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INTERVIEW

lantanaquamara インタビュー ~Thinking Man’s Metal From JPNの萌芽~

2017/1/3 INTERVIEW

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LtoR:Toshiya Kawamitsu(Voice) Mata-Low(Bass/Ambience) SO))) (Guitar/Sound Programming)

  Thinking Man’s Metal From JPNをコンセプトに掲げ、活動を続けてきたSO)))氏を中心としたプロジェクト、lantanaquamara(ランタナカマラ)。2012年末に始動してから約4年。Meshuggah、Tool、ISIS、envy、Cult of Lunaといったバンドに影響を受けつつ、そういったフィールド外の音楽にもアンテナを立てて自身の音楽をブラッシュアップしてきました。2016年11月には5曲入りとなる初の音源、『ランタナカマラ』をリリース。前述した先人達の影響を感じさせながらも、日本語詩への徹底的なこだわりとポストメタルを追求したサウンドで全5曲を表現しています。

 この度はSO)))氏にメール・インタビューを依頼。弊サイトの読者ということもあって快諾をいただき、本記事の掲載となりました。EP『ランタナカマラ』に関してはもちろんですが、彼の生い立ち、人気を博したニコニコ動画『3日で出せる!超速デスボイス習得塾』、自主レーベル「インハレーション デス レコーズ」が掲げるスモークハラスメントなどについて伺っています。社会生活を送りながら、音楽家として生きること。彼なりの考え方に迫れた内容になっていると思います。謎めいているlantanaquamaraの現在地が知れる10,000字超えのインタビュー、ぜひともご一読ください。

 

lantanaquamara‐ Interview

―― まずSO )))さんが音楽をやり始めた経緯について教えてください。

 3歳の頃からクラシックピアノの教室に通っており、それが自分にとっての音楽活動の始まりでした。約12年ほど続けていて、いわゆる相対音感的なものだったり、楽譜の読み方であったり、音楽に取り組む上での基礎的なスキルや素養は、ピアノを経て身につけたと考えています。

 そういった中でバンド音楽に興味を持つきっかけとなったのが、中学1年生の時に出会ったSEX MACHINEGUNSです。ピアノにしか触れることがなかった自分にとって、彼らのようなヘヴィメタル・バンドが鳴らすエレキギターのサウンドは新鮮で、自分もギターがやりたくて仕方がない気持ちになりました。

 ギターを手に入れたのは中学2年生の頃で、そこからは脇目も振らずにHR/HM道一直線。中学校時代にヘヴィメタルの歴史を学び、高校時代はメロスピやメロデス、大学に入学する頃にはメタルコアやカオティック・ハードコア、といった感じで段々とエクストリームな音楽を聴くようになっていきました。

 そんなメタル一辺倒の僕にとって大きな転機となったのが、大学2年生の春に出会ったRadioheadの『KID A』です。当時の自分にとっては『KID A』のような音楽作品が存在していること自体が衝撃的で、自らの音楽的見聞の狭さを痛感させられました。本作から受けた影響は計り知れず、僕の音楽人生において非常に重要度の高い作品です。

 そこからはポストロックやシューゲイザーに流れたり、アンビエントやドローンにハマったり、Warp Records系のテクノアーティストが好きになったりと紆余曲折あります。最終的に辿りついたのがMeshuggah、Tool、ISIS、envy、SUNN O)))、Borisといった並びのバンド群です。前述した音楽嗜好に着地したのは21歳を迎えた頃の出来事でしたが、28歳になる今においても大きくは変わっていません。

 

【デスボイス 出し方】3日で出せる!超速デスボイス習得塾【Part1】

【デスボイス 出し方】3日で出せる!超速デスボイス習得塾【Part1】

―― かつては「ゾークン」名義でニコニコ動画にデスボイス講座を投稿(現在はYouTubeにもアップされている)。それが大きな反響を読んでいました。この動画を投稿したきっかけ、また改めて振り返ってみてどうでしょうか。

