Sed Non Satiata、フレンチ激情系ハードコアの最前線

 2003年に結成されたフランス・トゥールーズのポストハードコア・バンド5人組。同郷のDaitroに続くフレンチ激情系ハードコアの最重要バンドのひとつといわれ、活躍しました。単独名義のアルバム3枚、スプリット作を多数残す。現在の動向は不明。

 本記事では3作品について書いています。

目次

Le Ciel De Notre Enfance(2005)

 1stアルバム(EPかも?)。全5曲約23分収録。タイトルは直訳すると”幼少期の空”となります。フランスの同世代のポストハードコア、Daitroと共振する切迫とした激しいサウンドが軸。ですが、ポストロックの海峡を注意深く横断し、美旋律とドラマ性に磨きをかけた作風。envyへの憧憬がそのまま表現されており、特に#2「Spirit Fuel」におけるアルペジオやメロディの振りまき方などにそう感じる部分があります。

 #1「Moi Le Premier」は電子音を交錯させて暗く沈み込むような雰囲気を生んでいますが、すぐに混沌とした塊のようなサウンドが押し寄せる。ミドルテンポでじっくりと練った展開からダイナミズムを堪能させてくれますが、ハードコアらしい焦燥と切迫感も同時に存在します。ヴォーカルはクリーンもスクリームも用いながら、楽曲の表情を豊かに彩る。さらに#3「En attendant l’aube」では7分を超えるインストゥルメンタルを用意。単にポストロック寄りにするだけでなく、どこか密教的で、ハードコアらしい情熱も盛り込まれています。

 118秒に凝集した渾身の#4「Hypocrisie des sentiments」を経て、ラストの#5「Urgent D’Attendre」に至る。激情と言われる類のハードコアがこの2曲で炸裂していますが、旋律の美しさやクリーンボイスとの対比が見事。初となる単独作でありながら、バンドの力量と野心をこれでもかと思い知る1作。

Sed Non Satiata(2009)

   2ndアルバム。全5曲約33分収録。タイトなリズムを軸にして哀切のアルペジオを重ねながら、轟音ギターと自らの生命を燃やすような叫びが入ってくる。ミドルテンポの曲を中心に静パートでグッとタメ、動パートで壮大なスケール感に拍車をかけていく。そのスタイルを継続しており、心の内に直接訴えかけるような感情的な楽曲を揃え、心身を熱くしてくれます。

 Daitro、近年のenvyや同郷でいうとGantzはやはり近い存在。どこか冷たく、悲壮な暗闇の底を覗くような瞬間もあるからheaven in her armsがよぎることもあります。ピアノやストリングスだけに限らず、#1では女性コーラスも交えて壮大な表現を模索。#2では美麗なアルペジオから、あらゆる感情を昇華していくように激しいサウンドが掻き鳴らされる。彼等の持ち味を発揮した曲といえます。

 #4では優しさをもたらすようなアコースティック・ナンバーを披露し、#5では轟音系ポストロックに通じそうなドラマティシズムで聴き手を導く。前作に磨きをかけてきたのが十分に伝わってきますし、しっかりと聴かせるだけの力があります。初期衝動や勢いだけではない、細部にまでこだわって構築された確かな完成度。

 ちなみに本作は2010年にディスクユニオンから500枚限定で帯・ライナー付きでCD化。ライナーはフランスのハードコア・シーンと関わりを持っているheaven in her armsのKent氏が担当。

Mappo(2013)

 3rdフルアルバム。全8曲約39分収録。スプリットをリリースする仲であるDaitroと双璧を成すぐらい、フレンチ激情HCシーンの最重要バンドのひとつだが、本作も全く期待を裏切らない出来栄えです。

 ミドルテンポを中心に静と動を行き来し、あまりにも感情的に放たれる音塊に心を動かされる。重厚なリズムが屋台骨を担い、哀愁のアルペジオと怒号の咆哮が炸裂する#1「Extrospection」や#2「Sehnsucht」からして実にSed Non Satiataらしい。作風からしても前作の延長線上にあるのは間違いないですが、自らさらにストイックに突き詰め、着実に階段を昇って凄みを増しています。

 前作と比べると曲自体が3~4分台の尺が中心になっています。しかし、短くはなっても彼等の特徴であるドラマ性が存分に発揮されており、鮮明なコントラストとなって表れています。また、所々で叫んでいるとはいえ、インディ~オルタナ系っぽい感触のある#3「San Andrea」や#5「Entropia」で新しい風を吹かせ、#4「Ghost」ではPromise Ringを少し感じたりも。それでも思慮深い表情を見せ、哀愁を漂わせる中で、ハードコアの熱い芯が感じられる点が彼等の良さ。

 なかでもノスタルジックな旋律と柔らかなクリーン・ヴォイスに乗せ、後半で一気に爆発する展開で胸を打つ#8「Soma」は、これまでの楽曲でも最もドラマティックな佳曲。フレンチ激情HCシーンの最前線で戦うバンドだけある力作です。

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