【アルバム紹介】殻『五月蠅』 耽美かつ暗い世界

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アルバム紹介

五月蠅(2008)

 acid android のギタリスト、渡辺清美(antz)を中心とする5人組の1stフルアルバム。ですが、バンド自身は本作を“0thアルバム”と謳う。ワントラック55分という構成ですが、それが実は6曲で成り立っている。この時点で殻の手のひらで転がされている感じがします。

 ゴシカルかつ耽美な薫りを漂わせながら、壮大な曲調と共に進行していくオルタナティヴ・ロック。基本的には楽器陣の重厚なサウンドを主軸にミドルテンポでじわじわと精神を追い詰めていく感じ。

 そこにもの悲しい旋律や透明感のある美しいフレーズ、神秘的な魅力をもった女性ヴォーカルの麗しき声が重なり合って、殻独特の世界観を構築する。

 ポストロック的要素も交錯しているが、既に自分達の立ち位置を把握しているようなその世界観はとても深くて濃厚。静と動のメリハリをうまくつけて、仰々しすぎるほどドラマティックに展開しています。1stアルバム頃の夢中夢に似ている部分もありますが、あそこまでじめじめとした陰鬱さはなく、もっと音が綺麗に整理されている印象。

 どことなく漂う悲壮感も精神にずっしりとくる。0thという意味では序章にも到っていないのに美学が光る作品。

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