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【アルバム紹介】Sunny Day Real Estate、90年代エモの伝説

 1992年に結成されたシアトルの4人組ロック・バンド。主なメンバーはジェレミー・エニック(Vo他)、ダン・ホーナー(Gt)、ウィリアム・ゴールドスミス(Dr)で、後にフー・ファイターズとして活動していくネイト・メンデル(Ba)はオリジナル・メンバーの一角。

 The Get Up Kidsと並んで初期エモの代表格としてその名を残す存在で、1stアルバム『Diary』は90’s EMOの代名詞的作品。Rolling Stone誌が選定した「最も素晴らしいエモ・アルバム TOP40」の第1位を記録しています。

 バンドは1995年に一度目の解散するも97年に再結成。2001年に再び解散し、以降は不定期に復活している。活動期間中にオリジナル・アルバム4作品をリリースしており、本記事ではその4作品について書いています。

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アルバム紹介

Diary(1994)

 1stアルバム。全11曲約52分収録。”エモはここから始まった”と言われるぐらいの名作であり、多くのフォロワーを生んできた作品です。

 冒頭の#1「Seven」から大河のごとき感情の奔流。ギリギリの精神状態で発するジェレミー・エニックの歌が大いに揺さぶってきます。

 バンドの核は間違いなく彼。陰鬱に支配されて歌い上げる場面から、感情の赴くままに声を荒げて叫ぶ場面まで、このヴォーカルの求心力はなんたるものかと驚かされます。

 そこに哀愁が静かにこぼれてくるようなメロディを基調に、グランジ~オルタナ期の影響下を伺わせるエッジの立ったギター、美麗なピアノのアレンジが重なります。

 儚い美しさ、憂い、陰鬱さを湛えた静にベクトルは傾いていることが多いですが、ダイナミックなサウンドとともに過剰なエモーショナルが胸の奥底に雪崩込むこともあり。その起伏のある展開がまた感動を誘います。

 激しさと繊細さがせめぎ合いながら、ドラマティックに引き立てられていく#3「Song About An Angel」を中心に、エモ黎明期におけるひとつの答えを示した名盤。

 本作はRolling Stone誌が選定した”最も素晴らしいエモ・アルバム TOP40“の第1位を記録。

LP2(1995)

 2ndフルアルバム。全9曲約37分収録。”ピンク・アルバム”とも呼ばれる鮮やかなアートワークの本作は、基本的には1stの延長線上にある作品です。

 しかしながら、抑え切れずにノイジーなギターや声を荒げて熱量を上げる場面もあるとはいえ、全体的にはやや大人しくなっているのが特徴。

 ジェレミー・エニックの歌唱は、さらにナイーヴで聴かせる様に歌い上げる事が多くなり、その掠れたハスキーな声が枯れた哀愁を表現。切なくも儚いサウンドを奏でる楽器隊も変わらずで、メロディの強化に成功しています。

 独特の歌唱表現からゆったりと憂いが滲みだしていく#1「Friday」、清らかな音色と儚い歌心に涙腺が緩む#4「5/4」といった楽曲が、その証明。前作ほどのダイナミックな展開は少ないとはいえ、聴くとその洗練された美しさがしみじみと心の奥底に広がります。

 だからこそ、ソリッドで攻撃的な#9「Rodeo Jones」も引き立つ。ポップな要素も秘めながら、独自の感触を持つエモへの帰結。聴いているとどこか懐かしい気分に誘われます。

 1stや最終作となる4thほどの評価は獲得していないものの、聴きやすさを備えた作品。そしてこの後に最初の解散を迎え、リズム隊がフー・ファイターズに引き抜かれる。

How It Feels to Be Something On(1998)

 3rdアルバム。全10曲約46分収録。解散を経て再結成後の初アルバム。ネイト・メンデルがフー・ファイターズに留任したのでベーシストが交代。他3人はいつメンです。

 エモのバイブルを生み出した解散前から引き継がれる要素、そして復活後の新たな要素が本作には混成。序盤の#1「Pillars」や#2「Roses in Water」辺りはポストロックに連なっていくダイナミズムが発揮されています。

 以降の曲ではアコースティック・ギターの高い稼働率やミドルテンポでじっくりと聴かせる曲調が増えているのは明らかな変化です。反面、歪んだ音色や荒々しさは控えめで、ソフトなタッチと空間的なゆとりを優先。

 ジェレミーは内側に宿る感情をいなしながら歌に乗せるようになっており、解散していた間にリリースしたソロアルバムでの成長を還元しています。

 また、しなやかなアンサンブルからは次作につながっていくサイケやプログレ要素も散聴される。素朴なのに豊か、繊細でいて風格がある本作はバンドとして懐が深くなった証明。

 涼やかなアコギとかすれた歌声が感傷を誘う#3「Every Shining Time You Arrive」、70年代ロックに通ずる牧歌的なテイストから歌唱に熱がこもっていく表題曲#6、ほのぼのとした聴き心地の#8「Guitar and Video Games」と魅力的な楽曲がそろいます。

 なおPitchforkでは8.8点を記録しており、オリジナル4作の中で最も評価が高いです。

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The Rising Tide(2000)

 4thアルバムにして最終作。全11曲約52分収録。1999年7月には初来日公演を達成。SUB POPを離れ、別レーベルからのリリースで、プロデュースのルー・ジョルダーノとともにオリジナル・メンバーの3人で制作されています。

 前作もそうでしたが、第2の『Diary』を目指さない洗練と拡張が本作ではさらに極まっています。かすれたハイトーンやファルセットが多用され、引き続きアクセントとなっているアコギやピアノ、さらにはシンセサイザー、ストリングス、メロトロンに声のサンプリングまでもが飛び出してくる。

 冒頭を飾る#1「Killed by an Angel」こそグランジの残滓が燃え広がりますが、全体的にはアリーナ・ロックやプログレなどからの影響を加味し、Radioheadがエモ化したような佇まい。時にはナイーヴでいて華やかな広がりを聴かせるのでQUEENやMUSEといったバンドもよぎります。

 #2「One」の線の細いハイトーンに持っていかれ、アコギの穏やかな旋律と繊細なヴォーカルが際立つ#3「Rain Song」や#8「Tearing in My Heart」を経て、天へと昇るような#11「The Rising Tide」が本作を結ぶ。

 緩急・静動の熟練されたコントロール。パレットを豊かにする多彩な楽器。神格化されていくジェレミー・エニックの歌唱。この『The Rising Tide』こそもっともっと聴かれるべき傑作であり、終着点としての美しさは際立っています。

シンプルに言うならただのロック。エモとかパンクロックとも言えるだろう。いくらかのパンク要素があるからね。でも、究極的にはただの音楽だ。そこには何のカテゴリーもないね。結局、サニー・デイはサニー・デイでしかないんだよ

サニー・デイ・リアル・エステイト『ライジング・タイド』国内盤ライナーノーツより
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プレイリスト

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