昨年5月以来のROTH BART BARONのライヴへ。昨年12月にリリースした『無限のHAKU』を携えた全国ツアーの名古屋編。去年は1月→5月に延期したことで偶然にもツアーファイナルになってしまいましたが、今回もツアー終盤を飾る。とはいえ、前週の3公演が延期になってしまったし、アンコール前のMCでは逆風が吹いてて北海道公演での大雪を始めとして自然に翻弄されていると話す。ちなみに本公演もキャパ750名に対して、制限200名での開催となっています。
ライヴは「EDEN」からスタートして『無限のHAKU』からは全曲披露。演奏は7名で構成され、三船さん+お馴染みの6名。昨年と違うのは、ベースにマーティ・ホロベック氏が参加していること。アコースティック調の静かな曲であっても、分厚いアンサンブルの曲であっても、7人の小楽団のような多彩な音色が会場に響き渡る。
”どこへ行けば辿り着けるのだろう”という侘しさから始まって、最後には”夢を見るために夢を生み出す”と力強く歌われる『無限のHAKU』。静的であっても豊かな広がりがあるという印象ですが、ライヴで聴くと躍動感と重厚なアレンジが効く。序盤の「みず/うみ」の絶妙な力強さと儚さの混成ぶり、「ubugoe」のファンク色の強まり。かと思えば、本編終盤の「月光」はしんみりと月明かりの夜を慈しむ。
ハイライトと感じたのは、本編ラスト「鳳と凰」。華やぎと優雅さを持つ音色が、ステージから広がっていく。声が出せない中でも、心の中で歌い、全員が連帯共鳴している感覚がありました。それでも、この日は最も静かな曲調だった「素晴らしい日々」がすごく染みてきて、丁寧に紡がれる歌と演奏に浸りました。
ROTH BART BARONの音楽が、わたしにこれほどまで響くのはなぜか。小説や映画のように聴き手自身が自分と対話できる言葉と音があるからだと考えています。言葉と音が心の深い部分に押し寄せる。詞が己の生きるを問いかけ、生きるに向かわせる。その感覚に惹かれます。ROTHは、自分にとってはenvyやMONOと同じぐらいに響くものです。
アンコールに入る前のMCで告知していた、映画「マイスモールランド」の音楽を担当した話。「川和田恵真監督は瞬間的なキャッチーさやパンチ力が求められる時代に、とてもシリアスで誠実な作品を撮った」と三船さんは語りましたが、おそらくそれは彼等の音楽にも当てはまること。瞬間的ではなく永続的に残るもの。その表現を大切にしているからこそ両者は繋がったのでしょう。
最後の最後で「けもののなまえ」を演奏。曲の歌詞にもありますけど、三船さんは”生き残る”という言葉をこの日は、よく口にしていました。どんなことだって起こる世界、かつてない危機にある今だからこそ、強調されて”生き残る”がずっと体の中に居座る。ということで本日は、感動よりも”生きる”というメッセージを強く感じつづける一夜でした。
2022/02/25 ROTH BART BARON『TOUR 2021-2022 無限のHAKU』@ 名古屋ボトムライン
01. EDEN
02. みず/うみ
03. iki
04. ubugoe
05. BLUE SOULS
06. ショッピングモールの怪物
07. あくま
08. GREAT ESCAPE
09. Eternal
10. Helpa
11. 素晴らしい日々
12. HAKU
13. King
14. 霓と虹
15. 極彩|IGL(S)
16. 月光
17. 鳳と凰
—encore—
18. 場所たち
19. NEVER FORGET
20. けもののなまえ