Vampillia ‐‐Review‐‐

2005年に関西で結成された異形の音楽集団。年を追うごとに形態を変え、「関西のブルータル・オーケストラ」 としてBoredoms以降の音楽の可能性を集約した音楽を提示している。

レビュー作品

> いいにおいのするサウンド・トラック > Winter Days > ɪmpəˈfɛkʃ(ə)n > White Silence > my beautiful twisted nightmares in aurora rainbow darkness > the divine move > Circle > hefner trombones vol.1 > endless summer > The Perfect World > dottrue > the primitive world > Rule the World + Deathtiny Land > Alchemic Heart > Sppears


いいにおいのするサウンドトラック

いいにおいのするサウンドトラック(2016)

 オーストラリアのADELAIDE FESTIVAL 2016にてGodspeed You! Black Emperorとまさかの共演を果たした音楽あり、お笑いあり、役者ありの大阪の集団のサントラ。新人監督・酒井麻衣さんとVampilliaによるコラボレーション映画『いいにおいのする映画』のもので、全35曲を収録。ミックスにweg、マスタリングにJames Plotkinが参加。

 一番重要だと思いますが、残念なことに映画を見ていません・・・。だからどの曲がどの場面でというのはわかりません。映画に合ってる音楽なんだろうとVampilliaというブランドを信用する。とはいえ、サントラということもあって、35曲収録だけどもカロリー低め。要であるピアノが活躍している場面多しの静謐な曲が大半を占めている印象。ただどういうわけか、ライヴ音源が3曲収録されていて#12「Ice Fist」、#17「rainbow on you」、#31「Hope」はどう使用されているのか気になるところ(映画見に行けよ)。あと、曲名はやっつけもいいところで、モンゴロイドとかミッチーとか吉田達也とか困ってメンバー名をつけているが、なかなかこういうセルフタイトルの付け方は恥ずかしくてできない(苦笑)。

 聴きどころとしては、24曲目以降かな。映画主演であるKAWAii金子理江ちゃん(LADYBABY、ミスiD2015)が参加した曲は、いずれも重要な位置を担っていそうな雰囲気。特にシガー・ロスがよぎる壮麗で温かい#29「Be A Light To The World」はハイライトとよべる出来栄え。そして、続くハチスノイトさん参加の#30「girl from marz」がVampillia調のポストロック/ブラック+デスボイスに、ハチスさんの歌声がしっとりとした感触を与えていて好印象。締めくくりの永遠3部作もまた少女たちのあどけない声が、音のしぼられた空間に響き渡るところが良いですね。

 ちなみにクラウドファンディングのお礼で「Vampilliaの楽屋で30分いじられる券」があるけれど、誰かやったのだろうか。自分はVampilliaの物販で5,000円以上買った時に、ミッチーの新ネタが1回見れたりもしたけど(笑)。


winterdays

Winter Days(2014)

 2014年10月1に開催されたBen Frost / Vampilliaの大阪COMPASS公演の来場者に無料で配布されたCD-Rである。内容としては、#1「Day One」#2「Day Seven」#3「Day Nine」の3曲が収録されて合計約23分。

 Nadjaであり、Ben Frostでありをお手本にしたかのようなアンビエント~ドローン・ノイズで綴られた作品である。しかしながら、海外で高い評価を得た『Alchemic Heart』ともまた違う感触で、オーロラのようなシンセが神秘的な雰囲気を助長していて、個人的にはBvdub辺りを思わせた。Winter Daysというタイトルにもある通りに、清冽とした真っ白なノイズが雪のように降り注いでくる感じだろうか。#2「Day Seven」だけは彼等の定番曲「Ice Fist」を終盤にサンプリングしていて、打楽器入りでダークな面が表現されているが、作品全体で彼等特有のメロウさを印象づけている。

 その中でも特に11分を超える最終曲#3「Day Nine」が雪原の大地からオーロラを見上げるような感じで良い。荘厳なシンセのレイヤーとエレガントなピアノによる装飾が、緊張感を忍ばせながら美しく神秘的な時間を紡いでいる。この内容で無料配布はもったいないと思える作品です。あと、こういったサービス的な音源でふざけてないVampilliaも新鮮だったり(笑)。


impa

ɪmpəˈfɛkʃ(ə)n(2014)

