Bring Me The Horizon、夢見るデスコアからの完全脱却

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Suicide Season(2008)

 英国シェフィールド出身の5人組ロック・バンド。活動初期は苛烈なデスコア・バンドとして若者たちを中心に人気を獲得。本作は、アーク・エネミーなどを手がけたプロデューサーのフレデリック・ノードストロームを迎えて発表された2ndアルバム。2008年リリース。

 当時の平均20.6歳という若さで、デスコアの急先鋒として名を馳せた彼等。若気の至りでは解決できそうに無い5人の苛烈な演奏が、生死の境界線へ道連れにします。重圧的なギターリフ、けたたましい絶叫を縦横無尽に撒き散らす暴虐デスコア・チューンの猛威。

 冒頭の#1や#2を聴いただけでもわかるが、荒く猛る衝動を全く抑えつけることはなく、”どこまでも過激にどこまでも凶悪に”を肝に突っ走る。それはBFMVやFFFA辺りの先陣たちを辱めにするぐらいの凶悪度であって、問答無用のラッシュでタコ殴りにする#5や#6辺りは攻撃的過ぎて唖然とします。

 とはいうもののそのカオティックな側面を存分にみせる一方で、#3、#8、#10辺りではドラマティックな叙情性としなやかさを盛り込む。過激一辺倒に陥らない構成が、よりリアルな感情を伝えています。そんな本作は世界に自分たちの名を知らしめた重要な一枚。

That’s The Spirit(2015)

 夢見るデスコアじゃいられない。約2年半振りとなる2015年発表の5thフルアルバム。脱デスコアが感じ取れた前作『Sempiternal』の進形式を推し進め、ここまでオルタナティブ・ロックに振り切れた作品を発表するとは驚きです。キーボードのJordan Fishが加入以降、バンドは大きく内部変革してきましたが、セルフ・プロデュースとなった本作でさらに拍車がかかっています。

 かつてのファンからすると、日和りやがって!だとかBABYMETAL大大大好き病にかかってしまった!だとかのやっかみがあるかもしれません。獰猛な肉食獣を思わせる激しさをほぼ封印し、歌とメロディに焦点を当ててのメインストリーム展開。それはクリーンヴォイスの多用、近年のベース・ミュージックを結果にコミットするなどバンドのイメージを大きく覆すものでしょう。

 00年代オルタナロックを髣髴とさせつつも、よりモダンな構築。LINKIN PARKやMuseといったバンドと比肩するとは言いすぎかもしれないが、その境地にまで登りつけそうなポテンシャルやスケール感をみせつけている。完全にラップ抜きの初期リンキンっぽいスタジアム・ロックを轟かせる#3「Throne」、全てを神聖な光で包み込むようなドラマ性に満ちた#9「Drown」といったリード曲のエネルギーと説得力は計り知れません。

 エレクトロニクスとバンド・サウンドとの混合は本作の売りのひとつ。この結びつきが自然かつ強固で、楽曲の劇性を高める結果になっています。なかでもレディオヘッドが少し透けて見えるクールでセクシーな魅力が詰まった#5「Follow You」は新境地といえそう。またオリバーのハスキーな歌声は、切迫感や孤独感を突きつけるようで、元々バンドが持つダークな感性は本作にも根付かせています。

 全体通して言えるのが、サビでの歌メロが立っていること。聴き手を確実に巻き込んで一体化できる表現力とカリスマ性、#4「True Friends」を聴いていると余計にそう感じますね。ダンスミュージックの要素を取り入れながら壮大に締めくくる#11「Oh No」もインパクト強い。

 賛否両論巻き起こすアルバムであるのは間違いないし、かつての良さをぶん投げてるのも否定しません。でも歌とメロディが優れていれば、しっかりと受け止められるし、受け入れられることを本作は証明しています。変化を恐れる必要はない。例え変化をしようと納得させるだけの曲/作品が残せれば済むのだと。勇敢な改革が行われたドラマティックなロック・アルバム、僕は凄く好きです。あのデスコアボーイズがこういった形で新しく大輪の花を咲かせるのは感慨深い。

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