを持つ音楽。その側面はありますが、切実な痛みを訴える音楽として比重が大きい。ヘヴィであることの意義。サウンドからもメッセージからも本作からは必然性を感じるのです。

Nature morteは、BIG|BRAVEが最もヘヴィーな状態で、彼らの悲痛な怒りが頂点に達したところを捉えており、それぞれの瞬間が非常に巨大で、それ自身の引力を持つようなアルバムとなっている。

BIG|BRAVE 公式Bandcampより
メインアーティスト:Big Brave
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ライヴ映像

BIG | BRAVE live at Supersonic Festival 2022
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