 きっかけは転職活動です。当時の僕は新卒で入社した会社を2年程で退職し、次のキャリアをどうしようかと悩んでいる時期でした。

 そんな時、ある経営者の方に伺った「仕事を選択する上で深く検討すべき3つの軸」という話が非常に腹落ちする内容でした。そうであるならば、自分もその3軸を深く検討した上で行動を起こしてみようと。その結果、「3日で出せる!超速デスボイス習得塾」という動画コンテンツの発案、および投稿活動の実施に至りました。

 ちなみに上記の「3つ軸」というのは、「自分ができること」「自分がやりたいこと」「社会的価値があること」の3つです。この3軸が「最も近づく領域」で仕事ができるようにキャリアを描くべし、というのが前述した話の概要です。

 実際に3軸の分析を実施した際、「できること」と「やりたいこと」は直ぐに出てきたんです。当時の自分にとってのそれは、「曲が作れること」と「自分の好きな音楽を作ること」でした。ただ、「できること」というのはあくまで汎用的なスキルの話で、「曲が作れる」という言い方だと属人性が高く「社会的価値」に結びつけ辛い。そう判断したため、一旦「音声ファイルの編集スキルがある」というレイヤーまで落とし込んで解釈しました。

 「音声ファイルの編集スキル」であれば、世の中にそれを活かせる仕事も多くあるだろうから、「社会的価値のあるスキル」という捉え方で問題ないだろう、という考えです。そして「やりたいこと」は「自分の好きな音楽を作ること」ですが、それを社会的価値と結び付けて考えてしまうと「自分の好きな音楽」が作れなくなるような気がしてしまった。なので、ここでは「音声編集スキルを活かして社会的価値のあるコンテンツを産み出すこと」を「やりたいこと」に設定し直しました。

 最後は「社会的価値」の創出ですが、ここでは「音声ファイルの編集スキル」と「音声編集スキルを活かしたオリジナルコンテンツ」でどのような人たちの悩みを解決できるだろうか?と考えました。人の悩みを解決できるコンテンツであれば、それは社会的価値のあるコンテンツである、と考えていました。

 その文脈からなぜ「デスボイス」に落ちたのかという話ですが、当時ネット上に投稿されていた「デスボイスの出し方」を解説した動画は、ほとんどが外国人の方が英語で解説するような内容だったのです。僕もその手の動画を見ながら練習したクチでしたが、練習しながら「日本語で丁寧に解説してくれている動画があったら良いのにな」と考えていました。

 後はもうお分かりかと思いますが、「じゃあ自分がやってしまおう」という発想です。「デスボイス動画」の視聴者数の規模については、海外の動画の再生数を見ればおおよそ想像がつきました。ニーズは確実にある、という確信があったんです。いざ投稿活動を始めてみたら、予想に反してあっという間に再生数が伸びました。ニコニコ動画のトップページに表示され、キー局のテレビ番組出演も果たします。目に見える形で成果が返ってきたことで、ものすごく達成感がありましたし、自信が持てました。

 動画の投稿活動を経て「人の悩みを解決できるコンテンツは評価される」という実感を得ることができましたし、インターネット上での人の繋がりも増えました。そこで得た人の繋がりが、lantanaquamaraの活動に前向きな影響を与えてくれている部分も多く、月並みですが本当に「やって良かったな」と思います。

 長々と書いてしまいましたが、「思いついたら即行動」というスタンス、「実際に行動を起こせるかどうか」という部分の意志力はとにかく重要なのだなと。どのような領域においても、成果を上げている人はこの2点に秀でているという印象があります。

 

―― 2012年末にSO))さんの個人プロジェクトとして始動し、その翌年に他のメンバー2人やサポート・ドラマーが加わってlantanaquamara(ランタナカマラ)が結成されたそうですが、結成のいきさつについて教えてください。

