
2022年に結成された5人組ロック・バンド。東京を拠点に活動。トリプルギターと強靭なリズム隊によるヘヴィ・シューゲイズを主体としたサウンドが特徴。2025年2月に1stアルバム『Lovescape』を発表し、2025年4月にUS激情系シューゲイズ、Mildredの招聘に携わっている。
本記事は1stアルバム『Lovescape』について書いています。
作品紹介
Lovescape(2025)

1stアルバム。全8曲約45分収録。くゆるはシューゲイザーを甘やかさない。それは冒頭を飾る約8分に及ぶ#1「mope」から明らかです。ヘヴィという枕詞をつけたくなる轟音が飛来。その上で肉体的な重みづけをはっきりしています。
シューゲイズというよりは、This Will Destroy YouやCaspian辺りにハードコア的な衝動をドッキングさせた感じといいますか。それにポストメタルや突っ走らないブラックゲイズ的な質感がある。このどっしりとした基盤はリズム隊に端を発するもので、特にわたる氏のドラムが肉弾戦をけしかける強度を寄与(彼はPaleのサポートに時たま参加)。
またトリプル・ギター編成による分厚いサウンドも全てを飲み込もうとする。なかでも再録された#2「蒼い空」の終盤、リミッターを解除したノイズに視聴覚が霞んでしまう。くゆるの轟音は浄化という面もありますが、破壊することで新たな目覚めへ繋げている感覚が強くでています。
しかしながら、嵐の前には静けさがある。嵐の後にも静けさがある。圧と強度の高い音が頻繁に主張しているとはいえ、その裏でふさぎ込む暗さや居場所のない孤独感は作品に横たわる。そして泡沫のヴォーカルとアルペジオがなんとも哀しげに響いてきます。鍵盤を主体とした短いインタールード#6「Blank」を挟み、MVが公開されている先行曲#7「momo」はより幻想的な長編を奏でますが、弱い自分を寛容しようとする詞が痛切さを付帯する。
ラストを飾る約13分の#8「BESIDE」は収縮と破裂のコントラストがより際立つ。繊細なギターとたゆたう歌声に導かれる前半。そこから”誰かはひとりで生きている 耐えて、耐えて“と自分に言い聞かせ、大音量の混沌へ結んでいく。美的な洗練よりも本能の赴くままに爆発する音。この轟きを信じたいと思わせてくれるデビュー作。
