【アルバム紹介】Kayo Dot、脅威なる暗黒エクスペリメンタル・サウンド

 2003年にToby Driverを中心に結成。作品を出すごとに作風や形態を変え、その暗黒のエクスペリメンタル系メタル・サウンドは他の追随を許さない。

 本記事は全10作のフルアルバムの内、3rd、4th、6th~8thまでの5作品について書いています。

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アルバム紹介

Choirs Of The Eye(2003)

 1stアルバム。全5曲約55分収録。

Dowsing Anemone with Copper Tongue(2006)

 2ndアルバム。全5曲約60分収録。

Blue Lambency Downward(2008)

 3rdアルバム。全7曲約43分収録。音楽的にはエクスペリメンタル系ハードコアなんて言われていますが、ジャズやプログレッシヴ・ロックを随所に盛り込み、崇高かつ幽玄なサウンドを生み出します。

 ハードコアを拠り所としながらも荘厳なバイオリンやトランペットなどを絡めた奇天烈な混合、陰鬱感が支配する奇妙さは本作の特徴のひとつ。Kayo Dot流の美的イメージがしっかりと表現されています。

 例えるなら混沌を永続的に作り出し、人間の精神を落とし込んでいく暗鬱なオーケストラ。もはやこのバンドにしか表現しようのないオリジナリティに溢れていて、ただただ音に酩酊するのみです。

 鬱蒼とした樹海の中を彷徨っているような錯覚に捉われること間違いなし。この作品には自分が未だ味わったことのない感動があったというのも事実であり、新たな音を探求してみたいという方にはオススメしたいです。

Coyote(2010)

 4thアルバム。全5曲約39分。バンドの後援者であり重い病気にかかり、死の狭間にいる1人の女性に対して制作されたコンセプト作。とはいっても大所帯で描き出す、ハードコアの粗暴さとジャズ~エレクトロニカ~現代音楽に至るまでをエッセンスとして加えた作風は、これまで通りです。

 影の側面を引き摺るようなタイトなバンド・サウンドに荘厳な弦楽器の揺らぎ、薄闇の空間を艶やかに乱舞する管楽器、丁寧で穏やかな歌が密に絡み合って独特の詩的な世界を紡ぎあげています。その深い闇を連想させるサウンド・メイキングはめくるめく実験精神を完璧に楽曲へと昇華した賜物。

 ですが本作では静的でありながらも重厚なフィーリングを持った曲が多いように感じられます。重みを増した管弦楽器の存在感が大きくなり、ダークな緊迫感や芸術的なアート感覚をまとって響くようになったことが要因。

 優しさと激しさ、儚さと情熱がしなやかなコントラストを描くことも陰りを帯びた上品さへ拍車をかけており、時に差し挟まれるエモーショナルな爆発が津波のように襲ってくるのも印象深い。

 重々しい地の果てで苦しむ人間に充てた音楽にしては畏怖の念すら浮かぶほど強烈ですが、暗黒スペクタクル・オーケストラが心血を注いで奏でる慈しみの賛歌は感動的。

 一貫したストーリーを描いているからこそ、結実した深い想いもまたその女性ファンに対して、また作品からのメッセージのように思います。壮絶なまでに胸が疼くスピリチュアルな作品。

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Gamma Knife(2002)

 5thアルバム。

Hubardo(2013)

 6thアルバム。ダブルアルバムとなり、全11曲約100分収録。SUNN O)))やWolves In The Throne Room、Akron/Familyなどを手がけるランドール・ダンのプロデュースのもとで、徹底して練り上げた凄惨で悲劇的な物語を創り上げています。

 邪悪な呻きと即興風の演奏が厳粛な雰囲気に支配される#1「The Black Stone」から世界は急転し、圧し掛かるような濃い闇に覆われていく。荘厳なオーケストラのような振る舞いからプログレッシヴな構成を核にして、フリー・ジャズやチェンバー・ロック、ドローン、民族音楽などを呑みこみながら脅威のスケールで聴き手に迫ります昨年に発表されたSwansの大作『The Seer』を凶悪に深化させた印象すらあります。

 一瞬の光を赦すような穏やかさもあるのですが、精神が摩耗する様なブラックメタルの要素が強く押し出されているのは特徴です。”幅広いオーケストレーションを維持しながら、よりメタリックなスタイルとなっており、批評家から尊敬されるメタルへの嫌悪感から生まれたもの“とTobyは説明する(wiki参照)。

 ストリングスやホーンセクションで厳粛な雰囲気を持ちこみながらも、無慈悲なリフや猛烈な勢いのビートが苛烈さに拍車をかけて奈落へと案内。この辺りは、ジャズから過激なエクストリーム・ミュージックへと変容したノルウェーのShiningと共通する部分があるといえるかもしれません。

 USポストブラック勢とも共振しながら、独創的なアヴァンギャルド・ミュージックとして成立させた#3「Thief」、ブラストビートと渦巻く呪詛の叫びが混沌を加速させる#8「Floodgate」等からは、持ち前のアート性に気を遣いながら、攻撃力を一段とビルドアップしている印象が強い。

