MASCHERA、いくつもの仮面を持ったヴィジュアル系バンド

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 1992年に結成し、2000年3月まで駆け抜けたヴィジュアル系4人組バンド、MASCHERA。イタリア語で”仮面”の意を持つ彼等はインディーズ時代は兵庫県姫路市を中心に活動し、1997年12月にメジャー・デビューを飾りました。メンバーはMICHI(Vo)、TAKUYA(Gt)、HIRO(B)、TOMO(Dr)の4人。

 インディーズ期は、ダークなサウンドを展開。94年リリースの1stフルアルバム『悪徳の栄え』は退廃的な雰囲気に満ちたもので異彩を放ちました。97年12月にシングル「ゆらり」でメジャーデビューを飾ってからは、ビートロックとデジタル&ポップ色を強めたサウンドを展開。98年リリースのメジャー1stアルバム『iNTERFACE』は、当時のV系ブーム最盛期とあってそこそこ売り上げます。

 ただ、その流れも長くは続かず。バンドは00年3月23日にリリースしたメジャー2ndアルバム『orb』、その数日後となる3月29日に開催された赤坂BLITZで解散ライヴを行いました。2012年に期間限定で復活しましたが、それ以降は復活していません。Vo.MICHIさんはS.Q.F.というソロプロジェクトを経て、現在はLa’cryma ChristiのKOJIさんとともにALICE IN MENSWEARというユニットで活動中。

 MASCHERAを知ったきっかけは、1998年に彼らがやっていたラジオを聞いたことです。そこで3rdシングルとなる「 [ékou] 」のカッコよさとメンバーの気さくなトークが惹かれた要因。当時の日曜深夜にCBCラジオでMALICE MIZER「真夜中のシルブプレ」~MASCHERA「ハイスピードカフェ」を通して聞くのが、わたしの習慣のひとつでした(しかし、プロ野球中継がおすと時間がズレこむ)

 本記事ではフルアルバム3作品とインディーズ期のミニアルバム、ベストアルバム2作品の計6枚について書いています。”隠れた名バンド”なる評価が惜しいとわたしは思っていますので、この記事をきっかけに聴く人が増えれば幸いです。

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目次

悪徳の栄え(1994)

 結成から2年を経ての1stアルバム。全10曲約59分収録。長らく入手困難品であり、それは今も変わらず。再発の気配が全くといっていいほどありませんし、配信される予定も全然無さそうです。皿屋敷堂本舗という特殊なレーベルから出ているからか。

 わたし自身はメジャー1stアルバム『iNTERFACE』が最初に聴いた作品です。そこを出発点に『orb』を聴き、インディーズに戻っていくという聴き方だったのですが、本作が一番エゲつない。毒の原液そのまま作品に落とし込んだってぐらい。充満するアングラ臭、舞台演劇を観ているような楽曲の並び/アルバム構成。ブックレットにはキャストと書かれているように、音楽という媒体を通した暗黒舞踏にも思えます。

 タイトルはマルキ・ド・サドの長編小説から引用されているっぽい。曲名は「人類機械化計画」に「毒殺」「廃都幻影」。それに#1「悪徳の栄え」はドイツ語で歌っているし。うん、狂ってる(笑)。ブックレットの「毒殺」歌詞ページは毒殺という単語で埋め尽くされていて、夢で呪い殺されると思ったぐらい。メジャーからさかのぼって聴くような人はそれこそ喰らいますよ。

 音楽自体は黒系といわれる類のダークなヴィジュアル系が基調。MICHIさんの伸びやかで妖艶なミドルボイスは早くもバンド最大の武器。ギターはクリーントーンを中心に紡がれていて、歌うようなラインからドラムと共に歯切れよく進行を手助けするベースの存在感も目立つ。

 音作りとしては極端に重いわけではないが、退廃的な雰囲気は強い。歌詞からくる世界観もあるし、チープな録音もある。楽曲自体のインパクトもありますが、作品を通した雰囲気づくりがとても上手いです。

