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個人的ポストメタル探求 ~重厚かつ芸術的な世界~

2016/8/17 COLUMN

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―― 始めに ――

 ポストメタル = Post-Metal

日本ではあまり浸透していないこの言葉/ジャンルを弊サイトでは頻繁に使ってきたし、そういったバンドを数多く取り上げてきました。なぜか?それには大きな理由があって、僕がポストメタルの先駆者かつ代表格であるISIS(アイシス)というバンドに強く影響を受けたこと。2007年1月に彼等のライヴを初めて見たときの興奮や衝撃は今までなかったもので、音楽を聴く/体感する上でのひとつのターニング・ポイントとなるものでした。”音の粒子までもが見える”と形容されるライヴは、改めて思い出してみても格別。それから、同じようなバンドは他にいないのか?と色々と探しているうちにのめり込んでいきました。その影響は、弊サイトに大きく反映されています。

というわけで、今回は重い腰を上げて「ポストメタル=Post-Metal」について取り上げてます。もちろん、これからもメジャーになるとは思っていませんが、狭い界隈で根強く支持はされるはず。本コラムは、入門編のつもりでお読みいただければ幸いです。

 ※ なお、今回はAlcestやDeafheaven等に代表されるポスト・ブラックメタル勢に関しては言及しておりません。

 

―― ポストメタルとは ――

2012年現在のポストロック・シーンでは他ジャンルとの幅広い融合、実験が見られる。ヘヴィメタルやヘヴィロックにおいては、メルヴィンズ(Melvins)の影響を受けたニューロシス(Neurosis)やトゥール(Tool)のようにヘヴィなサウンドに、ポストロック的なアプローチやアンビエンスを持ち込むバンドが現れ(ニューロシスはサンプラーやポストプロダクションの他、トラディショナルな管弦楽器を導入している)、やや時代が下ってから、イェスー(Jesu)やカルト・オブ・ルナ(Cult of Luna)、アイシス(Isis)、ペリカン(Pelican)などはメタルとポストロックを融合させている。融合の結果はポストメタルと呼ばれている。

 

いきなりポストロック – Wikipediaより抜粋してみました。ジャンル形成の流れとしては、MelvinsやGodfleshの存在が大きいと思われ、Toolもここに絡んでくるでしょうか。彼等が大きな影響を与えた後に、特に重要な2つのバンドが登場します。80年代後半から活動を続けるNeurosis、そして、90年代後半にアーロン・ターナーを中心に結成されたISIS(the Band)です。

元々はハードコアの出自だったNeurosisは、『Souls At Zero』を転機に独自のヘヴィ・ミュージックを追求。1996年発表の『Through Silver in Blood』でノイズや民族音楽も取り込む多様性を持ち、なおかつアート性に長けた内省的なヘヴィ・サウンドをつくりあげました(海外のPost-metal Wikipediaを見ると、Terrorizer Magazineのライターは、本作をポストメタルの始まりとしている)。以降も彼等の音楽は深みを増し、現在でも他のバンドを引き離す孤高のバンドとして君臨しています。

続くようにボストンのハードコア・シーンから登場したのがIsis。初期はスラッジメタル色が強かったですが、ミニマルやポストロック、アンビエントを取り入れながら前衛的な深化を遂げていき、2002年発表の2nd『Oceanic』、そして2004年発表の3rd 『Panopticon』で、ポストメタルはひとつの完成系をみることになります。中心人物であるアーロン・ターナーが提唱した”thinking man’s metal(=考える人のメタルといった意味合い。行川和彦氏は、ISIS『Wavering Radiant』のライナーで”思慮深き人のためのメタル”と訳していた)”という言葉を残しています。

 

―― 音楽的な特徴 ――

音楽的な特徴を言えば、ハードコア~スラッジメタル~ドゥーム・メタルを軸足にして、初期のMogwaiやMONO、Explosions In The Skyといった、ポストロックでも静と動のコントラストを重視したサウンドを掛け合わせたものといえそうです。シューゲイザー、アンビエント、ノイズレ等の要素が取り込まれており、実験的な側面も強い。その上で、ポストメタルという楽曲の様式/雛型を作り出したのがISISでしょう。彼等の影響でスラッジメタル寄りの重厚さと咆哮が入ったバンドは多い。そして、Jesuではシューゲイザー要素を多くすることでポップなヘヴィ・ミュージックを実現し、Russian Circlesはプログレッシヴ・ロック~マスロック~メタル要素を巧みに出し入れしています。

