Lantlos ‐‐Review‐‐

ドイツ出身のHerbstによる一人ブラックメタル・プロジェクトという段階を経て、ALCEST/AMESOEURSで活躍すNeigeがヴォーカルとして正式加入。このバンドもまたポストロック/シューゲイザーの様式を持ち込み、ブラックメタルに新たな火を灯している。

レビュー作品

> Agape > .Neon


Agape

Agape(2011)

   NeigeがAlcestやOld Silver Keyといったバンドで活動している事を考えると、非常にハイペースに思える約1年ぶりの3rdアルバム。というわけでNeigeは本作でも参加、Herbstとの双頭体制が続いている。

 全体を通してまず印象に残ったのは静と動の落差を激しくし、じっくりとした展開を持つようになったこと。ディプレッシヴ・ブラックとポストメタルとの掛け合いと表現すべきか。ブラックメタルらしく疾走して切り刻む場面もあるが、前作と比べてもJesu辺りを参照にしたかのような重厚さを強調したつくりで、前述したように静と動のコントラストがくっきりと浮かび上がっている。ポストロック寄りの儚げなメロディを中心としたメランコリックな静パートは奥ゆかしい品性を見せ、そこから強靭なグルーヴと覚醒したNeigeの絶叫が渦巻く激動の時間へ。

 さらに#2の後半に代表されるようなジャズ風のアプローチが取り入れられている事が本作では印象的だ。#4にしてもお上品なインストナンバーで落ち着きを与えている。そして、しっかりと注入されたNeigeらしいロマンチシズム。練られた構成から生み出される独自の芸術性の高いサウンドは、Wolves In The Throne Roomにも全く引けを取っていない。前述したようにジャズの要素を取り入れて自らを深化させた#2「Bliss」、奈落と天国を橋渡しするブラック要素入りのポストメタル#5「Elibo」辺りは個人的にかなり惹かれた楽曲。全5曲で35分というボリュームは寂しいが、音楽として新しい領域に踏み込みながらこれまで通りに高いクオリティを聴かせることに成功している。


.Neon

.Neon(2010)

   08年のデビュー作がAlcestやAmesoeursに接近した異形のブラックメタルとして注目を集めたドイツのHerbstによるプロジェクト・Lantlosの2年ぶりとなる2作目。本作では、そのポスト・ブラックメタル人気の火付け役であるネージュ御大をヴォーカルとして新加入させるというウルトラCの秘策を持って作られており、発売前から聴き逃し厳禁の大注目作として話題を呼んでいた。

 この作品で初聴きであるが、全6曲40分程の内容は前述したように2ndのAlcestやAmesoeursの影響下にあるサウンドが特徴的(当り前といえば辺り前)といえるだろう。ただ、こちらの方がブラックメタルの色合いは強い印象で、ひたすら鋭く研がれた刃で切り刻むかのようなリフとブラストを主体とした激狂乱、悪魔のような残忍性を見せるネージュの絶叫からは予想以上の陰惨な攻撃性を見せつけられる。その瞬間瞬間のキレ味や瞬発力なんかは、Kralliceをも思い出してしまうほど。あくまでブラック主体という矜持がここに垣間見れる。それに加えて、濁流のように押し寄せる轟音とそれが凪いだ時にみせるあまりにも穏やかな表情、その2つの緩急の生かし方が巧み。長尺曲を悠然と聴かせつけるプログレッシヴな展開力にしても頼もしい(Opeth的な感性もあるかも)。でも彼等の大きな武器となっているのが余りにも儚く心を揺り動かす哀愁たっぷりのメロディで、それが一番効果を発揮するように算段されて凄まじい絶望狂乱パートに組み込まれている。頭が割れそうになるギリギリのところですーっとメロディが染み込ませてくる#2や#4を聴くと、メリハリの聴かせ方が上手いことを如実に感じるはず。また、聴いていると非常にムードを大事にしているなあという印象を受け、陰惨な悲劇を描いたパートも儚げな幻想に包まれるパートにしても、詩的なロマンみたいなものが反映されているように思う。柔らかな弧を描くメロディと暴虐悲壮の渦が凛と対峙する#1は本作でも特に見事な曲だし、シューゲイズ・テイストのインストに軽く語りが乗った#6は感動的。

 ネージュのエッセンスがどういった効能をもたらしているかは前作を未聴のために詳しくはわからないが、天使と悪魔の両方が巣くう彼の歌声は本作の絶対的なキーとなっていることは確かだ(彼自身のプロジェクトよりもキツめの絶叫が多い)。それが破壊力も叙情性も一段上の段階へと押し上げている。漆黒の絶望へとさらわれる肉体と精神、それを救済するメランコリーに人の心はなびくことだろう。2人の異端児が噛み合った充実のポスト・ブラックメタル。

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