デンマーク・コペンハーゲン出身のブラッケンド・ハードコア・バンド。2010年結成。バンドの首謀者でありヴォーカリストのフィリップを中心に、黒い地獄を見舞う苛烈なサウンドで人々を震撼させ続ける。
これまでにDIYな方法で世界で約800回のライヴを敢行。2014年には1stアルバム『Alabam』をリリースし、アンダーグラウンド・シーンで話題となります。2014年11月には待望の初来日ツアー、2018年11月に2度目の来日公演を行っています。
本記事ではフルアルバム3作品とEP1作品の計4作品について書いています。
また2023年5月に来日決定。詳細は以下の画像でご確認ください。
アルバム紹介
Ⅺ(2012)
1st EP。全7曲約21分収録。”激音さえあればどんな所にでもたどり着けると決心している” と誰がそそのかしたかは知りませんが、ブラックメタルやハードコアを煮込みに煮込んで、凶悪極まりない音を放出し続けます。
どす黒い音塊で世界が軋む#1「Evinco」が挨拶代わりとはいえない一撃を見舞う。苛烈に攻め立てる#2「Aspernatio」や1分にも満たない#3「Procella」で休みなく体にダメージを刻んできます。
重さと切れ味を備えたリフが縦横無尽に轟き、ドラムはやたらとスピード感を煽り、ヴォーカルは獣のように叫んで捲し立てるのが特徴。実際に彼等はCelesteに影響を受けていると公言しており、類似性は確かに感じるところです。
中にはスラッ地獄へ突き落とされる6分半#4「Crux」も完備。”美徳なんてオレたちには似合わない”と言わんばかりに野獣の如きアグレッションで締めくくる#7「Fatum」まで、全7曲約21分には黒い衝動が詰まりすぎ。
デンマークが産んだ世界最強FW(〇ントナー)よりもこのバンドは遥かに怖いし、破壊力を持ってます。
Abalam(2014)
1stフルアルバム全13曲約35分。前作から磨きをかけて聴き手を殺りに来ています。代名詞といえる黒い地獄を見舞うかの如く苛烈なサウンド。
それはSouthern Lord系列に連なるブラックメタル+ハードコアという様式でありますが、もっとどす黒く、残忍性が高い。裂傷と圧迫を同時に行ってくるような容赦の無さ。
まるで全ての人間に”NO”を突きつけるかのような増幅し過ぎた負の感情と暗黒度は、ちょっと尋常じゃない。#2「Tenebris」~#5「Sequax」までの連撃に唖然茫然としてしまいます。
禍々しく殺伐としたインスト#6「Supplex」~#7「Abalam」にしても、決して安息になど逃げていません。メロディという言葉を完全に捨て去っているので、安らぎの時間など一切無し。潔さがあります。
この世に終わりを告げる拷問スラッジ#13「Inferis」もスラッジメタルをメインで演奏しているバンドが尻込みするぐらいに強烈。黒く残忍な世界はここにある。それを教えてくれる危険極まりない作品です。
Tando Ashanti(2017)
2ndアルバム。全11曲約39分収録。ヴォーカルのフィリップ以外のメンバーが総とっかえになった中で制作。”Majiでkillする5秒前”的なジャケットが既に危険度を示しております。
ブラッケンド・ハードコアと呼ばれるスタイルを継続するものの、スプリットで共演したPrimitive Manに感化されたような悪徳スラッジと共謀することが増えた印象。
変わらずに2分台で完結する曲がほとんどですが、5分近い/超える曲を4曲用意して1曲の中でわりと展開がある。空気を邪悪に変えるトレモロの壁、爆速メインのドラミング、フィリップの喉から絞り出てくる唸り声。
ひたすらに暴力的なセクションで構成された黒ずんだ音の嵐は人生を悪い方、悪い方に向けていく要素しかない。穏やかさを共有するなんてもってのほかで、変わらずに怒りに震えている。
猛烈な速度で耳を捉える#3「Molestuts」や#5「Calamitas」があり、その上でスラッジを通した悪魔儀礼のごとき#2「Ashanti」や#9「Resurrection」の効力が発揮されています。
歌詞は宗教やそれに付随した信仰無き者の末路が書かれているように思われる(Bandcampの歌詞を和訳して推測)。怒りや絶望を燃料に”これが聖なる儀式だ、君を破滅させる儀式だ”と叫ぶ。Hexisは変わらずに強力な存在です。
Aeternum(2022)
3rdアルバム。全12曲約46分収録。フィリップ以外のメンバーが再び入れ替わって制作したようです。
トレードマークといえる#1「Letum」の瞬間湯沸かし器型の爆速残忍劇からスタートするものの、アルバム全体を通すと速攻と遅攻を使い分けたダイナミクスをみせていて、Hexisが新たな領域に進んだことを示唆。
さらにはシンセサイザーやダーク・アンビエントが追加され、儀式的なマインドが増しています。それこそスピード狂だった初期から作品としての構成が練られた形。
スラッ地獄の中で”奈落の底へ連れて行ってくれ”と訴える#3「Exhaurire」は女性コーラスも覆い被さり、ゴシックな聖性まで降り注いでくる。#11「Amissus」におけるポストメタル要素のブレンドもまた堂に入っています。
その流れを継続してラストは表題曲#12「Aeternum」がダーク・アンビエント風に不穏な暗黒を演出。こういった抜いたアプローチを導入しても、バンドの持つ邪悪な澱みや無慈悲な暴力性は維持。絶望に打ちひしがれる感覚がもたらされます。