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変幻する音、美醜の極致 sukekiyo

 sukekiyoはDIR EN GREYのフロントマンである京さんを母体とした5人組バンド。ソロ・プロジェクトではなくれっきとしたバンドであって、京さん自身もその想いを強く持って活動を続けています。

 メンバーには、ex-RENTRER EN SOIの匠さん(Gt/Piano)と未架さん(Dr)、kannivalismのYUCHIさん(B)、ex.9GOATS BLACK OUTのUTAさん(Gt)が名を連ねます。女性視点の歌詩と耽美性が根幹にあった音楽性は、徐々に変貌を遂げて異形化。2ndフルアルバム『ADORATIO』からはその変態性に磨きがかかって、どこにもない音楽として昇華されました。

 わたし自身はライヴはそこまで参加できてなくて2015年に2本、しばらく間が空いた2020年に1本の計3公演。特に印象的だったのは、某感染症で世界が蝕まれ始めたタイミングであった2020年2月29日の名古屋ReNY limited公演。今のところ、あの日が満員の客と歓声が飛び交う中で行われた有観客ライヴの最後です。だから自分の中で大切な時間になっています。

 本記事はsukekiyoのフルアルバム3枚とミニアルバム1枚の計4作品について書いています。彼等を知る人が少しでも増えれば幸いです。以下からどうぞ。

目次

IMMORTALIS(2014)

 1stアルバム。制作にあたっての明確なコンセプトは無かったそうですが、「DIR EN GREYとは違う表現がしたい」という想いの積み重ねからできたバンドだけあって、全体的にダークかつ耽美なアンビエントへの傾倒した内容です。

 ファルセットを多用した歌唱表現、優美なギターやピアノをキーにして紡がれ、次々とミステリアスな光景を見せていく。民族的なリズムとアコギを中心としたプログレッシヴな構築が成す#1「elisabeth addict」から衝撃的であり、『IMMORTALIS』という物語に聴き手を自然と向かわせます。

 退廃的で薄靄のかかったかのような楽曲の数々。そこには祇園で聴こえてくるような音から聖堂の格式高い音色までが集約され、眼をそむけるようなグロテスクさも、振れると壊れてしまう様な繊細さも、全てを赦して浄化する様な美しさもある。

 静を基調とした中で美だけでなく力強さも感じさせるポストクラシカル風の#2「destrudo」には思わず引き込まれるし、複雑怪奇な世界を見せる#13「hemimetabolism」から、和のテイストから情熱的なギターソロも含めて慈愛に満ちた#14「鵠」の流れにも感動を覚えます。

 #9「the daemon’s cutlery」や#15「斑人間」のような激しめの楽曲もあるとはいえ、やはりDIRとは違う味わいでsukekiyo流の毒気を乗せた仕上がり。その中でもMusic Videoが制作された#7「aftermath」や#16「in all weathers」は、本作でも特に重要な存在といえる佳曲。全体を通しても様々な幻想を織り上げながら、ひとつの大きなストーリーが生まれているような感覚があります。

 京さんならではの世界観がより濃く投影された作品だけあって、精神的に生々しい衝撃はあります。しかし、その儚い叙情性には特筆すべきものがあります。作品名である『IMMORTALIS』は、ラテン語で”不死”を意味するそうですが、「ジャンルや時代を超えて末永く聴かれていく作品を作りたい」というメンバーの想い通りの完成度の高いものに仕上がっています。期待以上の作品に出会えて嬉しい限り。

 本作がさらに大きな反響を呼んだ要因は、豪華アーティスト陣が参加した初回限定盤に付属するリミックスCDの存在。敬でSUGIZOさん(LUNA SEA)、HISASHIさん(GLAY)、石井秀仁さん(cali≠gari/GOATBED)、TK(凛として時雨)、そしてKornのジョナサン(Devilslug名義)といった面々が、何の制約もなしにひねりを加えた個性的なトラックへと変貌させています。

 SUGIZO氏や石井さんのリミックスの仕事ぶりは流石ですが、#3「zephyr」が優美なヴァイオリンとピアノを交えてTK流に再構築されていて(しかもドラムにBOBO氏が参加)、特に大きなインパクトを残していると感じました。

