
元ConstantsのWill Benoit(Vo,Gt,Ba)を中心に、ConstantsやJunius、Caspianでの実績があるメンバーが集まったバンド。2017~2018年頃に結成されて現在は4人組。前身バンドを受け継ぐオルタナティヴ・メタルやポストメタル、シューゲイザーが調和したサウンドを志向している。
本記事は現在のところ、フルアルバム2作品について書いています。
作品紹介
The Fall(2018)

1stアルバム。全9曲約36分収録。当時は3人編成で中心人物のWill Benoit(Vo,Gt,Syn)、Caspianの現ドラマーであるJustin Forrest(Ba)、元ConstantsのDuncan Rich(Dr)が構成要員です。
そのメンバーの内訳を見てもConstantsの延長上にある音楽を思い浮かべるわけですが、いわゆるドゥームゲイズを追うどっしり感と陶酔感の2枚看板が効いています。しかしながら、Constantsの最終作『Pasiflora』ほどシューゲイザー寄りではなく、重厚で推進力を伴ったもの。
例えるなら『Conqueror』期のJesuがBPMをもう少し速くした感じというか。#2「Chemical Joy」や#3「Open Wounds」はそういった性質を受け継ぎつつ、シンセサイザーの使い方にも影響が垣間見えますしね。#6「Starless Sky」にしても鼓膜や体に圧を感じるほどの重みがあるのに、丸みを帯びた聴感。ささやくというよりかはもう少しだけ輪郭を持つヴォーカルは歪みに埋もれず、その上を漂っている。
1曲平均して4分強にまとめあげていて(5分以上の曲はない)、ダイナミクスの満ち引きも確かな技巧によるものです。ちなみにMetal Injectionでは”ドゥームポップ”と形容されたようで、これがバイオグラフィーやリリースインフォに載るぐらいのキャッチフレーズとなっています。

The Shape of Everything(2022)

2ndアルバム。全8曲約34分収録。2021年にビリー・アイリッシュの「everything i wanted」をカバーしたことで話題になったSOMは、Pelagic Recordsへと移籍。Michael Repasch-Nieves(ex-Junius)とJoel Reynolds(ex-Constants)の2人がギターで加入しており、トリプルギター編成の5人組としての作品となります。
だからといってヘヴィに舵を切らず、甘美さとテクスチャーに重きを置いた感じに聴こえる。どっしりとしていても圧迫感が控えめな音の壁を前にして、本作ではギターがメロディックな味付けをし、シンセが広がりを与える役割へとシフト。ヴォーカルはささやきスタイルで感情を添えていくのは変わりなし。胃もたれしない重量感の調整を施した上で、淡い陶酔をもたらしています。前作に引き続いて1曲平均4分の尺でそれを実現。
アルバムの性質はオープナー#1「Moment」にてほぼ代弁されていますが、ドゥームゲイズとポストメタルとドリームポップの間を揺れ動きながら、HUMや中期のDeftones的なタッチが加味される。#6「Wrong」はWhirrを思わせるヘヴィシューゲイズを鳴らしていますし、#2「Animals」や#5「Clocks」辺りはよりメランコリックな表現が浮かび上がっています。
シューゲイズの魔法に寄った印象はあれど、取り扱い注意な重量物級のリフは健在。ただしアルバム全体の雰囲気は柔らかく淡い。そしてライトな聴きやすさがある。もっと日の目を浴びて欲しい作品です。

Let The Light In(2025)

3rdアルバム。引き続きPelagic Recordsからのリリース。Duncan Richが脱退して4人編成となり、Justin Forestがドラム(彼はCaspianではドラム担当)、Will Benoitがベースにスライドしている。
2025年3月14日のリリース後に追加予定です。
