個人的ポストメタル探求 ~重厚かつ芸術的な世界~

 ポスト・メタル = Post-Metal

 日本ではあまり浸透していないこの言葉/ジャンルを弊サイトでは頻繁に使ってきたし、そういったバンドを数多く取り上げてきました。なぜか?

 それには大きな理由があって、僕がポストメタルの先駆者かつ代表格であるISIS(アイシス)というバンドに強く影響を受けたこと。2007年1月に彼等のライヴを初めて見たときの興奮や衝撃は今までなかったもので、音楽を聴く/体感する上でのひとつのターニング・ポイントとなるものでした。

 ”音の粒子までもが見える”と形容されるライヴは、改めて思い出してみても格別。それから、同じようなバンドは他にいないのか?と色々と探しているうちにのめり込んでいきました。その影響は、弊サイトに大きく反映されています。

 というわけで、今回は重い腰を上げて「ポストメタル=Post-Metal」について取り上げてます。もちろん、これからもメジャーになるとは思っていませんが、狭い界隈で根強く支持はされるはず。本コラムは、入門編のつもりでお読みいただければ幸いです。

 ※ なお、今回はAlcestやDeafheaven等に代表されるポスト・ブラックメタル勢に関しては言及しておりません。

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― ポストメタルとはそもそも何、ジャンル形成の流れ 

2012年現在のポストロック・シーンでは他ジャンルとの幅広い融合、実験が見られる。

ヘヴィメタルやヘヴィロックにおいては、メルヴィンズ(Melvins)の影響を受けたニューロシス(Neurosis)やトゥール(Tool)のようにヘヴィなサウンドに、ポストロック的なアプローチやアンビエンスを持ち込むバンドが現れ(ニューロシスはサンプラーやポストプロダクションの他、トラディショナルな管弦楽器を導入している)、やや時代が下ってから、イェスー(Jesu)やカルト・オブ・ルナ(Cult of Luna)、アイシス(Isis)、ペリカン(Pelican)などはメタルとポストロックを融合させている。融合の結果はポストメタルと呼ばれている。

 いきなりポストロック – Wikipediaより抜粋してみました。ジャンル形成の流れとしては、MelvinsやGodfleshの存在が大きいと思われ、Toolもここに絡んでくるでしょうか。

 彼等が大きな影響を与えた後に、特に重要な2つのバンドが登場します。80年代後半から活動を続けるNeurosis、そして、90年代後半にアーロン・ターナーを中心に結成されたISIS(the Band)です。

 元々はハードコアの出自だったNeurosisは、『Souls At Zero』を転機に独自のヘヴィ・ミュージックを追求。1996年発表の『Through Silver in Blood』でノイズや民族音楽も取り込む多様性を持ち、なおかつアート性に長けた内省的なヘヴィ・サウンドをつくりあげました(海外のPost-metal Wikipediaを見ると、Terrorizer Magazineのライターは、本作をポストメタルの始まりとしている)。以降も彼等の音楽は深みを増し、現在でも他のバンドを引き離す孤高のバンドとして君臨しています。

 続くようにボストンのハードコア・シーンから登場したのがIsis。初期はスラッジメタル色が強かったですが、ミニマルやポストロック、アンビエントを取り入れながら前衛的な深化を遂げていき、2002年発表の2nd『Oceanic』、そして2004年発表の3rd 『Panopticon』で、ポストメタルはひとつの完成系をみることになります。

 中心人物であるアーロン・ターナーが提唱した”thinking man’s metal(=考える人のメタルといった意味合い。行川和彦氏は、ISIS『Wavering Radiant』のライナーで”思慮深き人のためのメタル”と訳していた)”という言葉を残しています。

― 音楽的な特徴 

 音楽的な特徴を言えば、ハードコア~スラッジメタル~ドゥーム・メタルを軸足にして、初期のMogwaiやMONO、Explosions In The Skyといった、ポストロックでも静と動のコントラストを重視したサウンドを掛け合わせたものといえそうです。

 シューゲイザー、アンビエント、ノイズ等の要素が取り込まれており、実験的な側面も強い。その上で、ポストメタルという楽曲の様式/雛型を作り出したのがISISでしょう。彼等の影響でスラッジメタル寄りの重厚さと咆哮が入ったバンドは多い。そして、Jesuではシューゲイザー要素を多くすることでポップなヘヴィ・ミュージックを実現し、Russian Circlesはプログレッシヴ・ロック~マスロック~メタル要素を巧みに出し入れしています。