 前半の曲は90年代中期のヴィジュアル系の要素を感じますが、前述したように#5「毒殺」から危険なスイッチが入ってきます。それこそ下手なホラー映画の数倍トラウマを植え付けられるぐらいに。タイトルからして強烈な#8「人類機械化計画」は軽快なサウンドが基盤であるものの、”みんな死んじゃえばいいさ” 、”僕も機械になろう 素敵な人類機械化計画”と歌う。1999年の世紀末・ノストラダムスの予言を不安視しながら、テクノロジーに支配されていく世を5年も前に憂いていたのかもしれません。終盤のB級映画のような男女の叫び声は、何とも言えない後味ですが。

 メジャーに行った後に音楽性改変材料となった電子音等も本作で使われていますし、#4「PARAFFIN FETISHIST」におけるストリングスや鍵盤の華美な装丁はすでにお手の物。最終曲#10「サヨナラ」はセリフを含むことで8分の短編映画を上映しているかのよう。既に確立された暗の世界。MALICE MIZERと仲が良かったのも本作を聴くと納得がいきます。

PRETTY NEUROSIS(1996)

 インディーズ期に発表した7曲約31分収録のミニアルバム。インディーズ時代唯一のシングル「運命の車輪」を収録。『悪徳の栄え』ほどの濃厚さはありませんが、憑き物を良い形で落としながら空気感とサウンドを軽くしたという印象を残します。歌詞も前作ほどではないですし。

 歯切れの良いリズム隊、ハードロックテイストと耽美さを丁寧に組み合わせるギター。そこに被さってくるヴォーカルは伸びやかで大らかな包容力を持つ。#1「I miss・・・」から90年代ヴィジュアル系のテイストが詰め込まれており、ツタツタ系ビートにギターソロが花咲き、歌メロは歌謡性を帯びてタイムスリップを誘います。

 ハードロック・テイストの強い#2「運命の車輪」はLUNA SEA「ROSIER」の冒頭と初期SIAM SHADEの要素が混じった感じでしょうか。削ぎ落してエッジの効いたサウンドが鳴っています。だから全体の印象も雰囲気ものというよりロック感の方が強くなっている。

 しかしながら、#3「GOD IS DEAD」や#4「コンドル」で聴かせる妖しい音使いは、前作に入っていても違和感はなし。シンセはところどころで入ってくるものの、メジャー以降ほどの存在感はなくアクセント的な使い方。#7「Lasting…」はライヴでラストを飾ることが多かった重要曲。切なく耽美なサウンドメイキングとMICHI氏の迫力ある歌が今なお強烈に響きます。

 2021年になって聴くと『悪徳の栄え』と『iNTERFACE』の間を取り持っている感じはします。本作ぐらいのバランス感覚ある曲でメジャーを渡り歩いていたらどうなっていただろう、と想像したくはなります。

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tales(1997)

 97年12月にメジャーデビューが決まったので、インディーズ期の置き土産となるベストアルバム。全15曲収録。2本のデモテープ『ca・tas・tro・phe』『ca・tas・tro・pheⅡ』から前述した『悪徳の栄え』『PRETTY NEUROSIS』、さらにはオムニバス等の曲を収録しています。一応、曲順は時系列的に古→新の順番となっています。

 やたらと録音の大きいベースラインの躍動から幕を開ける#1「DANCE IN THE SHADOW」。最初のデモテープで発表した初期の初期曲ですが、ヴィジュアル系のラインをなぞるダークさと退廃的な雰囲気を持っています。#2「SLAY」や#3「BLUE MOON KISS」も同様の作風で闇と耽美の世界を覗きみるようです。

 エッジと疾走感を伴っていますが、過激という感じはあまり無し。それでも90年代ヴィジュアル系のアングラ要素はやっぱりあって、耽美性と文学的な詞からくる儚いダークさに覆われています。2本目のデモテープに収録された#4「万華鏡の中で…」、#5「Castle of Rose」はその辺りがよく表現されている曲と言えるはず。