 実はlantanaquamaraの前にも別名義の個人プロジェクトを2つ並行してやっていて、曲を作ってはインターネット上に公開する、といった活動を継続的に行っていました。

 この2つのプロジェクトでの曲作りを進める中で、どちらのプロジェクトの毛色にもマッチしないタイプの曲ができてしまいまして、それならば新しいプロジェクトを立てましょうと。それが、lantanaquamaraの元になっています。ちなみに、その時にできた楽曲というのが、EP収録の#2「鳳凰木」です。

 Voiceを担当してくれているToshiya Kawamitsuくんは大学時代の学友。前述した個人プロジェクトにおいても、ヴォーカリストとして協力してくれていました。僕は彼の書く詞が非常に好きでして、lantanaquamara結成の際にもまた力を貸して欲しいと声をかけた感じです。

 Bass/AmbienceのMata-Lowくんについては、僕の個人プロジェクトの音源をSoundCloudで聴いて、「何かできそうであれば一緒にやりたい」とコンタクトをとってきてくれました。彼は元々ベーシストではなく、ノイズバンドでシンセサイザーを即興で演奏するようなことをしています。音楽的に通じ合えると感じ、是非一緒にやりましょうという話になりました。彼がベースを担当することになったのは、単純にベーシストが居らず、本人がやりたがっていたので何となく決まりました(笑)。 シンセの手腕については、楽曲制作のプロセスで発揮してくれています。

 ちなみに二人には90年代ヴィジュアル系を音楽的ルーツとしている共通点があります。Mata-LowくんはLUNA SEA、Kawamitsuくんは黒夢だという話を聞いています。

 サポート・ドラマーのKentaro Furusawaくんについては、大学時代にmixiを通じて知り合った友達です。僕が彼のバンドにギタリストとして加入し、即日クビを宣告されるという、ちょっと苦い思い出があったりします(笑)。彼は、現在アンビエント/ドローンといった系統の音楽をメインでやっていて、lantanaquamaraに対してはサポートという立ち位置で協力してもらっています。ドラムをほとんど叩かなくなったにも関わらず、快くサポートを引き受けてくれたことにとても感謝しています。

 

―― そして 2016年11月には、3年以上の月日をかけて制作した5曲入りEP「ランタナカマラ」がリリースされました。本作品の制作はどのようにして進められてきたのでしょうか。

 制作の進め方として、まず僕が自宅で「これ以上できない」という所まで曲のアレンジを詰め、メンバーに共有します。ギターやベースの録音はもちろん、ドラムやシンセサイザーのプログラミングも全て行われた状態の音源を作ります。ゆえに仕上げるまでに丸1年以上かかってしまった楽曲もありました。

 そこからはパラレルの作業で、Kawamitsuくんは歌詞や曲名の勘案を、Mata-Lowくんはノイジーなシンセサイザーのパートを考えます。歌詞が完成したら僕とKawamitsuくんは二人でスタジオに入り、「歌詞」を「歌」に落とし込んだ際の表現方法などをすり合わせながら、仮のヴォーカル・パートをレコーディングします。

 Mata-Lowくんのシンセパートについては、完成したらデータを丸々送ってもらって、再び僕の方で編集を加えつつ、楽曲のリミックスを行います。僕らの楽曲はシンセのレイヤーが厚いものが多いですが、音階がハッキリしているものは僕が自宅で演奏ないしはプログラミングしています。楽譜に起こすことが難しいような音色は、Mata-Lowくんの手によるものです。

 上述のような作業を収録曲数分行った上で、本番のレコーディングに入りました。レコーディングについては、まず僕が自宅で本番用のファイルをProtoolsで作成。ギターとベースの再録、シンセイサイザーのアレンジの詰めを行います。その後、スタジオにProtoolsのファイルを丸々持ち込み、ヴォーカルとドラムの録音、ミックス、マスタリングを実施するような流れでアルバムを完成させました。