 カナダの神秘系アンビエント・ドローン夫婦、Nadjaとのコラボ作第3弾。タイトルは謎の文字で表記されていて読めないが、「インパーフェクション」らしい。「いいにおいのするNadja再来日ツアー」から販売を開始しており、ライヴ会場限定販売で一般流通は、今のところ無い模様だ。

 『the primitive world』、『The Perfect World』に続く作品となるのだが、本作では約19分と約24分の大曲2つを用意。Nadjaを主軸に据え、Vampilliaが加算していくという手法はこれまでと同じであり、じわじわと鼓膜と脳内を圧迫していく美轟音を垂れ流し続ける。いずれの曲もミニマルな展開で少しずつ変容していくものだが、本作においてもVampilliaの真面目部分を支えるストリングスとキーボードのお姉ちゃん達が活躍。ひたすらにダークなノイズの放出を続けるのに対して、ストリングスが全編に渡って物悲しい響きを与え、冷涼とした鍵盤の音が滴る。

 さらにメロディアスなギターフレーズやプログラミング音も差し挟まれ、中盤~終盤にかけてようやく淡々としたリズムが導入されてからは、本腰入れたブリザード轟音を見舞うので、頭に重いものが圧し掛かる感覚を味わうことだろう。

 ただ、正直な事を言えば、以前のコラボ作に収められていた大曲「Icelight」を上回るほどの強烈な印象は無し。お約束といえるスロウテンポ轟音漬け(神秘風味)の2曲なので、もっと冒険して欲しかったなあと思う。だが、それもやっぱりVampilliaがおもしろい事をやってるからこその欲求なのかなと。愛は地球を救うならぬ、笑いと轟音で地球を救う感じの曲を次のコラボでは期待したい。


White Silence

White Silence(2014)

  2012年7月のいいにおい企画「いいにおいのするDARK SUMMER TOUR2012」時に100枚限定で発売されたデモ作品「Dottrue」の完成版。当初はAttila Csihar(MAYHEM)のみの参加であったが、本作には新たにツジコノリコ様がコーラスとして加わっている。

 大枠の流れはデモ時から大きく変更は無い。オルガンとコーラスの厳粛な響きで立ちあがり、4分過ぎ辺りからツインドラムを軸に変則的かつ軽妙に突き進み、可憐なメロディと薄靄のノイズ、デスヴォイスが添えられていく。8分過ぎ辺りに小休止的な大らかなパートが盛り込まれるが、すぐに濁流の如きサウンドが全てを制圧。その後もとてつもない起伏に富んだ展開で約23分のドラマを生み出している。

 12分を経過すると、シューゲ風のギターとツジコノリコさんが奏でる幻想的世界に揺られ、続くように悲愴感たっぷりのストリングスにアッティラの読経(ハンガリーの神話を歌っているとの話もあり)が乗るパートに突入。ラストは破滅の美へと向かうドラマティックな爆走で終末を駆け抜ける。

 音質的にも向上して、各楽器のバランスも良くなったことで”完全版”も頷ける内容。自身で形容する「21世紀のArt of Life」というのも納得する他ないし、Kayo Dotにも比肩するエクストリームなサウンドは聴き手を捩じ伏せる説得力を持っている。「endless summer」とはまた違った手法で、Vampilliaの音楽性を詰め込んだキャリア屈指の名曲でしょう。


my beautiful twisted nightmares in aurora rainbow darkness Some Nightmares Take You Auror

my beautiful twisted nightmares in aurora rainbow darkness(2014)

 悪ふざけと共にJ-POP産業に挑み続ける関西のブルータル・オーケストラの1stアルバム。今まで数えるのが少しめんどうなくらいの企画盤を発表し、ようやく発売にこぎつけたこの1stアルバムは、全編に渡ってアイスランド録音を敢行し、エンジニアにBen Frostを起用。また、ミックスをworld’s end girlfriend、マスタリングをKASHIWA Daisukeが担当している。発売はwegのVirgin Babylon Recordsから。

 シガー・ロスやムームなどを生んだアイスランドへ行き、現地の聖歌隊やストリングス隊に協力を仰いで制作された本作。その効果もあって、神聖で壮大な音響に感化された印象は受ける。ツジコノリコ氏を迎えての表題曲#1は、『the divine move』から地続きのロマンティックな叙事詩を聴かせて、一時の安らぎを提供。本作では現地の方々にとどまらず、波多野敦子氏等をゲストに迎えていて、 ピアノやストリングスはさらに感傷的な響きをもたらし、楽曲の物悲しさや美しさを引き立たせている。

