Trachimbrod、ピュアなエモーションの結晶

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 スウェーデン・ストックホルムのポストハードコア/スクリーモ系バンド。初期は4人編成で、”Come Across Trachimbrod”名義で活動。それから5人編成となってTrachimbrodとして活動し、2012年に1stアルバム『A Collection Of Hidden Sketches』を発表。5年後の2017年に2ndアルバム『Leda』をリリース。国内盤は一貫してTokyo Jupiter Recordsから発売されています。

 本記事ではフルアルバム2作品を含む計4作品について書いています。

目次

Eating People Is Easy(2009)

   2009年に発表した7曲入りEP。この頃は4人編成で、”Come Across Trachimbrod”名義。国内盤はTokyo Jupiter Recordsよりリリース。激情系ポストハードコアのエッセンスを細かく塗しながらも、Explosions in the Skyのような叙事的で物語性の高いサウンドスケープが光る1枚。

 とことん激しく絶叫するヴォーカルを除けば、この音は間違いなくポストロックの領域。前述したEITSやEfにCaspianといった面々が思い浮かぶほど、端正で綺麗な音使いを効果的に盛り込んだ轟音ポストロックを繰り広げています。

 ポストロック的なアンサンブルの重ね方や耳を傾けざるを得ないメランコリーが肝ですが、要所での豪快なダイナミズムはかなりのものですし、体の芯から熱くするような絶叫には他バンドとの差異になりえる個性も備えている印象。

 10分近い#2、#6にみられる徹底してドラマティックに練り上げていく様も魅力的だし、出足の#1や#3のようにコンパクトな楽曲にも洗練された美と心を焦がす激情が完璧に調和していて引き込まれます。キレイめなインストゥルメンタルは聴き手の耳を掻っ攫っていくだろうし、情熱を持って吹きつける轟音も強烈です。

A Collection Of Hidden Sketches(2012)

   1stフルアルバム。全9曲約40分収録。5人編成となり、”Come Across Trachimbrod”から新名義”Trachimbrod”へと変更。日本盤は、これまでの作品と同じくリリースはTokyo Jupiter Recordsより。

 昨年2月に発売されたTokyo Jupiterのコンピでも変化は顕著でしたが、EITS系の壮大な轟音ポストロックをソリッドに激情化。同郷のSuis La Luneを思わせる哀切メロディ、蒼き感情が迸る絶叫の応酬が胸に刺さり、熱くします。繊細なアルペジオを中心とした美旋律で引き込む辺りは、前作から通じているもの。さらに鼓膜をぶち抜くような荒々しいパートが表面化してきたのは頼もしい。

 哀愁を噛みしめさせるようなギターと小気味良い疾走感が絶妙な#1から、途中からのあまりにもドラマティックな展開が涙腺にくる#3までの流れは、特に強力。緩急や強弱を上手くコントロールしながら、豊かな情緒の振れ幅を楽曲に落とし込んでいます。

 表面的には剛ではなく柔というイメージの方が強く、その優しい旋律は心の内側を包み込んでいく力を兼ね備えている。鍵盤の調べが艶めく#5、牧歌的な印象の#8のような小ぶりな美麗インストゥルメンタルにしても説得力がある。こうした小曲で昂揚感を高めつつ迎えるラスト#9は、envyやGantzを思わせる壮絶なまでのドラマ性に満ちた9分超の楽曲。瑞々しくピュアなエモーションの結晶が見せるクライマックスは、儚く美しい。

 さらにボーナストラックとして、ファニーな電子音を基調としたエレクトロニカよりの#10、そしてまるでFenneszやTim Heckerを思わせる#11といった本作曲のリミックスを2曲収録。こういった試みもまた非常におもしろい。

split -with Sore Eyelids (2013)

 Trachimbrod、Sore Eyelidsのスウェーデンの同郷同志による、胸熱スプリット作品。共に2曲ずつの提供でリリースは、Tokyo Jupiter Recordsより。

 まずは先手のTrachimbrod。このスプリットの2曲は妙に情感をつつくフックがあり、より明快な歌とメロディがあったりで 軸はかなり陽性。前作を1曲にギュッと凝縮したような哀愁エモの#1から当然のように惹かれます。躍動感あるドラムに牽引され、伸びやかなヴォーカルが視界をパッと明るくしていく#2「Efect Eyes Closed」みたいな青春時代の昂揚感に溢れた楽曲が彼等から聴けるとは驚き。

 狙いすぎな気はしないでもないが、この明快さとエモの絶妙な混合は、不思議な爽快感となって表れています。リリース時は約22歳と若いからこその挑戦。後ろを振り返るよりも力強く前進する姿勢活に期待は大きい。

 そして後攻となるSore Eyelids。北欧の激情ハードコアの雄、Suis La LuneのHenningとKarlを擁する3人組バンドである。こちらでは本隊で携えるメロディセンスはそのままに、轟音シューゲイズ方面へと舵切った音楽性が魅力的。近年ではシューゲイザーを資本として見事に取り込んでいるバンドは多いが、ここまでエモとの冴え渡ったコンビネーションを聴かせてくれるバンドは多くない。

 Constants辺りが頭をよぎる独特の浮遊感と重さ、美的感覚が融合した#3、それにインディロックっぽい序盤から、シューゲイズ・ギターと煌びやかなメロディが冴えわたり、セクシーなファルセットも混ぜてくる#4という2曲だけだが、満足する人は多いはず。

Leda(2017)

 2ndアルバム。全9曲約31分収録。本作もTokyo Jupiter Recordsより。スプリットをはさんでいるとはいえ、5年ぶりのフルアルバムとなります。

 スプリット作から続くアルペジオを中心とした繊細な音使い、シューゲイズよりの空間を埋めつくようなアプローチ、はたまたダークな色合いを持つ#5「Medskyldighet」みたいな曲まで巧みに盛り込んでいます。曲によってインディーロック#2「Allt Är Som Det Alltid Var」からジャブのようなパンク#4「Begränsad」まで飛び火し、ドラムによるテンポと強弱の操縦もまた見事。

 それでもバンドの中核を成すヴォーカルの絶叫。彼の枯れ気味の叫び声は常に切迫感を突き付けます。ですが、一本調子で押し切っている点は、正直に言うと曲調によって合ってない感もあります。スプリットの時のようにクリーンボイスを入れる変化は欲しいところで、特に#8「Hjärnspöke」辺りはそのようにできたのではないかと。

 ただ#3「Tärd」の明るさと軽快な疾走感がもたらす昂ぶり、#9「Saker De Säger」における叙情的なサウンドと叫びの合算はとても熱い。長くても4分台とシャープに楽曲を構築しており、短いランニングタイムの中で必要以上のエモーショナルが込められています。

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