 

lantanaquamara-1st EP「ランタナカマラ」Trailer【11/16 ON SALE】

lantanaquamara-1st EP「ランタナカマラ」Trailer【11/16 ON SALE】

―― 以前からですが、このEPにおいてもlantanaquamaraは明確に”ポストメタル”という言葉を明記し、“Thinking Man’s Metal from JPN” というキャッチコピーを用いています。2012年のプロジェクト開始からおそらくはブレずにその音楽性を追求してきたと思うのですが、いかがでしょう。また、本作におけるlantanaquamaraらしさはどこにあると考えていますか?

 現時点では、未だバンドとして「らしさ」を説明できるようなレイヤーには到達できていないと考えています。楽曲も5曲しかないですし、EP制作を経ての反省点も数え切れないほどあります。

 ただ、いずれは多くの人に「lantanaquamaraらしさ」を語って頂けるような存在になれるよう、僕はこれからも曲を書き続けますし、バンドとしてよりアクティブな活動が実現できるように努力しつづけます。これは絶対です。そんな駆け出しのバンドが自ら「ポストメタル」「Thinking Man’s Metal」という枠組みを提示している理由は、「俺達はこの領域で戦っていくぞ」という決意表明です。

 「ポストメタル」というジャンルは、日本においては「シーン」が存在しているかどうかすら怪しい、極めて認知度の低いタイプの音楽だと考えています。ただ僕が自分なりにアンテナを張って色々な音楽に触れてきた結果、現状辿り着いている最も興味深い音楽表現が「ポストメタル」のそれに該当することは、間違いないです。

 それならばバンドとして「ポストメタル」を名乗りたいし、一人の作曲家として追求したい。仮に日本で未成熟なジャンルなのであれば、lantanaquamaraが日本のポストメタルを象徴するようなバンドになり、シーンを作り上げたい。そんな気概を込めています。

 

―― ちなみにEPからの先行公開曲には#2「鳳凰木」を選んでいましたが、この曲にしたのはなぜですか。

 #2「鳳凰木」は、僕自身が作曲家としてやりたいことを、最も自由に表現できた曲だと感じているからです。このバンドが発足するきっかけとなった曲でもあったので、先行公開曲に相応しいと考えました。

 「シングル・カット」という観点でいくと、尺が短くてテンポの速い#4「アルビノの流星雨」を選定すべきなのでしょう。ですが、ここでは一般論に順ずるよりも、バンドとして進んで行きたい方向性を明示することが重要だと判断しました。

 

――  ここでセルフライナーのような形で全曲解説していただけますか?

 

1. 図書館の葬列

 EPの冒頭を飾るイントロダクション的な楽曲です。このEPは「全曲を通して何らかの“音楽的繋がり”があること」を念頭に置いて制作しています。本曲は#2「鳳凰木」の序曲としての役割、アルバムを1周して聴いた際の#5「華燭に抱かれた天文台」のマイナー調のコードを引き継ぐ役割を兼ねています。

 コードのルート音とBPMを#2「鳳凰木」に合わせて#1~#2の流れを自然なものとしつつ、コード自体は#5「華燭に抱かれた天文台」に順ずるマイナー調のものを用いることで、上述の2つの役割を果たすことができる、という仮説のもとで制作したのですが、いかがでしょうか。

 また「楽曲の役割」という以外の観点でお伝えしたい本曲の聴き所が、エレキギターの「コードの噛み合わせ」です。僕はエレキギターの表現において「コードを弾く」ことが何よりも好きで、コードの表現を追求したいがために7弦ギターを導入した、といった背景もあります。

 楽曲制作においては「左右のギターがいかに異なるコードを弾き、いかに複雑なハーモニーを奏でることができるか」という点に非常にこだわっています。この曲においても、そのこだわりを少しは感じて頂ける仕上がりになっていると考えています。

 

