【アルバム紹介】Gouge Away、心に焼き付くハードコア

 2012年にUSフロリダ州で結成されたハードコア・バンド。バンド名はPixiesの楽曲「Gouge Away(ガウジ・アウェイ) 」から採られている。結成当初は初期Touché Amoréの性急なハードコアを主体に、Vo.クリスティーナが数々の社会問題について叫び通す。

 1stアルバム『, Dies』はその勢いと激しさを感じる内容であり、BrooklynVeganが発表した”2016年のベスト エモ/パンク・アルバム20“にて第17位にランクインする。2018年にDeathwishと契約し、90年代オルタナティヴ要素を取り入れた2ndアルバム『Burnt Sugar』を発表。日本でもDaymare Recordingsから国内盤がリリースされています。

 その後は3rdアルバムの制作に入るもパンデミックにより活動休止を余儀なくされましたが、2024年に3rdアルバム『Deep Sage』を発表しました。

 本記事はこれまでに発表されているフルアルバム全3作品について書いています。

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アルバム紹介

, Dies(2016)

 1stアルバム。全13曲約22分収録。初期衝動という言葉では片づけられない決死の覚悟と勢いを感じさせるアルバムです。基本的には火の玉ストレートのみを放るハードコア・パンク。それを0~1分台のショートチューンを主体にして電光石火で進行するのが特徴。

 D-BEATによる加速とブースト多めのベースを下地に、ノンストップ条項でも結んでいるのかと思うぐらいに突っ走ります。その中で核となっているのはクリスティーナのヴォーカル。キレイに歌い上げることはほとんどせず、のどへのダメージもいとわない叫びを続けます。それは己の内側で燃え続ける怒りをあらわにした結果でしょう。

 メッセージを見ていくと#3「Exhibit: Closed」では家父長制、#5「Uproar」では動物愛護、#6「No White Flag」では警察の不道徳行為、#11「Subtract & Divide」では教育システムと政治的な諸問題を取り扱っている。彼女の叫びを耳にすればどれだけ切実に訴えているのかは伝わるはず。

 唯一3分を超えるラスト曲#13「Wildflowers」は明るいコード進行とにぎやかなコーラスワークが異色ですが、”声は共に大きくなる。一歩も引かず、身を引かず、立ち上がれ“と発しています。

 一部ではこのようなメロディックな雰囲気も取り入れてはいますが、ビンビンに感じるのはやっぱり直線的な衝動。次作で関わるTouché Amoréの初期と重なる部分もある。浦飯幽助の”右ストレートでぶっとばす まっすぐいってぶっとばす”のように小細工は『, Dies』ではいらなかったわけです。

 なお本作はBrooklynVeganが発表した”2016年のベスト エモ/パンク・アルバム20“にて第17位にランクインしています。

Burnt Sugar(2018)

 2ndアルバム。全11曲約26分収録。Touché AmoréのヴォーカルであるJeremy Bolmによるプロデュースで、Jack Shirleyがミックス&マスタリングを担当。Deathwishと契約してのリリースとなります。日本でもDaymare Recordingsから国内盤が発売。

 前作のようなハードコアの猛攻は少し止み、1分未満の曲は卒業。代わりにオルタナティヴ~ノイズロック周辺からもたらされた硬質な響きとグルーヴを加味しています。

 冒頭を飾るリード曲#1「Only Friend」からスピードに頼らない横殴り重視のアンサンブルが炸裂。バンド自体はJesus LizardやUnwoundからの影響を言葉にしていますが、それでも好戦的なハードコアである姿勢も崩していません。クリスティーナは歌うパートは増えていますが、叫ぶのが信条であることを貫いている。

 ベースリフからリズミカルに進行する#2「Fed Up」からConverge感が強めの#5「Subtle Thrill」と2分に満たない尺の中に激しさと熱を凝縮。そんな嵐の前半を駆け抜けた先に配置された#6「Ghost」はミドルテンポで歌と叫びがせめぎ合う感じが何とも新鮮で、#9「Stray/Burnt Sugar」は軽やかな歌ものとしてこれまでにない味わいをもたらしています。

 詞はむしろより個人的なものへと向かい、MUSIC&RIOTS MAGAZINEのインタビューによるとメンタルヘルスが主要なテーマになっているという。”傷は商品だ”や”パラノイアがノックしてくる”といった痛烈な言葉が常に本気の叫びと共に鼓膜に刺さる。それこそがGouge Awayの生命線のひとつ。

 また彼女は同インタビューにて”音楽は大きなプラットフォームを占め、動物や人権の問題から、喪失感やうつ病のような何かに対処しているのは自分ひとりではないことを学ぶことまで、あらゆる種類のことを人々に教える方法で使うことができる“という言葉を残しており、本作にその強い信念が宿っています。

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Deep Sage(2024)

 3rdアルバム。全11曲約34分収録。制作途中にパンデミックの影響があり、制作を中断→活動休止を経て5年半ぶりのフルアルバム。その間にクリスティーナは2022-2023年にNothingでなぜかベースを弾いてました(参考動画はこちら。現在は脱退)。

 本作にも引き続きJack Shirleyが関わっており、全編をライヴレコーディング。これはBandcampによると”フロリダで彼らが始めたように、5人の友人が一緒に部屋で演奏しているようなサウンドを出す”が目的だったとのこと。

 内容としては前作を拡張させたものであり、インディーロックやシューゲイザーのテイストまで取り入れています。過去のような性急さはなくなりましたし、落ち着いた曲も登場している。

 それでもハードコアやオルタナティヴへの愛がほとばしっているのは積み重ねてきた歴史ゆえでしょう。#1「Stuck in a Dream」からヒリヒリとするノイズロックを主体に”夢の中で立ち往生”と連呼するクリスティーナの荒げた声に全身が沸騰。

 ここに単音ピアノがアクセントとして機能するインディー系2「Maybe Blue」やシリアスにつづられる#5「A Welcome Change」といった曲で幅を広げ、活力みなぎるパーティー系ハードコア#9「Spaced Out」まで飛び込んでくる。アルバム全体を通してエネルギッシュな姿勢からセンチメンタルな表現まで、濃淡のグラデーションが表れています。

 そんな本作についてはクリスティーナがSTEREOGUMのインタビューにて全曲それぞれの背景について説明。キーになったのはラストを飾る#11「Dallas」で亡くなった友人に捧げる哀悼曲です。初めて6分を超える同曲は二部構成のように変化し、シューゲイザーを交えながら深い悲しみを表現しています。

 作品毎に新しい方向性を模索しながら、濃くなっていくクリスティーナの私性。攻撃的な振る舞いは減っていて、ソフトな部分や余白が増えているのに切迫感はより募る。心に焼き付こうとする表現、それが本作にはあります。

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プレイリスト

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