【轟音系ポストロック 25選】静と動の研ぎ澄まされた美学

 平成から轟音に魅了されてきた人間が令和に送る、轟音系ポストロック25選です。

 ポストロックがよくわからんのに、轟音系ポストロック? 余計わからんっていう方にもこれを聴いておけば大丈夫という作品を国内外問わずにピックアップしました。

 本記事があなたの知るを手助けできれば幸いです。

改訂情報
  • 初稿(2023年01月01日):20作品
  • 二稿(2023年06月10日):25作品
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轟音系ポストロックとは何か?

流麗で静謐なセクションから、フィードバック・ギターが唸りを上げるセクションへとドラマティックに行き来する曲構成は、いっとき猫も杓子も取り入れる現象にまでなった。

ポストロック・ディスク・ガイド p93より引用

 轟音系ポストロックとは何か?を示す上で、上記の説明がしっくりきます。本記事で紹介しているのはこれに当てはまるアーティストに絞りました。

 そして、わたし個人が聴いたうえでの心地よさを重視して選んでいます。多くのバンド達はこうタグ付けされることに嫌悪感を示していますが、今回はちょっとご容赦いただきたい。

エモ、シューゲイザー、エレクトロニカ、マスロック、スロウコア等の要素が強いバンドは本記事には入れてません。歌が比較的に前に出ているのも入れていません。

 前述したポストロック・ディスク・ガイドでは、轟音系ポストロックの系譜にドリームポップ・シューゲイザー、ドゥーム・メタル/ポストメタルの2つの軸から紐解かれている。

 わたしが轟音系ポストロックを聴くようになったのは、ポストメタルからの流れ。ISIS(the Band)やPelicanからとなり、2007年前後から聴き始めて15年以上が過ぎました。

 時が流れるとともに猫も杓子もどころか衰退してしまった中で過去にこういうバンドがいた、今も現役で活動しているバンドなど、みなさんの知る/聴くきっかけになれば幸いです。本記事に合わせたプレイリストも併記しています。

参考文献

ポストロック・ディスク・ガイド(シンコーミュージック:2015年刊行)
16 Of The Greatest Post-Rock Albums – Kerrang!
The 30 best post-rock albums of all time – Fact Magazine
10 post-rock albums you should definitely own – Louder Sound

轟音ポストロック25選 1-12

Mogwai / Young Team(1997)

 スコットランド・グラスゴー出身の4人組バンドの1stアルバムにして金字塔(当時は5人組)。静寂から轟音へ。その様式はポストロックだけではなく、様々に波及していったがその礎を築いた存在。本記事の基準とした1枚である。

 轟音は全能ではないが、マスターピース#10「Mogwai Fear Satan」をライヴで体感することは、ある人にとっては人生が変わるほどのものになりうる。加えて、以降の作品よりもストイックな緊張感や初期衝動を強く感じさせる点も魅力。

 ただモグワイはこのスタイルに囚われず、自由に音楽を生み出し続けている。アルバム単位では5th『Mr.Beast』の方がわたしは好きだったりする。

オススメ曲:#10「Mogwai Fear Satan」

Mogwaiの作品紹介はこちら

Godspeed You! Black Emperor / F#A#∞ (1997)

 カナダ・モントリオールの前衛的ポストロック集団の1stアルバム。バンド名は柳町光男氏の同名映画に由来している。本作は10人以上のメンバーで制作され、全3曲約63分と極端な構成。16分以下の曲が無い。

 そもそも”轟音ポストロック”というラベルを超越しているバンドではあるが、聴くべき作品なので入れた。ギター、ベース、ドラム、パーカッション、ストリングス、サンプリング等を用いて大所帯が繰り広げる破壊と再生。

 聴くと同時に観る音楽としての機能性があり、モノクロームの叙事詩は忍耐と時間を要する答えのない旅に連れていく。

オススメ曲:#2「East Hastings」

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Explosions In The Sky / The Earth Is Not A Cold Dead Place (2003)

 Mogwaiと並ぶ轟音系ポストロックの代表格である4人組。本作は3rdアルバムにして最高傑作。前作で感じたアルバム全体を覆う重苦しさや不穏なムードが明け、音のきらめきや美しさの方にベクトルが向かう。