2. 鳳凰木

 僕なりに「ポストメタル」という概念に向き合って制作した、バンドを代表する楽曲です。この曲を作り始めた頃はCult Of Lunaの『Vertikal』を熱心に聴き込んでいたので、そこからのインプットも多かったのではないかと考えています。

 02:00あたりから薄っすらと聴こえてくるシンセサイザーのフレーズがこの曲のテーマとなっていて、楽曲中はもちろん#2「鳳凰木」に続く2曲にもタスキを渡すようなイメージで登場させています。この点は是非、意識して聴いて頂けると嬉しいです。

 07:00~ が本曲のカタルシス的セクションになっています。それまでのパートは全て07:00~ の感動を最大化させるために存在していると言っても過言ではありません。少し尺の長い楽曲ですが、是非とも最初から通して聴いてみて欲しいです。

 

3. 夏至を待つ夢はトンネルで

 #2「鳳凰木」と#4「アルビノの流星雨」の橋渡し的な役割を担う楽曲です。前述した通り、#2「鳳凰木」で用いたフレーズを登場させているので、“音楽的繋がり”は感じていただきやすいのではないかと考えています。

 最初はギタートラックのみで構成された簡素な曲だったのですが、簡素過ぎるかなということで試行錯誤を重ね、打ち込みのドラムトラックを挿入しました。スネアの音にリズミカルなディレイをかけていて、立体感のあるビートを構築しています。このあたりの発想は、Aphex TwinやSquarepusher、Machinedrumなどの影響が出ていると考えています。

 

4. アルビノの流星雨

 BPM200の速い曲です。最初はConvergeのようなドタバタした曲を作ろうとしていたのですが、彼らのようなハードコア的粗っぽさが上手く表現できず、非常に苦戦しました。僕が速い曲を作ると、どうしてもカッチリとしたキメの入ったメタルな曲になってしまうんです。なので本曲ではとにかく「カッチリしすぎないこと」を意識して制作を進めたのですが、やはりキッチリカッチリのメタル・チューンになってしまいました(笑)。

 lantanaquamaraとは無関係の曲として制作を進めていたのですが、アレンジを重ねていくうちに#2「鳳凰木」とコード進行が似てきて、#2で使ったシンセサイザーの音色をそのまま挿入したら違和感なくフィット。EP収録曲候補として検討の土台に上がりました。「ポストメタル」というキーワードから離れた所にある楽曲ですが、「Thinking Man’s Metal」という言葉を自分なりに噛み砕いた結果、「こういうのもアリだ」という結論に辿り付きました。

 

5. 華燭に抱かれた天文台

 この曲はToolの「Intermission」という曲をキーボードで弾いていた時、イントロのオルガンとオルゴールのフレーズが思い浮かんで、そこからアイデアが膨らんで完成していった曲です。テンポは5曲中唯一の3拍子となっていますが、これは#4「アルビノの流星雨」の後半に4/4から3/4にテンポチェンジするパートがある為、それを引き継いでの3拍子としました。

 曲調としては「a dead sinking story」の頃のenvyに通ずる内向的な激情ハードコアの表現、Opethっぽいヨーロピアンなダークさの融合をおそらくは目指そうとしたのだろうなと思います。楽曲を作っている最中は「こんな感じにしたい」というイメージはあまり持っていませんでしたが、現在においては「激情ハードコア×Opethっぽさ」という風にイメージが顕在化しているので、この領域は今後もう少し深掘っていきたいと考えています。

 ライブではEPを最初から最後まで通して演奏するようなステージを想定していて、この曲は最後に演奏することになります。曲の後半にテンポが速くなるパートを組み込み、演奏者もお客さんもテンションを上げやすいような展開を目指しました。音源だとドラムの音量が小さめなので伝わりづらいかも知れませんが、Meshuggahライクなポリリズムも取り入れていてやや複雑なので、ライブでもしっかり再現できるように努力したいです。僕達がしっかり演奏できさえすれば、カッコいいパートになると信じています。

