北アイルランド生まれで現在はリバプールを拠点とするインストゥルメンタル・デュオ。共にマルチ・インストゥルメンタリストであるPatrick BlaneyとDara Tohillが構成員。ポストロック～マスロック的な気質を礎に、トランペットやホルン等を加えたサウンドが特徴です。
当時は5人組だった2020年に1stアルバム『A Burial At Sea』を発表。同作の好評から、ASIWYFA、This Will Destroy You、The Oceanといったアーティストと共演を果たす。その後はPelagic Recordsと契約し、2024年2月に2ndアルバム『Close to Home』をリリース。
本記事はこれまでに発表されているフルアルバム2作品について書いています。
作品紹介
A Burial At Sea(2020)
1stアルバム。全9曲約47分収録。当時は5人編成でギター、ベース、ドラムの通常編成にトランペットやホルン等が加わっている。
バンド名の由来に対しての明確なソースは探してもないんですが、ひとつの考察で”A Burial At Sea”というとMONOの楽曲にほぼ同名曲があることが関係しているのでは？と思っています(5thアルバム『Hymn to the Immortal Wind』収録)。
ただ、インストゥルメンタルを基盤に置いているとはいえ、A Burial At SeaはAnd So I Watch You From Afarがサウンドは近いです。ギターやドラムの変則的なキメや忙しない展開、体がうずく躍動感などが各所に散聴されます。#3「Breezehome」や#5「Scrios An Teach」は完全にそっち寄りのテンションの高さ。
そこに前述したような金管楽器が入ってくる。Do Make Say ThinkやBroken Social Seane辺りのトロント界隈のオーケストラルな雰囲気を加えた感じと言えるでしょうか。だからかマスロックのジャキジャキした鋭角性が緩和されて、もっと朗らかで華やかなムードがあります。
それに#8「Lightning Blanket」における童心に帰るような合唱の使い方もうまい。ラストは轟音系ポストロックの系譜にホルンが歓喜を運んでくる#9「Tropic Of Cancer」で締めくくり。ポストロックやマスロックやラベル付けに倣う部分と抗う部分のバランス感が彼等の味となっています。
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Close to Home(2024)
2ndアルバム。全11曲約43分収録。Pelagic Recordsへと移籍。コロナ禍も関係してかメンバーが減り、マルチ・インストゥルメンタリスト2名のデュオ編成と移行しての作品です。
SoundsVeganのインタビューにおいて”故郷をテーマにしたアルバムを作ろうとしたわけではありません。でもデモを作っているときに、自分たちの育った環境にちなんだタイトルをつけていることに気付きました。しばらくして、アルバムがアイルランドへの賛歌のように感じられるようになりました“と作品について語っている。
そういった文化資本によるふるさと納税は、極東住まいの自分にわかる範囲ではありません。しかし、明らかなのは2人編成になったとはいえ、メンバー減によるパワーダウンが全くないこと。マスロック、ジャズ、室内楽といったものが組み合わさったサウンドの躍動感に心も身体も弾みます。
自身が幼少期に育った大切な公園の名を冠した#1「páirc béal uisce」に始まり、#2「tor head」や#5「GORSE BUSH ON FIRE」はASIWYFAの駆動をよりヘヴィにした仕上がりで攻めてくる(実際に前作発売後に共演を果たした)。
かと思えば#4「HY-Brasil」にブラストビートが入ってきたり、#7「NEW old」ではepic45からMOGWAIへと移行する音のダイナミクスがある。人間の五感に染みついて離れない故郷のにおい、安らかさすら覚えるなつかしさ。そういった手つきを求めながらも攻撃的な部分で手を緩めてないし、活気がある。そんな作品に仕上がっています。
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