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鮮烈なマスロック・バンド Sleeping Peopleを振り返る

 2002年にサンディエゴで結成されたインストゥルメンタル・バンド。主には”マスロック”と呼ばれるスタイルであり、プログレッシヴ・ロックの複雑な構築、ハードコアの激しさ/衝動を掛け合わせています。曲自体はプログレほど長くなくコンパクトにまとめていますが、その中で音の密度が細かく、さらには瞬間の切れ味を何度なく味わうことになる。しかも演奏がまたハイレベル。聴くだけで口あんぐりになるほど、圧倒されます。

 2005年に発表したデビューアルバム「Sleeping People」は世界で絶賛され、一躍世界に名を広めます。この1stアルバムはここ日本でも輸入盤で驚くほどのセールスを記録したとか。2007年には待望の2ndフル「Growing」を発表。こちらはStiff Slackによって国内盤のリリースと来日公演の開催も実現しました。その後は活動はゆるやかになり、2021年に関してはほぼ止まっているような状態だと思われます。

 今回はそんなSleeping Peopleの2枚について語ります。

目次

Sleeping People (2005)

   マスロックというジャンルの凄まじさを脳と身体に強く刻み込むデビューフル。ツインギター、ベース、ドラムによるインストゥルメンタルという表現形態。プログレとハードコアの限界掛け算をストイックかつ苛烈を極める演奏で実現しています。先駆者であるDon Caballeroもビックリするぐらいに鮮烈なマスロックです。

 変拍子やポリリズムなど変則的なアンサンブルが基軸。全く守勢に回ることなく流れるような波状攻撃を繰り返すツインギター、グルーヴィに躍動しつつ時折鋭さが光るベース、正確無比なリズムを身上に手数を打ちまくるドラムの全てが実にハイレベル。それらが渾然一体となって空間を音符で埋め尽くし、弛まぬ衝動を与え続ける6曲約34分の狂乱には鳥肌立ちっぱなし。

 インストゥルメンタルにはよくある静と動を行き交う優雅な調べではありません。ポストロック的な期待は禁物。とにかく攻めて・攻めて・攻め倒しては・薙ぎ倒す姿勢は凄まじいの一言。ミクロ単位で音を繋ぎあわせることもあれば、フリーキーに音をぶつけ合うこともありますが、常にスリリングで脈拍が上がるような展開が繰り広げられるので否応なしに体感温度が上がる。

 何度も方向・ギアを切替ながら鋭くドライヴインしてくる#1、#2、#4には眩暈がするほど。機械然とした無機質さと硬質性を誇り、精微に計算されつくした構成と音の密度は他を凌駕します。マスロックを語る上で欠かせない傑作として今も語り継ぐ必要のある作品です。#2「Nasty Portion」はマスロック永久欠番のひとつ。

2007年暮れに名古屋K.D.Japonで行われた来日公演から「Nasty Portion」の映像

Growing (2007)

 約2年ぶりとなる2ndフルアルバム。名古屋のStiffSlackより国内盤のリリース。並びに来日公演の招聘とうれしいトピックもありました。

 幾重の眩い光を放つオープニングトラックから優雅に音符が上空に咲き乱れるマスロックの展開が成されます。とはいえ、本作はもっと表情がつけられていて、ひたすらマスロックイズムの渦中にいた前作よりもユーモアがある。#5「Out Dream」のゲーム音楽BGMのような柔和さ、#8「Underland」ではドラムの上にグロッケンっぽい音とノイズがミックスされ、#9「It’s Heart Loves Open」に至ってはデジタル音が強調されています。後半の曲ほど実験的。

 それでも核となるストイックで苛烈なバンドのアンサンブルに隙はありません。サイケなギターフレーズのリフレインと突然変異する奇抜さが魅力の#2「 James Spader」、アグレッシヴなギター・ベース・ドラムが脳内に打ち付けられ続ける#6「Three Things」など。特に#3「Yellow Guy / Pink Eye」は一瞬の油断も許さないマスロック硬質精微設計。前半部のタメから一気に解放され、昂揚感の爆発を呼ぶ3分過ぎからの後半部の凄まじさに歓喜します。

 さらなるサプライズも用意されていて、ラスト#10「People Staying Awake」ではヴォーカル入りという隠し玉をここで投入。しかも歌担当がPinbackのRob Crowだから余計に効く。前作との明確な違いを打ち出しつつも、核は変わっていない。そう印象付けてくれる一作です。

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