神と悪が宿るドゥーム・フォーク Chelsea Wolfe『Abyss』

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Abyss(2015)

 新世代ゴシック・アイコンとして活躍する女性シンガーの2年ぶり5枚目。禍々しいヘヴィネスと神経がじわじわと擦れるような歌声を特徴に、”ドゥーム・フォーク”なる形容をされているウルフ姐さん。本作は#1「Carrion Flowers」でドラクエの冒険書が消えた時の音に匹敵する、嫌なノイズがいきなり垂れ流されますが、以前よりも悲壮感が増して重苦しい。

 前作『Pain Is Beauty』からの延長にあるようなサウンドには感じますが、ゴスっぽく艶めかしく仕上げつつも異様にヘヴィ。インダストリアルやドローンの要素は濃くなっています。輪郭のぼやけた、例えるなら濃霧の中に取り残されているような感覚が余計にそう思わせるもの。曲名にある「Abyss」に「Grey Days」に「Simple Death」を表現するかのように薄気味悪く重い。だが、あくまでも”歌のアルバム”であることは確かです。

 重音の中で幽玄にゆらめく彼女の歌声がハッと覚醒させるような、一種のクスリのような効能を持つ。#2「Iron Moon」における歌の存在感は特に際立つものだろう。そして、ラスト#11「Abyss」とともに向かうは、月明かりすら届かない闇夜の深海。彼女の歌声が手招く「Crazy Love」な漆黒の葬送歌である。

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