私的名盤80選

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私的名盤③

The Cure / Disintegration(1989)

 説明不要の大御所の8thアルバム。The Cureは全ての源流だ、とのことで昔から何度かチャレンジしてはいたが、以前ははまれなかった。しかし2019年のフジロックで見るから集中して聴いたら、ようやくしっくりくるように(遅)。

 特にお気に入りなのが本作。内省的なゴシックロックといえるが、ダークでありつつもそれに流れ過ぎない耽美さとポップさで繋ぎとめる。#4「Love Song」や#6「Lullaby」といった代表曲を収録。

 わたしは#11「Homesick」をとにかく聴きまくって毎回切なくなっている。

オススメ曲:#11「Homesick」

D.A.N. / D.A.N. (2016)

 “いつの時代でも聴ける、ジャパニーズ・ミニマル・メロウを追求する”日本の3人組による1srアルバム。ひょうひょうとした風貌から恐ろしい作品を生み出し続けている。冷めざめとしてミニマル、でもメロウさがいつもお隣にあり。

 柔らかくのっかっていくファルセット、軽やかなギター、ゆるいテンポの中をしっかりと導くリズム。それらを阿吽の呼吸でくっつけるD.A.N作法で不思議な心地良さを味あわせる。

 音像に染みこむアンビエント、サイケ、チルウェイヴ、歌謡性。信条のミニマリズムはクールで抑制が効く。

オススメ曲:#3「Native Dancer」

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Deaheaven / New Bermuda (2015)

 アメリカのポストブラック/ブラックゲイズ代表格の3rdアルバム。ピンクのジャケットでオシャレぶってた前作『Sunbather』の方がエポックメイキングな作品。

 ただ、こちらの方が彼等っぽいと感じる。本作に置いて言えば原点への揺り戻しなのか。ポストハードコアやブラックメタルといった鋭利でアグレッシヴなサウンドを強化。

 かと思えばシューゲイザーしてないわけでもなく、1st-2ndの中間地点のようなバランスの取れた作風という印象がある。Pitchforkで9.0を獲得してのBest New Musicにも選出。

オススメ曲:#1「Brought to the Water」

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DIMLIM / MISC. (2020)

 日本のヴィジュアル系トリオの2ndアルバム。ラウドロックの剛と重による武装をやめて、フジロックにも出演経験のあるインスト・バンドのCHONを思わせるトロピカルフレーバーの効いたマスロックへ。

 クリーンを主体に編み上げて淡麗かつ涼感を伴うサウンドに変化し、随所で顔を出すエレクトロニクスは、煌びやかさよりも冷感に重きを置いた感じで配合。

 洗練されたお洒落さと軽やかな聴き心地を両立しているがヴォーカルは相反するように暑苦しくクセが強い。このエモーショナルな叫びがあるからこそ、本作は聴き手に強く訴えかけるものがある。2022年2月に潔く解散。

オススメ曲:#5「What’s up?」

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DIR EN GREY / DUM SPIRO SPERO (2011)

 2022年に結成25年目を迎えたヴィジュアル系ロックバンドの8thアルバム。あえて『Withering to death.』や『UROBOROS』ではなく『DUM SPIRO SPERO』。

 タイトルはラテン語で「息ある限り、希望は捨てず」という意味で、DIRの最深到達点にして最重到達点。ひたすらな重さは生きることの険しさを突き付け、凝りに凝った堅牢な構成は、DIR EN GREYが異質であることを物語る。

 ドゥームメタルとプログレッシヴメタルと和の異種混合戦のごとし。試練と修羅の音はひたすらに鳴り続けるが、独自の感覚と息遣いがある。光よりも痛みが未来を照らすこともある、そんなことを思わせる重量盤。

オススメ曲:#3「DIFFERENT SENSE」

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downy / 第五作品集『無題』 (2013)

 日本のインディー/ポストロック・バンドが活動休止からの9年ぶりのお目覚めとなった5thアルバム。オルタナ~ハードコア譲りの強度、エレクトロニカの可憐さ、幻術のようなダブ~アンビエントの揺らぎの加算。

 変則的なリズムが基盤を支え、多彩なギターワークが空間に塗り重なっていき、文学的な詩を操る青木ロビン氏の歌声がそっけなく拡がる。

 #3「曦ヲ見ヨ!」や#7「春と修羅」における妖刀で切られるような感覚は、孤高の表現者がゆえ。長い月日の向こうにあった美しい変化と調和。過去・現在・未来、全てを結びつけたdownyの新たな音の結晶。

オススメ曲:#7「春と修羅」

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Earthless / Rhythms from a Cosmic Sky(2007)

 2001年にサンディエゴで結成された、ヘヴィ・サイケデリック・トリオ。20年以上にもわたって不動の3人で今でも活動中。こちらは2ndアルバム。

 全3曲46分という内容で頭2曲はインストゥルメンタルで共に20分越え。レトロな質感のハードロックを基盤にして、そこに絶妙に絡むリズム隊の強烈なアンサンブルが楽しめるのは相変わらず。

 時間が進むにつれて音のエネルギーが倍化されていき、トリオの壮絶な演奏がさらに火花を散らす。やがてはドラッギーな昂揚感をもたらす、反復と酩酊の見事さよ。

オススメ曲:#2「Sonic Prayer」

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ELLEGARDEN / ELEVEN FIRE CRACKERS (2006)

 エルレの愛称で親しまれる4人組バンドの5thアルバム。発売初週で20万枚以上を売上げ、オリコン初登場1位を記録。

 作品は突き抜けるような疾走感は変わらずにあるが、骨太なアンサンブルによって重厚感が増し、初期にも通ずるシリアスな風情とオルタナティヴ・ロック色が戻ってきた印象を受ける。

 #3「Space Sonic」や#8「Salamander」といったヒットシングルに加え、パワフルな#2「Fire Cracker」や快速メロコア#11「Marie」、#5「高架線」のような染みる曲まで心地よい。

オススメ曲:#3「Space Sonic」

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envy / 君の靴と未来 (2001)

 日本のハードコア・レジェンドの2ndアルバム。ハードコアの過去も現在も未来も繋ぎ続ける作品であり、20年以上経った今も全く色褪せず、むしろ輝きを増し続けている。

 どこを切り取っても感情的。そして、魂ごと震わせるハードコアの勢いと衝動がある。#1「ゼロ」における予兆から、一気に激流に飲み込まれる#2「さよなら言葉」で撃ち落とされた人間は、世界中にどれだけいることか。

 2012年に開催された”leave them all behind 2012″にて『君の靴と未来』完全再現を体感できたことは、何事にも代えがたいもの。

オススメ曲:#2「さよなら言葉」

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Explosions In The Sky / The Earth Is Not a Cold Dead Place (2003)

 1999年にテキサス州オースティンで結成されたインスト・ポストロック4人組の3rdアルバム。静から動へ移り行く、いわゆる轟音系ポストロックの先駆者のひとつ。

 本作は最高傑作と謳われる1枚で、前作で感じたアルバム全体を覆う重苦しさや不穏なムードが明け、音のきらめきや美しさの方にベクトルが向かう。聴いたひとりひとりの生命を輝かせるようにそのアルペジオは鳴り、リズムは刻まれる。

 聴き手に様々な情景を浮かばせる、様々な感情を抱かせる。心の真芯を捉えようとするその音塊は、人生に彩りを与え、人生に寄り添うサウンドトラックのよう。

オススメ曲:#5「Your Hand In Mine」

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