2016年にアメリカ・ヴァージニア州で結成されたポストハードコア/リアル・スクリーモ5人組。バンド名は映画『モスラ』などに登場する架空の島、インファント島からきている(こちらの記事参照)。
本記事は2024年に発表された3rdアルバム『Obsidian Wreath』について書いています。
アルバム紹介
Obsidian Wreath(2024)
3rdアルバム。全10曲約36分収録。Touché AmoreのJeremyによるレーベル、Secret Voiceからリリース。アートワークは同じヴァージニアのフォーク・アーティストのSarah Bachmanが担当しています。
パンデミック真っ只中の2020年に制作された本作に宿るのは、プレスリリースにもある”悲しみの怒り”。それが激情系ハードコアとブラックゲイズが正面衝突したような音楽性でもってブーストされていきます。
Noiseyのコラムでは”サマー・オブ・スクリーモ”と呼ばれたり、STEREOGUMでは”Diary時代のSunny Day Real Estateの音響パレットで再構成したDeafheaven”と評されたり。そんなInfant Islandはスクリーモ(Skramz)を基点にしながらポストロックやアンビエント、ノイズ等で外壁強化を図っています。
トレモロピッキングやブラストビート、ギャアギャア系とガナリ系が入り混じるスクリーム。それらが抜群の攻撃性能を誇る一方でしなやかなメロディは摩擦係数が低く、クリーントーンは波紋のように広がります。バンドの特性は#1「Another Cycle」から発揮されており、#4「Clawing, Still」や#8「Unrelenting」といった曲で過酷さを極めていく。
前作と比べて感じるブラックゲイズの配合比の高まり。日光浴のごとき温かみが不思議と感じられる辺り、Deafheavenの影響下にあることを伺わせます。その上でバリエーションの拡張とアルバム全体を通したデザイン性の高さは見事です。
#3「Found Hand」はドラムレスのアンビエントに強烈なスクリームが被さり、#6「Amaranthine」は優美なアコースティックとストリングスをバックにした前半から苛烈な果たし合いとなる後半へ。終盤の2曲#9「Kindling」と#10「Vestygian」ではスロウコア~ポストロックへと舵を切っています。
そういったヘルシーなアレンジを汲みつつ、いずれの曲も激情的なパートは所々で顔を出し、怒りの炎は燃え続ける。当時のパンデミックによる暗い日々、進行形である気候危機、資本主義による搾取の加速がその要因。それでも”私たちはまだその暗い時代に生きていると思うが、この作品によって人々の孤独感が軽減されることを願っています“と彼等はインタビューで答えています。
#5「Veil」では”この世界はもう十分だ”と10名近いゲストを交えてコーラスを重ねる。その叫びは聴き手の心に火をつける。暗い時代においてもあなたの描く世界で生きてとメッセージがこめられています。