 ここで再び、海外のPost-Metalのwikiから拝借すると、「Post-metal is a fusion music genre, a mixture between the genres of post-rock, heavy metal, and shoegazing」と表現されています。端的に轟音系ポストロックのメタル版という表現もできなくはないと思いますが(ポストロック的な展開を持つ事が多い)、ヘヴィメタルから派生したわけではなく、ハードコアやスラッジといったところからの進化/深化であることを付け足す必要があるでしょう。

 BURRN!2009年6月号において、音楽ライターの渡辺清之さんが「ポスト・メタルへのいざない」というコラムを寄稿されていますが、そこで「スラッジ的スローな展開を基本としつつ、メロディやドラマ性を重視したインスト中心のメタル・ミュージック」とポストメタルを上手く表現されています。この表現はスゴくしっくりくるので、勝手ながらご紹介させていただきました。

 ※ 2013年夏頃 日本語のポストメタルwikiが作成されたようです。ご参考までに。


― ポストメタルの名作20選

Neurosis / Through Silver In Blood [1996]

前述のようにポストメタルの起源とされた作品であり、英国の音楽メディアFACT Magazine選出の『ポストメタル・レコードTOP40』で1位を記録した名盤。長尺の楽曲の中でヘヴィなサウンドを軸に、多彩な楽器の使用と実験的なアプローチを施しながら、重く美しい世界を造形しています。孤高であり続ける先駆者の美学の凝縮。


ISIS / Oceanic [2002]

ポストメタル最重要バンドの2作目。スラッジメタル色が強かった1stからかなりの洗練が施され、静と動の対比/ダイナミズムを意識したスタイルが本作にて確立。うねりを上げる重いリフに引っ張られ、エモーショナルな咆哮が轟く。反対にメロディはどこまでも澄み、楽曲を美しく引き立てています。本作にてアイシスは幅広くその名を知られる存在へ。音の粒子が見える!という表現はここからでしょう。


 ISIS / Panopticon [2004]

3作目。さらなる進化/深化。中心人物のアーロン・ターナー自らが提唱した”thinking man’s metal”を体現したかのような作品で、震天動地の轟音波動、対するメロディの大河が奇跡の融合を果たした傑作。ライヴにおいても重要な位置を占めた「In Fiction」を収録。ToolのJustin Chancellorもゲスト参加しています。ちなみにPanopticonとは、イギリスの思想家ジェレミー・ベンサムが唱えた監獄モデルのこと。


 Pelican / The Fire in Our Throats Will Beckon The Thaw [2005]

アメリカ・シカゴのインスト・メタル・カルテットの2作目。シカゴの四季/自然を轟音と叙情で見事に描き出した壮大でドラマティックなインスト作品。怒涛のラストが訪れる#1「Last Day Of Winter」、轟音の濁流に飲み込まれる#3「March to the Sea」は必聴の価値あり。ポストロック・ファンからの支持率も高い。


Pelican / What We All Come To Need [2009]

Southern Lordに移籍しての4作目。大地に歪をもたらすスラッジ色の強いリフと重心の低いリズムが楽曲をリードし、作品全体がたくましいまでの重量感を増しています。そこに持ち味のオリエンタルな叙情性が凛とした響きをプラス。そのバランス感覚が非常に優れていて、彼等の中でオススメしやすいカタログと言えます。初のヴォーカル・トラック#8「Final Breath」も収録(VoはThe Life And TimesのAllen Epleyが参加)。


Cult of Luna / Somewhere Along the Highway [2006]

90年代後半から活動するスウェーデンの重鎮の4作目。前作『Salvation』において確立したスタイルをさらに洗練させ、8人編成(当時)が繰り出す激震のヘヴィネスと冷ややかなメロウさが凄まじい迫力を生み出します。トリプルギターにツインドラムの分厚いサウンドは強力過ぎ。ポストメタルの醍醐味を感じる#2「Finland」や15分を超える#9「Dark City, Dead Man」など収録。


Cult of Luna / Vertikal [2013]