 だが、単に静謐なる美を追い求めにアイスランドへ行ったわけでは当然なくて、ライヴでもお馴染みの楽曲になっている#2「Ice Fist」から悪戯心のある轟音圧にブラックメタルの苛烈さが押し出され、目まぐるしい展開が全てを飲み込んでいく。Kayo Dotに立ち向かうようなプログレッシヴかつエクストリームなサウンドで圧倒する#4「seijyaku」にしても、これぞVampilliaといえる要素詰まっている。

 不愉快な夢を見せる轟音は、某インタビューで述べてた「美しい音のミルフィーユができました」をたやすく黒に染めてしまうわけだが、そのダイナミックな起伏を表現しきってしまう辺りは、ブルータル・オーケストラの面目躍如かなと思う。

 クラシカルなピアノとストリングス、 黒々しい音の濁流、オペラが一緒くたになって世界を混沌とさせる#3「Hiuta」、それにはっきりとシガー・ロスを目指しただろう歓喜のクライマックス が待ち受ける#8「Von」は本作でも特に重要な楽曲だろう。ライヴではGTO反町のPOISONやSIAM SHADEのモノマネなど、とにかくおもしろいことをしたがる芸人肌のこの変人集団だが、曲に関してはどこまでも練られて作られている。それがどこまで真剣なのかは、全くわからんが(笑)。

 そして、海外の大魔女である元SwansのJarboeを召喚したラストトラック#9「Tui」で厳 粛な空気に包み、物語は静かに幕を閉じていく。全9曲約40分。Vampilliaのエンターテイメント、ここに極まれり!という作品では決してないにしても、ようやく「1stアルバム」と銘打っただけある、これまでのVampillliaの音楽を集約させた仕上がり。悪知恵とユーモアはやや希薄にせよ、 Vampilliaというバンドを手っ取り早く知る上では、本作をまず薦めたいものだ。

 ちなみに本作のCDを取り出すと、その下に Special Thanksの面々がずらりと記載されているが、ご存知の通りに、Alcest、Jarboe、Nadja、Matt Elliott(The Third Eye Foundation)と今まで誰も呼べなかった外タレの来日公演を次々と実現させてきた彼等の大きな功績を改めて実感する。そしてまた、一流人との文化交流が彼等の音楽の血となり肉となっている。他にも国内・海外問わず数多くの名前が並んでいるが、かつて「heyoah」のPVに出演した田代さんがちゃんと並んでいる辺りは流石だなと(笑)。

 また、EmperorやSighなどをリリースするCandlelightから発売される海外盤は、Ben Frostがミックスを手掛けており、ちょっと奥行きを感じるように個人的には聴こえる。1曲目がツジコノリコさん抜きのインスト仕様(主にライヴではこちらを演奏している)になっているので、チェックを推奨したい。


the divine move

the divine move(2014)

 関西のブルータル・オーケストラがwegのVirgin Babylon Recordsと契約して放つ、プレ・デビュー作。大魔女の戸川純、あぶらだこの長谷川裕倫を召喚し、いいにおいシリーズ等でよく共演をしていたアイドル・グループのBiSも参加する企画編集盤である。海外からは仲は良いけど、2012年夏の来日はぶっちされてしまったKralliceのMick Barrがお手伝いしていたりもする。

 これまでも数々のコラボ作を発表してきている彼等だが、本作はピアノとストリングスの響きを生かした静謐でしっとりとした雰囲気を持った楽曲が多い。Mick Barrと共に優美苛烈なメタルを叩きつける#5「good religion」のように従来ファン向けのエクストリームな爆撃もあるが、大半においてクラシカル~ポストロック的な”静のVampillia”という側面が強く表れており、これまでと比べても整然としたつくりで、しみじみとセンチメンタルな味わい。

 日本昔話的な趣を戸川純と共に歌い奏でてみせた#1「lilAC」、ポストロック的な展開美にツジコノリコの繊細だが意志の強い声を乗せ、儚くドラマチックに彩られた#6「dizziness of the sun」とゲストの素材を上手く生かし、彼等らしい毒気あるユーモアもそこかしこに効かせている。