 

―― 徹底的に日本語にこだわった歌詞はVoice担当のToshiya Kawamitsuさんによって書かれています。彼の詞や歌の表現についてはコンポーザーの立場からどのように感じていますか。

 彼の歌詞がなければ、”lantanaquamara”は”lantanaquamara”で在り続けることができないと考えています。それほどこのバンドにとって重要度の高いものです。僕の主観になってしまいますが、彼の歌詞を読んで「何かに似ている」と感じたことが一度たりともなく、「真似して書いてみろ」と言われても自分には書けません。磨き抜かれたオリジナリティがあり、素人が気安く触れてはいけないようなレベルの仕上がりであると考えています。

 歌詞そのものの魅力についても、美しい、独創性がある、知的だと感じますが、どのような言葉を用いれば彼の歌詞を適切に表現できるのか、想像がつきません。僕たちの楽曲を聴いて下さった方々からも、歌詞に関する感想は多く寄せられています。やはり彼の歌詞はどこか突出した魅力があり、多くの人の心を捉えるのだろうなと感じます。

 プライベートな話をすると、普段の彼は舞台や映画などの脚本を書いて生計を立てています。文章のプロです。付け焼き刃の日本語表現ではとても太刀打ちできないような技術を持っているでしょうし、彼なりのスタイルやこだわり、得意とする表現手法も確立されていると考えています。ですので、彼の書く歌詞には絶大な信頼を置いています。

 歌の表現については、基本的に僕のほうから「こうしてくれ」というオーダーを出しています。そのオーダーに応えられない状態であれば、応えられるようになるまで練習を積んでくる。そんなストイックな人物です。

 

―― 歌い手のイメージがあるから勘違いしていましたけど、SO)))さんって本作では全く歌ってないんですよね?

 いえ、#4「アルビノの流星雨」の掛け合いパートで少しだけスクリームしています。Kawamitsuくんとは違う「ギャー」という感じの叫びなので、直ぐにお分かり頂けるかなと(笑)

 

―― SO)))さんがメインコンポーザーとして楽曲制作を行っていますが、どういった点にこだわって制作されていますか? また、その創造の源というのはなんでしょうか。

 制作におけるこだわりは、「自分のやりたいことをやる」ことです。

 僕が敬愛するバンドやミュージシャンの多くは、「やりたいことをやっていたら音楽的に突き抜けてしまった」ような人たちであり、僕も彼らのような存在になりたいと考えています。であれば、僕も自分の「やりたい」という気持ちに素直に従い、曲を作り続けるべきだと考えています。

 音楽を作っていると、例えば「今、流行りのサウンドを取り入れるべきか否か」といった迷いが生じる瞬間もあります。そんな時に立ち返る原点として「自分がやりたいかどうか」というシンプルな判断軸を持つことで、ブレることなく「自分の音楽」を追求することができていると感じています。

 「創造の源」という部分については、そもそも論ですが、僕は人生において「音楽を作ること」以上にやりたいことがないんです。自分の作りたいと思える音楽があり、それを作ることに対して情熱を燃やすことができている今の自分の人生は、とても幸せなものだと考えています。なので「これぞ創造の源である」といったようなものは明確にはなく、自分の日々の生活全てが曲作りに繋がっているように感じます。抽象的な回答ばかりで恐縮ですが、一人の男の純粋な気持ちとして、「生きている限りは音楽を作り続けたい」と強く思っています。

 

―― Special Thanks欄の中にはTomy Wealthさん、mouse on the keysの川崎さん、wombscapeのRyoさんの名前があります。こちらについても伺わせてください。

 lantanaquamaraの発足ならびに本作品の制作における僕のモチベーションに、直に強い刺激を下さった方々です。

 Ryoくんは「バンド形態で音楽活動を行う情熱」に火をつけてくれた人、Tomyさんは僕が考える「インディペンデント・アーティストの理想形」を体現している人、Kawasakiさんは「自分が進もうとしている道は正しいということ」を確信するきっかけをくれた人、という感じでしょうか。詳細なコメントをすると非常に長くなってしまうので、簡単ですが一旦ここまでとさせて下さい(笑)。

