【アルバム紹介】ゴールデンボンバー、ヴィジュアル系エアーバンドという革命

 2004年に活動開始し、ヴィジュアル系・エアーバンドとして圧倒的な知名度を獲得した4人組。お茶の間をにぎわせるエンターテイメント集団となり、代表曲であるヴィジュアル系歌謡「女々しくて」で2012年~2016年まで紅白歌合戦への出演も果たしました。

 本記事では1st~2ndアルバムと2010年代前半にリリースされたベストアルバム5作の計7作品について書いています。

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アルバム紹介

The Golden Best ~Pressure~(2010)

 2枚同時発売のベストアルバムの片割れ。全11曲約45分収録。タイトルはB’zのベストアルバムのオマージュですが、プレジャーじゃなくて”プレッシャー”。

 MALICE MIZER(&Gackt氏)、バッハをリスペクトする鬼流院翔氏(Vo-karu)がメイン・コンポーザーを務めます。彼が影響を受けた90’sヴィジュアル系やJ-POPへの愛に溢れたネタとパロディを交えた楽曲群を多数収録した本作は、入門編としては最適です。

 何といっても、紅白歌合戦への出演を果たした国宝ヴィジュアル系歌謡#2「女々しくて」を収録。サビにおける魔法のようなキャッチーさは凄いし、印税で一生食っていけるらしいほどカラオケで歌われまくったことも特筆すべき点です。

 それに笑いと怒りのどちらかを買うネタも完備。#5「TSUNAMIのジョニー」、#6「ultra PHANTOM」、#7「Tomorrow Never World」と日本の3大バンドをしっかりとモノマネつきでパロディ。

 後半の曲も充実していて、叶わぬ恋心を歌ったバラード#8「もうバンドマンに恋なんてしない」でバンギャの心情を揺らし、爽快なJ-ROCK#10「タイムマシンが欲しいよ」でドラえもんにおねだりし、貢いだお水の女のことをかつてのユーロビートに乗せて歌いあげる#11「トラウマキャバ嬢」が控えています。

 全曲聴いてみると”あれ「女々しくて」だけじゃないじゃんっ!”と気づく人が多くいるはず。一般家庭もおんがく☆ギョ~カイも様々に掻き乱す、全力当て振りの全力エンターテイメントに拍手。

The Golden Best ~Brassiere~(2010)

 2枚同時発売のベストアルバムの片割れ。全12曲約40分収録。こちらはトレジャーじゃなくて”ブラジャー”。

 ”人気無い!動員無い!”と歌う自虐疾走チューン#1「ワンマン不安」を皮切りに、演奏しないという一点突破であらゆる壁を破壊していくエアーバンドの笑撃。

 ノリとしては”Pressure”がゴールデンタイムのバラエティだとすれば、この”Brassiere”は深夜帯のバラエティといったところで、より下(ネタ)と過激な表現が目立ちますね。

 サウンドにしてもDIR EN GREYやガゼット以降のヴィジュアル系のスタンダートである、ヘヴィネスの要素が押し出された曲が多め。

 元彼への嫉妬心が殺意という感情にまで発展しかけている#3「元カレ殺ス」を始め、#4「ドスケベ」や#6「恋人は教祖様」、#9「告っchao!」など激しいサウンドにJ-POPをまぶしてコミカルにまとめています。

 また#8「かっこいいな英語って」のようにエセ・メロディックスピードメタルがあったりするのも微笑ましい。

 本作にはモノマネ・リスペクトこそない。ですが、#10「亀パワー」が鳥山明氏に怒られるタイプのパロディ全開ですし、負のコンプレックスと最重量サウンドで締めくくる#12「童貞が!」はスカウターもぶっこわれるレベルの破壊力。

 金爆を聴くならまずこのベストアルバム2作を試してみることをオススメします。

ゴールデンアワー ~上半期ベスト2010~(2011)

 dwango.jpにて毎月連続リリースした配信シングル2010年1月~6月分に新曲#7「あしたのショー」、「女々しくて 広東風バージョン」を加えた全8曲約35分収録。