続いて6枚目。フリッツ・ラング監督による1927年公開の映画『メトロポリス』を題材にしたコンセプト作品となっており、SFチックなシンセの活躍や幽玄なアンビエント等の前衛的なアプローチで、サウンドの幅を広げた秀作に仕上がっています。特に#8「In Awe Of」が好み。


Russian Circles / Guidance [2016]

シカゴ出身のインスト・メタル・トリオの6作目。作品毎に着実なる前進を果たし、本作ではよりヘヴィネスの部分を積み上げています。無駄な贅肉を可能な限り削ぎ落とすようにストイックに鍛え、それ故のスリリングな展開と重厚なサウンドを実現する鉄壁のアンサンブルがあまりにも凄まじい。まさしく本格派と技巧派を兼ねる音。


Jesu / Conqueror [2008]

Justin K.Broadrickによる現在のメイン・プロジェクトの2作目。Godfleshの影響が濃かった1stアルバムから、”ヘヴィロック + シューゲイザー”で新しい次元を切り開いた作品で、轟音が紡ぐ安息を目指しヘヴィなポップ・ミュージックを現在も追求しています。2007年11月、 2014年7月には来日公演を経験。


Red Sparowes / At the Soundless Dawn [2005]

ex- ISISのブライアン・クリフォード・メイヤー率いるバンドの1stアルバム。“種の絶望”というのをコンセプトに緻密な構成を施し、なおかつ叙情性を押し出したサウンドが特徴的。全体を通しても映像喚起力と美しさを表現した魅力的な作品です。かつてはNeurosisのメンバーも在籍していました。


The Ocean / Precambrian [2007]

ドイツの芸術的軍団の”先カンブリア紀”をコンセプトに据えた2枚組の3rdアルバム。1枚目は先手必勝の無慈悲なブルータル・デスで一網打尽。2枚目はISIS、Godspeed You! Black Emperror、Meshuggah、OPETH辺りが組み合わさった巨大なオーケストラの様相で圧倒します。静と動を完璧にコントロールしきった構築力、太古や宇宙といった壮大なコンセプトと哲学性を音に収斂させる技術は、このバンドでしか表現できないもの。


Rosetta / A Determinism Of Morality [2010]

USフィラデルフィアの5人組の3rdアルバム。天文学や宇宙というテーマを掲げ、空間的なデザイン性の高いポストメタルで聴く者を魅了します。ISISから Mogwai、Explosions In The Skyなどの影響を感じさせながらも壮麗なリリシズムと威圧的なヘヴィネスの交錯が印象的。そして、独特の浮遊感が彼等の特徴です。本作は洗練を推し進めて美学の深まりを感じる1枚です。


 Intronaut / Void [2006]

Exhumed やPhobiaなどのメンバーが集まったバンドの1stアルバム。テクニカル・デスメタルにポストロックの要素が加わったような形で、メロディアスなパートを上手く組み込みつつ、憎悪に満ちたサウンドがジャケットのように紅く染めます。3rdアルバムからはさらなるプログレ~テクニカル志向に向かっています。


Mouth of the Architect / Quietly [2008]

これまでの作品と比べて、急激に知的さと透明感が増したオハイオのスラッジ色の強いポストメタル・バンドの3枚目。幽玄な女性ヴォーカルをフィーチャしたり、スペーシーなキーボードなどを挟んだりしつつ、怒りを吐き出す咆哮が劇的なコントラストを生む強烈な作品。


Lento / Icon [2011]

イタリアから登場したインスト・スラッジ~ポストメタル、2作目。凡百のバンドが束になっても太刀打ちできない黒い重量感と迫力がとにかく圧巻で、アンビエントの箸休めも効果的に導入してさらに緊張感を煽ってきます。一聴した時のインパクトは大きく、知的&圧殺ヘヴィネスの名作といえる作品。


 Amenra / Mass Ⅴ [2012]

あのNeurosisをその音で説き伏せたベルギーの漆黒スラッジ/ポストメタル・バンドの5作目。スロウテンポから振り落とされる激重リフとリズム、そして哲学的な詩を悲痛に叫んで心身を激しくかき乱す。未知の感覚を呼び起こすかのような黒くヘヴィなサウンドは圧巻です。その徹底した美学に基づいた作風からは、最もコンセプチュアルなバンドという印象もあり。


Year Of No Light / Tocsin [2013]

