Sad Day For Puppets、凛とした気品と愛らしさ

 ”マイブラ meets カーディガンズ”と評されるスウェーデン・ストックホルムのギターポップ/ネオ・シューゲイザーバンド5人組。2006年に結成され、2013年までに3枚のアルバムをリリース。ドリームポップに大きく影響されているサウンドで人気を博す。2011年11月に行われた来日公演では成功を収めました。

 本記事では3枚のフルアルバムについて書いています。2011年11月末に行われた名古屋K.D.Japonでの来日公演に私は行っています。

目次

Unknown Colors(2009)

   ストックホルムの5ピース・ギターポップ/ネオ・シューゲイザーバンドの1stフルアルバム。凛とした気品と愛らしさが同居した紅一点のAnnaのヴォーカル。影響を受けたと公言するマイブラやピクシーズといったオルタナ~シューザイザー因子を織り交ぜたギターサウンドが耳に残ります。

 そこにスウェディッシュ・ポップの柔らかさ、北欧らしい幻想的な質感、キュートなポップ感ともいうべきものを打ち出している印象。フィードバックの轟音ギター、心地よく駆けていく疾走感、清涼感のあるメロディ。Annaの可愛らしくも芯の強い歌声。どれもが機能性の高さを示していると同時にバンドのカラーを明確化しています。

 儚くドラマティックに紡がれる#1、幻想的かつ甘美なムードにとろけていくような#2、瑞々しい輝きに満ちた疾走チューン#3の流れにグッと引き込まれ、オルタナ色とスウェディッシュなポップ感の融合を果たした感のある#5、キラキラとした音粒子を振りまきながら轟音ギターとキュートなヴォーカルに引っ張られていく#8、切ないメロディと透明感に涙腺やられる#10などの佳曲を取り揃え。そんな本作は絶妙なメランコリーとポップな魅力に彩られた良作。

Pale Silver & Shiny Gold(2010)

    前作より1年ちょっとで発表になった2ndフルアルバム。前作からの延長上にある本作は、ダイナソーJr辺りを思わせるギターが轟くことで力強くビルドアップされています。エッジを立ててハードに鳴るギターもそうですが、リズム隊の拍動も太さを増しています。どっしりとしたバンド・サウンドへと繋げている印象で、勢いも段違いに感じられます。

 前作ではグロッケンやタンバリンの豊かな音色も聴けました。ですが本作では5人の紡ぎだすサウンドを重視していて、そのレイヤーの美しさと強さが目立つ。また、ポップスとしての高品質も変わらずに保っています。瑞々しいまでのメロディには全身が惹かれるし、甘~いAnnaのヴォーカルにコーラスが巧く重なり合っていく様も感興を誘う。

 たおやかな歌声と綺麗なサウンドが幻想的なヴェールで包み込む#1に続いて、轟音ギターが豪快に掻き鳴らされ疾走する#2が演奏されたら昂揚感が一気に高まるのも無理はない。その後もオルタナの洗礼を受けたギターが冴える#3、巧い具合にポップ感を乗せた#4と押していくのだが、素朴なアコギと儚い歌声で優しく奏でられるバラード調の#5がいいアクセントになっています。

 本作ではラストの#10もそうですが、バラード系の曲の染み入り様が実に好印象。作品全体としてのバランス感覚もよく、フルートを加えながらミドルテンポでじっくり編みあげていく#6や地に足のついたギター・ポップ#7の存在感も大きい。前作同様にハマる人は続出、そんな品質が保証された作品。

Come Closer(2013)

 大成功を収めた2011年11月の来日公演等を挟んで約3年ぶりとなる3rdアルバム。シンセサイザーを導入することで、これまでになく空間装飾に気を払っているけれど、軽やかで甘酸っぱい聴き心地は変わってない。スウェディッシュ・ポップの涼やかな風を運ぶようにギターは優しく響き、キュートで可憐なAnnaのヴォーカルは核としての存在感を放っています。

 万人が親しめるメランコリックな曲調を中心とした中で本作では、歌により重点をおいた曲作りが行われたそう。確かにオルタナティヴ要素を減退させ、ほどよくゆったりとしたリズムの中で彼女のヴォーカルが引き立つような工夫がなされています。来日ライヴの時に見ても思いましたが、シンプルな構成でどこまでも温かくポップに聴かせてくれるのが本当に良い。どことなく80年代の懐かしいテイストが上手く散りばめられているのも惹かれる要因のひとつ。

 逆にシンセは、このバンドの特性を考えるとやや違和感を覚えたりもするんだけど、本作でもずば抜けている良曲#1「Cold Hand」のように差し色程度に使われる方が好み。後半の楽曲ではダークな方向に舵を切っているが、これまでと別の方向性を見出したかったということでしょうか。

 やっぱり彼女たちはキュート&ポップにキめてくださった方が良いと思うので、センチメンタルで優しい魅力に溢れた序盤4曲の流れで作品を通した方が良かった気はします。多くの人々を振り向かせるキャッチーさや軽やかさはあるが、これなら前作や前々作を推したいところです。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

URLをコピーする
URLをコピーしました!
目次
閉じる