 聴いたひとりひとりの生命を輝かせるようにそのアルペジオは鳴り、リズムは刻まれる。#5「Your Hand In Mine」は聴いてて泣きそうになるぐらいに儚い旋律が胸を打つ。

 聴き手に様々な情景を浮かばせる、様々な感情を抱かせる。心の真芯を捉えようとするその音塊は、人生に彩りを与え、寄り添うサウンドトラックのよう。

 代表曲#2「The Only Moment We Were Alone」は、ライヴにて全身で浴びてほしい曲である。

オススメ曲:#5「Your Hand In Mine」

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MONO / Hymn to the Immortal Wind(2009)

 ポストロック/インスト・バンドで世界的に最も有名な日本のバンド。本作は結成10年目に発表された5thアルバムであり、MONOを代表する作品。プロデュースはスティーヴ・アルビニ。

 ”ひとりの少年と少女の生と死、魂の永遠性をめぐる、 本作の為に実際に書き下ろされた物語”に基づいて制作された。作品ごとにクラシックの要素を強めてきたが、今回は20人超に及ぶオーケストラと融合を果たす。

 猛吹雪の渦中から美しきと歓喜を拾い上げる名曲#1「Ashes in the Snow」を皮切りに、ラストの勇ましい旋律が胸を打つ#7「Everlasting Light」に至るまで描くのは希望だ。

 長い時間をかけて築かれる崇高でドラマティックなサウンドは、あらゆる人種や国境や時空を越えて響き続けている。

オススメ曲:#1「Ashes in the Snow」

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Maserati / Inventions For The New Season

 アメリカ・ジョージア州のアセンズで結成された4人組。1stはグランジ~オルタナ風情が乗った爆音を響かせ、2ndは”Instrumental U2”と自称。そんな荒々しさと叙情性を併せ持つインストを展開。

 この3rdアルバムはクラウトロック、タイトル通りにマニュエル・ゲッチング氏を思わせるサウンドを組み合わせ、揺れ動く静と動の中に新たな音像を提示した。

 ドッツ、ドッツトーキョーと呼ばれていた日本のシューゲイザー系アイドル、”・・・・・・・・・”がカバーしていた#1「Inventions」、後の人力ダンスミュージックに目覚めていくヒントとなった#6「Show Me The Season」を収録。

 MONOと親交が深く、彼等の助力によって来日も果たした。結成から20年を超えて今も活動中。

オススメ曲:#1「Inventions」

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Yndi Halda / Enjoy Eternal Bliss(2006)

 UKはケント州カンタベリーを拠点に置く5人組。本作は1stアルバムでタイトルの意味は”永遠なる至福を楽しむ”。バンド名は、このタイトルを古ノルド語で言い換えたもの。

 全4曲収録だが10分以下はなく最短で11分41秒、最長は19分38秒。ポストロックとクラシックの融合といえばそうだし、GY!BEは近しい存在。だが、明らかにベクトルは光・福に向いている。

 揺らぐストリングス、強烈なギター・ノイズが運ぶ歓喜にヴォーカルのないシガー・ロスを感じる場面も。しかし、Yndi Haldaはもっと華やぎと躍動感がある。

オススメ曲:#1「Dash and Blast」

メインアーティスト:Yndi Halda
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God Is An Astronaut / Ghost Tapes #10 (2021)

 2002年に結成されたアイルランド・ダブリン出身の4人組。22年で結成から20年を迎えた重鎮だが精力的に活動中。本作は9thアルバム。

 ”神は宇宙飛行士”というバンド名通りにスペーシーなロックにエレクトロ~アンビエントといったテイストを交えたサウンドに定評がある。しかし、本作で目立つのはPelicanらに接近したポストメタルの重厚。

 #1「Adrift」の剛腕なスタートに驚かされたが、その後に流麗なピアノや電子音による意匠が追加され、静と動を漂流する。

 プレスリリースで”最も凶悪なアルバム”と謳うが、ヘヴィネスへの野心的な進軍を果たしながら自身のこれまでの音楽とも折り合いをつけた。

 加えて本作でもバンド特有のメランコリックな宇宙愛は貫かれ、時折の淡いタッチに目が覚める。

オススメ曲:#2「Burial」

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Saxon Shore / The Exquisite Death of Saxon Shore(2005)

