ポストメタル・ディスクガイド 105作品

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ポストメタル・ディスクガイド④

Grown Below / The Long Now (2011)

 2011年から2015年という短い期間を駆け抜け、2枚のアルバムを残して解散したベルギーのポストメタル4人組。こちらは1stアルバム。

 ISISやCult Of Lunaが築き上げてきたポストメタル界に深く切れ込むその音像は、静と動のダイナミックなスケール感を持ち、ドゥーム/スラッジ譲りのスロウテンポと重量感、獣のような低音グロウルで聴く者を制圧する。

 そんな中で他バンドとの決定的な差異となっているのが、徹底して気を注いだ耽美性。さらには荘厳な雰囲気を持ち込むストリングスやゴシカルな女性ヴォーカルを積極的に取り入れる。

 表題曲#6「The Long Now」は、まさにバンド自身の音楽性を1曲に凝縮した16分超の名曲。

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GUHTS / Regeneration(2024)

 ニューヨーク州を拠点に活動するポストメタル系バンド4人組の1stアルバム。Bandcampには自身の説明として”アヴァンギャルド・ポストメタル・プロジェクトであり、深くエモーショナルな音楽を通して、人生よりも大きなサウンドを届ける”と記載。

 スラッジ~ポストメタル系の重厚なサウンドに実験精神が乗っかり、女性ヴォーカリストであるAmber Gardnerの魅惑的なパフォーマンスが惹きつける。

 イメージ的には”Cult of Luna + Swans + Battle of Mice”のような感じ。ポストメタルの複数にまたがる道をナビゲートしながら、自身の挑戦的なスタイルは本作で示される。アヴァンギャルドと呼びながらも聴き手の懐に潜り込む艶めかしさがまた何とも魅力的に映る。

メインアーティスト:GUHTS
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Huldra / Monuments, Monoliths (2013)

 ユタ州ソルトレークシティのポストメタル集団。11曲77分にも及ぶ大作となった本作は、大きな影響を受けたというISISやCult Of Luna等を彷彿とさせる静と動の壮絶なコントラストを核に、大海の如きスケールを持つ。

 偉大な先人達のエッセンスを突き詰め、徹底的に練り上げる。それによる万物を蹂躙する重厚な音壁と清らかな叙情性、劇的なストーリー展開を獲得するに至った。2016年をもって活動終了。

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Hum / Inlet (2020)

  90年代に活躍したアメリカのオルタナティヴ・バンド。復活と活動休止を繰り返してきた彼らの22年ぶりとなる5thアルバム。””ポストメタルを感じる””というのが最初の印象だった。

 ドゥームメタルに接近した重厚感、シューゲイズがもたらすまどろみ。ヴォーカルはオルタナ直系の憂いある歌がそこに乗る。Jesuが虚無感で胸をいっぱいにしたら、こんな音楽に変貌してしまうんじゃないか。

 オルタナ、エモ、ドゥーム、シューゲイズ、ポストロックは暗闇の中でミキサーにかけられる。このリストに入れてしまうぐらいに侘しさと重みをもった逸品。

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Humanfly / Ⅱ (2007)

 英国のヘヴィロック4人組による2ndアルバム。スラッジメタル由来のリフを主体にゆっくりと進行し、メロディックとサイケデリックな要素をぶちこんでいくのを信条とするスタイル。

 まだヴォーカルがいたころのYear of No Light、また初期Pelicanの壮大重厚さを感じさせるサウンドに、スペーシーなシンセサイザーやアコースティックが華を添える。ヴォーカルがラリってる感じなのは独特の感性の賜物か。

 ヘヴィネスの海とサイケデリックな宇宙の邂逅。2013年10月の公演を最後に無期限活動休止。

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IKARIE / Arde(2023)

 2019年に結成されたスペインのドゥーム/ポストメタル系バンド5人組。ベーシスト兼作詞を担当するMaria V. Riañoのコンセプトを苦痛が伴うヘヴィネスと共に体現する。

 本作は3部作(痛み、怒り、再生)の第2章で”怒り”がテーマ。歴史の中で数人の女性を巻き込んだ悲劇的な出来事や物語を伝えている。

 Amenraに通ずる漆黒のヘヴィネスとヴォーカルのグロウルが導く悲しみの暗い河。IKARIEは音楽を通して痛みや怒りを共有する。なお本作には悲劇的な死を遂げた日本人女性2名が登場している。

メインアーティスト:Ikarie
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Ingrina / Siste Lys(2020)

 フレンチ・ポストメタル6人組による2作目。”文明の悪夢に直面した生命体が経験する海陸の試練”をテーマに掲げる。

 序盤はブラックメタルの影響が垣間見えたりするが、重厚壮大なポストメタルの轟きを全曲で体感すること必至。Year Of No Lightに通ずる重量感と寂寥感は、トリプルギターとツインドラムを擁した編成によるもの。

 アルバムは2分台2曲から10分超までをそろえた6曲35分。短くても長くても必要以上のインパクトを与えてくれる。

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Intronaut / Void (2006)

 Exhumed やPhobiaなどのメンバーが集まったバンドの1stアルバム。ポストメタルと言われてはいるが、テクニカル・デスメタル85% + ジャズ&ポストロック15%という様相。

 残忍なデスメタルで八つ裂きの刑が続くが、風通しの良い静寂がなぞに組み込まれている。とはいえDillinger Escape Planのように忙しく騒々しく、血を見るような惨劇は続く。本作以降はさらにテクニカル・メタルの要素を強めている。

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Irepress / Sol Eye Sea I (2008)

 これまたマサチューセッツ・ボストンから産声をあげてきた5人組の2nd。せんとくんをおかしく実写化したようなピンクジャケとは裏腹に、中身は遊び心にあふれている。

 ISISやRed Sparowesのような有機的な質感のポストメタルを軸にしつつ、ジャズフュージョン、1970年代のプログレッシブロック~クラウトロック、耽美系ポストロックなどにも踏み込む。

 ポストメタルの様式にとどまっておらず、あえて焦点を合わせずにセッションの延長上にいるような自由さが魅力。この系統で変わったものが聴きたいという方にオススメしたい。そうでない人にもオススメしたい。

 ちなみに活動は終えている模様。

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IRREVERSIBLE / Surface(2014)

 2005年の結成以降、地道に活動を続けてきたアトランタのバンドによる3rd。まさに王道中の王道。収録された3曲はいずれも10分以上かけたドラマティックな展開とともにカタルシスを得られるような構成。

 強靭なリズムとスラッジ系のダイナミズムを備えた#1「Degloving Injury」からして、強烈な内容に仕上がっている。

 耽美の研磨につぐ研磨で紡ぎだされる透明感に溢れたギターフレーズは美しく、それとは相反するように無差別級ばりの重音リフをも繰り出す。また、ドスの効いた低音咆哮もこの界隈らしいものだ。彼等も現在は活動していない。

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