【アルバム紹介】herveil『SWIRL』

タップできる目次

アルバム紹介

SWIRL(2022)

 1st EP。全5曲約27分収録。2022年から横浜を拠点に活動する4人組で、横浜のエモ/ハードコアシーンで活躍するflorence、Acreのメンバーが在籍するとのこと。リリースは新興レーベルのWOOD OF HEARTより。

 音楽的にはNothingWhirrを思わせるヘヴィなシューゲイズを軸足に、オルタナやスロウコアにも足を踏み出した表現をされています。儚さと強靭、曖昧と明瞭、安息と轟音。その中をスロウ〜ミドルテンポでたゆたいながら聴き手を魅了。

 MVが公開されている#1「Indefinite」からherveilの特性を発揮しています。どっしりとしたリズムの上にメランコリックなタッチと分厚い音の層を生み出しており、歌詞にもある深い波にさらわれる。

 中心軸にあるのはmorehaさんのヴォーカル。”祈り”という言葉を想起させるウィスパー系の澄んだ歌声は、詞として紡がれた言葉を追いかけたくなる繊細さがあります。その上で輪郭を伴って力強さと熱を帯びていく歌唱にも感情が動く(男性コーラスが加わる場面もあり)。

 また重厚なディストーションが幅を利かせているものの、クリーントーンの美やアンビエンスな浮遊感を適切に配置し、イカつさを感じさせないまろやかなコーティングを施しています。それが柔らかな聴き心地を担保。青春的な甘酸っぱいムードや疾走感はほとんどないのですが、さらけだすような内省的表現がまたバンドの個性に合っています。

 イントロとアウトロが『conqueror』期のJesuを彷彿とさせ、3分15秒過ぎからは歌ものとしての強度を獲得していく#2「odori」、スロウコアっぽい慎重なアプローチで雨上がりの風景に音や声がにじむ#3「geosmin」。ポストロック的な大きな起伏とエモーショナルな爆発を有す#4「Purple」。

 そしてslowdiveにも通ずる退廃と耽美ムードが漂う#5「pale light」が浄化を強める締めくくり。”SWIRL=渦巻く”という意ですが、渦巻くのは音であり、声であり、感情。もっと言えば本作を聴く人間の心です。聴けば聴くほどこの音と声に包まれていたくなる。

メインアーティスト:herveil
¥900 (2024/10/01 08:43時点 | Amazon調べ)

ライヴ映像

[Agp Studio] herveil – August 24,2024
お読みいただきありがとうございました!
タップできる目次