Chat Pile、現実と世界の終わりを紡ぐ重低音と叫び

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 2019年にオクラホマシティで結成された4人組。自らをデス・グランジなる形容もするスラッジ/ノイズロック・バンド。2枚のEPを発表後、インディーズ映画”Tenkiller”の音楽を担当。2022年に1stフルアルバム『God’s Country』をリリース。バンド名は、オクラホマシティ北東部の片隅にある有毒な鉱業廃棄物の山に由来(チャットは、20世紀前半の鉛亜鉛採掘に伴う製粉作業で拒否された珪質岩、石灰岩、ドロマイト廃棄物の断片のことだという)。

 本記事では1stフルアルバム『God’s Country』について書いています。

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God’s Country (2022)

 1stアルバム。全9曲約40分収録。バンド自身がミキシングとプロダクションを担当。ダークエクスペリメンタル系レーベルのThe Flenserからリリースされています。昨年にはPortrayal of Guiltとスプリット作品を発表しており、人間嫌い同盟の一角を形成。

 バンド自身はFacebookの自己紹介欄で“デス・グランジ”、スラッジ、インダストリアルと謳う。実際にひどく柄の悪い音だと感じます。UNSANEの血生臭ささやGODFLESHの無機質殺伐感があり、Eyehategodのようなスラッジメタルを参照。#6「Tropical Beaches, Inc」はKORN辺りのニューメタルがミックスされています。“90年代”が破壊力の補完とユニークさをもたらしたノイズ/ジャンク・ロックという趣は強い。

 音自体は重いことこの上ない。ですが、良い意味でのダルさやルーズさがあることで、その余白が作品における悲嘆や諦観を強めていると感じます。震源になるレイガン・ブッシュのヴォーカルは何とも形容がしがたい。大の大人が泣き叫ぶようでもあり、部屋の片隅で現実を憂いで吠えているようでもあり。乱暴な表現ではあります。けれども、酔拳のようにつかみどころのない動きをしながら急所を突くような感じ。全体における”やさぐれ感”は彼に起因しているように思います。

 POP MATTERSのインタビューによると、“神の国”のタイトルの背景にあるのは、オクラホマシティのど真ん中に位置する刑務所だという。収容者数の多さと人間以下の劣悪な環境で悪名高いと言われている。また、オクラホマ州は投獄率が全米でトップをひた走り、貧困率も全米平均を上回っている。最近だと州議会において中絶禁止法案も可決されてしまいました。

 本作では故郷で起こった事件についても扱っており、#1「Slaughterhouse」にて2014年の食品加工場での殺人事件、#7「The Mask」にて1978年に起こったステーキ店で6人が殺害された銃乱射事件が描かれている。

 加えて、Chat Pileは母国の矛盾と残酷さについて問いかけを止めようとしない。#2「Why」の歌詞は”人々はなぜ外に住まなければならないのですか”とありますが、富める国においてホームレスが増える矛盾を突く。そして、#5「Anywhere」では“世界が崩壊する音”だと繰り返し歌う

 “何よりも、世界が崩壊するのを見る不安と恐怖を捕らえようとしている”と前述のインタビューにありますが、Primitive Manと同様にアメリカの残酷な現象をとらえ、疎外された者たちの苦悩を暴力的な音と叫びで訴えている。なお、本作はPitchforkにて8.4を獲得し、BEST NEW MUSICに選ばれています。

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