 印象的なのは#8「ラー」。今の自分の耳で聞くと、ゴスの雰囲気を漂わせる鬱系ポストロック+トリップホップに聞こえる変態曲。さらには#10「刹那1995」がわかりやすくいうと、石井さん加入以降のcali≠gariにあるニューウェイヴ+ジュリアナ風味にロック色が強まった感じ。これらを発表したのって90年代中盤なんですけど、MASCHERAがやっていたことって25年近く経って聴いても懐かしさと新鮮味がある不思議。センスが違ったということでしょうか。

 終盤の2曲#14「愛、碧水に漂う…」、#15「WAIT」も魅力的な輝きを放っています。#14「 愛、碧水に漂う… 」は美と暗が入り混じるプログレ風味の曲で途中にギターソロやベースが主張するパートを含み、フルートの音まで入り乱れる8分間。彼らの曲で最も構成を練り上げてつくったと言えるかもしれない曲です。

 そして、#15「WAIT」が90年代ヴィジュアル系の良心ともいえる曲でクリーントーンを多用したメロディアスな疾走チューン。この曲はイントロで黒夢「Miss MOONLIGHT」の薫り漂うところがまた良いのです。ちなみに『悪徳の栄え』収録の#7「PARAFFIN FETISHIST」がピアノ・インストVersionとなって本作には入っています。

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iNTERFACE(1998)

 1998年11月リリースのメジャー1stアルバム。全12曲収録。シングル4曲「ゆらり」「HYPERDELIC AGE」「[ékou]」「ラストフォトグラフ」収録。オリコンチャート初登場20位を記録し、おそらく一番売れた作品です。わたしはこのころに週1レギュラーラジオ「MASCHERAハイスピードカフェ」のリスナーとなり、彼等を知りました。これが初めて聴いたMASCHERAのアルバムです。

 印象でいえばデジタル要素が強くメジャー仕様のポップロック。アングラな雰囲気が強かったインディーズ期を思うと、デビューシングル『ゆらり』から、メロディアス&ポップへ大きな変化を巻き起こっております。歌詞は大きく内容が変わって、女々しくあなたを想う恋愛系。さらにはデジタル要素と女性コーラスがふんだんに取り入れられ、音楽的に全く別の色が加えられています。初期ファンからしたら”別物だよ”とゴールデンボンバーの「†ザ・V系っぽい曲†」が頭に流れてる人多そう。

 というのも黒夢やSHAZNAを手掛けた経験がある佐藤宣彦氏がプロデューサーに名を連ねており、メンバーと佐藤氏が共同作曲した曲が大半を占めます。メジャーにいくとはこういうことだ、と宣告するかのように。ただ、これが良いか悪いかは置いといて、最大公約数を狙いにいくには十分なクオリティを有しています。デジタル+疾走感+メロディアスなシングル「ekou」を聴いて、当時中学1年13歳・ひよっこのわたしは撃ち落されたわけですから。

 インディーズ期に少し時間を巻き戻した#5「超絶の嬰児」みたいな曲があり、冬はこれだけ聴いておけば救われるバラード#8「Powder」があり、哀しみを突き抜けるほどのパワフルな説得力と切なさが同居する#11「乱夢」がある。MICHI氏のヴォーカルはメジャーに入ってさらに端正かつ伸びやか。表現力と存在感は群を抜いていいます。男性からして理想の声じゃないでしょうか。なぜこのヴォーカルを擁してドカンと売れなかったのか、と何十年経っても思ってしまうんですよね。

 そして、彼等を代表する#9「ラストフォトグラフ」と#12「ゆらり」というシングル曲の存在。両曲ともにイントロのメロディアスなギターからくるものがあって、20年経っても色あせない泣ける歌ものとして多くの人々に響く曲です。特に「ゆらり」はMASCHERAでわたしが一番好きな曲です。

 メジャーの洗礼をメンバー自身が受ける中で、ちゃんと適応して心に残る曲を数多く生み出しました。これがそつなくできたのが強みでもある。わたしはここをスタート地点に次作『orb』を聴き、インディーズ期の暗黒を体感していきます。MASCHERA原体験がここにある分、バイアスがどうしてもかかる。しかし、もっと多くのファンをつかめただろう楽曲がそろっているだけに、もっと知られて欲しいなという想いがありますし、そう思わせる作品なのです。

