【アルバム紹介】Fall of Leviathan『In Waves』

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アルバム紹介

In Waves(2024)

 1stアルバム。全6曲約55分収録。スイスのインストゥルメンタル五重奏による初作品です。マスタリングはCult of LunaのMagnus Lindbergが担当。ということで保証書はついていますが、FoLは今となっては珍しい実直な轟音系インストを鳴らします。

 ”5年間にわたる作曲、調整、考察、実験の集大成である“とはBandcampでの声明。拠点のスイスは山岳地帯に覆われた永世中立国ですが、旧約聖書に登場する海の怪物をバンド名に冠し、巨大な航海のテーマと深海にインスピレーションを得ているのが本作『In Waves』です。

 オープナーである#1「Nantucket」から名刺代わりとなるバンドの魅力が詰め込まれています。クリーントーンを中心とした波のごとき叙情、海の深淵と圧倒的質量から成る轟音をシームレスに移行。そこに男性の渋いナレーションを入れることで緊迫感を煽り、シンセサイザーが繊細なトーンを寄与しています。また尺は1曲平均9分と長め。

 音楽的にはちょうどポストロックとポストメタルの海域を攻めるようであり、If These Could Trees TalkやAudrey Fal辺りを近しく感じさせます。海外誌だとMogwai + Neurosisという形容もされている模様ですが、負の感情や轟音という強烈なインパクトは約束されてない。

 余計なかけひきやギミックなどは用いず、古典的な静と動のクレッシェンドの中で機織りのように物語を丹念に織り上げていく。その忍耐強く移ろう音で露になっていくのは海洋の神秘と厳格さです。比較的穏やかなトーンを維持する#2「In Waves」や#4「Spermwhale」にもダイナミックな揺さぶりがあるのですが、大自然は他曲でより猛威を振るいます。

 その筆頭が13分を越える#3「Pacific」であり、ヘヴィなディストーションを中心に闇と重にもアドバンテージを持つバンドであることを示します。

 そして強烈なラストトラック#6「Ahkab」はハーマン・メルヴィルの小説『白鯨』にインスパイアされたもの。近年のPelicanを思わせるドゥーム/スラッジ系の重低音が美しさと恐ろしさの両方を聴き手に植え付けることになります。

 The OceanWe Lost The Seaがいたり、The End of The Oceanといったバンドからもわかるようにポストロック/ポストメタル系は海と謎のパートナーシップを結んでいるわけですが、Fall of Leviathanもその仲間入り。シンプルな演奏を研ぎ澄ませることで聴き手の感情に最も訴えかけることができる、それを本作で証明しています。

メインアーティスト:Fall Of Leviathan
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