Birds in Row、あなたの心を燃やすハードコア

 フランス・ラヴァルで結成されたポストハードコア3人組。激情系ポストハードコアをベースとした音楽性。メンバーを”Q”、”B”とイニシャル一文字で表し、プロモーション写真やミュージックビデオも顔が意図的に切り取られてり、匿名性を重んじた活動方法をとっている。

 Deathwishと契約し、2012年に1stアルバム『You, Me & the Violence』を発表。15年には来日ツアーを敢行。18年に『We Already Lost the World』、22年に3rdアルバム『Gris Klein』をリリースしています。

 本記事では全フルアルバム3枚について書いています。

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You, Me & the Violence(2012)

 1stアルバム。全12曲約36分収録。Deathwishからリリースされていることがうなずける打撃の嵐にさらされます。フランスのハードコア・バンドなのに、Loma Prietaや初期のTouche Amoreらといったアメリカ勢の方が距離感は近い印象。

 歌詞はフランス語ではなく英語を用いていますが、これは多くの人に伝わること、子供のころに英語圏のパンク・バンドを聴いてきた影響が大きいという(La Chudaのインタビュー参照)。

 リード・シングル#1「Piroli」から殴打突進型サウンドでぶちかまし、1~2分台のショートチューンを基本軸に個人的な闘争と社会システムへの怒りが表される。#5「Water Freeemn」にて”後悔だらけの生き地獄”と訴え、表題曲#7では”そして、最後には君と僕と暴力だけだ”と表題曲では叫ぶ。

 そうした中、ふいに急減速してしみったれた叙情歌を聴かせる#6「Last Last Chance」の存在感の大きさ。単なる小休止とはいえず、激しさの中にあるメロウさ、緩急の妙が効いています。

 その後は再び猛攻を仕掛けますが、ラストを飾るのは13分近い大曲#12「Lovers Have Their Say」。スロウテンポでギターの歪と圧が徐々に増していく曲調。ですが、わかりやすいカタルシスを得る展開はなく、終いには茫洋としたノイズに飲み込まれる。

 こういった暴力性の中に透けてくる美意識が、Convergeのジェイコブの琴線に触れたのか。アートワークはメンバーのDとBが手掛け、本当の顔を持たない暴力にイメージをかぶせているそう。

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We Already Lost the World(2018)

 2ndアルバム。全11曲約35分収録。15年にEP『Personal War』を発表するもフルアルバムは6年ぶり。ベースはDからQへ交代。いわゆる激情系ポストハードコアのいわれるスタイルをそのままに、表現の広がりを感じさせます。

 端的にいえば叙情性とスケールの獲得。4~5分の曲が半数をしめるなか、前作の曲の大半が1曲通してひとつのカラーで突き抜けるようでしたが、本作は数曲で1曲の中でのグラデーションとダイナミクスが効く。

 増量した”歌う”はトピックのひとつですが、その歌は明度を高めるようなものではなく、怒りと悲しみから延長した嘆きの方が感覚的に強い。

 印象的な曲を挙げれば#3「We vs Us」はポストロック的な意匠とミドルテンポの活用し、冒頭から続く歌が染み入るように入ってきますが、後半は切迫感に満ちたハードコアへと移行して激しい情熱をぶつけてきます。そして、小刻みなリズムを軸にハードコア~シューゲイズが混合する#5「I Don’t Dance」は新鮮なノリがある。

 #6「15-38」も歌とコーラスを有効利用してポップなムードすら持ってきますが、終盤にアルバムタイトルを含めた”Hate Me Love Me We Already Lost the World = “私を憎み、私を愛し、私たちはすでに世界を失った”と叫び続ける。

 Boring Emoというサイトでメンバー自身が本作の全曲について解説しています。歌詞は個人と集団、移民問題、制作当時にあった選挙、SNS等に及ぶ。怒りに基づくハードコアと言葉が信条であり、個の在り方、他者との関わり、社会との関わりを常に模索する。

 #2「Love is Political」に登場する”愛とは反抗である/反抗は必要である/愛とは不服従である/愛とは政治的である”という詞は特にBirds in Rowらしいなという感じがします。

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Gris Klein(2022)

 3rdアルバム。全11曲約43分収録。Cult of Lunaのメンバーによるレーベル、Red Creekからリリース。アルバム・タイトルはフランス語で英訳すると”Klein Gray”でフランスの芸術家イブ・クラインが作った色、クラインブルー(深い青)にちなむ。

 作品自体がうつ病をさまざまな角度から語っており、うつ病を色盲に例えて要約したものが作品名に繋がったそう(New Noiseのインタビューより)。

 ベースを変えず、さらに増した色味。前述のインタビューによると遅まきながらRadioheadに感化されたことで、新たな音を探求。

 #1「Water Wings」で聴けるシンセっぽく加工したギターの音色だったり、ポストハードコアからアトモスフェリックな音へのスムーズな切り替え、ポストパンク的な雰囲気がある#4「Noah」が控え、四つ打ちのポストハードコアとして突き抜けた#6「Nympheas」、インダストリアルの影響を感じさせる#9「Robin」といった曲まである。

 彼等なりの美意識や芸術性と対峙しながらも、激情系ハードコアとしての鮮度と情熱に陰りは無し。豊かさと拡がり。そこを得る中で躍動感や切迫感が変わらずに聴き手の心に火をつける。

 #8「Trompe L’oeil」ではクリーンヴォイスを披露した最もソフトな語り口から、中盤でダークな轟音スパイラルに巻き込まれていく。

 分断とわかりあえなさが増大し続ける現代において、Birds in Rowは叫ぶことは絶対にやめない。#1に登場する”孤独を自由と勘違いし、孤独を血清と勘違いし、愚痴を詩と勘違いし、私は失敗した”という言葉は痛烈という他ありません。

 総じて実験的志向を強めながらも、心の奥底から湧き上がる感情がBirds in Rowの音と言葉の源泉です。音楽は孤独の埋め合わせになるのか。人それぞれだし、音楽次第な面がある。

 それでも彼等は、苦しいどん底の時だってアートワークのように美しい花を見下ろす瞬間を生み出すために表現を追求し続けている。

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