 本作はヴィジュアル系ロックよりもJ-POPの味付けの方が濃いめですかね。鬼龍院氏による”どこかで聴いたことある”を聴き手に思い起こさせる曲調の上手さが表れていて、90年代のドラマ主題歌や懐かしいアニソンっぽい曲が並んでいる印象があります。

 #5「デートプラン」は軽快なロック調なのにシンセの使い方がそう感じさせますし、#6「だからバイバイ」はアニソン+ダンサブルな曲調がはまっている。

 #7「あしたのショー」はサックスがムーディーな雰囲気を加えており、こんな曲も作れるのかと驚かされます。

 ただ、本作の目玉となっているのは#2「†ザ・V系っぽい曲†」。ヴィジュアル系文化とバンギャの心情あるあるを表現した曲ですが、cali≠gariの「近代的コスメ唱歌」がヴィジュアル系シーンを揶揄する曲だったのに対し、こちらはコミカルに開かれてヘドバン推奨タイプ。

ゴールデンアワー ~下半期ベスト2010~(2011)

 dwango.jpにて12ケ月連続配信の下半期分6曲に加え、自主制作盤『恋愛宗教論』の収録曲「Reue」の新録Versionを収録した全7曲約29分収録。

 NETA OR MAJIで聴き手を楽しませるのは変わりません。 ヴィジュアル系、90’s J-POP、歌謡曲、ユーロビートをごちゃまぜワンダーランド。様々なオマージュを捧げながら、遊び心のある楽曲に仕立てられた曲達に思わずクスっと笑みがこみ上げます。

 ヘドバン推奨の疾走ロック・チューンの#1「イヤホン」に始まり、#3「男心と秋の空」では90年代J-POPの感触とFLOWのあの曲っぽい感じが混じり、完全にXのノリのパロディ・メタリック・チュー ン#6「君といつまでも」が白い夜を演出。

 そんな中で本作の目玉は、#2「また君に番号を聞けなかった」。軽快な曲調と歌謡ちっくなメロディに乗せて、大好きな君に携帯の番号を聞くことができないもどかしさをコミカルに歌う。赤外線受信どころか会話にすらいけない、それほど女々しいのがオレたちなんだと・・・。

 この曲を聴いても、もちろん明日に大好きなあの子に番号を聴くことなんて叶わない人たちが大半だと思いますが、PVを含めて楽しませてくれる金爆はやっぱりおもしろい存在です。

ゴールデン・アルバム(2012)

 1stアルバム。全12曲約49分収録。音楽番組への進出、ラジオのレギュラー、ライヴ規模拡大と快進撃を続けるヴィジュアル系エアー・バンドがようやく発売のオリジナルアルバム。

 本作もまた金爆エンターテイメント全開でバラエティ豊かです。リスペクトとネタ満載の楽曲群。

 MALICE MIZERと化した#4「夜汽車」、K-POPに対抗してC-POP(中国)を先取りしたけど流行ってはいない#6「成龙很酷」、カノンをお遊びで導入する夜のパーティー・ロックチューンである#8「今夜もトゥナイト」と色々と取り揃えています。

 しかし、聴きどころとなっているのは序盤から中盤にかけて。完全にX JAPANに捧げたシンフォニック・スピードメタルの#2「デスメンタル」で一気に切り裂きます。この曲は音楽誌「ヘドバン」でもはぐれメタル・バンターに掲載(非メタル・アーティストのメタル曲を紹介するコーナー)。

 そして先行シングルである#3「僕クエスト」や#5「酔わせてモヒート」が鋭い切れ味とMV含めてネタたっぷりで心をざわつかせる。特にこの3曲が本作では飛び抜けています。