 ブルータル・オーケストラとして一筋縄ではいかない激しくも麗しい劇的なサウンドを奏でてきたバンドなので、当然ながら物足りない部分もあるにせよ、企画盤という位置づけを利用して世間様に知れ渡らせるために悪知恵を働かせた佳曲は揃っている。その中でも個人的には、シューゲイズ風味の冷涼として幻想的なトラックにBiSらしい歌唱を乗せた#2「mirror mirror」がベストかな。

 昨年9月にリリースされると、瞬く間に多くの人々の感興を誘った名曲#3「endless summer」を収録している点は間口を広げる点で非常に大きいし、その楽曲を真部脩一が自身の歌で少しだけ屈折させた#8「endless (MASSAKA) summer」もおもしろいインパクトを残すように思う。前述したように本作だけでVampilliaという異彩を放つバンドを理解するのは、無理な話だが入門編としては確かに本作が一番いいのかもしれない。


Circle

Circle(2013)

 関西のブルータル”おもしろ”オーケストラさんが、Virgin Babylon Recordsと契約したのを記念しての配信限定リリースとなる約9分のシングル曲。wegのレーベルを荒らしちゃおっかなあ!?と思ったかどうかは知らないが、レーベルのカラーをちょっとはみ出した美醜のコントラストを聴かせる大曲である。MayhemのAttila Csihar、AnticonのSOLEが参加。

 そんな「Circle」は、悲愴感と聖性を湛えた静パートから、スロウテンポの中でいろいろと調味料を間違えてブチ込んだ闇鍋で煮込み、黒いオーケストラと化した大所帯を重苦しい轟音を奏でてていくのが特徴だろう。これまでの中でも、ポストロック色が強めではあるのだが、キレイとキタナイをこんな両極端にひとつの曲の中で表現して彼ら以外にこれができるのか?と感嘆。ちょっとした気味悪さや嫌悪感みたいなのも与えつつ、時空をねじ曲げる混沌の渦に飲み込まれる。それにお逝きなさいといわんばかりのクライマックスは、しっちゃかめっちゃかやって、タイタニック級の壮大さをおそらく演出しただろう凄さ。

 約9分に情報と感情が凝縮されまくっており、人生も間違えます。おもしろい音楽とは何か?を求めながら、バンド内でアホタレの祭典を続けている彼等が放つの1曲である。


hefner trombones vol.1

hefner trombones vol.1(2013)

 「あんたはん、悪ふざけが過ぎまっせ」との言葉が飛んできそうな3曲入りEP。MIX-CD風のコンセプト音源という話もあるらしいし、新譜案内では『ボアダムズ meets X meets EXILE meets ENYA meets MOGWAI meets AMラジオの様な作品』と記述されていたりもする。

 そんなわけで今回は、それこそ思い付きのアイデアをぶちこめるだけ、ぶちこんだいつも以上に屈折した作品といえるだろうか。悪ふざけのタイトル、悪ふざけのJ-POP、悪ふざけのヘヴィメタル、悪ふざけのオルタナティヴ、悪ふざけのアンビエント、悪ふざけのオペラ・・・etc。VampilliaがVampilliaたる所以の要素を惜しげもなく注ぎ込み、ハイスピードで駆け抜けるジェットコースターのように目まぐるしく高速で場面を切り替える。

 近いのは初期の『Sppears』や『Rule the World + Deathtiny Land』だと思うが、本作の方が気負うことなくラフにバンドのアナザー・サイドを表現しているかなと思う。悪ふざけのユーモアが詰まった喧騒怒涛の3曲約11分。嫌ーな夢を見たい人向け。


endless summer[Analog]

endless summer(2013)

 「誰もが経験したあの永遠に終わらない17歳の夏。」をテーマにしたという新シングル、7inchという形態でリリースされた(同内容のCDを付属。しかもちゃんとプレスされたもの)。09年にリリースしたEP『Sppears』以来、久々にツジコノリコをゲストヴォーカルに招いていることもあり、話題となっている。

 静かなピアノによる立ち上がりから、ツジコノリコの美しいウィスパーボイスと清冽とした語りが序盤を引っ張っていく。あまりにも儚く優美な静寂の時。しかし、中盤にて目まぐるしいツインドラムの乱打がギアを入れ替えると、トレモロとデス声による悪夢の轟音。ただ、その裏では勇壮なストリングスの音色が印象的なメロディラインを奏でており、Vampilliaらしいロマンティシズムとユーモアに溢れた仕上がり。

