Ancestors、ノスタルジックなドゥーム・メタル

 ロサンゼルスのプログレ/ドゥーム・メタル5人組。ブラック・サバス直系の引き摺る様なリフ、野太い雄叫が暗黒の景観を奏でていくドゥーム/ストーナー・ロックを軸足に、70年代のプログレの幽玄美を演出したサウンドが特徴。初期はTee Pee Recordsから2018年の4thアルバムは、Pelagic Recordsからリリース。

 本記事では3作品について書いています。

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Neptune With Fire(2008)

    1stアルバム。約16分の#1と21分を超える#2の計2曲約37分収録。発売はTee Pee Recordsから。ブラック・サバス直系の引き摺る様なリフ、野太い雄叫が暗黒の景観を奏でていくドゥーム/ストーナー・ロックが軸足。加えて70年代のプログレの幽玄美を演出しています。キング・クリムゾンやピンク・フロイドからの影響が見える展開の複雑さ、幻想性。さらにはスペーシーな音造りからはHawkwindの面影も垣間見えます。

 Tee Peeに限らずドゥーム/ストーナー系統のバンドは、70’sハードロック等の影響が強いバンドが多いですが、Ancestorsはよりプログレッシヴ・ロックの領域へ軽々と踏み込んでいて、その起伏ある展開に酔いしれる。

 2曲とも出だしで凶悪な音圧のドゥーム/ストーナーで圧倒したかと思えば、ブルージーなギターソロが登場したり、古めかしいオルガンが頻繁に登場して楽曲にノスタルジックな色と情緒を付け加えたり、艶めかしく呪術的な女性コーラスが誘惑したりもする。懐古的サイケデリックな味わいやストーリー性がしっかりしている点も印象的で、豪快かつ重厚でありつつもこの幻想的世界への誘いは、数多のファンを虜にしそう。

 ここぞで手数多めで畳みかけるドラム、メロディアスなフレーズで主張する事の多いベースのリズム隊による仕事も秀逸。所々ではNeurosisやISISといった面々からのはポストメタルと親和している部分も多く、モダンな音造りもまた自分達なりに昇華しています。ドゥーム/ストーナー・ロックから、ここまでプログレ方面に広大に領域を広げている作品はあまり多く無い。

Of Sound Mind(2009)

    昨年に引き続いての2ndアルバム。全8曲約71分収録。本作は奇数曲が短めのインストで、偶数曲が全て10分を越える楽曲が並ぶのが特色。ドゥーム/ストーナー・ロックから70sプログレ、ポストメタルを広域に横断する彼等の音楽性はさらに極まっている。

 複雑怪奇な構成の妙、それに伴った静と動の豊かな起伏を自在に創り上げ、見事なアンサンブル。思慮深いサウンドを生み出しています。音のひとつひとつに古代から現代まで映し出すほどの含蓄がある。Sleepを思わせるディープな煙たさを放つギターと大地を揺るがす重厚なリズムを旗振り役にして、眩暈を覚えるかのようなめくるめく深い幻想世界を構築していく。

 そこに古色蒼然としたオルガンや柔和なヴォーカルが絡む。よって独特の浮遊感や叙情性を作品全体に印象付けています。トリップ感を煽る宇宙系シンセを挟んだり、猛々しいコーラスワークが本能に訴えかけたりとアイデアの多彩さもインパクトを高める要因。前作よりも柔らかい歌い回しが増えたことやメロディの輪郭がさらに際立った事で、まろやかな味わいというのも生まれています。

 70年代のプログレ/ハードロックの旨味を存分に吸い上げるだけでなく、絶望を覗く事でNeurosisへと接近したり、Sleepの地鳴りと砂嵐によるマリファナ音絵巻の表現を試みたりと変化は多い。泣きのギターとオルガンの共演から深い灰煙の中に飛び込んでいく#4には引き込まれるし、攻撃的なオルガンのインストがクラシックを聴いてるかのような緊張感で包む#7から、忘れていた疾走感という言葉を取り戻してディープな世界を創り上げていくラスト#8の流れも秀逸。

 2ndアルバムにして彼等の音楽性が極まったことを確信させる1枚。

Invisible White(2011)

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    約1年半ぶりにリリースされるのは、3曲入りの新EP。本作では前作の『Of Sound Mind』からさらに時代を遡っていったようで、70年代プログレ/サイケデリック・ロックの要素を存分に吸収し、これまで以上に音に反映した造り。

 各所に散りばめられたメロディによる懐古主義的な味わい、それに複雑ながらも泣きの要素をふんだんに織り上げていく楽曲構成。野太い絶叫はなくて煙たいヘヴィさも控えめになっていて、代わりにノスタルジックな感性を呼び起こすアコースティック・ギターやメロトロンの旋律が胸に切なく訴えかけてきます。緻密なアンサンブルと構成力によって、長大な物語を引き立てていく。

 #1に登場する様なストリングスのアレンジもまた冴えわたり、ヴィンテージな叙情感覚の強化。細心の手つきで丁寧に織り上げられていく楽曲からは、柔らかな音の拡がりやハーモニーの美しさが際立っています。物悲しい響きを押し出したギター・ソロや空間的なシンセに演出もまた効果的に感傷を煽る。特に本作最長14分の#3は情感あふれるメロディが貫かれた佳曲であり、ここぞという所で重厚なリフ・ワークとキーボードの艶やかな旋律が溶けあい、繊細かつ大胆に盛り上げていく所が良いですね。

 EPながらも叙情性の膨らみやレトロなプログレへの憧憬をはっきり感じさせる作風。ドゥーム/ストーナー/ポストメタル的な感性がずいぶんと薄まった。しかし、がっかりすることなく聴き通して心酔してしまったのは、雄大なスケール感と独特のロマンティシズムを強く感じさせる作品だったから。全3曲で約30分、時計の針を逆に進めてプログレの要素を強化した意欲作。

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