フランス・ボルドーを拠点に活動するポストメタル系インスト・バンド6人組の3作目。前作から続くインスト路線を継続し、トリプルギターやツインドラムが叩き出す破格の音圧におフランスらしい耽美性が同居しています。そして、5曲中4曲で10分越えという長大さ。そんな彼等のインストからは奈落の底から天上界までもがみられることでしょう。


 Light Bearer / Silver Tongue [2013]

Fall Of Efrafa(後に記載)解散後、Alexを中心として結成されたバンドの2ndアルバム。「Neurosis + Sigur Ros」と表現できそうなサウンドとスケール感を持ち、堕天使ルシファーの物語を深遠な音像で描く。なかでも#1「Silver Tongue」はポストメタル界に残る名曲。音楽とアートと哲学の共鳴が生み出す大きな感動が本作にはあります。残念ながら解散済み。


Palms / Palms [2013]

Deftones のチノ・モレノと元ISISの三人衆による新バンド。ISISの最終作『Wavering Radiant』を彷彿とさせる特有の美しさと揺らぎを持った豊穣なサウンドをベースに、チノの艶かしいヴォーカルが浮遊する。ポストメタルというよりは新世代のヘヴィロックという印象ですが、お互いの要素を巧みに引き出して融合・完成させたことは見事。前述の『ポストメタル・レコード TOP40』にもランクイン。


ISIS / Wavering Radiant [2009]

締めくくりはこれ、ポストメタル最重要バンドの最終作。これまで通りの細かく立体的なテクスチャーを実現しつつも、前作の課題にあげた肉体性と衝動性を宿しています。自らを総括しつつ、最終章を飾った本作はおそらくジャンルのひとつの到達点。『全てをやりきった』と語る彼等は2010年6月末に解散。

 自身の考察と海外サイトを参考にしてポストメタルに該当するであろう作品を20枚選出。このジャンルを語る上で基本となる作品ばかりなので、ここからチェックしていってほしいと思います。入門にはISISを推しますが、あのダミ声が入るとダメっていう人も多いので、その場合はPelicanやRussian Circlesのような完全インストから聴いてみるという形が良いかな。そこから耐性をつけ、徐々にポストメタルの海に飛び込んでいけるのではないかと思います。

― まだまだある。世界のポストメタル作品10選

Fall of Efrafa / Inle [2009]

UKのネオクラスト最高峰。先に紹介したLight Bearerは本バンドが解散した後にそのメンバーでつくられました。本作は、リチャード・アダムス著の古典的小説にインスピレーションを得て制作された3部作の最終章で、彼等の作品ではポストメタルに一番近い作風です(ので紹介)。激情と叙情で綴られるドラマは凄まじく、7曲79分を圧倒的なスケールで描ききる名作。


LVMEN / Mondo [2006]

チェコの怪物、LVMEN。ポストロックにポスト・ ハードコアやらカオティック等をストイックに突き詰めながら血肉化し、NeurosisやISISとはまた別の極限を表現した脅威のバンドでございます。まさにチェコから吹き荒ぶ混沌の嵐。2017年には約10年ぶりの新作『Mitgefangen Mitgehangen』をリリース。


 5ive / Hesperus [2008]

アイドル・グループと同名ですが、全く別のインスト・スラッジ・デュオの多分4枚目。ヴォーカルもベースもなしの2人とは思えない激重リフ&リズムの反復が続く衝撃作で、全てを蹴散らすパワフルさが魅力的です。ヘヴィなリフをとにかく浴びたい方にオススメ。


 Humanfly / Ⅱ [2008]


英国のポストメタル4人組の2ndアルバム。メタリックリフと暴力的なベースライン、重く打ち抜かれるドラムを執拗に重ねて畳み掛ける彼等。 Hydraheadに名を連ねてそうな作風ですが、さらにスペーシー&サイケデリックな意匠も施しているのが特徴。まるでPelicanの1st 『Australasia』を強化したかのよう。現在も活動しており、Bandcampでライヴ盤等のリリースが続いている。


Grown Below / The Long Now [2011]

ベルギーのポストメタル・バンドの1st。同郷Amenraから受け継いだ漆黒のヘヴィネスに透明感のある叙情性を加え、さらにストリングスや女性ヴォーカルを織り交ぜたサウンドで新鮮なインパクトをもたらした秀作。表題曲#6は、まさにバンド自身の音楽性を1曲に凝縮して体現したような16分超の曲。しかしながら解散済み


