【アルバム紹介】Sleep Token、覆面集団の美学と崇拝

 2016年から活動を開始したUKのオルタナティヴ・メタル集団、Sleep Token。

 匿名と覆面による秘密主義の活動形態。”スリープ “と呼ばれる古代の神に崇拝を捧げるための演奏。結成から現在までに答えたインタビューは一度きり。そんな謎多き集団です。

 VesselとⅡと呼ばれる2人のメンバーを主な構成員に数名の演奏者が加わる。その音楽性は、Metal Hammer誌にて”テクニカル・メタルと広大なインディー・サウンドスケープの奇妙でユニークなミックス”と評されています。

 2023年に入って爆発的にリスナーを増殖。Spotifyの月間リスナーは240万人を超え、シングル曲「The Summoning」の再生数は4,800万回を突破している。

 本記事ではこれまでに発表されているフルアルバム3作品、EP2作品の計5作品について書いています。

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アルバム紹介

One(2016)

 1st EP。全3曲約19分収録。匿名と覆面を基本装備に、古代神からの現代のメッセージを代読する使者・Sleep Token。

 その怪しい風貌からは想像できない澄んだファルセットで幕開けする#1「Thread The Needle」から息をのみます。

 ピアノや電子音でを中心に織り上げる奥ゆかしくも詩的なサウンド。そしてVesselのヒーリング効果すらもたらす美声。かと思えばプログメタル~Djent経由の重低音ギターリフがスパイスとして用いられます。

 ただ、いずれの楽曲も大半を支配するのはポップスとしての機能性。声も音もJames Blakeと並ぶほど涼やかに響き、体になじんできます。だからマスク姿と美声のギャップはあまりに高低差がありすぎて耳がキーン(以下略)。

 剛と柔の割合でいうと20:80ぐらいで音をきゅうくつに詰め込まず。余白と奥行きを活かして歌声を最大限に映えさせる。活動初期からSleep Tokenの公式は確立しています。

 ブレイクダウンを用いつつ、しっとりとした歌ものとして昇華された#2「Fields of Elation」、ポストロック的なミニマルな展開と美麗なメロディ、コーラスワークが情感豊かに迫る#3「When the Bough Breaks 」と聴き入る3曲が揃っています。

メインアーティスト:Sleep Token
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Two(2017)

 『One』から半年ほどのスパンでリリースされた2nd EP。全3曲約18分収録。オルタナティヴロック、プログメタル、インディーポップ、R&B、ソウルなどをミックスする方程式は前作から引き継がれます。

 Meshuggahの領域にお邪魔する鋭く重いギターリフは存在すれど、Vesselの美声を最大限に活かす組み立て。この『Two』においては継続された陰鬱な雰囲気はありますが、温かみが増しています。

 #1「Calcutta」からして夢と幻想のムードが漂い、ヘヴィネスのスイッチは入りますが、歌声が楽曲の中を清らかに流れていく。#2「Nazareth」を聴いているとDjentと友達になったSigur Rosのようにも思えてきます。

 USポストメタル勢のJuniusに近い音像。ですが、歌の魅力と現代ポップスの方をさらに重視した構築は、Sleep Tokenの強みになっている。

 足すよりも”引く”に神経を使いながら、美をコントロール。だからこそ聴き手を誘引する磁力に繋がっていますし、”胸に沁みる”や”体に浸透していく”ような音楽として魅力的に仕上がっています。

メインアーティスト:Sleep Token
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Sundowning(2019)

 1stアルバム。全12曲約54分収録。ポップやR&B、エレクトロを多用した新種のオルタナティヴ・メタルがここに。同時に”歌のアルバム”としての高い訴求力を本作から感じます。

 中心的存在のVesselが変わらずに艶やかさと力強さを備えた歌声で全体をリード。ファルセットやエディット処理も施して懐に忍び込んできます。

 やはりJames BlakeやBon Iverとの距離が近い音楽。うねる低音の上を声が踊る#4「Dark Signs」は特にそう感じる曲です。#6「Take Aim」ではSigur Rosが舞い降りたかのよう。

 ピアノやエレクトロニクスが大半を装飾し、R&B~ソウル・ミュージックの領域へスムーズに行き来する。またヘヴィネスを緩和するように全体へいきわたる瑞々しいメロディと浮遊感からは、氷が解ける瞬間のクールさを感じさせます。