 2001~09年まで活動したペンシルヴェニアの5人組は、2度にわたる来日経験もある。本作はデイヴ・フリッドマンのプロデュースによる3rdアルバム。

 職人肌から生み出すポストロックとインディーロック、音響エレクトロニカの邂逅によって、前作からエレガンスな煌めきと気品が格上げされた。直に心臓に触れようとする純真なメロディの連続は反則級で、電子音はThe Album Leaf辺りを思わせるほど愛らしさがある。

 プレスリリースによると”10曲を通して、Saxon Shoreは彼ら自身の仮想的な死の物語を探求し、アルバムの最後には沈黙の瞬間が用意されています”とのこと。

 #5と#10を聴いていると、人生という激動の航海を思い返させる熱量と巨大な音に包まれる。

オススメ曲:#5「Isolated by the Secrets of Your Fellow Men」

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te’ / それは、鳴り響く世界から現実的な音を『歌』おうとする思考。(2007)

 残響レコードで代表を務めるギタリスト・konoを擁する当時4人・現3人組のインスト・バンド、te'(テ)。

 アルバムタイトルは全29文字、曲タイトルは全30文字で統一するという特異なスタイル。取っつきにくさを感じるそれとは裏腹にエモ、ハードコア色の強いインストゥルメンタルを掻き鳴らす。

 本作は2ndアルバム。ジャケットの暖色のピンクは、さらに繊細でメロウで温かみを増したことの証明。前作と比べてもメロディが増え、ギターが歌い、ベースが歌い、ドラムも饒舌。

 そこがte’の強みで、歌が無くてもそれぞれの楽器が言葉を奏でてるような感覚を持っている。

オススメ曲:#2「美しき旋律も、音を語る言を持たずしては心にも『留』めがたし。」

➡ te’の作品紹介はこちら

65daysofstatic / The Fall of Math(2004)

 2001年にイギリス・シェフィールドで結成された4人組インスト・バンドのデビュー作。

 轟音ギター+ピアノ+ブレイクビーツという音楽性を初期から確立。そのさまは“モグワイ・ミーツ・エイフェックス・ツイン”と形容され、世界各地で人気を得るほど。ここ日本でも残響レコードから国内盤が発売。

 エレクトロニカ寄りの柔らかなタッチから無機質かつ緊迫感のあるデジタルビートが組み込まれ、ギター/ベース/ドラムの迫力ある生音ががっぷり四つでぶつかりあう。

 それでもプログラミングを操る頭でっかちさやクールさよりも、人間的な騒々しさと熱さがあるのが初期の65dosの特徴。

オススメ曲:#3「Retreat! Retreat!」

Maybeshewill / I Was Here For a Moment, Then I Was Gone(2011)

 2005年にイングランド・レスターで結成された5人組インスト・バンドの3rdアルバム。

 生楽器と電子音が融合したスタイルでデビュー当時は65daysofstaticと比較されていたものの、アルバム毎に変化。本作は前作よりヘヴィなギターの比重を減らし、エレクトロニクスやオーケストラを加えて音響的に拡張。

 ピアノやストリングスを押し出してキメ細やかで彩り豊かなタッチに磨きをかけており、轟音系と呼べる爆発力も維持。

 楽器陣の生み出すアンサンブルの美しさ、ダイナミズムとリリシズムの応酬。#3「Red Paper Lanterns」はバンドを語る上では欠かせない名曲のひとつ。

オススメ曲:#3「Red Paper Lanterns」

➡ Maybeshewillの作品紹介はこちら

sgt. / stylus Fantasticus (2008)

 1999年に結成された日本のインスト・トリオ(4人の時期もあり)。本作は結成9年目の1stアルバムとなる。

天空を優雅に舞い踊るヴァイオリン、悠然とした大地を思わせる力強さを持つリズム隊。それらが繋げる壮麗かつスペクタクルな物語にはジャケットに似たステンドグラスを思わせる華麗な美しさ、獰猛な獣を思わせる激しさの両方が存在する。

 10年近くに渡って蓄積した技術・経験という揺るぎない土台をベースに大輪の花を咲かせた傑作であり、#5「再生と密室」や#7「銀河を壊して発電所を創れ」などタイトルも独特。

 サブスクにないが、知られざるインストの名盤として聴いてみてほしい(※2023年7月21日よりサブスク配信が始まりました)。

オススメ曲:#5「再生と密室」

sgt.の作品紹介はこちら

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