 Tesa / Ⅳ [2012]

バルト三国・ラトビアの秘宝の4作目。激情系ハードコアとポストメタルを絶妙にミックスさせたかのような仕様で、美轟音ファンが惹かれそうな内容。インスト・パートに比重を置いて、轟音ギターと強靭なリズムが寄せては返す。それでいて哀感と冷たさ、そして暗さが通底しているのはこのバンドらしい。全3曲35分収録。2020年には新作『Control』をリリース。


IZAH / Sistere [2015]

オランダのポストメタル6人組の1st。静動激美の落差のあるサウンドを軸に、全4曲全てが10分超えの約72分。ポストメタルの旨味を暴発させつつ、 デスメタル風の残虐な攻め上がりを導入したりして、定型フォーマットに簡単に陥らない。悪いグループに所属しているけど成績は優秀みたいな、異端っぷりがあります。極悪と極美で綴る約72分は強烈。


Presence of Soul / All Creation Mourns [2015]

活動歴15年を超える国産バンドのメンバーを再編成しての7年ぶり3作目。光と闇、善と悪を焦点に二極化した世界を表現しています。これまではポストロックと評される音楽性でしたが、ここにきてYear Of No Lightクラスの強い重厚なサウンドを獲得し、なおかつピアノやストリングスが曲の情感や背景をふくらませる。暗く内省的、でも美しく儚い物語が展開されています。全てを包み込むような#8「Circulation」には涙腺が緩む。


OVUM / Nostalgia [2016]

国産インスト・カルテットの3曲入り3rd EP。”Metal oriented instrumental rock”という新スタイルに開眼し、メタル色を帯びたギターリフ、ツインペダルを用いた鋭いリズムと一聴瞭然の変化に初聴時は驚かされました。これまでの自身の持ち味であるクリアな美しさを活かしながら、ねじ伏せる力強さを持つ1枚。2016年末にはRosettaの来日ツアーをサポートした。


The Angelic Process – Weighing Souls With Sand [2007]

ジョージア州アセンズの夫婦デュオによる3rdアルバム。ポストメタルという分類は違うかもしれませんが、JesuとNadjaが魔の合体を果たしたかのような作風で、哀切や絶望を背負った破格の音圧がこの世の終わりをみせてくれます。表題曲#6を聴いてると、感覚の全てが本当におかしくなりそう(汗)。

  続けて、世界各国に潜むポストメタル・バンドをピックアップしたのがこちら。基本的に静から動へと爆発していくタイプを多めに選出しています(叙情性が強い作品が多いのは、わたくしの好みによるもの)。少し首をかしげる選出があるかもしれませんが、その辺はご容赦いただきたい。

― ポストメタル、この曲を聴け!

・ISIS(The Band) – Holy Tears

・Russian Circles – Youngblood

・Light Bearer – Primum Movens

 ポストメタルの醍醐味を味わえる3曲を選出。どれも1曲が長尺で構成されていて、叙情と轟音の繰り返しのあるものです。このダイナミズムこそが聴き応えにつながっていると思います。でも、この手のバンドはライヴで体感してこその衝撃というのがありますので、もし機会があれば是非とも生で体験して欲しいも のです(来日が厳しいバンドばかりですが)。


― 最後に

 2010年6月にISISがまさかの解散をしましたが、その功績としてポストメタルがひとつのジャンルとして世界的には根付いたはず(と勝手に思っています)。もちろん、 まだまだ大きな可能性を秘めているし、絶えず変化を遂げながらこのシーンは続いていくでしょう。日本ではそもそも一部でしか盛り上がっていないという厳し い現実がありますがね(苦笑)。

 世界中の様々なバンドの活躍によって、ポストメタルは新たなフェーズへと突入している感があって興味は尽きません。追っていく価値は十二分にあるし、シーンをリアルタイムで追うことができるのが何よりもおもしろいのです。

参考文献
Post-metal – Wikipedia
FACT MAGAZINE「The 40 best post-metal records ever made」
・BURRN!2009年6月号コラム「ポスト・メタルへのいざない」
※2013年2月に本記事を初掲載、2016年8月に改訂版掲載。2021年6月にサイト再編につき再改訂。
お読みいただきありがとうございました!
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