とりあえず恒例行事にしていくつもりの今月読んだ本まとめ。2021年11月版です。
11作品。下記からどうぞ。
村田沙耶香『変半身』
サイン入りの単行本を持っているのに文庫版を買って読み直しました。劇作家・松井周さんと共同制作した表題作よりも、同時収録の中編「満潮」の方がおもしろいし、村田さんらしいです。既存の「性」の役割を根幹から揺さぶるという内容ですが、端的にいえば”男性が潮を噴く”ために夫婦共同作業が行われるもの。やはりおかしい。だからこそ村田さんの作品に惹かれ続けるわけなんですが。
この掌が、いつかそれぞれの潮に辿りつく。私も夫も、いつか、自分の手で、自分の潮を身体から取り出す
村田沙耶香さん著『変半身』P188より引用
村田沙耶香『となりの脳世界』
こちらも単行本で持ってますが、最近発売された文庫版にエッセイ15本追加収録ということで買って読み直しました。わたしは村田さんの著書は単行本化されたものは全部読んでる。それぐらいにファンですが(好きな小説家ベスト3に入るひとり)、不思議なんですよね、この方。おっとりしているのに、書いていることおかしいし。小説家でありながらコンビニでバイトし続けていたし。BSテレ東で5年前に放送されていた「ご本、出しときますね?」では加藤千恵さんと共に出演して、ぶっとんだ話をしていたし。
本著で村田さんがフジロックへ行ったことがあるのを知る(2013年っぽい)。音楽についても書かれていて、”音楽は観ながら聴いているイメージ”があるそうな。音と共に浮かんでくる映像を楽しむというか。なかでも中谷美紀さんの「all the time」という曲は”耳で観てしまう音楽”として一番鮮やかな曲だと話している。
サザエさんのいささか先生について書いてるエッセイがあるのですが、ここを読んでいささか先生が恋愛小説家であることを知りました。
ことばと VOL.4
今月読んだ中では一番良かったです。実は全部読んでないんですけど(苦笑)、村田沙耶香さんと千葉雅也さんの対談、金原ひとみさんと戸田真琴さんの短編小説、松波太郎さんのインタビュー等を収録。
金原さんは「アンソーシャル・ディスタンス」からコロナ以降をことあるごとに書いていますが、今回は陽性者になった人を書いている。戸田真琴さんの初短編小説『海はほんとうにあった』は彼女が感じとってきた危うさみたいなもの、母との関係性等が反映されたものですが、もっとじっくり読まないとダメだなと感じた。2回読んだだけではまだまだ読み切れない。
燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』
映画を観る前に一度読み直して、映画を観てから3回ほど読み直しました。映画版がすごくよかった。それに引っ張られて原作も読み込んで、その言葉を味わう。『ボクたちは~』は映画も小説もストーリーを通しながら自分事に変わっていく感覚があって、それが強く惹かれる要因かも。映画館で2回観て、Netflixでも4回観ている。お勧めです。
そういえば、11月21日に伏見ミリオン座で行われた森義仁監督と燃え殻さんの舞台挨拶&サイン会に行ったのですが、そのことを記事にまだ追加できていない。一応プラスしておく予定です。パンフレットと文庫本にサインもらいましたし。質問もできたし。
映画の感想は以下でどうぞ。
ひろゆき『なまけもの時間術』
人に生きる理由などない。暇な時間があるからこそ何かを生み出せる。ひろゆきさんの著書を読んでいる人ならわかると思いますが、らしい時間術です。没頭するための自由時間や趣味を持つ習慣をつけよう。
結局、住む場所と食べものがあって、人とコミュニケーションがとれる状況であれば人は幸せを感じることができるのです。
『なまけもの時間術~』より引用
佐藤友美『書く仕事がしたい』
書き方ではなくて、タイトル通りに”書く仕事”とは何かを示した本です。簡単にいえばライターとはどう働いているのか。どうやり取りしているか。どう仕事を取ってくるか。著者の20年以上に及ぶライター生活から、こんな本があったらいいのにをまとめ上げた書籍です。
ただ書けばいいだけじゃない。文章力以外のスキルの重要性を説いています。取材力、企画力など。ライターは日本語を日本語に翻訳する仕事だと著者は言います。相手の意図をくみ取って、最も適した日本語表現に置き換えるという点は、翻訳作業にとても似ているとも書いています。
ブログで書いている人もSNSで書いている人も、本著を通して”書く”ということを改めて見つめ直すきっかけをもたらしてくれると思います。わたしとしては終盤に書かれた「視点(どこを見るか)と視座(どこから見るか)」が参考になりました。
聞くだけでは到達しない場所に、書くことによって手が届くんですよね
『書く仕事がしたい』より引用
南章行『好きなことしか本気になれない~』