ここで再び、海外のPost-Metalのwikiから拝借すると、「Post-metal is a fusion music genre, a mixture between the genres of post-rock, heavy metal, and shoegazing」と表現されています。端的に轟音系ポストロックのメタル版という表現もできなくはないと思いますが(ポストロック的な展開を持つ事が多い)、ヘヴィメタルから派生したわけではなく、ハードコアやスラッジといったところからの進化/深化であることを付け足す必要があるでしょう。

BURRN!2009年6月号において、音楽ライターの渡辺清之さんが「ポスト・メタルへのいざない」というコラムを寄稿されていますが、そこで「スラッジ的スローな展開を基本としつつ、メロディやドラマ性を重視したインスト中心のメタル・ミュージック」とポストメタルを上手く表現されています。この表現はスゴくしっくりくるので、勝手ながらご紹介させていただきました。

 ※ 2013年夏頃 日本語のポストメタルwikiが作成されたようです。ご参考までに。

 

―― ポストメタルの名作たち ――

Through Silver in Blood  Neurosis / Through Silver In Blood [1996]

前述のようにポストメタルの起源とされた作品であり、英国の音楽メディアFACT Magazine選出の『ポストメタル・レコードTOP40』で1位を記録した名盤。長尺の楽曲の中でヘヴィなサウンドを軸に、多彩な楽器の使用と実験的なアプローチを施しながら、重く美しい世界を造形しています。孤高であり続ける先駆者の美学の凝縮。

Oceanic  ISIS / Oceanic [2002]

ポストメタル最重要バンドの2作目。スラッジメタル色が強かった1stからかなりの洗練が施され、静と動の対比/ダイナミズムを意識したスタイルが本作にて確立。うねりを上げる重いリフに引っ張られ、エモーショナルな咆哮が轟く。反対にメロディはどこまでも澄み、楽曲を美しく引き立てています。本作にてアイシスは幅広くその名を知られる存在へ。音の粒子が見える!という表現はここからでしょう。

パノプティコン  ISIS / Panopticon [2004]

3作目。さらなる進化/深化。中心人物のアーロン・ターナー自らが提唱した”thinking man’s metal”を体現したかのような作品で、震天動地の轟音波動、対するメロディの大河が奇跡の融合を果たした傑作。ライヴにおいても重要な位置を占めた「In Fiction」を収録。ToolのJustin Chancellorもゲスト参加しています。ちなみにPanopticonとは、イギリスの思想家ジェレミー・ベンサムが唱えた監獄モデルのこと。

Fire in Our Throats Will Beckon the Thaw  Pelican / The Fire in Our Throats Will ~ [2005]
アメリカ・シカゴのインスト・メタル・カルテットの2作目。シカゴの四季/自然を轟音と叙情で見事に描き出した壮大でドラマティックなインスト作品。怒涛のラストが訪れる#1「Last Day Of Winter」、轟音の濁流に飲み込まれる#3「March to the Sea」は必聴の価値あり。ポストロック・ファンからの支持率も高い。
What We All Come to Need  Pelican / What We All Come To Need [2009]
Southern Lordに移籍しての4作目。大地に歪をもたらすスラッジ色の強いリフと重心の低いリズムが楽曲をリードし、作品全体がたくましいまでの重量感を増しています。そこに持ち味のオリエンタルな叙情性が凛とした響きをプラス。そのバランス感覚が非常に優れていて、彼等の中でオススメしやすいカタログと言えます。初のヴォーカル・トラック#8「Final Breath」も収録(VoはThe Life And TimesのAllen Epleyが参加)。
Somewhere Along the Highway  Cult of Luna / Somewhere Along the Highway [2006]

