【アルバム紹介】downy、氷のショーケースで燃えたぎる炎

 2000年に結成された5人組バンド。オルタナティブ/ポストロックの極北としての存在感を示した4枚の作品を残し、2004年にいったん活動休止。2013年に復活を果たし、以降は継続して活動中。

 メンバーは長らくの間は青木ロビン氏(Vo&Gt)、青木裕氏(Gt)、仲俣和宏氏(Ba)、秋山タカヒコ氏(Dr)、zakuro氏(映像関係)の5人で活動。青木裕氏が2018年3月に逝去後は、トラックメーカーであるSUNNOVA氏が正式メンバーとして加わる。

 独特のレイヤーや温度を持った音色を聴かせ、活動初期から革新的なバンドとして支持を集めます。また、全アルバムで作品タイトルは存在せず(曲名はある)、便宜上すべて第〇作品集『無題』とすることで区別している(wikipediaより)

 本記事ではこれまでに発表されているフルアルバム全7作品について書いています。

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アルバム紹介

第一作品集『無題』(2001)

 1stアルバム。全12曲約57分収録。”もともとdownyってちょっと変拍子が入ったハードコアな曲をやりたいはずだったんだ笑(SYNCHRONICITYのインタビューより)”と後に話していますが、結成1年で制作した1stアルバムにしてdownyの骨格がほぼできあがっています。

 FUGAZIに通ずるUSポストハードコアを軸にしてポストロック、ヒップホップ、エレクトロニカといった要素が交わる。そこにはSlintのようなヒリヒリ感、Radioheadに通ずるインテリジェンスもあり。ループ的手法と変則的な展開、さらにはそっけなさと熱が共犯関係となって作品を彩ります。

 前のめりに進んだかと思えば軽くいなす。強弱のうねりによる浮き沈みの自由化、それをクールに操っている点に惹かれます。そしてヴォーカルの青木ロビン氏は文学的な詞をあえて輪郭をぼやけさせるように歌い、時には荒ぶった衝動をぶつける。

 本作には#1「酩酊フリーク」や#4「左の種」、#10「猿の手柄」といった現在でもライヴで欠かせない代表曲を収録。#3「昭和ジャズ」や#6「アンテナ頭」のように引き算と湿っぽい風情が表出するスロウな歌ものも堂に入っている。

 再発リマスター盤にボーナストラックとして収録された#11「月宿る善良」 と#12 「安心」は善良も安心もないハードコア。本編を破壊しにかかっているような気迫と暴力性はあまりにも衝撃的。

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第ニ作品集『無題』(2002)

 2ndアルバム。全11曲約55分収録。”より強固なループ、凶暴なる音を目指してた気がします。で、音をもっと抜きたい、もっと音を減らしたいと考えてました“、”一個一個に魂がこもってるような音楽をやりたいなと。スネアの一個、ギターの一発に魂が入ってる“といった発言が残ります(felicityインタビューより)。

 基本的には前作を踏襲した感じで、オルタナティヴ/ポストロックの極北を自ら作り出してオリジナリティとして表出していく。リズム隊によるストイックなループを下地に、前作よりも空間的な広がりを聴かせるギター、しんみり感を助長するボソっとした歌声が奇妙に漂い続けます。

 冒頭を飾る#1「葵」から斬鉄のような鋭さを有しつつ、夜が忍び寄ってくるような湿り気が支配。この曲を含め#3「黒い雨」や#4「象牙の塔」と前半はロック的なダイナミズムの中に冷たい自己憐憫が滲む。

 しかしながら後半はミニマルなアプローチとアブストラクトな空間表現に寄っていく。#6「無空」や#8「月が見ている」は物陰に佇み、言い知れぬ孤独感を吐露しているかのようです。

 『第二作品集』は説得力のある雷鳴であり、downyの音楽が鮮烈なのを今もなお印象付ける傑作。

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第三作品集『無題』(2003)

 3rdアルバム。全10曲約44分収録。現在では不動のメンバーである秋山タカヒコ氏(Dr)が加入しての初作品です。”エレクトロニカをナマで体現するみたいなイメージのアルバムだと思います。打ち込みってよく言われるんですけど、打ち込みは一切使ってないんですよ(Felicityのインタビューより)”。

 確かに引用した発言にある通りに、前作の後半を引き継いだミニマルで抑制された音像。人力のリズム隊が硬質なグルーヴで引き締めていますが、人間味を欠落させたかのようで機械的な冷徹さの方が目立ちます。

 そして歌声やギターはより抽象的に。アコギやサックス、電子的なノイズといったアイデアを投入しているとはいえ、聴き手をどんどんと突き放す態度になっています。

 ひりつく緊張感によって造形される”鉄の風景”が本作全体を表しているかのよう。それでも色味を失った風景からささやかな哀感を伴ったメロディが霧雨のように降る。

 #3「抒情譜」に#7「苺」、#8「月」は不穏だけど何とも味わい深いものがあります。downyの作中では最も静的でダークな部分が表れた作品。そんな本作には#9「酩酊フリーク」の再録を収録。サックス入りでフリーキーなジャズ風味に仕上がっています。

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第四作品集『無題』 (2004)