「ココナラ」創業者による著書。ほぼ自伝のような内容。高校生の頃から合理的な判断力があって、その意思決定を自身で正解にしてきたんだなと感じました。また、凄まじいプレッシャーの中でずっと戦い、もがいていきた人なんだなと。
「正解を探すのではなく、選んだ道を自分で正解にしていく」という考え方。これから働く期間は長くなるかは人それぞれですが、生きている期間は間違いなく長くなる。そのためにどう生きるかのヒントは得られると思います。
「人と違っていること」がゴールになると、自分らしさを見失う。これはとても単純な話しで、白いTシャツが自分らしいのに、「みんなと違っていないと自分らしさじゃない」と思うあまり、好きでもなく似合いもしない赤いTシャツを選ぶようなものだ
『好きなことしか本気になれない。』より引用
迫祐樹『人生攻略ロードマップ』
よく見ている書籍系YouTuberの学識サロンさんで紹介されていたので読みました。端的にいえば、自己投資をどう重ねていけばお金が稼げるかを提示した本。9万円でプログラミングスクールに通い、その知識でまず戦う。そこから第2、第3と自己投資+スキルアップしながら、時給を上げていく。需要の高い分野を狙って行動を重ねる。その再現性が高いようには感じます。20代前半にしてロードマップを示す著者に感服。
私個人としては「やりたいことを見つける」より、「やれることを増やす」ほうが大事なのではないかと考えています。
『人生攻略ロードマップ~』より引用
上坂徹『メモ活』
かつて前田裕二氏の『メモの魔力』を読んでますが、こちらの『メモ活』の方が実践的だと感じました。書くために必要なことは何か。素材集めである。そのためにアイデアが浮かべばメモを取り、話を聞いたならメモを取る。何が素材になるのかはわからない。だからできる限り、書き留めておく。メモ帳でもいい、スマホでもいいので。
わたしも浮かんだことはメモしている。散歩している時、通勤している時、出かけている時。音楽だったらスマホやメモ帳に、本だったらメモもあるけどそのページを写真取ったり、kindleなら線引っ張れるので。こうやってても書くのは遅い。考え込む、組み立て/構成が悪い、雑念がとかいろいろあるんですけど、書く悩みはつきません。それはずっとです(汗)。
私はよく「五感」で感じたものをメモしておくといい、と言っています。そのすべてが「素材」になりうるからです。
『メモ活』より引用
藤谷千明『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』
主にヴィジュアル系ライターとして活躍する藤谷千明さんによる著書。アラフォー女性4名がルームシェアするまでの過程、その後の共同生活について書かれています。家賃21万は在宅勤務と外勤務によって支払い比率を変え、家事については分担してやる。大切なのは、衛生観念と経済観念と貞操観念のすり合わせだという。家の中での価値観の共有が大事であると。ほぼ全員がオタク属性だから、ある程度の距離感を保てるのは共同生活するのに功を奏してるとも書かれています。
藤谷さんは、ひとり暮らし時代とルームシェア時代と比較すると生活コストはだいたい半分ぐらいになったそうな。おもしろかったのは、ちょうどJanne Da Arc解散の話が出てきたり、EXITのストイック暗記王を全員にみせたという話とか。
楽しそうだなと思う反面、自分の場合は無理だなと感じました。生活に他人を入れたくないんですよね。自分のことがわかるのは自分だけというスタンスなので。ひとりの快適さの方が勝る(笑)。
思うに、我々は生活は共有しているが、人生は共有していないことが良い方に働いている気がする。家族愛や恋愛感情などの関係性による、クソデカ感情が挟まらないので、そこに気楽さや快適さを感じているのだろう。要するに「家族だからこうしなきゃ!」といった、思い込みの重力からは解放されているように感じる。
『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』より引用
BURRN! PRESENTS DIR EN GREY
DIR EN GREYの全作品について書く上で読み直しました。BURRN!の前田氏、MASSIVEの増田勇一氏によるロングインタビュー、さらには長年取材を続けている増田氏のDIR EN GREYヒストリーが主な内容。各自のインタビューがかなり濃いし、かなりぶっちゃっけてる。
薫さん、Dieさん、Toshiyaさんは俯瞰してバンドについて見てる・話している。一方で京さんは個人として歌やライヴについて話している。Shinyaさんは特に物申している感じで、一生ヴィジュアル系の断固たる決意が伺えます。
ちなみに↓も全アルバムについて書いているので読んでいただけると嬉しいです