90年代後半から活動するスウェーデンの重鎮の4作目。前作『Salvation』において確立したスタイルをさらに洗練させ、8人編成(当時)が繰り出す激震のヘヴィネスと冷ややかなメロウさが凄まじい迫力を生み出します。トリプルギターにツインドラムの分厚いサウンドは強力過ぎ。ポストメタルの醍醐味を感じる#2「Finland」や15分を超える#9「Dark City, Dead Man」など収録。

Vertikal  Cult of Luna / Vertikal [2013]

続いて6枚目。フリッツ・ラング監督による1927年公開の映画『メトロポリス』を題材にしたコンセプト作品となっており、SFチックなシンセの活躍や幽玄なアンビエント等の前衛的なアプローチで、サウンドの幅を広げた秀作に仕上がっています。特に#8「In Awe Of」が好み。

Guidance  Russian Circles / Guidance [2016]

シカゴ出身のインスト・メタル・トリオの6作目。作品毎に着実なる前進を果たし、本作ではよりヘヴィネスの部分を積み上げています。無駄な贅肉を可能な限り削ぎ落とすようにストイックに鍛え、それ故のスリリングな展開と重厚なサウンドを実現する鉄壁のアンサンブルがあまりにも凄まじい。まさしく本格派と技巧派を兼ねる音。

Conqueror  Jesu / Conqueror [2008]

Justin K.Broadrickによる現在のメイン・プロジェクトの2作目。Godfleshの影響が濃かった1stアルバムから、”ヘヴィロック + シューゲイザー”で新しい次元を切り開いた作品で、轟音が紡ぐ安息を目指しヘヴィなポップ・ミュージックを現在も追求しています。2007年11月、 2014年7月には来日公演を経験。

At the Soundless Dawn  Red Sparowes / At the Soundless Dawn [2005]

ex- ISISのブライアン・クリフォード・メイヤー率いるバンドの1stアルバム。“種の絶望”というのをコンセプトに緻密な構成を施し、なおかつ叙情性を押し出したサウンドが特徴的。全体を通しても映像喚起力と美しさを表現した魅力的な作品です。かつてはNeurosisのメンバーも在籍。

Precambrian  The Ocean / Precambrian [2007]

ドイツの芸術的軍団の”先カンブリア紀”をコンセプトに据えた2枚組の3rdアルバム。1枚目は先手必勝の無慈悲なブルータル・デスで一網打尽。2枚目はISIS、Godspeed You! Black Emperror、Meshuggah、OPETH辺りが組み合わさった巨大なオーケストラの様相で圧倒します。静と動を完璧にコントロールしきった構築力、太古や宇宙といった壮大なコンセプトと哲学性を音に収斂させる技術は、このバンドでしか表現できないもの。

A Determinism of Morality  Rosetta / A Determinism Of Morality [2010]

USフィラデルフィアの5人組の3rdアルバム。天文学や宇宙というテーマを掲げ、空間的なデザイン性の高いポストメタルで聴く者を魅了します。ISISから Mogwai、Explosions In The Skyなどの影響を感じさせながらも壮麗なリリシズムと威圧的なヘヴィネスの交錯が印象的。そして、独特の浮遊感が彼等の特徴です。本作は洗練を推し進めて美学の深まりを感じる1枚です。

Void  Intronaut / Void [2006]

Exhumed やPhobiaなどのメンバーが集まったバンドの1stアルバム。テクニカル・デスメタルにポストロックの要素が加わったような形で、メロディアスなパートを上手く組み込みつつ、憎悪に満ちたサウンドがジャケットのように紅く染めます。3rdからはさらなるプログレ~テクニカル志向に向かっています。

Quietly  Mouth of the Architect / Quietly [2008]

これまでの作品と比べて、急激に知的さと透明感が増したオハイオのスラッジ色の強いポストメタル・バンドの3枚目。幽玄な女性ヴォーカルをフィーチャしたり、スペーシーなキーボードなどを挟んだりしつつ、怒りを吐き出す咆哮が劇的なコントラストを生む強烈な作品。

Insomniac doze  envy / Insomniac Doze [2006]