 それでも、現代音楽~ジャジーな演奏がその渋い歌声に寄りそいながら都会の夜を思わせるムードを押し出した#7「The Second Operation」、美しく上品な暗黒オーケストラと化す#9「And He Built Him A Boat」といった曲では、Coyote期を思わせる静へと意識が向く。荘厳なコーラス・ワーク、意識が遠のく様なドローン、奥ゆかしいエレクトロニクスも効果的に配合され、浮世離れした闇物語の造形の助力となっています。

 いぶし銀の味わいがある歌とトライバルなリズムから、堰を切ったかのように轟音の濁流があらゆるものを押し流す#10「Passing The River」、洒落っ気のあるフリージャズの狂騒に次ぐ狂騒の約14分である最終曲#11「The Wait Of The World」という締めくくりの流れも秀逸。

 1stアルバム『Choirs of the Eye』をリリースして10年。大所帯バンドとしてアメリカのエクスペリメンタル・ミュージックの極北を目指してきた彼等が刻んできた長い歳月と培われた経験値は、全てここに集約されるためにあったとも表現できるだろう渾身の作品です。

Coffins on Io(2014)

 約1年ぶりとなる通算7枚目。Have A Nice LifeやPanopticonといったエクスペリメンタル~ブラックな音楽性を標榜するアーティストを多く抱えるThe Flenser Recordsよりリリースされています。

 メタル要素を押し出した前作に対して本作はというと、前作のような激しさはタンスの奥底にしまいこんだかのようです。大半をクリーンヴォイスで歌い、クラウトロック~ニューエイジの色調の電子音を織り交ぜることで、インスパイアされたという「80年代のレトロ・フューチャー」を表現。

 GenesisやScritti Polittiに影響を受けたとの記述も見受けられましたが、スケールの大きさや懐の深さはそのままに前述したようなジャンルへと変容しながら、時空を超えた近未来へと羽ばたきます。

 幽玄にたゆたうシンセやセクシーな気品を持つヴォーカルなど、抑制されてはいるが変化に富むサウンドがかつてない贅沢な味わいとなっている#1「The Mortality of Doves」、#2「Offramp Cycle, Pattern 22」といった序盤から、ガラッと変化した印象を受ける人が多いでしょう。

 しかも彼等の場合、この静寂とメロディへのフォーカスが逆に不気味な毒となっていて、聴き手を侵食しているような感覚があります。

 ”聴かせるアルバム”といえばそうなのかもしれないし、渋いといった表現も当てはまるものでしょう。この空虚でダウナーな雰囲気は、これまでの作品で言えば『Coyote』が一番近いですが、さらに抑制が効いています。

 インパクトという点では確実に前作『Hubardo』に軍配があがるが、まるで宇宙へと放り投げられたかのような感触を持つ。また、古典的プログレを参照しながらもSpiritualized『宇宙遊泳』のようなムードすら漂わせます。その中でもお得意のサックスを交え、奥ゆかしくアダルトチックに表現された#6「Spirit Photograhy」の饒舌さには舌を巻く。

 静を基調としたコズミックな世界から、後半は一転して凄まじいアンサンブルが悪夢へ変える#4「Library Subterranean」、その流れのままに荒れ狂う海のようなダイナミックな展開をみせる#5「The Assassination of Adam」といった衝撃も完備。

 前作と比較すると、本作は新しい変化球を投げられたような感じですが、これをさらっとやってのけるKayo Dotはやはり稀有な存在。緻密な構築が成す広大な宇宙は、気づけば脳内に柔らかく刷り込まれている。

メインアーティスト:Kayo Dot
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Plastic House on Base of Sky(2016)

 約1年8ヶ月ぶりとなる8作目。ついに実現した2016年6月開催の初来日公演は、現在の彼等の音楽性を示す貴重な体験でした。前作の『Coffins on Io』を中心に組んだセット。その中には、本作からも楽曲を披露していましたが、さらにエキゾチックでレトロな志向が感じ取れました。

 古めかしいシンセサイザーの音色を基調にして、感傷を誘う歌心が宿る。今回も『Hurburdo』でのメタル要素は本作でも遠い過去。しかし、それが安全第一に繋がっているわけでもなく、当然ながらジャズやプログレ、クラウトロックの素養を活かして魔改造が施されている楽曲群ばかりです。

 これまでの作品よりも穏やかであるのは確かでしょう。細やかな配慮で角に丸みが取れてて、刺々しくない。魂の解脱はシンセがリードする#1「Amalla’s Theme」から始まります。

 そういった中で時々に濃密なサイケデリアが噴出し、前作から地続きのレトロフューチャーも顔を出します。その点は、人間としてのスペックが超人類なToby先生が仕掛ける、擬似タイムトラベラー体験的なところがあるなあと(ちなみにドラマーはあまり触れてはいけない気がする)。

 近未来へとアクセスするかのような#3「Magnetism」はハイライト。音楽性を限定しないことで生まれる独創性は、いかにも彼等らしいものだし、本作でもそれは守られています。

 Special Thanksのクレジットには平沢進大先生の名前が真っ先に挙げられており、アートワークは上田風子さんが担当。本作は彼の影響が非常に大きい模様であります(こちらのインタビュー参照)。来日公演ではZOMBIの『Escape Velocity』が流れていましたが、彼等からのヒントも合ったのかも

Blasphemy(2019)

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Moss Grew on the Swords and Plowshares Alike(2021)

10thアルバム

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