私的名盤④
GLAY/ pure soul(1998)
前年にリリースしたベストアルバム『REVIEW』で488万枚を売り上げ、ベスト盤ブームのきっかけをつくったGLAY。
2枚同時リリースシングル「誘惑」「SOUL LOVE」を収録した本作は、当時・中学1年だったわたしにとって”アルバム”という形式を植え付けた。それ以前は、アルバムはシングルがいっぱい入っててお得なCDという認識だった(笑)。
GLAYの良心が詰まっており、ポップとロックのいいとこどり。#2「ビリビリクラッシュメン」には興奮させられるし、表題曲#6「pure soul」はいつ聴いても胸にジーンとくる。GLAYは昔から背伸びしないで聴ける親しみやすさがあるが、自分がよい年になって聴くとその歌詞とメロディは懐かしい味に変わってる。
オススメ曲:#6「pure soul」
Godspeed You! Black Emperor / Allelujah Don’t Bend Ascend(2012)
カナダ・モントリオールの前衛的インストゥルメンタル集団の10年ぶりとなる復活作。Pitchforkで9.3点を獲得したのを始め、世界的に評価されました。
冒頭を飾る#1「Mladic」から”帰還”という言葉を当てはめたくなるもので、中東風のフレーズや宗教観を醸しながらもひたすらに荒れ狂う暗黒宴が続く。
復活以前よりロック的なダイナミズムは顕著であり、#3「We Drift Like Worried Fire」は悲哀と狂気を束ねて世界の終わりを見つめ、ゆっくりと上昇を続ける。神格化されていた集団がその所以を示した作品。
オススメ曲:#1「Mladic」
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Grails / Deep Politics (2011)
1999年にアメリカ・ポートランドで結成されたエクスペリメンタル系インスト・バンドの6thアルバム。
これまでもオルタナティヴやポストロックといった表現以上の拡がりと深さを内包していたが、70年代のプログレやクラシック、ジャズに現代音楽、サウンドトラックまで数多くの要素が理想的な形で楽曲に寄与。
妖しくダークな感性とオリエンタルな艶めきを有しながら、かくも残酷で幻想的な美しさを持ったインスト作品に仕上がっている。ちなみに今は亡き海外音楽サイトThe Silent Balletの2011年ベストアルバム第1位。
オススメ曲:#4「Deep Politics」
heaven in her arms / 黒斑の侵蝕 (2008)
日本の激情系ポストハードコア・バンドの1stフルアルバム。2017年に発表した3rdアルバム『白暈』にバンドの成熟が表れているが、最初に聴いたときの衝撃から本作をチョイス。
初期衝動と混沌、そこはかとない中ニ病感。トリプルギターを中心に紡ぐストーリー、それをさらに激しくドラマティックに仕立てるkent氏の詞と声が、ビジネス的なエモやハードコアを屈服させる。
#1「声明」~2「痣で埋まる」、#4「鉄線とカナリア」、#9「赤い夢」など彼等のクラシックといえる楽曲を多数収録しており、原点にして強烈な作品。
オススメ曲:#4「鉄線とカナリア」
ISIS(the Band) / Panopiton (2004)
ポストメタル最重要バンドの3rdアルバム。イギリスの功利主義哲学者ジェレミー・ベンサムが18世紀に考案した監獄『パノプティコン』、それを監視社会として現代に落とし込んだフランスの哲学者ミシェル・フーコーの概念がコンセプト。
『Oceanic』よりもさらに思慮的で叙事的、かつ壮大でオーガニックなグルーヴ感。丹念なギターのループと重層化されていくレイヤー。寄せては返す波のような静と動の繰り返しは、“音の粒子が見える”とまで評されたライヴで本領を発揮する。
記念碑といえる作品。本作収録「In Fiction」を2007年1月のライヴで体験したことで、わたしの人生は確実に大きく変わった。
オススメ曲:#3「In Fiction」
Jambinai / ONDA (2019)
韓国のエクスペリメンタル系インスト5人組の3rdアルバム。韓国伝統音楽とポストロック/ポストメタル融合推進事業+エクスペリメンタル仕立ての様相は、強化と洗練の果てに開かれた音楽性へと進化/深化。
玄琴(コムンゴ)、觱篥(ピリ)、奚琴(ヘグム)といった伝統楽器が火花を散らすようにぶつかりあい、ノイズの轟きから大陸的なメロディまでもをもたらす。
分類不能な個性を持つうえで、東洋のGodspeed You! Black Emeperorといえそうなスケールを打ち立てている。
オススメ曲:#8「ONDA」
kamomekamome / ルガーシーガル(2007)
千葉県柏市を拠点に活動するハードコア・バンドの2ndアルバム。前作がプログレシッヴな大作として60分を超える尺でしたが、本作は10曲で約38分。
圧倒的ブルータリティを背に猛進するハードコア、そのストレートな音象が表立つ。キャッチーと取れるほどのメロディラインが所々で顔を出し、緩急も自在にコントロールされている。
曲自体を短くしながらも多彩さと複雑さをギュッと押し込んでおり、エモーショナルな螺旋に飲み込まれていく。3,4分前後の曲に凝縮しまくっていて凄まじい。これが研ぎ澄ますということか。
オススメ曲:#2「クワイエットが呼んでいる」
Kayo Dot / Hubardo (2013)
Toby Driverを中心に暗黒サウンドを創り上げるバンドの6thアルバム。荘厳なオーケストラのような振る舞い、プログレッシヴな構成が核。
フリー・ジャズやチェンバー・ロック、ドローン、民族音楽などをグツグツと煮込みまくって出来上がった極悪のエクストリーム・ミュージック。
刻んできた長い歳月と培われた経験値は、全てここに集約されるためにあった。そう表現できるだろう渾身の約100分にも及ぶ作品。徹底して練り上げた凄惨で悲劇的な物語は、暗黒そのもの。2016年6月には奇跡の初来日を果たした。
オススメ曲:#1「The Black Stone」
Killswitch Engage / The End of Heartache (2004)
メタルコア工科大学首席の3作目。わたしのメタルコア・デビュー作。メロデス譲りの豪胆なリフで荒らしながらも、サビの叙情性を最大限に活かすドラマティックな構成に心つかまれる。このスタイルは多くのバンドに模倣された。
ブラストビートを用いた疾走から重厚なミドルテンポ、バンドの躍進に貢献した表題曲のバラードまで全13曲。2ndや4thアルバムも好きだが、自分としては2004年に出会いの1枚となったこれ。
ヴォーカルをジェシー・リーチ、ハワード・ジョーンズの2人が務めているが、わたしはハワード派。いや、だって最初に聴いたのが彼在籍時だし、ライヴも彼の時に見ているから(2005、2008)。
オススメ曲:#4「Rose of Sharyn」
黒夢 / LIVE AT 新宿LOFT (1998)
ヴィジュアル系どころか、この当時はストリート系のカリスマ的存在だった清春氏率いる黒夢のライヴ作。あえてのライヴアルバムだが、何十年経っても自分の中でライヴアルバムはこれがトップ。
ロックの醍醐味、ライヴの醍醐味が凝縮されている。聴けばその熱量といい、活動休止前のヒリついた緊張感や焦燥などが感じられるはず。
復活後の2014年に4公演に参加したが(男性限定公演含む)、活動休止前のライヴを一度でも体験してみたかったと今でも思う。
オススメ曲:#9「BAD SPEED PLAY」