当然、ジャンルを聴かれれば彼等のことはポストハードコアと答えます。しかし、極限の静と動のコントラストで彩られた7曲を取り揃えた本作は、envyの中でポストメタルに一番近い感性を持つものだと思います。作風からはMogwaiの流れもISISの流れも汲んでいるのが伺えますしね。#3「風景」や#6「暖かい部屋」などライヴ定番曲を収録。2016年4月にヴォーカルが脱退、果たして未来は。

Icon  Lento / Icon [2011]

イタリアから登場したインスト・スラッジ~ポストメタル、2作目。凡百のバンドが束になっても太刀打ちできない黒い重量感と迫力がとにかく圧巻で、アンビエントの箸休めも効果的に導入してさらに緊張感を煽ってきます。一聴した時のインパクトは大きく、知的&圧殺ヘヴィネスの名作といえる作品。

Tocsin  Year Of No Light / Tocsin [2013]

フランス・ボルドーを拠点に活動するポストメタル系インスト・バンド6人組の3作目。前作から続くインスト路線を継続し、トリプルギターやツインドラムが叩き出す破格の音圧におフランスらしい耽美性が同居しています。そして、5曲中4曲で10分越えという長大さ。そんな彼等のインストからは奈落の底から天上界までもがみられることでしょう。

Silver Tongue  Light Bearer / Silver Tongue [2013]

Fall Of Efrafa(後に記載)解散後、Alexを中心として結成されたバンドの2ndアルバム。「Neurosis + Sigur Ros」と表現できそうなサウンドとスケール感を持ち、堕天使ルシファーの物語を深遠な音像で描く。なかでも#1「Silver Tongue」はポストメタル界に残る名曲。音楽とアートと哲学の共鳴が生み出す大きな感動が本作にはあります。残念ながら解散済み。

Palms  Palms / Palms [2013]

Deftones のチノ・モレノと元ISISの三人衆による新バンド。ISISの最終作『Wavering Radiant』を彷彿とさせる特有の美しさと揺らぎを持った豊穣なサウンドをベースに、チノの艶かしいヴォーカルが浮遊する。ポストメタルというよりは新世代のヘヴィロックという印象ですが、お互いの要素を巧みに引き出して融合・完成させたことは見事。前述の『ポストメタル・レコード TOP40』にもランクイン。

Wavering Radiant  ISIS / Wavering Radiant [2009]

締めくくりはこれ、ポストメタル最重要バンドの最終作。これまで通りの細かく立体的なテクスチャーを実現しつつも、前作の課題にあげた肉体性と衝動性を宿しています。自らを総括しつつ、最終章を飾った本作はおそらくジャンルのひとつの到達点。『全てをやりきった』と語る彼等は2010年6月末に解散。

 自身の考察と海外サイトを参考にしてポストメタルに該当するであろう作品を20枚選出。このジャンルを語る上で基本となる作品ばかりなので、ここからチェックしていってほしいと思います。入門にはISISを推しますが、あのダミ声が入るとダメっていう人も多いので、その場合はPelicanやRussian Circlesのような完全インストから聴いてみるという形が良いかな。そこから耐性をつけ、徐々にポストメタルの海に飛び込んでいけるのではないかと。

 

―― まだまだある。世界のポストメタル作品 ――

Mondo  LVMEN / Mondo [2006]

チェコの怪物、LVMEN。ポストロックにポスト・ ハードコアやらカオティック等をストイックに突き詰めながら血肉化し、NeurosisやISISとはまた別の極限を表現した脅威のバンドでございます。まさにチェコから吹き荒ぶ混沌の嵐。ただ、現在は全く音沙汰なく、消息がわからず・・・。

Day of Nights  Battles of Mice / A Day Of Nights [2006]

女性ヴォーカルのJulie Christmasとex-NeurosisのJosh Grahamを要したバンドの1stアルバム。閉塞感があって重苦しいムードを生み出す楽器隊に対し、Julieがロリっぽい歌唱から絶叫までを繰り出しながら楽曲の表情を豊かにしています。女性ヴォーカルということもあって、他にはない特性を持った作品といえるでしょう。

Noir  Callisto / Noir [2007]

スウェーデン産バンドの2ndアルバム。この頃には既に確立していた静動のポストメタル・フォーマットを踏襲しつつ、ストリングスなどで哀切を巧みに表現に織り込んだ1枚。こういったムードを出せるのが北欧バンドの強味でしょうか。