 しっとりと儚い余韻を残しながら、静かに終わっていく形も楽曲のドラマ性を高めている。Vampillia史上に残る屈指の名曲の誕生。晩夏の頃に時を舞い戻すように虫の鳴き声のサンプリングとピアノ伴奏で締めくくる「owaranai natsu」も良い。


The Primitive World

The Perfect World (2013)

 2012年にリリースされたNadjaとのコラボ作『the primitive world』の続編と言える作品である。当初は昨年の秋にリリースされるみたいな話があったと思うが、延びに延びてようやく2013年になって発売。そんな本作は、『the primitive world』を順当にアップデートさせたものと言えるだろう。オープニングとエンディング曲を新曲に入れ替え、さらにもう1曲「Avalanche」という新曲も追加。そして、「the primitive world」の中核を成す3曲が引き続き収められている(ただし、「noorthern lights」は「Aurola」に曲名変更)。

 というわけで、内容としては大きく変わるものではないです。『the primitive world』と完全体と表現してもいいと思うけど、厳粛なストリングスとピアノが綴るオープニング#1「Wartult」、そして同タイプのエンディング#6「Krault」が作品の緊張感を高め、新曲である#3「Avalanche」がNadja方面に振り切れた破格の音圧で鼓膜を制圧。その上で全曲が再ミックスされているのだが、さらに立体感と陰影を残すような音響になっているように個人的には感じる。

 なかでも一番のインパクトを誇るのは、やはり24分を超える「Icelight」でNadjaとVampilliaの”異形+異形のコラボレーションの極み”を壮大に表現。「轟音」という言葉に反応してしまう人は、是非とも聴いて欲しい1枚ですね。「the primitive world」よりもこちらを推したいとこ。


dottrue

dottrue(2012)

 2012年7月のいいにおい企画で招聘したAttila Csihar(From Mayhem,Sunn O))) )とのコラボレーション作品。そのツアーでのみ販売された100枚限定のデモCD-Rで、一応マジックでナンバリングされております(わたくしは17)。

 ”吉田達也+竜巻太郎ツインドラム、ヴァイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス含むフル編成! 1曲約22分の大作!21世紀のArt Of Life!” という紹介文がついておりますが、ここにお馴染みの男性デス声と女性風オペラ声にアッティラまでもが加わって、鳥肌が立つほどのスペクタクルな展開で圧倒してくれます。

 背筋が凍るような緊張感の中でオペラ声が響き渡る大仰な幕開けから、変則的に突き進むドラムとピアノが4分過ぎからリズミカルに重なりあって物語を進めていく。この辺りは、案外コミカルっていう印象を受けなくもない。作品への期待を煽ってくる。そして、7分手前ぐらいで濁流のようなデスヴォイスが炸裂して、ストリングスも交えながら大きな山場を迎えていく。ポストクラシカルの優美さ、ブラックメタル風トレモロの吹雪、そしてアッティラの声が生み出す凄まじい混沌には悶絶することだろう。静と動のコントラスト、起伏豊かな展開が息を呑むような瞬間を次々とつくりあげていく。

 15分過ぎた辺りで再び荘厳なポストクラシカルで緊迫感を煽りますが、ラストはその美しい静謐を突き破ってブラックメタルで全てをなぎ倒して終わりを迎える辺りはこのバンドらしいなと。

 アッティラという素材を上手く生かしたサウンドメイキングの果てに、先日のNadjaとのコラボレーションを超える混沌を聴かせてくれる作品であるかと思います。100枚限定であるのが惜しい。後に正式音源化されてましたけどね(笑)。


the primitive world

the primitive world(2012)

 2012年に初来日ツアーで共演することとなったカナダの神秘アンビエント・ドローン・ドゥーム男女デュオNadjaとVampilliaのコラボレーション作品。”異形+異形”がここに組み合わさる。全身を浄化し、脳髄を揺さぶり続けるNadjaの壮大な轟音を基軸に進み、Vampilliaが耽美・狂気・悲哀・歓喜といったあらゆる情緒を織り込んでいく。

 どちらかといえばVampilliaは控えめな印象で、Nadjaの気宇壮大な作風を大きくふくらますように助力している感じか。といっても彼等が持ち込むピアノやデスヴォイスといった様々なエレメントがNadjaにとっては新しい色彩と感情をもたらしている。

