【アルバム紹介】Forest of Shadows、独りで奏でる慟哭の哀歌

 スウェーデンはストックホルムを拠点に活動するNiclas Frohagenのフューネラル・ドゥーム・プロジェクト。1997年より活動を開始。初期にはバンドメンバーを引き連れていましたが、2003年にはソロへ移行。Cult of Luna、OPETH、KATATONIAといったバンドに影響を受けたゴシックメタル/ドゥーム・サウンドを奏でる。

 本記事はこれまでに発表されているフルアルバム3作の内、1st~2ndアルバムの2作品について書いています。

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アルバム紹介

Departure(2004)

  1stアルバム。先に2ndの方から聴いていますが、その4年前に制作された本作も彼らしい切なすぎる哀感と闇の裂け目からの濁流の様な音の表出が凄まじい。全5曲で60分という大作主義ながら、メランコリックな音色とドラマティックな展開が貫かれています。

 悲しみを積もらせる様な静パートから激しく感情が渦巻くダークな動パートへとじわじわと遷移していく作風はこの頃から存分に力を発揮。あいさつ代わりにしては長すぎる15分超の#1「Sleeping Death」がその典型です。

 荘厳なオルガンの響きと繊細な歌声で淡々と綴られるイントロからして儚さがにじみ出ており、アコギの枯れた感触やシンセによる雰囲気作りなどを巧みに入れながら、感情が昂ぶった所でデスヴォイスがうねりをあげサウンドが一気に解放へと向かう。

 ドゥームメタル由来の重さやゴシックメタル寄りのダークさを上手く活用しながら、絶望と激情を交えてメロウに織り上げられます。静と動の大きな落差は楽曲の劇的さを際立たせているし、禍々しい怒りと深い悲しみの表現のバランス感覚も巧く融和している。

 #3はインストで重たく暗いのにもかかわらず、ピアノの美しい調べが見事なエンディングを飾る。哀しみがはっきり出るメロディに沈む#4の表現力にも惹かれてしまいます。

 そして、ラストの#5「Departure」は、暗くメランコリックな立ち上がりから絶望的な重さを潜り抜け、最後にはブラックメタルの狂気を伴いながら疾走する上下動の激しい14分超の名曲。暗闇を辿りながら深い悲哀が表現される本作は、初作にして相当なインパクトを誇ります。

Forest of Shadows
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Six Waves of Woe(2008)

 2ndフルアルバム。聴いたのは1stよりもこちらが先。胸が張り裂けそうになるほどの慟哭の哀歌に持っていかれます。

 淡々としたクリーンヴォイスと切ないメロディラインを紡ぐギターが儚き慟哭のドラマを奏で、荘厳な重みを持ったリズムと共にゆっくりゆっくり進行。そこにシンセやメロトロンが絡んで寂寞感ともの悲しさを心に積もらせていく。

 じわじわと精神の闇を浮かび上がらせたところで、堰を切ったように溢れ出す轟音と断末魔の如き唸る低音グロウルで絶望に叩き落す。ここに収録された6曲のどれもが、そのような穏やかに流れ行く切ない哀愁の静パートから抑圧された負の感情を一気に暴発させる動パートへと移行するわかりやすいスタイルを取っています。

 ですが、禍々しいブラックメタル的な部分はメロウさと融和させられており、劇的なドラマ性を際立たせている。仄暗い陰鬱さを滲ませながら漂ってくる耽美な薫り、時折のアンビエントな音像、静と動の大きな落差もまた惹きつけられる要因になっている。

 本作は漆黒の中に映し出された幻想と美に酔えるメランコリックな作品だです。何よりもせつなさに引っ張れる。ゴシック・メタルがお好みの方からポストメタル信者まで幅広い層に受け入れられそう。特に#2「selfdestructive」は涙を禁じえないほどの名曲。

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Among the Dormant Watchers(2018)

 3rdアルバム。10年ぶりとなる新作。

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