Hesperus  5ive / Hesperus [2008]
アイドル・グループと同名ですが、全く別のインスト・スラッジ・デュオの多分4枚目。ヴォーカルもベースもなしの2人とは思えない激重リフ&リズムの反復が続く衝撃作で、全てを蹴散らすパワフルさが魅力的です。ヘヴィなリフをとにかく浴びたい方にオススメ。
II  Humanfly / Ⅱ [2008]
英国のポストメタル4人組の2ndアルバム。メタリックリフと暴力的なベースライン、重く打ち抜かれるドラムを執拗に重ねて畳み掛ける彼等。 Hydraheadに名を連ねてそうな作風ですが、さらにスペーシー&サイケデリックな意匠も施しているのが特徴。まるでPelicanの1st 『Australasia』を強化したかのよう。
Agonist  Latitudes / Agonist [2009]

英国のポストメタル5人組の1st。新たにキーボーディストが加入しての本作、内省的で美しいポストメタルという様式ですが、静と動を駆使して丹念に綴られるサウンドスケープはなかなかのもの。NeurosisやCult of Luna、Envy等に影響を受けたと公言するのも納得の一枚。

Sol Eye Sea I  Irepress / Sol Eye Sea I [2009]

ふざけたジャケからは想像もつかない美麗インスト・ポストメタルを奏でるマサチューセッツの5人組の3rdアルバ ム。どちらかといえば、Caspianや初期Gifts From Enolaのような美しい音色を響かせているのが特徴的ですが、時にメタリックな重さを伴うところはポストメタルと表現したくなります。

Inle  Fall of Efrafa / Inle [2009]

UKのネオクラスト最高峰。本作は、リチャード・アダムス著の古典的小説にインスピレーションを得て制作された3部作の最終章で、彼等の作品ではポストメタルに一番近い作風です(ので紹介)。激情と叙情で綴られるドラマは凄まじく、7曲79分を圧倒的なスケールで描ききる名作。しかしながら、解散済。

An Age Among Them  Rinoa / Age Among Themn [2010]

UKの激情HC/ポストメタルの1stフルアルバム。ISISというよりはenvyのような泣きの要素が強いポストメタルで、エモーショナルな叫びといい、ドラマティックな展開といい、心を強く動かされる作品に仕上がっています。

lakshmi  juki / Lakshmi [2010]

数少ない国産ポストメタル・バンド、juki(ユキ)が2曲提供したスプリット。Demo時から温めてきたポストメタルは、 Rosettaの影響を受けてスペーシー&叙情性を増しています。静と動が共鳴してひとつになっていくことで生まれる力強さと美しさは格別。現在は活動していません。

descent  Vestiges / The Descent Of Man [2010]

USワシントン発の激情ポストメタル/ネオクラスト・バンドのデビュー作。ブラックメタル的な側面もありつつ、Fall Of Efrafaに影響を受けただろうネオクラスト~ポストメタルを基軸に描かれる重々しい世界は、確かな求心力を持っています。

Karpartia  Omega Massif / Karpartia [2011]

ドイツのインスト・スラッジ・バンド、Omega Massifの2作目。Lentoと比肩する超重量級インストを轟かせてますが、もう少しポストロック的な要素を取り入れた感じ。ただ、一旦スイッチが入ってからの地鳴りの如き轟音の迫力が尋常ではない。あらゆるものを薙ぎ倒す重い快作。

reka123  Reka / I + II + III( Limited Edition) [2011]

Optimus Primeというロシア屈指の激情HCのメンバーを要するモスクワのバンドの完全25枚限定ディスコグラフィー。ペンタグラム(五芒星)のコンセプトを元に制作されているそうで、Year of No Lightを思わせる重音とダークなメロディが織り上げる荘厳な世界に驚かされます。

The Long Now  Grown Below / The Long Now [2011]

ベルギーのポストメタル・バンドの1st。同郷Amenraから受け継いだ漆黒のヘヴィネスに透明感のある叙情性を加え、さらにストリングスや女性ヴォーカルを織り交ぜたサウンドで新鮮なインパクトをもたらした秀作。表題曲#6は、まさにバンド自身の音楽性を1曲に凝縮して体現したような16分超の曲。

rituals  Rituals / Rituals [2012]