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orb(2000)

  前作から約1年5ヶ月ぶり、オリジナルアルバムとしてはラストのメジャー2ndアルバム。シングル「to fly high」「Alice」「Dragonheads Snaketales」を含む全11曲収録。リリースが2000年3月23日。6日後の3月29日にMASCHERAは解散ライブを行いました。

 本作はリリースする上でふたつの要点があります。製作の段階で解散が決まっていた、そしてセルフプロデュース作品であることのふたつです。厳密にいうと「to fly high」が佐藤氏との最後の共作。ですが、以降の2枚のシングル「Alice」「Dragonheads~」は急に暗くなってどうした?と当時は思ったものです。かつての妖しくシリアスな雰囲気を持つオルタナ曲で(女性コーラスも入ってない)、ここにきて再び輝こうと足掻いているのが伺えました。

 実際に『iNTERFACE』のメジャー仕様のポップさを咀嚼した上で、原点回帰するようなダークな世界観が確立しています。#1「TRUTH IN THE STORMY GARDEN」の鮮やかな飛翔を思わせる開放感いっぱいのスタートを機に、続く「to fly high」でもっと高くへ飛び上がる。でも、本作はここから世界を捻じ曲げ、歪みをもたらしていきます。

 #3「マドンナ」からまとう闇のヴェール。そのまま#4「float」#5「八月の憂鬱」と聴き進めるごとに曲調は妖しさを増し、暗部へと分け入ります。歌詞はかつてのような退廃と文学性を感じさせますが、MICHI氏の苦悩と葛藤がこれでもかと滲み出てる。自分への迷い、自分達の音楽への迷い、表現することに対する苦しみ。MASCHERA屈指の名バラード#8「蜉蝣 ~水仙の涙~」は美しさと妖しさが表出していますが、”死んでしまいたい” や “どうせすぐに消える わたし”からは当時の彼の心情が伺える。

 後半は#7や#9といったシングル曲が、過去へと時空を巻き戻して原点を踏まえた”最新”の楽曲として吐き出される。そして#10「ABYSS」や#11「orbital」の流れは、メジャーでの経験があったからこそ力強いメッセージソングに昇華しています。これまでの集積があったからこそ示せた”これから”。本作は暗闇の強さも光の強さも両立する。隠れた名盤としておくのは惜しいほどの作品だと思いますし、解散が決まっていたからこそ出せた輝きがあります。

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MASCHERA HISTORY 1996-2000 (2012)

 2012年12月の再復活公演を前にリリースされたCD2枚+DVD1枚のベストアルバム。メジャー在籍時に発表した音源を網羅。DISC1にメジャー1stアルバム『iNTERFACE』が全部入り。その時期にあたるシングルのカップリング曲も併録。さらにはインディーズ時代のオムニバスアルバム『VISUAL ROCK BEST COLLECTION〔un〕』から#16「FLASHBACK」、#17「MEMORIES」も入っています。

 DISC2にメジャー2nd『orb』をまるごと収録。こちらにはインディーズ期『PRETTY NEUROSIS』の曲も4曲収録しています。全33曲約155分と特大ボリュームでMACHERAを堪能できるようになっています。ジャケットは簡易コラージュで大変残念なものですが、中身は素晴らしいんです。コンプリートベストだから当たり前ですが。

 本作は2021年5月に突如としてサブスク一斉配信になりました。これを聴け!と声を大にして言いたいから紹介しています。解散から20年も経てばいろんなことが起きる。時計の針に刻まれ 大切な事を忘れてたからか。それでもいえることは、MASCHERAの音楽は色褪せてないということです。

 ということで本作を聴けばMASCHERAの良さが十二分に伝わるはずです。安心して風に心ゆらりして、ドゥドゥドゥドゥイィィィーヤッしちゃってください。わたしもMASCHERAを聴いて、あの頃に自分に戻れましたよ。

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