killie、CxPxS、johannのメンバーにより結成された3人組。Sleepに代表されるドゥーム/ストーナー・スタイルをインストで表現し、独特な和情緒や祭要素がそこに加わる。またサブスクなどの配信関係は一切なしのスタイルとして活動中。
本記事はこれまでに発表された2枚のフルアルバムについて書いています。
アルバム紹介
老人の仕事(2017)
1stアルバム。全3曲約33分収録。老人の仕事?草刈りとかゲートボールではない。音楽を演奏して”キ”めるという挑戦を果たしております。主体となっているのは、ドゥーム/ストーナー系の煙たいサウンド。なおかつインストによる表現。
呻き声がポイントで使われているものの、あくまでも楽器的な色合い。全体を通して古の儀式の一環という感じがします。とはいえ、その儀式が涅槃に堕ちるだとか、亡霊を呼び起こすとかいう類ではありません。
祭に近い感覚があり、ブルースの魂を持つフレーズ、原子的な胎動をもたらすリズムが体の奥底からひたすらに解放させていく。
各所で言われている通りにSleepを思わせるリフと展開は、その手のファンをニンマリさせます。加えて、老人の仕事は日本らしい和情緒と仏教精神みたいなのがそこに噛み合う。
#1「霊峰を望む」には激重という言葉を用いたくなりますが、ゴリゴリではないある種のルーズさが頭の中を空っぽにして酩酊できる仕様。
最後を飾る#3「飛んでみせろ」は変な隠語じゃないかと勘ぐってしまいますが、ギターの軽快な旋律とフルートの乱舞からイケナイ方向に飛ばせる展開を持つ。
老人の仕事は、ドゥーム/ストーナーに”踊り狂う”という概念を本作で書き加え、ありのままでラリゴーさせてくれる。
老人の仕事 2nd(2022)
2ndアルバム。全3曲約32分収録。マスタリングは中村宗一郎氏が担当。前作に倣った呻き声からスタートし、10分近い/超える尺で延長上にある表現とその先を聴かせてくれています。
比較するならばアップテンポな展開を堅持しつつも、2人のゲストを交えて内省的な表現を加算。
13分に及ぶ#1「眼下に雲」はしんみりとした情緒を放っていたかと思うと、いきなりスイッチが入ってダイナミックにロック街道をまい進。道徳心がヨレちまう煙たいリフ、心の弱さにつけいるグルーヴでノリノリにしてくれます。
続く#2「月世界」での前半も勢いよく突っ走りますが、ダブ処理を加える中盤以降は揺らぎと崩しのユーモアへと移行。さらにメタル・パーカッションが暗躍する#3「螺旋の旋に問う」の後半は、黒魔術がもたらす怪奇の世界に突入していく。
前作を踏まえながら明らかに拡張を感じさせる内容は、合法の音楽であるという免罪符の下に肉体と精神をもてあそぶ。
老後レスへと向かう超高齢化社会・ニッポンに警鐘を鳴らすなんてことは1mmもありません。ですが、老人の仕事でしか摂取できない中毒性は本作にて高まっています。