Hellas Moundsというバンドのメンバーを要するアメリカのバンドの1st。Neurosisをさらに濁らせたスラッジ系の激重音、そこからは考えられない耽美なメロディを組み合わせて長尺のストーリーを綴る黒いポストメタル絵巻。Alerta Antifascista Recordから発売というのも頷けます。

tesa4  Tesa / Ⅳ [2012]

バルト三国・ラトビアの秘宝の4作目。激情系ハードコアとポストメタルを絶妙にミックスさせたかのような仕様で、美轟音ファンが惹かれそうな内容。インスト・パートに比重を置いて、轟音ギターと強靭なリズムが寄せては返す。それでいて哀感と冷たさ、そして暗さが通底しているのはこのバンドらしい。全3曲35分収録。

Mass V Vinyl Version  Amenra / Mass Ⅴ [2012]

あのNeurosisをその音で説き伏せたベルギーの漆黒スラッジ/ポストメタル・バンドの5作目。スロウテンポから振り落とされる激重リフとリズム、そして哲学的な詩を悲痛に叫んで心身を激しくかき乱す。未知の感覚を呼び起こすかのような黒くヘヴィなサウンドは圧巻です。その徹底した美学に基づいた作風からは、最もコンセプチュアルなバンドという印象もあり。

Monuments, Monoliths  Huldra / Monuments, Monoliths [2013]

ソルトレークシティの5人組の1stフル。大きな影響を受けたというISISやCult Of Luna等を彷彿とさせる静と動の壮絶なコントラストを核に、大海の如きスケールを打ち立てた良作。キーボードを効果的に導入したリリカルな曲調とスラッジ/ドゥームの重厚さが上手く溶けあっています。

STORM OF VOID  STORM OF VOID / STORM OF VOID [2013]

envy、Turtle Island、そして惜しくも解散したFC FIVEというハードコア・シーンの猛者達が集いし、インスト・トリオの1st EP。8弦ギターを駆使したスラッジ・リフを主体に攻め、手数多めのドラムが加速度と迫力を与えていく強烈な作品。3曲ながらあまりにも密度は濃くて重い。

Mitau  Audrey Fall / Mitau [2014]

バルト三国のひとつである、ラトビア共和国を拠点に活動するインスト4人組。ポストロック~ポストメタルの旨味を両方活かしたような音楽性を信条としています。エンジン全開の豪快なサウンドからツインギターのコンビネーションで美しい音色を響かせたり、現在活躍しているバンド達に負けない光を放っている。

Despair, Erosion, Loss  Alaskan / Despair, Erosion, Loss [2014]

カナダ・オタワの3人組スラッジ/ポストメタル・バンドの2nd。ポストメタルというよりは、ゴリゴリ重スラッジを身上とした音楽性なのが特徴で、野性味溢れる低音咆哮にヘヴィ・リフの反復、禍々しいグルーヴが暴力的に響く。初期のMouth Of The ArchitectやMorneっぽい雰囲気も感じました。

In the Woods  Amalthea / In The Woods [2014]

スウェーデンのポストメタル4人組の7年ぶりの2ndアルバム。一聴した印象で言えば、美と醜、静と動を行き来する王道系ポストメタルという様式には違いない。だが、ここまで静や美に対して重きを置いて作られた作品も珍しい。ストリングス、トランペット、トロンボーン等を交えて奏でる壮大な光のマーチ。

surface  IRREVERSIBLE / Surface [2014]

2005年から活動中のポストメタル戦士の2014年作。09年の『Light』が好評を博してましたが、本作でさらに進化。収録された3曲はいずれも10分以上かけたドラマティックな展開とともにカタルシスを得られるような構成で、強靭なリズムとスラッジメタル系のダイナミズムを備えています。

The Rifts  A Swarm Of The Sun / The Rifts [2015]

スウェーデンの2人組の2rdフルアルバム。荘重なピアノや淡いギターのエレガンスな響きを軸としたインストを基調にして、渋い歌声が絡んでいく様は、美しく儚い。「心と魂の最も深い部分を通過する厳しくて美しい旅路であり、バンド史上で最も暗くて最も感情的なアルバム」と自身で記すほどの作品。