 らしからぬピアノ・インストゥルメンタルが始まりを告げる短尺の#1「shining」に意表を突かれるが、先行公開された#2「northen lights」から当然のように非日常へ。幕開けの枯れたアコースティック・ギターから小奇麗なピアノが流麗に鳴り響き、轟音ギターが岩石のようにズドーンと頭上に圧し掛かる。この曲ではそのギターとピアノがお互いの存在感を高める様に共鳴しているのが印象的だ。

 そして、ハイライトとなるのが#3「icelight」で前半は非情なまでの轟音ギターが延々と垂れ流され、三半規管が崩壊。そこにVampilliaのデスヴォイスが乗せられ、人間の内に眠る狂性を呼び覚ましていく。しかしながら、15分手前ぐらいでピアノが絡みだしてしなやかに展開してほぐれていって耽美に締めくくるのが不思議な感じがする。本作ではこの#2,#3が特に抜けている印象。

 #4ではアンビエント方面に手をつけて引き延ばされたキーボードの音色が不気味になり続けるが、一回だけ破壊的な音圧が襲ってくる辺りはらしい。#5は#1と同じような感覚のピアノの小インストで、これを持ってこのコラボレーション作品は締めくくられる。

 正直言うともう少しVampilliaが暴れても良かった気はするが、結果的にこれがベターな感じなのかなとも思う。NadjaとVampilliaが手を組んだからこその圧倒的な音圧の向こう側の体感。


Rule the World + Deathtiny Land

Rule the World + Deathtiny Land(2011)

 半年も経たないうちにリリースされた2011年2作目となるアルバム。本作は、AmesoeursやFenなどが所属することでお馴染みのイタリアのcode666からのリリースとなっている。

 「X JAPAN に憧れたメキシコ産グラインドコアバンドが南米地下レーベルからリリース」 という嘘八百なコンセプト云々あるけれども、前作『Alchemic Heart』とは対照的な作品で1分未満から長くて3分のショート・チューンが24曲並ぶ作品となっている。実質のランニングタイムは25分程であるが、これまたやはり濃い内容。

 『Sppears』に近い感じで、色彩感に溢れた繊細な音の意匠と抜群の殺傷力という両輪で畳みかけていく。流麗なストリングスとピアノの旋律が神経質に鳴らされる中で、突如として大所帯故の強烈な演奏による轟音が暴発。振りの鋭いリフに迫力のあるグルーヴ、そして男性のデスヴォイスに女性のオペラ歌唱が加わって混沌に拍車をかけていくのが大きな特徴だ。

 重厚なオルタナティヴ、えげつないグラインドコアに繊細なポストロック、さらにクラシカルな品位に至るまでが渾然一体となっている。でも、好き放題やっていても緻密に編まれていて、独自の美意識が緊張感と共に貫かれている印象。さらに所々でハッタリとも思えるユーモアを効かせながら、短い曲をしっかりと昇華しきっている。また、それが全24曲で1曲というようなコンセプトとしても成り立っており、その点は非常に面白い。気づけば嵐の中にいるような、また喜劇的な狂騒を見ているかのような感覚に陥る。そして、この悪意とシニカルなロマンがスパイスとしてかけれるのもバンドの強みだよな。ピアノやストリングスの音色がジブリに思える曲があったり、ギャグみたいなどうしようもない曲もあったり、激速で畳みかける曲もあったりと本当にスリルに満ちている。

 個人的には『Alchemic Heart』の方が作風として好きだけど、こちらの方がバンドのバイタリティを強く感じさせる。制約を設けない自由な立ち振る舞い、様々なジャンルを越境する大胆さ、さらに独自のユーモアと大所帯であるが故の迫力が存分に発揮されているといえるだろう。これまで発表された作品がどれも極端な個性を持っていて、本作もまたそのひとつといえる。これからも我が道をどんどんと突き進んでいって欲しいですね。


Alchemic Heart

Alchemic Heart(2011)

 音楽の力を実感する様な壮絶な作品だと思う。緊張感のある舞台演劇が目の前で繰り広げられると錯覚するような気さえしてしまう。そして、恐ろしいほどの可能性を感じさせるものだ。本作は「Sea」と「Land」という2曲のみの構成であるが共に25分近くあって50分近い内容で、彼等の世界観の深まりを十二分に示している。さらには09年12月の来日公演での共演が個人的に鮮烈に焼き付いているJarboe(ex-Swans)、がゲスト参加。それがまた作品に大きな力を与えている。