 

―― 自主レーベル「インハレーション デス レコーズ」は、『日本社会において軽視されがちな「スモークハラスメント」に悩む人々の声に耳を傾け、モラルを欠いた喫煙行為に疑問を呈し続けます。』というポリシーがあるそうですね。僕自身はタバコを一度も吸ったことがない人間なので立場としては嫌煙側ですが、SO)))さんがレーベルのポリシーに掲げてまでそういった姿勢を貫くのはなぜでしょうか。

 結論から言うと、大きく3つの理由があります。1つめは「僕自身が大の嫌煙家で、喫煙者優位の環境において、生き辛さを感じていることを主張したかった」ということ。2つめは「自分と同様の感情を抱いている嫌煙家が身近に複数名おり、僕の考えに共感してくれた」ということ。最後は「喫煙者優位の環境において、喫煙者に対して煙草が苦手だと直接伝える心理的障壁が高い」という意見が、関わったメンバー全員の共通した想いとして存在していたことです。

 簡単にまとめると「煙草が大嫌いだけど、喫煙者に対して煙草が嫌だと直接言うのは気が引ける」といった気持ちを抱いている人が何人かいて、自分もそれに共感できた。なので、口頭ではなく何か別の方法で「嫌煙家であること」を主張できるツールを作りたいと考えました。それが転じて、「インハレーション デス レコーズ」というレーベルの名称、およびポリシーの制定に繋がりました。

 煙草を吸うという行為は「経済的な損失を被りつつ、自身の健康を害する行為を積極的に行い、それが周囲の人の健康にも害を与える」というもので、論理的に考えると全く道理が通らない行為です。それでも吸いたい、という人をわざわざ止めようとは思いません。ですが、非喫煙者への接し方については副流煙の扱いはもちろん、喫煙直後に一定時間は近づかない等、徹底して留意すべきだと考えています。

 また「スモークハラスメント」という文脈で言うと「全面喫煙可の会場で開催される飲み会」と「ライヴハウスのフロアでの喫煙」はある種の治外法権で、受動喫煙を防ぐことが非常に難しくなります。そんな時に、例えば「インハレーション デス レコーズ」のロゴがプリントされた洋服などのアイテムを身につけることで、喫煙者に対して自らの内なる思いを主張できるようになる。そんな世界を作ることができれば、素晴らしいなと考えています。

 現在のロゴは僕が急ぎでこしらえた粗雑なものですが、信頼できるデザイナーさんに相談し、納得のいくものが完成次第、商品の展開も考えていく予定です。最後に煙草を吸っている全てのバンドマンに伝えたいのですが、もし「バンドを長く続けたい」と考えるなら、今すぐ煙草を止めるべきです。作曲活動にしてもライブ活動にしても、身体が資本であることに変わりはありません。年齢を重ねれば重ねるほど「健康でいること」の重要度は高くなります。そんな前提がありながら「煙草を吸う」ということは、つまるところ「バンドを長く続けられる可能性を自ら低下させている」と言えます。

 この事実をどのように捉えるかは人それぞれですが、「バンドは長く続けていきたいけど、煙草は止めない」という判断は、僕個人としては少しストイックさに欠けるのではないかと感じてしまいます。「煙草を吸っていても、長く活動しているミュージシャンはいるじゃないか」と思った人も中にはいるかもしれませんが、それはあくまで結果論です。僕が伝えたいのは、「喫煙は、ミュージシャンとしての寿命を縮める可能性を自主的に高める行為である」ということです。