 トイレの鏡で残念な姿を見て酔いが冷めたとしても、金爆は夢の片隅で描いた世界で聴き手を楽しませてくれます。これまでよりも後半の楽曲がやや弱く感じますが、テーマパークのような楽しさがある作品です。

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ザ・パスト・マスターズ Vol.1(2013)

 これまでのアルバムに収録されていない楽曲を収録した、CDデビュー5周年記念コンピレーションアルバム。全16曲全約65分収録。タイトルはビートルズからでしょうか。

 前年に紅白歌合戦に『女々しくて』で初出場し、お茶の間でもお馴染みの存在になりました。ニッコリとした笑みも、ほろっとするような感動も、ヘドバンしたくなる激しさも、あざといタイアップもこのコンピにはございます。

 スカパラをリスペクトしたらしい華やいだブラス入りの#1「咲いて咲いて切り裂いて」から体が自然と反応する楽曲が集結。

 J-POPとヘヴィネスの融合となる#4「ギーガー」、メガシャキのCM用に「女々しくて」をアレンジした#8「眠たくて」、懐かしのバブル期のダンスミュージック#13「Dance My Generation」と仕掛けが多数。

 その中でも輝く代表曲#5「†ザ・V系っぽい曲†(生)」。この生演奏ではLeda神、IKUO氏、Shuji氏(Janne Da Arc)という極みのレベルの人たちに加え、鬼龍院氏もヴァイオリンで参戦してさらに迫力のある楽曲に仕上がっています。

 つける薬なんてないですが、J-POPもヴィジュアル系も搔き乱す存在として、金爆は相変わらず話題に事欠きません。

 ハードロック調のギターを主軸に据えた小気味良いロック・チューンの新曲#16「切ないほど」でラストを飾る辺りもファンに優しい。

メインアーティスト:ゴールデンボンバー
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ノーミュージック・ノーウエポン(2015)

 2ndアルバム。全13曲約51分収録。 昨今の特典商法に疑問を投げかけて真っ白ジャケット一種売りのシングル、体臭入りカード+CDという形態で雑貨として売りだすなど、音楽ギョーカイに一石を投じる姿勢を見せてきた金爆。

 摩天楼オペラに触発されたかのようなRPG風小インスト#1「ブッコロ」をスタート地点とした本作は、これまでよりも”ひとつのアルバムとしての流れ/深み”を持った作品に仕上がっています。

 そして女々しい心情や過去現在未来の不安、苦悩を吐露したような暗いテーマの詞が多い印象もある。もちろん楽曲は金爆らしくトガる所はトガり、ユーモアとアイデア満載。それを踏まえて、お得意の歌謡性とポップによる魔法でしっかりと調理されています。

 特に本作では#3「欲望の歌」がスゴい。Rhapsody(Of Fireじゃない頃)とB’zのウルトラソウルの「Hi!」を掛けあわせ、サビではベートーヴェンの第九「歓喜」のコーラスも入る壮大なメロスピ曲を展開。劣等感の塊みたいな中の下の男が、自虐的な表現を中心に美しき配偶者と安全10LDKに住むことを心の底から願う歌詞も最高。

 90年代TKサウンドっぽい#5「愛を止めないで」で変化を加えての中盤以降は、古き良き薫りすら漂うJ-POP色が強め。サックス入りの軽やか疾走パーティー・チューン#11「好きだけじゃ足りなくて」はポップに”今の僕の世界のYahoo!トップは 君なんだよ”と歌う。

 全編歌い直しを敢行した繊細に心をくすぐるバラード#7「片思いでいい」が、アルバムの流れで聴くからこその味わいがあって、いいちこを片手に染み染みと響く。

 ヴィジュアル系ロックのスパイスを効かせたJ-POPミュージアム。じっくりと聴き込める1枚です。

キラーチューンしかねえよ(2018)

 3rdアルバム。

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もう紅白に出してくれない(2019)

 4thアルバム。

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COMPACT DISC(2023)

 5thアルバム。

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プレイリスト

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