 『Sppears』においても他を置き去りにする様な個性を見せつけたが、本作で聴けるそれは間違いなく違う。長尺の荘厳でシアトリカルな音絵巻を2つ用意し、聴き手を圧倒する。”リスニングによって創造される美しい原風景が楽曲が終わるつれ破壊されていく”というコンセプトを基に楽曲をゆっくりと織り上げていく。美しく幽玄な趣を湛えていると同時に恐怖が体中を支配していく様な不思議な力の内包。

 アンビエントに閑雅なヴァイオリンやピアノの旋律とJarboeのポエトリーリーディングが編まれていく#1「Land」は中盤以降、巨大なサウンド・ウォールに覆われ退廃的なエクスペリメンタル・ドローンへと発展する。ヴァイオリンやオペラティックな歌唱、妖しい呻き/痛切な叫びが荘厳な音像に差しこまれ、やがては意識を遠のかせて地の底へと道連れに。Kayo Dotの『Coyote』をより暗黒風ドローンに仕立てたかのような幽玄かつ暗黒のサウンドスケープは鳥肌物だ。

 続く「Lands」ではノイズを悪用しながら、独特の音風景を奏く。ピアノやストリングスの繊細な筆遣いとドゥーミーなギターに重厚なリズム、そして壮絶なる呻き声、オペラ歌唱が巨大なひとつの絵に収斂していく様は凄まじいという他ない。過剰な美と醜のコントラストを極限まで突き詰めることで神々しくも禍々しいハーモニーへと昇華されているとでもいえるだろうか。

 ロック、ポストロック、ドローン、ドゥーム、アンビエント、クラシックなどの多様な要素と多種の音パーツを確信犯的に制御し、渾然一体となった異世界を打ち立てるのは見事。混沌の闇鍋はさらに濃厚な香りと味付けになっており、恐ろしい体験を味わえる作品に仕上がっている。

 恍惚感と恐怖の錯綜、光と闇の接近、地獄と天国の邂逅。本作はVampilliaの個性だけでなく無限性をも示している。


Sppears

Sppears(2009)

 この1st EPは8曲で17分ほどの収録であるが、インパクトは絶大な作品だと断言していいだろう。お騒がせの田代●さしをPVに出演させた所も凄いが、音楽も狂いと知性の融合をまざまざと見せつけている。

 デスメタルの領域に接近する獰猛さ、クラシカルな気品ある美しさが大胆に行き交う。例えるなら、夢中夢が目指した境地をよりコアに開拓した感のある音楽といえばいいのだろうか。次々と色んな音が被さっていくことでエネルギーは巨大化、その重厚なスケールと迫力の前に何も言葉が出てこなくなる。

 ヴァイオリンやピアノを用いているのはメルヘン/クラシカルな荘厳さと重みを助長し、さらにはオペラティックな歌唱と血を吐く絶叫と端正な歌声が場面場面で使い分けられ、混沌具合は半端なし。またツジコ・ノリコがふわふわと素朴な歌声をゆるやかに乗せる#4なんかでは夢から覚めた穏やかさを提示したりと本当に幅が広い。百花繚乱のブルータル・オーケストラです、本当に。彼等のサウンドが凝縮したダンサブルな躍動感に隙の無い破壊力が備わった#2は1分しかないのに威力は絶大だし、Kayo Dotが頭をよぎる#3も盛大な闇の宴を繰り広げていて凄い。

 #5~#7は#1~#4のインスト・バージョンで冗談かましてくれてるが、これも楽曲の奇妙な側面を浮かび上がらせていて背筋をゾクゾクさせてくれる。そして、最後はダークなポストロック+Toolな音使いでひたすら漆黒の世界を表現する#8で締めくくり。あらゆる音楽をごった煮した闇鍋的なサウンドであるが、美しさと狂気をメルヘンにユーモアに表現している辺りも憎い。関西の恐るべき存在。フルアルバムも待ち遠しい。

 2009年12月にJarboe(ex-Swans)との共演ライヴを見に行ったが、バラバラなはずの個性と音がひとつの大きな塊となって表出させていて、単純に凄かった。ラストにはJarboeとの混成ユニットで導いた呪詛と祈りの世界が今でも印象に残っている。

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