【ライブ感想】Svalbard LIVE IN NAGOYA 2024 with kokeshi @ 鶴舞DAYTRIP

 UKブリストルのポストハードコア・バンド、Svalbardの5年ぶりとなる来日ツアーへ。しかもカップリングにkokeshiというこれ以上ない組み合わせでもって、名古屋も飛ばされないという奇跡が起こったので参加してきました。

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ライブ感想

提婆達多(Devadatta)

—setlist—
01. Sutra for Me (SE)
02. Drown in Hedonism
03. Illuminate
04. Abuse
05. Bless
06. V1cE(SE)
07. Vice

提婆達多(Devadatta) Live (Full set) – Live @ Nagoya TSURUMAI DAYTRIP 2024/05/19

kokeshi

 暗黒の大伽藍で見る呪詛の舞踏。Gillian Carterとの大阪公演以来1年ぶりに拝見しましたが、さらに異形化していました。白い衣装をまとって両手に線香を持ってステージをふらつくオープニング。大衆の眼と脳に混乱が生じる。植え付けられる何が起こるかわからない恐怖心。

 演奏隊は殺傷力を持つ鋭さと激しさを備えているのにも関わらず、呪縛のような絶望の足枷に捕らわれます。Xでアジアン・ホラー映画の『女神の継承』みたいなことを言ってた人がいたけど、何かが憑依したような亡無さんの舞台表現(歌唱・振る舞い含め)は心を折りにいくようなトラウマ発生装置としての戦慄がある。

 「胎海」において情緒をぶち壊し、「憧憬」は鋭く刺さる。世界観という曖昧なワードをくっきりとした輪郭を持った言葉として捉えさせるkokeshi。客席側から拍手や歓声を送ることすら生ぬるいとさえ思いました。

 「報いの祈り」は”わたしはまだヒトのカタチをしていますか?”からマイクを通さずに絶叫し、最後は「系」の演奏中に客席に分け入ってそのまま涅槃へと消えていってしまった。

 最高という言葉を添えるよりも、「祟られませんように」と願った方が賢明なステージ。kokeshiは『冷刻』から全国ツアーを経て、自分たちの表現をみつけて完全に違う次元に来ているのを実感する。そして今後もすごくなっていくだろうことも。キングボンビーよりも数千倍呪いの装備となったkokeshi。そりゃあそうでしょう。キングボンビーは他人に押しつけれますがkokeshiは体感しちゃったら一生心に棲みつくので。逃れられない。

—setlist—
01. kairai
02. 他壊心操回路
03. 胎海
04. わらべうた
05. 涅槃欠損少女読経
06. 憧憬
07. 報いの祈り
08. 系

メインアーティスト:kokeshi
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Svalbard

 暗黒の窮地に立たされた鶴舞DAYTRIPの人類を救い上げたのはSvalbard。見るのはちょうど5年ぶりで前回はAfter Hours’19のサブステージ。Explosions In The Skyとenvyの間に彼女たちは演奏していました。その両者のちょうど中間地点のような音楽にメタル要素が増強されたのが近作になりますが、激しさと笑顔のマリアージュで会場を沸かせました。

 いきなり代表曲「Disparity」でスタート。ライブで感じるのはハードコア的なアスリート系突撃性能の高さであり、マーク・リリーの小回りの利いた力強いドラムさばきを軸に、セリーナとリアムによるツインヴォーカル&ギターの双竜体制が盛り立てます。

 ハードコア的なマインドが根底にある中で秘薬としてのシューゲイザーとメタル。特に体感してみるとシューゲイザー要素が思いのほか濃く感じて、「Open Wound」の麗しい轟音ギターや「Ligts Out」の浄化装置として機能性に体がピースな状況がつくられていきます。

 「コンバンハ、ワタシタチは”スヴァールバル”」 とセリーナがMC。はい、”スヴァールバル”って言ったね。『The Weight Of The Mask』国内盤の帯にでかでかと”スヴァルバード”と書いて発売したあの会社どうするつもりなんだ・・・。その国内盤が物販で置かれてもなかった事情も含めて、その辺はTokyo Jupiterのkimiさんと帰りに話しましたね。内容は言えませんが。

 それはさておき、Svalbardの天と救済の飛翔は続きます。3rd『When I Die, Will I Get Better?』と4th『The Weight Of The Mask』がセットリストの8割を占めたというのは、彼女たちのモードがそうなのでしょう。「Click Bait」や「To Wilt Beneath the Weight」は突撃と浄化の切り替え合戦。それで興奮を誘うだけでなく、笑顔にさせる。「スゴーイ」とセリーナも思わず言葉をもらしましたが、Svalbardにはそういった”あたたかみ”があります。

 そして本編をジョーイ・ジョーディソンに捧げられた「Eternal Spirits」でいったん締め、アンコールで初期のハードコア/パンク系の名残ある「Greyscale」が喧騒を撒き散らして終わる。60分という時間があまりにも贅沢に感じられたライブとなりました。

—setlist—
01. Disparity
02. Open Wound
03. Faking It
04. Lights Out
05. Defiance
06. Throw Your Heart Away
07. Click Bait
08. To Wilt Beneath the Weight
09. Eternal Spirits

—Encore—
10. Grayscale

 わたしはとにかく名古屋でこんなに人がいたことに感動しています。数々の閑散としたフロアの惨劇をみてきた者(具体的にはあげないから過去のライブレポを参照してください)からすると、大勢の人に見てもらえたことがとにかくうれしかったし、次につながるはず。

 Svalbardとkokeshiという近いようで遠い音楽性だからこそ明暗の極地となるコントラストが映えました。本当に見事なカップリングツアーであり、この組み合わせでまた見たいですね。近い将来に。

お読みいただきありがとうございました!
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