【アルバム紹介】Palms、Deftonesのチノと元ISIS三人衆の邂逅

 Deftonesのチノ・モレノと元ISIS(the Band)の3名Jeff Caxide(B)、Aaron Harris(Dr)、Bryant Clifford Meyer(G/Key)によって2012年に始まったプロジェクト。ISISをベースとした豊穣なサウンドに、チノのエモーショナルな歌声が浮遊する新世代ヘヴィロックを造形している。

 本記事では唯一のフルアルバム『Palms』について書いています。

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アルバム紹介

Palms(2013)

 再生した瞬間にすぐに飛び込んでくる、『Wavering Radiant』期のISISを髣髴とさせるクリアなフレーズとうねるリズムにもう虜。Deftonesのチノと元ISIS(the Banf)の三人衆によって密かに進められた新バンドによるデビュー作。

 両バンド共にヘヴィロックの可能性をあらゆる角度に押し広げてきた存在ですが、緻密で美しい音響を響かせるこの共同体もまた、ヘヴィロックの新次元を奏でています。

 前述したように音のベースは、間違いなくアイシスです。ブライアン・クリフォード・メイヤー、ジェフ・キャシード、アーロン・ハリスが奏でる、特有の美しさと揺らぎを持った豊穣なサウンドだけでも耳を奪われます。

 クリーン・トーンを主体とし、オーガニックなメロウさを強調したことで滑らかな聴き心地を実現。それによって温かさや包容力をも持つようにも感じられます。

 その上でチノの豊かなヴォーカリゼーションを活用することによって、情緒的な響きが増している。訴えかけてくるような熱いエモーションを前面に押し出さなくても、浮遊する彼の歌声が楽曲にロマンを添えています。チノのヴォーカルを最大限に生かした音作りの巧者ぶりは、流石に職人達の手腕。

 その結実となったのが#1「Future Warrior」。アイシスを敬愛してきた者にとってはこの上ない美しいイントロを経て、あまりにも雄大なヘヴィロックを轟かせる楽曲。アイシスの喪失を埋めるほどの素晴らしい出来栄えだと感じます。

 続く#2「Patagonia」は淡い彩色で明媚な風景を織り上げていく佳曲ですし、ジェフ・キャシードのベースラインに惚れ惚れとする#4「Shortwave Radio」や丁寧に音の粒子を配置しながら広がりのあるサウンドスケープを実現した#6「Antarctic Handshake」といった曲も魅力的。

 ここまで見事にお互いの要素を引き出し、ヘヴィロックにまた新たな可能性をもたらしたことに感服。Deftones×ISIS(the Band)という単純な方程式以上の衝撃がありました。

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