 メタル的な強度を潤滑油に用いる点も変わらず。それでも暴力的な消耗戦を仕掛けることはなく、なめらかな聴き心地を実現してます。料理で例えるならヘルシーで消化が良くて栄養価が高いと三拍子そろっている。

 重低音の波動と陶酔感を誘うヴォーカルが支え合う代表曲#2「The Offering」を中心に、K-SCOPEやDjent応用編ではなく、独自性の強い歌ものとして一本筋を通している。

 そしてバラード#12「Blood Sport」における最後のすすり泣きまで、覆面集団のアウトプットに気づけば感情を揺さぶられています。結果として古代神への信仰の片棒をかつぐ。本作を聴いてしまうと加担してしまう可能性は大です。

This Place Will Become Your Tomb(2021)

 2ndアルバム。全12曲約52分収録。タイトルは直訳すると”この場所があなたの墓になる”。

 繊細なピアノ・バラードのわりに”水中に遺体を埋めたら連絡をくれ”と歌う#1「Atlantic」でスタートする本作。全体的にピアノや電子音の活用、ヴォーカルの加工処理が増えており、仄暗い深海から感傷的なムードが浮かび上がってきます。

 Vesselは胸ぐらをつかんで離さないクリーンボイスから、魂を震わせるファルセットまで見事な歌い回しを披露。前作以上に”品のある歌もの”として魔法のように魅了する力があります。

 代わりにバンド感は薄まり気味。内臓に食い込んでくるヘヴィなリフはあれど、力技や複雑な展開に頼らない。歌とメロディが取って代わり、”クールで知的で一緒に歌える”をトピックに人々の心をつかみます。

 ”それでも私は、あなたが望む愛で満たされている”と感情を込めて寄り添う魅惑的な歌もの#5「The Love You Want」、ミステリアスなシンセがリードする裏でプログレッシヴ・メタルが暗躍する#7「Alkaline」を本作の柱に、メロウの波に揺れ続ける。

 静寂から爆発へ向かう#11「High Water」にはポストメタル的なダイナミズムが注入されていますが、そのインテリジェントな展開もお手の物。くどさはなく、すっきりとした味わいが心掛けられています。

 バンドはイロモノとして見られようとも広い受け皿を持ち、スマートに心を打つ/撃つ歌がある。牧歌的に最後を飾る#12「Missing Limbs」までじっくりと聴き入ってしまうこと必至の一作。

Take Me Back to Eden(2023)

 3rdアルバム。全12曲約63分収録。プレス・リリースによると”3部作の最終章となり、本作をもってデビュー作から始まった壮大なSleep Tokenサーガが完成する”とのこと。

 オープニングを飾る#1「Chokehold」から強靭なグルーヴと歌、ピアノが調和。特に前半の楽曲はオルタナ~メタル的な強度が高まっており、前作からの揺り戻しを感じさせます。

 #2「The Summoning」は新世代のヘヴィ・アンセムとして君臨。さらにはデスメタルと色気のある歌が噛み合う#5「Vore」、R&BとCult of Lunaが魔合体したような強烈さがある#6「Ascensionism」とこれまでになかった派手さと破壊力を持っています。

 例えるならSilpKnoTもCult of LunaもDeftonesもJames Blakeもここに憑依する。

 後半はしやなやかな歌ものが台頭。現代的メタルとポップスの親睦会を果たしながら、ラジオヒットにつながるキャッチーさと心地よい低音の効いたリズムにはまっていく。

 そんな中で8分を超えて自身最長曲となる#11「Take Me Back To Eden」では、天国と地獄を往復する疑似体験を優雅なテクスチャーと共に実現しています。

 この覆面集団が今やメインストリームを牛耳っている事実があり、これからさらに強大になっていくことを思うと末恐ろしい。ただ、本作はそれを裏付ける説得力を持っています。

どれを聴く?

興味が出てきたけど、Sleep Tokenはどれから聴いたら良いの?

 今の勢いを感じたいなら最新作の3rdアルバム『Take Me Back to Eden』。さながらメタルとポップスの親睦会です。

 より歌ものが聴きたい方には2ndアルバム『This Place Will Become Your Tomb』がオススメ。上品な歌ものがそろい、胸を打ちます。

オススメ曲

Sleep Token – The Summoning
Sleep Token – Blood Sport (from the room below)

プレイリスト

お読みいただきありがとうございました!
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