 身体はひとつで、自分の健康状態というのは100%自由にコントロールできるものではありません。特に若いバンドマンの方々には、大切にして欲しいなと思います。

 

昨年は1st EPをリリースでき、バンドとしての第一歩を踏み出せた素晴らしい1年でした。今年はギタリストとドラマーを見つけ、ライブでもって僕たちの音楽を表現していけるよう精進していきます。少しでも興味のある方は、お気軽にご連絡下さい。#メンバー募集 #lantanaquamara

— lantanaquamara(dr募集) (@lantanaquamara) December 31, 2016

―― そして、lantanaqumaraはこれまでの活動でライヴを一度も行っていないと拝見しました。SNSでは定期的にメンバー募集告知を行っていますが、2017年はライヴがひとつの目標といえそうですか。

 そうですね。現状ですとドラマーとギタリストの正規メンバーを1人ずつ募集している状況で、体制が整い次第ライヴをしたいと考えています。なので、「ライヴをする」は今年のひとつの目標になってきます。ただ単に「ライヴをする」だと、目指すべき目標としてあまりに低いように感じるので、今年は僕が個人的にリスペクトしているようなバンド達との共演を目指したいです。

 好きなバンドとの共演というのは、前提として双方を「同志」として認め合っていないと実現し得ないと考えているので、僕らは自分たちのライヴの精度を高め、共演したいと考えているバンドに自信を持って声をかけられる状態になることが、最初のステップになりそうです。

 具体的に共演したいと考えているバンドについてですが、国内ポスト◯◯界隈ですと「wombscape」と「Heliostrope」については特別な思いがあり、いつか是非一緒にやりたいと考えております。

 wombscapeはRyoくんに大変お世話になっているということもあり、兄貴というか先輩というかそんな目線で見ているバンドです。素晴らしいライヴをするバンドなので、彼らの出演するイベントに一緒に出ても見劣りしないライヴバンドになるぞ、という努力目標でもあります。

 Heliostropeについては1年ほど前にSoundCloudで彼らの楽曲を聴いて一気にファンになりました。Twitterで彼らの楽曲に関する投稿をしているうちにメンバーの方々と繋がり、勝手ながら「身近なバンド」として意識するようになってます(笑)。年齢も近そうですしね。彼らのほうが先輩で、Rosettaとの共演など素晴らしい実績を作っていますが、いずれは僕らが彼らの拠点である名古屋に行ったり、あるいは僕らが彼らを東京に呼んだり、といった関係性が築けるようになれば素晴らしいなと考えています。

 またポスト◯◯界隈とちょっとずれたところなのですが、Loopriderというノイズ・バンドとも一緒に共演したいと考えています。ありがたいことに僕らのEPを聴いてLoopriderの方からコンタクトがあり、そこで始めて彼らのことを知りました。音源を聴いてみたらメチャクチャかっこ良くて。ENDONやBorisなどに近い、特定の枠に収まらないアヴァンギャルドなタイプのバンドかと思うのですが、そんなバンドの方が僕の音楽に興味を持ってくれたことがとても嬉しかったです。まだライヴを観ることができていませんが、凄まじいステージを展開することは想像に難くありません。僕らもしっかり体制を整えて、同じステージに立てる日を迎えることができればと考えています。

 

lantanaquamara ‐ Information

 

1st EP『ランタナカマラ』を2016年11月16日にリリース。DISK UNIONや自主レーベルにてCD盤、iTunesやBandcampなどでデジタル盤が購入できます。

 

lantanaquamara ‐ Links

 

OFFCIAL SITE : http://www.lantanaquamara.jp/
Facebook : https://www.facebook.com/lantanaquamara/
Twitter : https://twitter.com/lantanaquamara
Bandcamp : https://lantanaquamara.bandcamp.com/
YouTube : https://www.youtube.com/channel/UCXGlEvcjGvs9sdpT-d9J0dg
SoundCloud : https://soundcloud.com/lantanaquamara

 

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