 そして、事件ともいえるキリト氏(PIERROT)とのコラボレーション。初めて見た時は眼を疑ったし、「最近、(キリトと)初めてお会いしました。」と某インタビューで見た瞬間に再び眼を疑ったものです。初めてのコラボレーションとなった「aftermath」は、2人のヴォーカリストの声が美しい情感を伴って聴き手の内に染み渡る。わたしが青春時代に聴いてきた2人がこうして手を取り合って歌を聴かせてくれる事が素直に嬉しいですね。

VITIUM(2015)

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 1stミニアルバム。昨年にリリースの1stアルバム『IMMORTALIS』から1年も経たずにリリースされること、また海外ツアーの敢行などがこのバンドが決して片手間のバンドではないことの証明ですが、本作も充実の内容です。そもそも9曲で約38分の収録ってミニアルバムの尺ではない気はしています。

 繊細な筆致で上品に綴る。そして、大胆な手腕で魍魎蠢くような不思議な物語を描き出していくさまは変わらず。『IMMORTALIS』よりも肉体的なグルーヴ感が増して、バンドというのが板についてきたことを伺わせます。ヘヴィなサウンドが妖しい揺さぶりをかける#1「leather field」や奇妙な音絵巻が展開される#2「dunes」と序盤からそれを感じる内容。

 「ツアーを経たことでお互いの関係性を把握しながら制作できたことが大きい」とインタビューで拝見しましたが、ブルージーな感触やスパニッシュなテイストを散りばめたツインギターが自由度を増し、楽曲の彩度調整を行っている。さらには、sukekiyoならではの和情緒の配合。

 もちろん、京さんの七変化で済まない多彩な声による表現が得体の知れない美醜の根源。その中でも#8「celeste」での歌唱ぶりは見事ですし、#5「雨上がりの優詩」や#9「focus」の歌とメロディが立っている曲が本作での核として存在しています。流麗で美しいサウンドが軸ながらも、背徳の色艶を晒しながら展開するこの2曲は、儚く胸に響く。

 決して枠にはまること無く飛び出し、色々な境界線を曖昧に揺らめきながら、相手を確実に翻弄する音像に仕立てる。タイトルの”VITIUM = 異常”をこうも変幻自在に魅せるのが刺激的です。得体の知れ無さが一層深まった気のするミニアルバムであり、今後も聴き手の想像を煙に巻きながらより深みへと誘っていきそう。

 初回限定盤に付属のDISC2ではお馴染みとなったコラボレーション楽曲を収録。「雨上がりの優詩」ではToshlさん(X JAPAN)、「focus」では俳優の三上博史さん(マエストロ)と共演し、再び話題になっています。Toshlさんとのコラボでは低音パート、三上さんとのコラボでは高音パートを歌い上げ、両者の良さを引き上げる京さんの歌の引き出しと柔軟性を感じます。「focus」は余りにも優美でセクシャルな大人のムードが漂いすぎている。

ADORATIO(2017)

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 フルアルバムとしては約3年ぶりとなる2ndアルバム。タイトルはラテン語で”崇拝”を意味します。これまでの2作品では、耽美性、そして主に女性視点の歌詩が要素の根幹としてありました。聴かせる歌ものを中心としつつ忍ばせる毒がある。さらには得体のしれない不気味さが奥底で微笑むように存在し、たまーに顔を出して聴き手を惑わせていました。

 それがここにきて変異。不穏なイントロで幕をあけ、序盤はこれまでの彼等らしさを感じさせる#1「疑似ネクロマンサー」。ところが、繰り返される転調と拡張ゆえに広がる混沌に飲み込まれていきます。複雑怪奇な展開で持って引っ張り、コロコロと表情を変える。初聴時は「これがsukekiyo?」と思ってしまったぐらいのねじのぶっ飛びようです。

 その後も歪で妖しい光を多方面に反射するプリズムのごとき。オルタナティヴメタルと日本古都的情緒が織り交ぜられる#3「襞謳」の揺さぶりがある。ピアノの美しいフレーズと歌謡性が象徴する歌ものトラックだと思ったら、合間に重量感あるダンサブルパートが盛り込まれた#4「純朴、無垢であろうが」に魅了される。某映画に触発されたという#9「死霊のアリアナ」がアングラなデジタルチューンとして心を喰い散らかす。#10「嬲り」なんて音で表現する野蛮でイケナイ官能の果て。