Sistere  IZAH / Sistere [2015]

オランダのポストメタル6人組の1st。静動激美の落差のあるサウンドを軸に、全4曲全てが10分超えの約72分。ポストメタルの旨味を暴発させつつ、 デスメタル風の残虐な攻め上がりを導入したりして、定型フォーマットに簡単に陥らない。悪いグループに所属しているけど成績は優秀みたいな、異端っぷりがあります。極悪と極美で綴る約72分は強烈。

pos03  Presence of Soul / All Creation Mourns [2015]

活動歴15年を超える国産バンドのメンバーを再編成しての7年ぶり3作目。光と闇、善と悪を焦点に二極化した世界を表現しています。これまではポストロックと評される音楽性でしたが、ここにきてYear Of No Lightクラスの強い重厚なサウンドを獲得し、なおかつピアノやストリングスが曲の情感や背景をふくらませる。暗く内省的、でも美しく儚い物語が展開されています。全てを包み込むような#8「Circulation」には涙腺が緩む。

Nostalgia  OVUM / Nostalgia [2016]

国産インスト・カルテットの3曲入り3rd EP。”Metal oriented instrumental rock”という新スタイルに開眼し、メタル色を帯びたギターリフ、ツインペダルを用いた鋭いリズムと一聴瞭然の変化に初聴時は驚かされました。これまでの自身の持ち味であるクリアな美しさを活かしながら、ねじ伏せる力強さを持つ1枚。

Weighing Souls With Sand  The Angelic Process – Weighing Souls With Sand [2007]
ジョージア州アセンズの夫婦デュオによる3rdアルバム。ポストメタルという分類は違うかもしれませんが、JesuとNadjaが魔の合体を果たしたかのような作風で、哀切や絶望を背負った破格の音圧がこの世の終わりをみせてくれます。表題曲#6を聴いてると、感覚の全てが本当におかしくなりそう(汗)。

 

  続けて、世界各国に潜むポストメタル・バンドをピックアップしたのがこちら。基本的に静から動へと爆発していくタイプを多めに選出しています(叙情性が強い作品が多いのは、わたくしの好みによるもの)。少し首をかしげる選出があるかもしれませんが、海外サイトにてPost-Metalと評されたのをOKラインとしているので、その辺はご容赦いただきたい。

 

―― ポストメタル、この曲を聴け!――

 

・ISIS(The Band) – Holy Tears

 

・Cult Of Luna – Finland

 

・Russian Circles – Youngblood

 

・Rosetta – A Determinism Of Morality

 

・Light Bearer – Primum Movens

 

ポストメタルの醍醐味を味わえる5曲を選出。どれも1曲が長尺で構成されていて、叙情と轟音の繰り返しのあるものです。このダイナミズムこそが聴き応えにつながっていると思います。でも、この手のバンドはライヴで体感してこその衝撃というのがありますので、もし機会があれば是非とも生で体験して欲しいも のです(来日が厳しいバンドばかりですが)。

 

―― 最後に ――

2010年6月にISISがまさかの解散をしましたが、その功績としてポストメタルがひとつのジャンルとして世界的には根付いたはず(と勝手に思っています)。もちろん、 まだまだ大きな可能性を秘めているし、絶えず変化を遂げながらこのシーンは続いていくでしょう。日本ではそもそも一部でしか盛り上がっていないという厳し い現実がありますがね(苦笑)。

世界中の様々なバンドの活躍によって、ポストメタルは新たなフェーズへと突入している感があって興味は尽きません。追っていく価値は十二分にあるし、シーンをリアルタイムで追うことができるのが何よりもおもしろいのです。

 

参考文献
・Post-metal – Wikipedia
・FACT MAGAZINE「The 40 best post-metal records ever made」
・BURRN!2009年6月号コラム「ポスト・メタルへのいざない」

 

音楽サイトDecayed Sun Recordsさんによる以下のコラムもオススメです。

vkeipostmetal

※2013年2月に本記事を初掲載、2016年8月に改訂版掲載。

 

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