 4thアルバム。全10曲約37分収録。“よりダイナミックなものを求めていた”。”もともとdownyはハードコア・バンドみたいなところから始まったので、それも含めて原点回帰というニュアンスもある”といった証言がFelicityのインタビューに残ります。

 downyのキャリアを通じても最も激しい作品。その証拠に#1「弌」~#2 「Δ」の手加減なしの連撃はバンドをやっている人たちを諦めさせるような衝撃があります。

 各楽器が真剣で斬り合うような鋭いアンサンブル。そのうねりの中をしなやかに伝う声と感情に惹きつけられる。スリリングな暴走フリージャズ#4「Fresh」、ぶっとい鉈でぶった切るような#5「漸」も強烈。

 このような鬼気迫る前半から後半はダークサイドに沈んでいく冷めた情感に覆われる。なかでも未発表曲である追加音源#10「逆光」はダブステップ的なニュアンスも先取りするような曲です。

 アーティスティックな部分を突き詰めていくバンド。その過剰なストイックさはエネルギーの枯渇と栄養失調をきたす。そのため”使い果たした”と感じて活動休止したのも仕方ないとうなずけます。ストイック or DIEで本当にそうなっちゃったみたいな。

 とはいえ人力を聖域化することに成功した秀作です。それこそ”downy、半端ないって!”

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第五作品集『無題』 (2013)

 5thアルバル。全11曲約42分収録。9年ぶりの復活作にして、長い月日の向こうにあった美しい変化と調和。過去・現在・未来、全てを結びつけたdownyの新たな音の結晶です。

 変則的なリズムが基盤を支え、多彩なギターサウンドが空間に塗り重なっていき、文学的な詩を操る青木ロビン氏の歌声がそっけなく拡がるオルタナ~ハードコア譲りの強度、エレクトロニカの可憐さ、幻術のようなダブ~アンビエントの揺らぎの加算。

 精密なまでに計算し尽くされた構成を基にdownyらしさを貫き通しており、9年間の空白もなんのそのといった感じでしょうか。安易な表現では決してたどりつけない音響の広がりと深遠さがあります。

 #3「曦ヲ見ヨ!」や#7「春と修羅」における妖刀で切られるような感覚は、孤高の表現者がゆえ。ここには一分の隙もありません。

 しかしながら、ひんやりと無機質だった感触からは、どことなく雲の隙間からうっすらと光が差し、冬から春に向かうぐらいのほんのりとした温かさが感じられるようになってます。

 #4「下弦の月」のように歌にフォーカスをあてて、以前よりもオープンな印象も。アコースティックな音色を基調に、柔らかな音風景が広がっていく秀逸なラスト#11「椿」でもそれは明らか。復活してもなお孤高かつ先鋭的。

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第六作品集『無題』 (2016)

 6thアルバム。全9曲約36分収録。本作については”冷たくて、人が触れることのできない場所にある音楽を作りたい。マグマの如きエモーションはあるんだけど、それを氷で閉じ込めたような音楽“という発言をしています(Mikikiのインタビューより)。

 最初聴いた時はシンセの活躍が多いなと思っていました。ですが、実際は#1「凍る花」と#3「海の静寂」にしか使われてないと見て、驚いた記憶があります。#2「檸檬」がギターの変色させた音だと知ってビビりましたからね。青木裕氏おそるべし、みたいな。

 その上で青木ロビン氏の歌がこれまでよりもフィーチャーされている。地道に弾き語りをした経験を糧に歌もの感を出していこうとなったそうですが、#2「檸檬」や#3「海の静寂」はそれが顕著に表れています。

 downyのさらなる変容とアップデート。もちろんその土台は強烈なリズム隊、青木裕氏の加飾技術満点のギターがあってこそ。さらに今回はウッドベースの使用、ブラックミュージック~ジャズ的な要素を追加したりという冒険あり。

 異様にサイケデリックな#8「乱反射」から1番わかりやすい#9「翳す、雲」での締めのインパクトは大きい。青木ロビン氏は、本作を”氷の中で炎が燃え盛っている”と表現していますが、言い得て妙だなと。職人たちが紡ぐ掴みどころがない芸術。

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第七作品集『無題』 (2020)

 7thアルバム。全11曲約48分収録。2018年3月に青木裕氏が逝去。サポートを務めていたトラックメーカーのSUNNOVA氏が正式メンバーとして加入後、初となるアルバムです。

 大半のリスナーは誰が欠けても成立しない音楽だと思ってたはずですが、本作で提示しているのはまさしくdownyの音楽です。”立体感のある音楽”や”現代のプログレ(Yes辺りの)”がキーワードにあげられて制作しているとのこと。

 SUNNOVA氏によって電子的な出力が強まっているとはいえ、やはり妖術の類ではないかと思いたくなる奇妙な音楽ができあがっています。シンセとギターの区別がよくわからない構築っぷりや無機有機の狭間をいくグルーヴに引っ張られ、青木ロビン氏の憑依するような歌声には物悲しいエモーションが滲む。

 エレクトロニックな意匠が生み出す氷上のアートのような#1「コントラポスト」から一気に鋭さを増して視覚と聴覚を突く#2「視界不良」、青木裕氏のギターが無常に響くリード曲#7「砂上、燃ユ。残像」、重心低くグラつかせる荒涼とした#11「Stand Alone」まで。やはり隙をみせません。

 インスタントな昂揚感の高め方ではないし、フィギュアスケートでいう芸術点を稼ぎにいくだけではありません。バンドの塊と化すことで生まれる衝動性を担保しつつ、創作料理のように味も盛り付けもオリジナルを追求し続けています。

 かけがえのない存在が実体は失ったとはいえ心はdownyに宿る。そしてバンドの前進は続く。20年を越えてなお。

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プレイリスト

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