 アルバム全体としていい意味で振り切れた曲が多いのに、快と不快が入り乱れていてもしなやかな聴き心地と癖になる中毒性が両立。デジタル音の増量とアングラ~前衛的な美意識がそうさせるのか。京さんの思想を膨らませ、具現化する演奏陣の職人ぶりがこれまで以上に冴えわたっているのもある。YUCHIさんの忙しなく動き回るベースラインの存在感が凄い。

 #11「耳ゾゾ」はsukekiyoでしかない特異性の塊で、まるで先読みできないアヴァンギャルドな進行で耳が忙しい。でも、踏み入れてみると、わりと親切なんだなと思うポップさも携えている。#6「艶」のようにこれまでを踏襲した歌ものが機嫌を取った。かと思えばラストの#13「白濁」はクラシカルな要素も交え、とめどない哀切と欲が表現された歌ものに仕上がっています。

 sukekiyoは言葉で言い表すのが難しい、特異な存在になってきたなと感じます。DIR EN GREYに沿っていくことはないし、違う濃度があるし、アヴァンギャルドやユニークっていう言葉が似合う音楽表現へ向かっている。共通しているのは”カテゴライズ不能”。常識や理性よりも感覚が赴くままの音が成す集合体に、結局は魅了されてしまいます。

 公式通販限定版のDISC2にはおなじみのコラボレーション曲を収録。kyoさん、藤崎 賢一さん、福井 祥史さん等が参加されてる中、KONTAさん (ex.BARBEE BOYS)との「耳ゾゾ」が何とも癖になる。

INFINITUM(2019)

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 約2年ぶりとなる3rdアルバム。タイトルは、ラテン語で“無限”を意味します。前作ほどイかれてはいないと感じてますが、人によってそれは変わるはず。相変わらず多種多彩な表現でもって構成されていますが、少し疎遠になっていた1stと1stミニ辺りのメロディ/耽美性に回帰しつつ前進。今回はわかりやすくヘヴィとメロディアスな曲がくっきりと分かれている印象があります。

 前者を象徴するのが先行公開曲のひとつである#2「猥雑」。しかもこの曲でTV出演を果たしています(UTAさん、8弦ギターだ)。重いリフと奇怪なデジタル音、それに京さんの奇怪な歌い方と鬼葬チックなド直球過ぎる詩によって搔き乱される五感。下手なホラー映画よりも泣きじゃくってしまうほどのトラウマ。なんといっても「毒毒モンスター」という歌詩で様になるのは京さんだけですよ(笑)。

 後者はこちらも先行曲となる#11「ただ、まだ、私」。まさしくハイライトといえる歌もの。失恋を主題に置くもただ切ない、ただ美しいだけにとどまらない感情的なバラード曲。そして、驚かされるのが#5「dorothy」で昭和末期~平成初期を思わせるJ-POP歌謡で度肝を抜かれます。この曲に最初は違和感があっても、不思議と納得させられるのは、彼等の積み上げがあるからでしょう。

 バンドの得体の知れなさは始まりの#1「偶像モラトリアム」、締めの#13「漂白フレーバー」による妖しさのグラデーションで代弁。前作ほどの変質さや猟奇性は影を潜めているとはいえ、呪術的な雰囲気づくりや重さを伴った曲調などの仕掛けは存在しています。#9「こうも違うモノなのか、要するに」は後半に猛りと妖しさが増していって頭をおかしくさせること必至。

 そんな本作において、わたしとしては#12「憂染」が今の段階でsukekiyoが発表した中で一番好きな曲です。読み方は”ウソ”。2019年一番聴いた曲でもあるし、ベストトラックでもある。仄かな温かさと優美なメロディにずっと心を鷲掴みにされっぱなし。発売から2年経っても事あるごとに聴いている大切な曲です。ちなみにわたしは未読ですが『憂染』という2017年に敢行された小説があったりします。

 深い愛着と欲望に憑りつかれた恋煩いの果ての言霊と音楽。どんどんと形態を変えていくsukekiyoですが、ここがまだまだ終着点と思わせない底知れなさが漂います。それでも本作は十分にひとつの形を示す。本作を聴いていると彩瀬まるさんの短編小説「くちなし」の世界観を添えたくなります。

 公式通販限定版ではDISC2にてお馴染みのコラボレーション曲を5曲収録。GASTUNKのBAKI氏との「純朴、無垢であろうが」の印象もさることながら、原曲キーで見事に歌い上げたEXILE SHOKICHIさんとの「白濁」が特に格別。

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